第6節 訓練 ~急~
2、3時間は経ったであろうか。
大分感覚を掴めた。
魔雲をほんの少し取り込むだけで身体能力をかなり向上させることができるようになった。
更に取り込むことで更なる身体能力の向上も見込めるらしい。
ただ、あまりにも取り込み過ぎると魔雲酔いというものを発症し、最悪の場合身動きすらとれなくなることもわかった。
「これほどの短時間でここまで物にできるとは…お主ならワシをも越えることができるかもしれぬな」
聞けば魔雲を取り込むことができたとしてもすぐに身体能力が向上しなかったり、ごく少量の魔雲でも魔雲酔いを起こす者がほとんどなのだという。
雲斎は言う。
「稀に見る天才、というやつじゃな、そなたは」
天才。
そう言われて悪い気はしないがこの世界で生きていくなら、の話だ。
俺は自分がいた世界に帰りたいのだから。
元の世界には越えなければいけない存在がいる。
一度でいい。
見返してやりたい存在がいる。
帰らねばならないのだ。
「さて、時間もまだあるが今日はここまでに…」
「いや、訓練を続けたい。時間が惜しいのでな」
雲斎の言葉を半ば遮り、訓練の継続を申し出る。
どうせ戦闘訓練もあるのだろう。
そんなに疲れているわけでもないし、時間も惜しいのだ。
「ふむ…明日に回した方が良いと思うがのう…」
「いいから教えろ」
雲斎はまだ少し納得していないようだった。
「私共としては休んで欲しいのですが…」
後ろからクレイディアスが現れた。
「時間が惜しいんだ。やれるうちにやっておきたい」
「魔雲酔いを起こすかもしれませんので…」
「関係無い。起こしたらその時はその時だ」
「むぅ…どう思われますか、雲斎殿」
「これ以上言っても仕方がないじゃろうな…良いじゃろう、戦闘訓練に入るとしよう」
クレイディアスは溜め息をついていたが、雲斎が出ていた柱を消し、準備を始めた。