第1話「始まりは突然に」
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『……来年度の四月より、“第12魔法都市”の魔法師育成学園高等部女子科に、新たに“魔法少女クラス”というクラスが設立されることとなりました…』
朝のテレビで、キャスターの女性がニュースを読み上げている。
『…“魔法少女”とは通称で、正式名称は“【マジョリティ】システム搭載型戦闘魔法師”のことで、魔法研究の第一人者でもある緑川瑠璃博士が新たに開発した次世代型“戦闘魔法師”システム、【マジョリティ】システムを使って変身する、新たな“戦闘魔法師”の形、それが“魔法少女”となります。そして……、』
中学三年の俺、黒霧優人は、その日が高校入試当日で、朝のニュースで時間を確認しながら、身支度を整えていた。
両親や年上の親族はすでに他界していて、中学生にして一人暮らしをしている俺(以前はハウスキーパーさんがいたが、今は雇っていない)だったが、現在では珍しい男という性別に産まれたおかげで、生活保護は手厚く、高校にも普通に通わせて貰えるだけの保障を受けられている(勿論、入試に受かれば、だが…)。
『……しかし、“魔法少女”は、“魔法師”の才能がある女性全員が変身出来るというわけではなく、さらにその中でも“マジョリティ”適正と呼ばれる特殊な適正が無ければ変身出来ないという、かなりレアな職業になるようで、その詳細に関しては……、』
これで自分に“魔法師”の才能があれば、より希少価値の高い男性“魔法師”として、魔法師育成学園高等部男子科に特待生枠(そもそも男子科自体が特待生枠と言えるのだが)として通えたのだが、残念ながら、世の中そんなに上手くはいかない。
『…いずれにしても、“魔法少女”という存在が今後どのような形で普及し、活躍していくのかは、新設された“魔法少女クラス”の今後次第ということになりそうです。では続いてのニュースですが……、』
と、テレビのニュース映像が切り替わる一瞬、テレビに俺の良く知る少女達が映り込んだ。
今年の四月から新設されるという魔法師育成学園高等部女子科の“魔法少女クラス”、そのクラスに入学が決まった少女達の中に、俺の従妹の少女、そして二人の幼馴染の少女の姿があった。
彼女達は現在、魔法師育成学園中等部に在籍しており、優秀な“戦闘魔法師”として、高等部へ特待生枠での入学が決まっており、さらにはその中でもさらに優秀な“魔法少女クラス”枠に選ばれたのだという。
“魔法少女”というのは、ニュースでも言っていた通り、緑川瑠璃博士が開発した次世代型の“戦闘魔法師”システムのようで、従来の“戦闘魔法師”システムよりも優れたシステムらしいのだが、“魔法師”の中でもさらに一部の人間にしか扱えず、今回の“魔法少女クラス”には10人程度しか在籍していないという。
そんな10人の中に、従妹と二人の幼馴染が含まれているのだから、これはスゴい確率だと思う(ちなみにだが、俺には双子の妹もいて、彼女も“魔法少女”にこそ選ばれなかったが、“戦闘魔法師”として優秀な成績を修めているらしい)。
これで俺が魔法を使える“魔法師”だったなら……、いや、たらればを考えるのはよそう。
ちなみにだが、魔法師育成学園は完全寮制で、妹や従妹とは現在別々に暮らしている。
俺はテレビを消し、入試会場へと向かうべく家を出たのだった。
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この世界は、かつて起きた人間同士の核戦争により滅びかけた。
それでもしぶとく生き残った人間達は、これ以上の滅びを防ぐために、大量殺戮兵器の開発及び所持、その使用の全面的禁止を国際条約で取り決めたのだが、その実、そうした兵器を作れるだけの科学力や人材、材料ごと核が根こそぎ吹き飛ばしてしまったので、作りたくても作れなくなった、というのが事実だろう。
