第8話「連携訓練①先輩魔法少女と魔砲少女」
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魔女教に関する会議の翌日の実技の授業は、【マジョリティ】システムと【マギキュリィ】システム及び【ヴァルキリー】システムを用いた戦闘訓練だった。
各システムが単独でも十分な戦果を上げられる強力なシステムではあるが、各システムが協力し合うことでより強固な隙の無い戦闘システムとなる。
そのために、各システム同士での連携を完璧に行うことが重要な課題となってくる。
場所は戦乙女科の校舎に作られた四方を特殊な魔法結界で覆われた屋外訓練施設。
屋外ではあっても、戦闘訓練用システムである、AI搭載型3DAR、通称リアルホログラムが使用出来る設備があり、限りなくリアルに近い戦闘訓練が行える。
屋内訓練施設では主に個人技の特訓を行うのに使われるのに対し、屋外訓練施設では主に多人数による集団戦での特訓を行うのに使われている。
「では、まず【チーム雪月花】と【チーム松竹梅】の連携訓練を行う!」
緑川博士の合図で、マジョリティローズ、マジョリティホーク、マジョリティウインディの三人と、マギキュリィフィア、マギキュリィフュンフ、マギキュリィゼクスの三人が空に上がった。
改めて紹介しておくと、三年生の先輩で生徒会メンバーでもある【チーム雪月花】は以下の通り。
・野薔薇雪音/マジョリティローズ(水の魔法師)
・鷹橋月音/マジョリティホーク(雷の魔法師)
・風霧花音/マジョリティウインディ(炎の魔法師)
そして同じ三年生の先輩で風紀委員会メンバーでもある【チーム松竹梅】は以下の通り。
・美咲松果/マギキュリィフィア
・綺羅竹鶴/マギキュリィフュンフ
・黄金梅衣/マギキュリィゼクス
そんな先輩達の相手は一昨日俺達が戦った魔女教の魔獣人、つまりトカゲ人間達のリアルホログラムだった。
一昨日の今日でトカゲ人間達のデータからリアルホログラムが出来上がるなんてとんでもない技術と速さだ…
「今日は魔女教の魔獣人を相手に、ローズとフィアをメインとしたフォーメーションでシミュレーションを行う。諸君、準備はいいかい?」
「「「「「「はい!」」」」」」
「では、戦闘シミュレーションスタート!」
緑川博士の合図と共に、弓型のマギアデバイスを構えたホーク、そして同じく弓型の変身デバイスであるマギアアローを構えたフュンフが後方に下がった。
「では、いきます!」
ホークのその合図でホークとフュンフがそれぞれ魔法を放つと同時に、剣型のマギアデバイスを構えたウインディと、斧型の変身デバイスであるマギアアックスを構えたゼクスの二人が前に向かって飛び出した。
「『サンダーアロー』!!」
「ちづるもやっちゃうよー!!『シューティングアロー』!!」
『SHOOTING ARROW FIRE!』
ホークとフュンフの放った魔法の矢は同時に十本以上出現してトカゲ男達に襲いかかる。
通常、戦闘魔法師が複数の攻撃魔法を同時に発動することや、同種の攻撃魔法であっても複数重ねがけすることは難しいとされている。
熟練者で二〜三つの同時発動、最大でも五つまでの同時発動しか出来ないらしい。
しかし、次世代型魔法師システムである【マジョリティ】システムや【マギキュリィ】システムは違う。
マナの効率的な運用方法という観点から生み出された二つのシステムにより、一度に放てる攻撃魔法の数が格段に増えたのだという。
勿論、システム運用者の力量にもよるが、その点で言えば【雪月花】先輩達も【松竹梅】先輩達も十分に優れた戦闘魔法師であるために、一度に十以上の魔法を扱えているというわけだ。
『グゲゲーッ!?』
『グギャーッ!?』
ホークとフュンフの攻撃を受けたトカゲ男達が断末魔の悲鳴(トカゲ人間達の音声は元の人間の物では無く、魔獣の鳴き声を元に作られた合成音声だそうだ)をあげながら消えていく。
だが、一部は攻撃を耐えたり避けたりして反撃してくる。
そんな彼らに対して、今度は前に出ていたウインディが剣型のマギアデバイスで、ゼクスがマギアアックスでそれぞれ斬りかかっていく。
「はぁっ!!『ファイアスラッシュ』っ!!」
「せぇえええいっ!!『バスタースラッシュ』!」
『BUSTER SLASH ATTACK!』
『『グギギャーッ!?』』
