第9節 食
がっついてしまった…。
この世界の飯が旨すぎる。
元の世界の食事情もあるが、この世界の飯は旨すぎる。
見たことがないような食事ばかりなのだが、とにかく旨すぎる。
最初に出てきたのは野菜を盛り付けたもの。
見たことが無い野菜ばかりだったのだが、シャキシャキと心地よい噛みごたえと音が口の中いっぱいに広がる。
野菜にかけられていたドレッシングというものがまた旨い。
味は濃厚なのに野菜の味を邪魔していない。
旨い。
旨すぎる。
次に汁物。
黄金色に輝くその汁物は具が何も入っていないのだが、思わず噛んでしまう程の味を見事に引き立てており、飽きない。
先程の野菜とはまた違った濃厚さである。
旨い。
旨すぎる。
次に出てきたのは刺身であった。
この世界ではごく一般的な魚のクラッビーという魚なのだそうだが、その身のプリプリさ、味わいの良さ。
ドレッシングも醤油もかけられていないのだが、いらない。
無くても全然良い。
このまま飯に乗せて食べたとしてもその味が負けることは無いだろう。
旨い。
旨すぎる。
次に出てきたのは肉だ。
この世界の森に多数いると言われる雲猪。
見た目を本で見せてもらったが、猪だ。
元の世界の猪とは色が違い、白い色をしているが、どう見ても猪である。
しかしその肉は半分生であるにも関わらず臭みは無く、血も全く感じさせず、噛めば噛む程味が湧き出てくる。
なんと旨い肉であろうか。
元の世界に帰ったらこんなものももう食べることが無くなるのだろうな…。
…。
いかん。
食事だけでこの世界に留まろうと思ってしまうところだった。
ようやく見知ったような物が目の前に出された。
そう、米だ。
もっとも、元の世界でも満足に食えていたわけではないのだが。
その米には何やら緑色の粉のようなものが少しかかっていたのだが、先程食べた野菜の盛り合わせにも入っていた野菜なのだという。
その野菜を乾燥させ、粉末にしたものをかけているだけなのだそうだ。
なんという旨味だ。
もっちりとして丁度良い味わいの米に、野菜の粉末がいい味付けとなり、箸が止まらない。
旨い。
旨すぎる。
最後には酒と共にケーキというものが出された。
いわゆる果実酒なのだが、その果実の味は酒の味を全くという程感じさせない味わいとなっていた。
ケーキというものも甘くてとても旨かった。
果実酒もケーキも甘いのに、全く嫌な感じはしない。
旨い。
旨すぎる。
ということで、俺はクレイディアス達がただただ黙って見守る中、ただただがっついてしまったのである。
食事が終わる頃には、その恥ずかしさから目を伏せざるを得なかったのであった。