ともあれ、そういった事情から、人類皆兄弟、仲良くしていこうと新たな歴史を生み出した人類達だったのだが、その一方で、核によって荒廃した地球の環境は激変し、これまで生息していた生物とは全く異なる生態系を持つ“魔獣”、“魔生物”、“魔物”といった生物が誕生した。
“魔獣”ってのは、分かりやすく言えばかつてあった怪獣映画に出てくる怪獣みたいな化物だ。
“魔生物”は、かつてのファンタジー小説とかゲームなんかに出てくる“ゴブリン”とか“オーク”みたいな奴らのことで、名前もそのまんま“ゴブリン”とか“オーク”なんて呼ばれている。
“魔物”は、かつて地球上に存在していた生物が突然変異を起こしたもので、例えば巨大な角が生えた狼とか、空を飛ぶトラみたいな怪物達を差す。
そんな魔獣達に、まともな兵器を持たない(作れなくなった)人類は、対抗する術なく、またも滅びの危機に瀕したのだが、そこに魔法を扱う“魔法師”という存在が現れたことで、人類は“魔獣”達への対抗手段を得て、さらにはこの魔法技術を発展させていって、世界中の各地に、魔法技術によって作られた“魔法都市”が作られていった。
俺の住むここ“第12魔法都市”もそうした“魔法都市”の一つで、かつて福岡県北九州市と呼ばれていた地域を中心に、その周辺地域の市町村区を魔法技術によって整備、開発されて生まれた新たな都市だ。
ともあれ、そんな魔法技術文明の発達した世界ではあるが、別の理由から人類は再び滅びの危機に瀕していた。
それは、男子の出生率の低下による、男女比バランスの崩壊。
生物はいくつかの例外はあれど、基本的にはオスとメスが存在しなければ子孫は残せないわけで、オスが物理的に減っていってるとなれば、その種が滅びてしまうのも時間の問題と言えるだろう。
何故そうなってしまったかというと、およそ200年前に【魔女】と呼ばれる人間の少女が突如現れたことに端を発する。
突然現れたその【魔女】は、人類の救済と称して、アメリカにあった“第5魔法都市”を襲い、壊滅させ、その後も世界各地の“魔法都市”を襲って、いくつかの“魔法都市”を壊滅させてしまった。
その後、生き残った“魔法都市”の精鋭“戦闘魔法師”達が協力して、なんとか【魔女】を倒すことに成功したが、【魔女】が死ぬ間際に、この世界の人間に“呪い”をかけたのだ。
その“呪い”によって、人間の男子が産まれる際に、染色体異常、つまりは致死遺伝子が発現することによって、人間の男子のほとんどは産まれると同時に死に至ってしまうのだ。
この“呪い”により、男子の出生率は極端に下がり、現在では、女性と男性の比率が9対1という状況になってしまった。
そんな世界で産まれ、運良く死に至らなかった俺だが、染色体異常の影響が全く無いわけではなく、時折急に襲われる“呪い”による発作のせいで、まともな運動も出来ず、最悪死に至る可能性もあるため、常に薬を持ち歩いていなければならないという体質になってしまった。
まぁ、それでも産まれてすぐ死ぬよりかは、生きられているだけ遥かにマシというものなのだが。
*
俺は、“第12魔法都市”にある愛宕高等学校の入試を受けるために、最寄りのバス停から、バスに乗って高校へと向かっていた。
現在の車は、かつてあったガソリンや電気で走るシステムではなく、マナをエネルギー変換して走る、“魔走車”(ちなみに、バスの正式名称は“魔走バス”という)と呼ばれている。
同様に、かつての電車はレールの上を走ることから“魔走レール車”と呼ばれている。
また、かつて飛行機などと呼ばれていた空を飛んで移動する乗り物は、現在普及していない。
というのも、“魔法都市”内では空を飛んで移動する必要は無く、“魔法都市”の外に出れば、空を飛ぶ“魔物”などに襲われる可能性が非常に高いため危険過ぎるからという理由だ。
また、“魔法都市”間を移動するには都市内にある『長距離転移』魔法技術を用いた“ワープゲート”を使えば一瞬なので、空を飛ぶ必要は無いというのもあるが、その移動自体は制限されている。
