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第17節 弁当
店主に渡された弁当にはおにぎりと卵焼き、ほうれん草の胡麻和えのような物が入っていた。
どれも食べ慣れていたはずの物なのに、やたら懐かしさを感じた。
刺身も醤油が無いにも関わらず、とても脂が乗っており、ものすごく旨かった。
注目すべきは弁当に貼られていた名札。
この世界の字では無く、漢字で異邦人様、と書かれていた。
やはりあの店主も日本人であっているようだ。
その名札に…。
夜十時、御会いした出店にて待ちます。
そう書かれていたのだ。
何か話があるのだろう、そう思った。
明らかに俺を誘い出す為の文面だが、不思議と怪しいとは思わなかった。
ただ問題が一つ。
リリア、リリクをどうするか。
連れていっていいものだろうか。
あの店主と話をしている最中からリリクの様子が少しおかしかった。
もし会いに行こうと言おうものなら止めにかかってきそうな気配すらある。
どうしたものか…とリリク達を見てみる。
疲れていたのだろうか…?
リリア、リリク共に眠りについていた。
(今なら黙って向かうことができそうだな…行ってみるか…)
俺は静かに部屋を出ると、あの店主がいた出店に向かった。