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第一部 16話 競走

「はっ……はっ……」


 規則正しく息を吐きながら、俺は全力で走る。

 残っていた学生が驚いて俺を見た。気にしている余裕はない。


 後ろをちらりと振り返る。何もない……と、思う。

 さっきのは何だ? 祭教授は知っているようだった。


 ……考えている余裕はなさそうだ。

 とにかく目的地へと急ぐ。とにかく北へ。


 祭教授は「追いついた」と言っていた。

 通報はされなかったと思うが……おそらく俺の居場所は知られている。

 

「おい! お前……!」


 思った通り、北門を抜けた瞬間、警官の声が響いた。

 見れば、パトカーが迫っていた。北門を封鎖しようとしたのだろう。


 ……危なかった。

 もう少し遅れたら出られなくなっていた。


 きっと、すでに他の門は封鎖されている。

 北門が一番遠かったはずだ。


 俺は真っ直ぐに門前の道路を突っ切ると、狭い路地へと飛び込んだ。

 さらに真っ直ぐ速度を上げる。後ろから警官の怒号が響いてくる。


 ただただ真っ直ぐ。全力で走る。

 昔から、俺は追いかけっこだけは得意だった。


「待て!」

「はぁ、はぁ……!」


 警官が追ってくるのが分かる。引き離せない。

 後ろを振り返る余裕もない。ただ足を動かすだけ。


 リュックが重い。捨てるか? いや、資料がある。

 視界が悪いな。眼鏡は邪魔だ。捨てちまえ。


 後ろの警官だけではなく、周囲も騒がしくなってきた。サイレンの音があちこちから聞こえていた。パトカーが回り込もうとしているんだ。


 やばい。警官がすぐ後ろに迫っている。

 俺の荷物もあるけど……単純に速い。当然だ、相手は本職だぞ。


「……あった!」


 目印にしていた『浄水場』だ。この正面にある小道……これか。

 俺はタイミングを合わせて、右の小道へと跳んだ。

 

「……!?」


 迫っていた警官が驚く。どうやら本当にギリギリだったらしい。警官の手が俺の背中にあるリュックを掠めたのが分かった。

 

 急な方向転換をした俺は壁にぶつかるが、肩を当てて衝撃を殺す。

 そのまま暗闇の中を走る。ロスは最小限に抑えたはずだ。


 後ろで警官が舌打ちする。

 すぐに無線で連絡を始めた。

 

 ……包囲網が完成しつつあった。


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