第11節 目的
「あなたにして欲しいこと、それは…我々の敵を倒してもらいたいのです」
「敵…だと?」
「はい。この世界には我々のような人、リリクやリリアのような使い魔が大半を占める者たちが住んでいますが…その者達を滅ぼし、この世界を我が物にしようとするグレイスと言う者たちがいます。
あなたの目的はグレイスの長であるグレーディオを倒すことです」
「お前達でそいつらを倒すことはできないのか」
「力の強さが違いすぎます…グレイスの使い魔にあたるグイスはかろうじて倒すことはできるでしょう。
しかし…その長を倒すのは無理なのです」
「俺ならそれができるとでも言うのか」
「ええ、あなたは我々とは違う世界から来た者。我々とは比較にならないほどの力を持っているのですよ」
なるほど。
そうやって召喚とやらをして戦力としているわけだ。
それならば英雄と言われている雲斎も戦力になるのではないのか?
「なお…雲斎は戦うことができないのです。彼は思念のみがこの世界にいる存在ですから…」
心を読まれたのか…?
俺が考えて口に出していないことをまた当ててきた。
まぁそれはいい。
「雲斎はなぜ英雄と呼ばれているんだ?」
「彼は過去にグレーディオを倒したことがあるのです」
「ではグレーディオと言うやつはなぜ今も存在しているのだ?」
「復活したのですよ。長い年月をかけて…」
復活…。
死んだ者が甦ったということなのだろうが…まぁこのわけのわからない世界だとそういうことも起きるのだろうな。
元居た世界では絶対に考えられないことだが…。
「過去に雲斎以外でグレーディオを倒したことがあるやつは?」
「おりません」
ということは雲斎が初めてグレーディオを倒して英雄になったということか。
「雲斎も…俺のように召喚をされてきたやつなのか?」
「ええ、そうです」
なるほどな。
次に話す機会があればどこに住んでいたのかを聞いてもいいかもしれない。
「他に召喚されたことがあるやつはいないのか?」
「今まで何人…何十人…何百人と召還してきましたが、グレーディオを倒すことができたのは雲斎のみ…他の者達は…全員死にました」
グレーディオがそんなに強いのか、召喚されてきた奴らが弱いだけなのか…。
俺もその大多数の中に入るのだけは御免だ。
「俺の力はどうなんだ」
「雲斎も言っておりましたが、あなたの力は今までの中で一番と言っていいほどです。
雲斎を越えているかもしれません」
ならばグレーディオを倒すことができるというわけだ。
これで気兼ねなく目的を果たしに行けるというものだ。
「ならば明日からでもすぐ発つとしよう」
「わかりました…。準備は全てこちらでしますので…用意した部屋でお休みになってください」
目的はグレーディオの討伐。
雲斎にも認められたのだ。
すぐ済むに決まっている。