第18節 異邦人連合
出店があった道に着いた。
人はかなり少なく、街灯が点いているとはいえ少し暗い。
時刻は午後9時半。
少し早すぎたか…?
「旦那、来てくれたんですね」
その声と共に現れたのはあの店主であった。
それに付き添うように二人の男も現れる。
「色々…話ができそうだったからな」
「あの空飛ぶ猫は…」
「ぐっすりと眠っている。ここには来ない」
「そうですか…。
それでは、どうぞこちらへ」
店主以外に二人の男が一緒だが、これも不思議と怪しいとは思わなかった。
なぜならその二人も黒髪であり、自分から日本人だと申告したからだ。
武器も持っていなさそうだし、敵意も感じられない。
ゆっくりと話ができそうな感じだ。
そんな三人に案内されたのはあの出店…の裏にある家だった。
中に入ると、店主が暖炉で何かをしている。
ゴゴッ…。
石が引き摺られるような音がしたと思ったら暖炉の前の床が開いた。
隠し通路のようだ。
「こちらへ」
その中に通される。
中は多少狭いものの道ができており、いくつか分かれ道になっていたが、店主達は足を一度も止めること無く進んでいく。
数分着いていくと、木の扉に辿り着く。
「ようこそ、異邦人連合へ」
扉が開かれると、中にまぁまぁ広めな部屋があり、そこに同じ黒髪の人間が数人いた。
「その人が今回召喚された人、ですか…」
「ええ、今回の人は怪しむことも無く着いてきてくれましたよ」
クレイディアスが着ていたような服を纏った男が俺に近付いてくる。
「ようこそお越し下さいました。
私は遠藤 晴彦。
この世界にはあなたよりも7回前に召喚された者です」
「榊…龍二だ。
7回前…どのくらい前なんだ?」
「この世界で換算すると20年程前になりますね」
20年…。
この世界は1年が240日だと聞いていたため、元の世界の20年より少ない日数なのはわかるが、20年の間に7人も召喚された、というのがわかる。
「俺は怪しむことも無く着いてきてくれました、みたいな言い方をしていたが、ここに来なかった奴もいるのか?」
「ええ、そうですね」
「そいつらがここに来ていないのに何故俺があんたより7回後に来たことがわかったんだ?」
「私はこの世界で一応神職をさせてもらってますので…。
召喚された人がいると私にも通知が来ますから」
「町に来たことはどうやって知ったのだ?」
「それなら簡単です。
彼がいますから」
晴彦が目配せした人物をよく見てみると、この町の門番の一人がいた。
なるほどな。
そいつがこの町に召喚された人間が来たことを伝え、勧誘するように声をかけに来るわけだ。
となると、由紀彦もこの連合の人員なのだろうか。
しかし由紀彦はいなかった。
「佐藤 由紀彦というやつはここにいないのか?」
「いえ…そのような者はおりません。
日本人でこの世界に召喚された者なのですか?」
「ああ、そう言っていた」
晴彦は少し考え込んだが、すぐに答えを教えてくれた。
「その者は…どうやら他の大陸から来たようですね…」
「他の大陸…だと…?
ここ以外にも大陸が…?」
「やはり詳しいことは教えられていないようですね。
我々があなたを呼び出した理由、それはこの世界について教える為です。
もちろん…聞いて行かれますよね?」
どうやら色々知っていそうだ。
俺は話を聞くことにした。