というのも、一度ゲートを使うのに大量のマナを必要とするそうなので、一日の移動人数や発動回数が限られているため、滅多なことでは、“魔法都市”間を移動することは出来ない。
閑話休題。
出勤時間で満員のバス内に乗り込むと、当然と言うべきか、俺はかなり注目される。
周りはほとんどが女性なので、男が乗り込めばそりゃ注目されるのも当然だ。
俺は満員バスの前の方に移動し、吊り革を持って立つ。
そうして、長い道のりを進んでいく。
俺の住んでいる場所は、“第12魔法都市門司区大里桃山町”という場所(かつての県名や市名は区画整理の影響で無くなったが、区名や町村の名前は、一部かつてのものを流用されたりしている)で、受験する愛宕高校のある“第12魔法都市小倉北区愛宕町”までは、それなりの距離がある。
そんな満員のバス車内だが、“小倉駅前”というバス停でガラッと客層が入れ替わる。
この場所は、文字通り“魔走レール車”の駅まで歩いて数分という場所で、“第12魔法都市”の中心地的場所と言える。
また、“魔走モノレール車”という地上数メートルの場所を走る“魔走レール車”の駅が目の前にある。
故に、この場所で降りるお客さんと、この場所から乗り込むお客さんとで、車内の人員がガラッと入れ替わるのだ。
俺は、持病と試験への緊張感、それから普段乗り慣れない満員バスに長時間立っていたのもあって、そろそろ立っているのが限界となってきたので、この時に席が空いたタイミングで、一番前の運転席の真後ろの席に座った。
ちょうどこの時期は、学校や学年によっては春休みに入っている時期でもあるため、乗り込んでくる学生の数が少なかったので、遠慮なく座らせてもらった。
すると、俺の席の隣に、新たに乗車してきた白衣の女性が吊り革に捕まって立ったのが横目に入った。
白衣が珍しく、思わずその人をチラ見すると、何やら何処かで見たことあるような顔の女性だった。
(…あ、そうか、今朝のニュース!“魔法少女”システムの開発者だとかいう、緑川瑠璃博士!そういや、博士は魔法研究者なだけやなくて、魔法師育成学園の教師もしとるんやっけ…)
つまり、博士も出勤途中、ということなのだろう。
俺の向かう愛宕高校のさらにその先に、魔法師育成学園高等部の校舎があったハズだから、同じバスに乗り合わせてもおかしくはないだろう。
だが、魔法師育成学園自体は、休日出校なども多いため、その分春夏冬の長期休暇期間が長く取られていて、この時期は魔法師育成学園は春休みに入っているハズである。
いつもなら、魔法師育成学園に通っている妹と従妹、そして二人の幼馴染が帰省で帰ってきているのだが、この春は俺の受験勉強を邪魔しないようにという配慮と、中等部寮から高等部寮への引っ越しなどから帰省しないことになっていた(本人達は、年に数回の帰省が出来ないことを残念がっていたが…)。
まぁ、学生が春休みでも教師には色々仕事があるのだろう。
特に、魔法研究の権威ともなる緑川博士ともなれば、なおさら忙しいのかもしれない。
そんな風にぼんやりと考えていると、急に心臓が苦しくなり、意識がグラッと反転するような目眩が起きた。
例の発作だ。
今朝、発作を抑える薬は飲んできたハズだったのに、やはりいつもと違う緊張や慣れない満員バスという環境に、体が悲鳴をあげたのだろう。
「あ…っ!?ぐぐぅ…っ!?」
俺は、体勢を崩して、席に座ったまま、前のめりに俯いた。
「むっ!?君、大丈夫かい!?」
すると、隣に立っていた緑川博士が俺を心配して声をかけてきた。
「そうか!染色体異常の発作だな!?君、薬はあるかい?カバンの中を検めさせてもらうよ!?」
運転手の心配する声も聞こえてきたが、「大丈夫だ!私はある意味専門家だ!任せて、君は運転に集中したまえ!」と、緑川博士がテキパキと仕切って、俺を抱き起こし、俺のカバンを手に取った。
その時、ふと、博士の持つカバンの中が、薄っすらと黒く光っているのが俺の目に入った。