ウインディとゼクスによって斬り裂かれ、消滅していくトカゲ男達。
だがこれで終わりでは無い。
生き残っていたトカゲ男達が接近してきたウインディとゼクスに向けて魔法を放った。
『『ファイアボゥル』ッ!!』
『『サンダーショット』ッ!!』
「させませんっ!『サンダーボゥル』っ!」
「『アクセルシュート』!」
『ACCEL SHOOT FIRE!』
だが、トカゲ男達の攻撃はウインディとゼクスに届かず、ホークとフュンフの魔法によって相殺される。
「ありがとう!ホーク!」
「助かりますわ!フュンフ!」
ウインディとゼクスは礼を言うと、すかさずトカゲ男達の背後に回り込みそれぞれの武器を振るう。
「『ファイアスラッシュ』っ!!」
「『バスタースラッシュ』!」
『BUSTER SLASH ATTACK!』
『『グゲゲーッ!?』』
先輩達の抜群のコンビネーションにより、次々と撃破されていくトカゲ男達。
そんな彼女達の戦闘の裏では、杖型のマギアデバイスを構えたローズと、左手に籠手型の変身デバイスであるマギアナックルを装着したフィアがリーダー格であるトカゲ女と対峙していた。
「んじゃ、打ち合わせ通りあたいが注意をひくから、」
「あたしが一気にトドメを刺す!」
フィアとローズはそう言うと、互いに距離を取ってトカゲ女と向き合った。
ローズは後方の上空で待機し、両手で構えた杖型のマギアデバイスの先端に魔力を溜め始めた。
そんなローズを守るようにトカゲ女の正面に立ったフィア。
「んじゃ!マギキュリィフィア、参っちゃうしっ!!」
独特のギャル語を話しながら、フィアが両手の拳と拳をがつん!とぶつけて気合を入れると、左手に魔力を込めてトカゲ女に突っ込んで行った。
「おりゃあぁあああああっ!!『バスターナックル』っ!!」
『BUSTER KNUCKLE ATTACK!』
『『ファイアシールド』ッ!』
打ち込まれた拳を炎の盾で受け止めようとしたトカゲ女だったが、盾はあっさりと砕かれフィアの一撃をもろに食らったトカゲ女。
『グルルルルゥオ゛ォオオオオッ!?』
たったの一撃でトカゲ女の膝を付かせたフィアだったが、彼女の攻撃は終わらなかった。
「まだまだいっくよーっ!!『バスターナックル』!『バスターナックル』!『バスターナックルトルネード』!!」
『BUSTER KNUCKLE ATTACK!』
『BUSTER KNUCKLE ATTACK!』
『BUSTER KNUCKLE TORNADO ATTACK!』
『ゴギャッ!?グギャッ!?グルグギャギャギャァア゛アアアアッ!?!?』
怒涛の魔砲ラッシュに、トカゲ女は訓練施設の外壁となっている魔法結界まで吹き飛ばされてしまった。
「ローズっ!今だし!」
「了解っ!『アクアカノン』っ!!」
フィアの合図でローズはマギアデバイスの先端に集めていた魔力を一気に攻撃魔法に変換し、最大攻撃力を誇る貫通型の攻撃魔法をトカゲ女に向けて一気に放った。
『グギャ…ッ!?』
真っ直ぐに放たれた『アクアカノン』は、トカゲ女の核となっている変身用の特殊魔石を貫き、トカゲ女を消滅させた。
「よし!そこまで!」
こうして先輩達の戦闘訓練は終わったわけだが、訓練とは言えトカゲ人間達を終始圧倒する先輩達の戦闘能力とコンビネーション能力はさすがのものがあった。
緑川博士や俺達の元に先輩達が集まってくると、博士がこう言った。
「君達の連携に関してはほぼ文句無しと言ったところだな。
それぞれに自分の特技を生かし、サポーターとフィニッシャーの役割をしっかりと演じてくれていた。
ただ、フィアは少々マナ消費が激し過ぎるかな?場面や相手によっては決して悪いとも言えない戦法だが、今回に関してはあそこまで魔砲をラッシュする必要は無かったかもしれないな」
「はーい!気をつけまーす!」
フィア、ショウカ先輩はギャルではあるが根は真面目なので、緑川博士のアドバイスを素直に受け入れていた。
緑川博士の話が終わると、ウインディもといカノン先輩が俺の元にやって来てこう言った。
「やぁ弟君、いや、今は妹君かな?どうだった、ボクの華麗なる剣の舞は?素晴らしかっただろう?惚れ直したかい?」
いつの間にか俺がカノン先輩の弟(今はマジョリティブラックに変身しているので妹)扱いされている…
一応断っておくと、俺とカノン先輩に血の繋がりは無いし付き合ってもいない。
