刀が骨を貫通する痛み
私は手を地面につかせて喉元に刀を突き立てた。
「いや…いや…!!」
魔物の少女は鋭利な刀を見て叫んだ。
「捕えてからペチャクチャペチャクチャ喋りやがって。あそこで始末しておけば
あんたの勝ちだった。触手は不意打ちや捕縛には向いてるけど近接戦闘には不向き。あぁ覚えなくていいよ、ここで殺すから。」
「お願いします、許してください…」
上級の魔物は人間に擬態する。
擬態の仕組みは解明されてないが、擬態の精度が高ければ高い程人間の特性を色濃く反映してしまうのではないかという説がある。
つまり少女に擬態してしまうと、人間を欺きやすくなるというメリットがある一方
悲哀や恐怖をより深く感じてしまうということである。
刀を喉元に突き立てられれば大人でも耐えられない。
ましてや少女の状態なら、それだけで一生のトラウマになるほどの恐怖だろう。
それを知っていながら私はこの魔物に教えたかった。
「そうやって懇願してきた人を一度でも許したことがあった?それを聞きながら拷問してきたんでしょ?あんたに会ったらできるだけ’’責めて’’殺してくれって要望があったの。」
「辞めてください、お願いします…」
「刀が骨を貫通する痛みはたまらないよ。ゴリゴリって砕ける音がするからね。」
「いや…いや…!」
「まずは背骨からいこうか、一生二度と動けなくなるけどね」
「辞めて!!!」
私は首を斬った。
絶対に死ぬように半分以上の深さまで。
少女が言葉を発することは無くなった。