博士もその光に気付いたようで、一瞬「む?何だ?」と自分のカバンに気を取られたようだが、
「いや、今はそれどころじゃない!君!カバンの中、確認させてもらうよ!」
と言って、俺のカバンの中に入った薬を探そうとしたのだが、次の瞬間、バスが急ブレーキを踏むと共に、ドシンッ!!という何かが上空から落ちてきたような、鈍い振動があった。
と同時に、車内の人達が持ったスマホ(これにもマナエネルギーが使われていて、かつて必要だったらしい充電という行為が必要無い)が、一斉にビーッ!ビーッ!というけたたましい警報音を鳴らし始めた。
続いて、自動音声の声が聞こえてくる。
『都市内に魔物侵入!!小倉北区魚町エリアに魔物侵入!!周辺区域にいる人達は直ちに避難をっ!!』
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「あ…っ!?ぐぐぅ…っ!?」
私、緑川瑠璃が、魔法師育成学園に向かうためにバスに乗り込むと、突然目の前に座っていた少年が俯き、苦しみ始めたのだ。
「むっ!?君、大丈夫かい!?」
私は咄嗟に少年を抱き起こし、声をかけた。
「そうか!染色体異常の発作だな!?君、薬はあるかい?カバンの中を検めさせてもらうよ!?」
私は魔法研究の第一人者などと呼ばれているが、医者ではない。
しかし、彼の発作が魔術的“呪い”によるものであることはすぐに見当が付いたため、私は魔法研究者の端くれとして、彼の対応を買って出ることにした。
と言っても、そんな大した処置をするわけではなく、彼専用に処方された薬を、彼自身が常に持ち歩いているハズだから、私は彼の確認を取って、彼のカバンの中を確認させてもらうことにした。
その際、彼に私のカバンが接触し、私のカバンの中に入れていた、研究品が反応したようで、これが緊急時で無ければ、今すぐにでも彼をこのまま魔法師育成学園に引っ張って行って研究したいところだったが、今は彼の生死に関わる状況なので、さすがに自重した。
そして、彼のカバンを手に取り、中に入っているであろう薬を探そうとしたのだが、次の瞬間、バスが急ブレーキを踏むと共に、何かが上空から落ちてきた激しい揺れが起きた。
と同時に、車内全員のスマホが、一斉に緊急警報を知らせる音を鳴らし始めた。
「ちぃっ!?こんな時に…!?」
この警報音が鳴るということは、都市内に魔獣が発生したか、もしくは都市外に住む魔物か魔生物が都市内に侵入してきたということだ。
“魔法都市”は、基本的に周囲を“マナ結界”で覆われていて、魔物や魔生物の侵入を外から防ぐように出来ているが、絶対では無い。
まず、魔獣はマナが一定量集まることで発生する“マナプール”から自然に発生してしまうため、都市内であっても普通に、それなりに頻繁に発生する。
そして、都市外に住む魔物や魔生物の中で、“マナ結界”を破れるだけの強力な個体であれば、都市内に侵入してくることがあるが、かなりのレアケース。
『都市内に魔物侵入!!小倉北区魚町エリアに魔物侵入!!周辺区域にいる人達は直ちに避難をっ!!』
どうやら今回はそのレアケースを引いたらしい…!
しかも、運の悪いことに現れたのは私達の乗ったバスの目の前、背中から翼を生やした巨大なトラのような見た目の魔物、“翼タイガー”だ。
「皆さんっ!落ち着いて下さいっ!!ドアを開けますので、落ち着いて避難を!後部座席の方は非常ドアを開いて脱出して下さい!」
運転手はバスの出入口を開けながら、そう指示を出した。
レアケースとはいえ、“魔法都市”に住む者であれば、こういった緊急事態には常に備えていて、それなりの覚悟と度胸もある。
私と少年と運転手以外の乗員は、速やかにバスから離れ、最寄りの避難場所へと駆けていく。
「お二人も早くっ!」
残った私と少年にそう声を掛ける運転手だったが、今この場で少年を動かすのはマズい!
せめて薬を飲ませて、発作が落ち着いてからでないと動かせない…!