ただ、異様な速さで距離を詰められてきているだけだ。
「弟でも妹でも無いですけど、でもカッコよかったです」
とりあえず無難な答えを返すと、カノン先輩は満面の笑みを浮かべてギュッと俺に抱きついてきた。
「ふふ♪ありがとう、妹君♥どうだい、今夜あたりお姉ちゃんの部屋に来ないかい?勿論弟君の姿でね。そして、そろそろオトナの付き合いとやらを…、あ痛っ!?」
「はいはい、マサト君困っとーけん、その辺にしとこうねー」
「あっ!?ちょ、セツナ君!?痛い痛い!耳を引っ張らないでくれたまえー!?」
その時、側にやって来たローズことセツナ先輩がカノン先輩の頭をゴチン!と叩くと、カノン先輩を引きずって行ってしまった。
「にゃははは!相変わらずだなー、カノンっちは!」
「魔法師としての実力は申し分無いのですが、美少女や美少年を見ると誰彼構わず口や手を出してしまう癖はどうにかならないんですかね…」
ショウカ先輩と、ゼクスことメイ先輩が呆れたような表情で連れて行かれるカノン先輩を見送っていた。
残された俺の側にやってきたホークことツキネ先輩と、フュンフことチヅル先輩が俺に向かってこう言った。
「あ…、えっと…、ご、ごめんね?マサトさん?カノンさんの言ったことは、その…、気にしなくていいからね…?」
「そうそう!ちづるもしょっちゅうカノちゃんにあんな風に誘われてるしねー!まぁ、ちづるはカノちゃんからの誘いなら全然オケオケオッケーなんだけどねー♥マサちゃんにも、もしその気があるならカノちゃんに誘われてみればー?」
「あ、いえ、大丈夫です、気にしてませんから!」
カノン先輩のことが気にならないと言えば嘘になる(そりゃ男としてカノン先輩のような超絶美少女に言い寄られて悪い気がしないわけがない!)が、今は目の前の恋人達と付き合うだけで精一杯だからな…
「…ふむ、ラブコメは終わったかな?では、そろそろ次の訓練と行きたいのだが大丈夫かな?」
三年生に続いて、次は二年生の先輩達の訓練が始まった。
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続く二年生の訓練だが、二年生にはまだ魔法少女しかいないため、三人でリーダー格のトカゲ女一人と戦うということになった。
ここで改めて二年生の先輩は以下の通り。
・石動蘭/マジョリティロック(雷の魔法師)
・海原詩奈/マジョリティオーシャン(水の魔法師)
・リーリア・スカイウォーカー/マジョリティスカイ(炎の魔法師)
そして、それぞれのマギアデバイスは、ロックが鎌型、オーシャンが長剣型、スカイが杖型であり、一見するとスカイが後衛で残りの二人が前衛型に思えたのだが…
戦闘も終盤に入り、それまでは三人ほぼ横並びで連携を取り合いながらトカゲ女に攻撃をしていたが、トカゲ女がガクリと膝を付いたのを好機と見たロックが他の二人に目配せで合図をした。
それを受けて三人はトカゲ女から距離を取り、鎌を構えたロックが最後方へと移動した。
「せやぁああああっ!!『サンダースラッシュ』っ!!」
そしてそのロックが、雷を纏わせた鎌をトカゲ女めがけて投げたのだ。
『グゲゲッ!?』
トカゲ女は飛んできた鎌を地面を転がるようにしてかろうじて避けたが、鎌はブーメランのようにトカゲ女の周りをぐるぐる旋回してトカゲ女の行動を制限する。
「スキありだよー!」
そのスキにトカゲ女の懐に入り込んだスカイが、トカゲ女の胴を野球のバッターよろしく、炎を纏わせた杖を振り下ろしてぶん殴った。
「『ファイアストライク』っ!!」
『グギャァアアアアアッ!?』
「よし!今だ!」
「後は任せたよー!オーシャンっ!!」
「了解っ!!」
スカイの杖でトカゲ女が殴り飛ばされた先には、長剣を居合の構えで待ち構えていたオーシャンがいた。
「『アクアスラッシュ』居合の型…!」
と、長剣で居合斬りのような技を繰り出したオーシャンが、飛んできたトカゲ女を一刀両断してしまった。
ちなみに魔法名の後の『居合の型』と言うのは本人が勝手にそう名付けているだけで、正式な魔法名では無い。
にしても長剣で居合斬りのようなことをするなんてとんでもないな、この人…
…いや、そういやユウも似たようなことをユイのマギアソードでやってたか。流行ってるのか、剣で居合斬りするのが…?
