第4節 訓練 ~序~
案内されたのは円形に形作られた空間。
闘技場、というやつだろうか。
風が吹いているわけではないが、何となくうっすらと霧がかかっているような、雲がかかっているような、そんな光景が目の前にあった。
このうっすらと見えているのが魔雲だとすぐ理解できた。
「ご理解頂けたかと思いますが…これが魔雲です。魔雲は周りに少なからず存在しているのです」
「これが戦闘にどう使われるんだ?」
「この魔雲を体に取り込むことで身体能力を向上させて戦うのが一般的な使い方ですね」
「魔雲を取り込む…」
事前に魔雲の知識を少しもらっているとはいえ、具体的にどう取り込むかを知ったわけではない。
まさか…ただ吸い込むのではないだろうな…。
実際、呼吸することで体に少しずつ入っているであろう気にはなっているが、イマイチ実感は湧かない。
力が強くなっただとか、足が早くなっている気がするだとか、何も感じてはいない。
「まずは魔雲の取り込み方からの説明になりますね」
すると目の前にぼんやりと人形が現れた。
「彼は過去の英雄、雲斎。彼から魔雲の使い方、戦い方を学んで頂きます」
雲斎…。
パッと見た感じは昔の中国人のような、仙人と言われそうな風貌の初老の人間だが…その体はうっすらと透けている。
「数刻後に迎えに参りますので、訓練を積んでいただきますようお願い致します…」
雲斎と二人にされてしまった。
過去の英雄…。
一体何をして英雄となったのであろうか。
とてもそうは見えない。
「まずは…魔雲をどのように取り込むかを話していくとしようかのぅ」
二人になり、先に口を開いたのは雲斎だった。
こうして魔雲の基礎から学ぶことになったのであった。