「運転手君は先に避難してくれたまえっ!」
「し、しかし、」
「大丈夫だっ!直に“戦闘魔法師”達が来る!だから問題無いっ!早く行きたまえっ!!」
「は、はい…っ!」
運転手がバスから離れていくのを見送ると、私は持ち前の頭脳をフル回転させた。
少年は発作を起こしていてまともに動けない。
この状態で無理に動かそうとすると、発作が悪化し、最悪少年は死ぬ。
では、薬を飲ませて発作が治まるのを待って脱出するか。
いや、目の前数メートルにいる翼タイガーはそこまで私達を待ってはくれないだろう。
ならば、どうする?
思考することおよそ0.5秒、私が出した結論は…
私は少年のカバンではなく、私のカバンに手を伸ばし、その中に入っていた、先程から何故か光を発しているコンパクトを取り出し、少年の胸に押し付けた。
「少年っ!助かりたければ、こう叫べっ!!『“マギアコンパクト”起動』とっ!」
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発作が激しくなり、意識が朦朧としていく中、突然、俺の胸にどん!と何かが押し付けられるのを感じた。
薄れゆく視界の中で、俺の胸から、何やら眩い光が立ち上がっているのだけが見えた。
「少年っ!助かりたければ、こう叫べっ!!『“マギアコンパクト”起動』とっ!」
何を言われたのか、脳が理解するよりも早く、俺の口は、その言葉を繰り返していた。
「『“マギア……、コンパクト”……、起動』……」
すると、全身が燃えるように熱くなり、さっきまで苦しかった呼吸は嘘のように楽になり、意識もスッキリとして覚醒していく…!
「おお…っ!成功だっ!!まさか…っ!まさか本当に上手くいくとは思わなかったぞっ!?」
隣で緑川博士の興奮した声が聞こえてくる。
「い、一体何が…?」
この時の俺は、何が起きたのか全く分からず、冷静に観察をする余裕が無かったのだが、今にして思えば、声変わりをとうに終えたハズの俺の声が、明らかに高くなっていたことに気付くべきだった。
いや、それ以上の、見た目にも分かる明らかな変化が全身に起きていたのだが、それにすら気付く余裕は無かった。
「少年っ!発作の方は大丈夫かい!?」
「え…?あ、は、はい、もう何とも無いですけど…、一体何をしたんです…?」
「話は後だっ!今はここから逃げようっ!」
と、緑川博士が言うのと同時、バスの目の前に迫っていた、翼の生えたトラのような魔物が、その鋭い前足の爪をこちらに向けて、飛びかかってきたのだ!
「うわっ!?」
「くっ!仕方がないっ!少年っ!私を掴んで飛べっ!」
「え!?」
「足の裏に思いっきり意識を集中させて、床を蹴りあげろっ!」
「は、はいっ!!」
嫌が応もなかった。
飛ばなければ殺られる。
その生物としての本能で、俺は言われた通りに、緑川博士を掴み、足の裏に力を集中させて、バスの座席の床を思いっきり蹴った。
すると、バゴンッ!!とバスの天井を貫き、俺は遥か上空に飛び上がっていた。
そんな俺の真下を、翼の生えたトラが通り過ぎ、俺達がさっきまで乗っていたバスをその鋭い爪で引き裂き、真っ二つにしていた。
「え…っ!?えぇええええええっ!?!?」
「ふむ!やるじゃないか、少年!」
「な…っ、なんで俺、こんな力…!?というか、股間がめっちゃスースーする!なんだこれ!?え、スカート!?」
上から見下ろす体勢になって、初めて俺は、さっきまで着ていた黒い男子の学生服ではなく、黒と白を貴重としたフリフリの服に、スカート(!?)を履いていることに気付いた。
「それに、胸重っ!?おっ、おっぱいがある!?」
この段階になって、俺は、俺自身の身体にとんでもないことが起きているということに、ようやく気付いた。
「そうだ!君は私の発明した“【マジョリティ】システム搭載型戦闘魔法師”、通称“魔法少女”に変身したのだっ!!」
「は、はい……?」
「君は、今から“魔法少女”、“マジョリティブラック”として、人類の自由と平和のために戦う“魔法師”となったのだっ!!」
「えぇえええええええええっ!?!?」
俺の、いつもより甲高い叫び声が、魚町に響き渡るのだった…