「またつまらぬ物を斬ってしまった…!」
『グギャァアアアアアッ!?!?』
オーシャンに斬られたトカゲ女は断末魔の悲鳴をあげながら消えていった。
「よーし、そこまで!二年生チームもなかなかに良かったぞ!」
「「「はい!ありがとうございます!!」」」
緑川博士から細かいアドバイスを受ける二年生の先輩達を見ながら俺は密かに思った。
鎌のロックが後衛で杖のスカイが前衛だと…!?
「あっはっはっ!ブラックは私らの戦いを見て驚いているね?」
と、緑川博士との会話を終えたロックことラン先輩が俺の側にやって来てそう言った。
「あ、は、はい…、正直言って、まさかラン先輩とリーリア先輩の役割は逆だと思ってましたので…」
「あははは!それは確かにそう思うよねー!」
同じくこちらへやって来たスカイことリーリア先輩が笑いながらこう続けた。
「だけど、古の戦術にはこういう言葉もあるんだよ、『盾は投げるもの』っていうね…!」
いや、確かに旧世界からあるファンタジー作品の中にはそういう戦い方をする者もいるが…
「要するにリーリア君が言いたいのは先入観を持つな、ってことだよ!故に、私にとって『鎌とは投げるもの』であり、」
「ワタシにとって『杖とは殴るもの』!ってことだよ!」
「な、なるほど…?」
確かに、いきなり鎌がブーメランのように飛んできたら咄嗟に対応出来るか分からないし、どう見ても後衛タイプの杖持ちがいきなり前衛で殴りかかってきたらそれは焦るだろう…
「まぁ勿論、この鎌は投げる以外にも普通に接近戦で使えるし、スカイの杖だって本来の用途は鈍器としてのものじゃないよ?
状況に応じてあらゆる戦術を選べて使えるようにしておいた方がいいでしょ?私達は常に三人でいるわけじゃないのだからね」
「確かにその通りですね…
スイマセン、頭が硬かったようです。じゃあ、オーシャンの剣型デバイスにも何か斬る以外の役割が?」
俺がラン先輩にそう尋ねると、ラン先輩は首を横に振りながらこう答えた。
「いや、オーシャンはあくまで斬ることが仕事で斬る以外の役割は持たせてないよ。シイナ君はよくも悪くも単純だからね〜…」
「な…、なるほど…、あれ?そういえばそのシイナ先輩は?」
「シイナならあそこだよー」
リーリア先輩が指差した先には、カノン先輩に絡んでいるシイナ先輩がいた。
「カノン先輩!どうでしたか!?あたしの攻撃!!カッコよかったですか!?」
「ああ!実に素晴らしかったよ!改めて惚れ直したよ、シイナ君♥」
「カノンせんぱぁ〜い…っ♥♥」
そういやシイナ先輩は自己紹介でカノン先輩のことが大好きだって言ってたな。
当のカノン先輩も後輩に言い寄られて満更でも無さそうだし。
「いつも通りだねー…」
「本当に…、シイナ君のカノン先輩好きはどうしようもないな…
…っと、ところでブラック、先程のカノン先輩の言葉じゃないけど、今夜あたりどうかな…?」
「え゛ぇっ!?」
まさかのラン先輩からのお誘いだとぉっ!?
いやいや待て待て落ち着け俺っ!!
俺には大勢の恋人達がいて、彼女達のこともまだろくに満足させられていないのに、他の女性の誘いに乗るなんて…、
「君のその身体…!どうなっているのか、ぜひこの私に調べさせて欲しい…っ!!はぁ…、はぁ…っ!!男なのに魔法少女になれるその身体…!!ぜひ私の研究材料に…、ああ、いや、実験材料になってくれないっ!?」
「言い直して余計酷くなってません!?」
そうだった!ラン先輩は一見まどだけど、マッドサイエンティストの気があるヤバい先輩だった!?
「大丈夫っ!先っぽ!先っぽだけだから!!はぁっ、はぁ…っ!!」
「何がです!?」
「はいはい、ランもその辺にしとこーねー!」
「ぐえっ!?」
見かねたリーリア先輩がラン先輩の背後に立ち、両手に持った杖をラン先輩の首にかけて、そのまま杖でラン先輩の首を絞めてしまった。
まさかスカイの杖の本来の用途って…?
「あははは、ゴメンねー、マサト?ランの言ってたことは気にしなくていいからねー?」
首を絞められ白目を剥いて口から舌をだらんと出して気絶したラン先輩を引きずって行くリーリア先輩。
なんというか、濃い先輩達ばかりだなー……




