第一部 25話 方針と疑問点
「じゃ、本題の資料を見ましょう」
「ああ」
雨宮さんが手を叩き、俺はそれに頷いた。
祭教授から渡された資料は、俺も受け取った時に流し見ただけだ。
「なるほどね。
拠点まで調べてるのは流石というか何というか……」
先に目を通したのは能力を持つ人物のリストだった。
氏名と年齢、能力の段階、拠点まで書かれている。
だが、大半は学生のようだ。せいぜいが二十代。若い世代が多いのは、祭教授の言う通りに人類の進化を意味しているのかも知れない。
犯罪歴のあるグループのようなものだろう。能力者の数自体が多くないのもあり、グループは全部で二つ。他は無所属のようなものらしい。
東と西で綺麗に分かれているような印象だ。
対立しているのか、上手く住み分けているのか。
「……明日にでも行きましょ。あ、私だけで様子を見ても良いけど」
「それは危ないだろ。実際に犯人と対面した俺の方が分かることも多いはずだ」
俺の言葉に雨宮さんは「まぁ、それはそうだけど」なんて言った。
きっと、明日すぐに俺が動くことを心配してくれているんだと思う。
「ここからなら東のグループが近いね。様子を見ながら覗いてみよう」
「祭教授が警察にもこのリストを渡していることは?」
雨宮さんは「んー」と目を細めた。
「……多分ないよ。これ、どう考えても非公式な情報でしょ。
もう片方の資料しか渡さないと思う。捕まえるなら大学でも良かったはず」
「そりゃそうか。
そもそも協力を依頼しに行ったんだもんな。信用するのが前提か」
犯人が起こした事件の資料にも目を通す。
……事件は三件。
見た限り、それぞれの事件に関連性はないように見えた。
無差別な犯行なのだろうか。
一件目は通り魔のようにカップルを殺している。
二件目は待ち伏せだった。家の中へと侵入して、親子四人。
三件目は押し入り。女子中学生とその祖母が殺されている。
「こちらは拠点を調べてからね。明日は日曜日だけど月曜日からは……」
「分かってる。学校には行ってもらった方が良い。俺が調べるよ」
雨宮さんが頷いた。
ひとまずはこの方針で良いだろう。
「? 三件目の事件だけ生き残りがいる……?」
「……そうね。だから犯人はこの街での犯行をやめたのかも」
そうなのだろうか。
……妙に気になった。
あともう一つ。なぜ被害者は常に複数なのだろう?
一人でいる時を狙わなかったのか……? そう言えば、奈乃香の時も俺がいた。
「さて、遅くなったけど夕飯にしましょう」
「あ、ああ、そうだな」
疑問を口にするより早く、雨宮さんが話を切り上げてしまった。
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