表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

第一部 12話 足跡

「ちょっと統哉君!? 突然電話しないでよぉ……」

「すみませんね、あかりさん」


 犯行現場を線路越しに横眼で眺めながら、俺は警察の情報提供者と連絡を取っていた。内通者とでも言えば良いのか。


 川端あかりさん。県警の刑事だが、祭教授に頭が上がらないらしい。

 今までも何度かやりとりしており、警察側の情報を教えてくれる。


 本人は上司に知られることを何よりも怖がっていた……もっとも、祭教授のパイプは警察の上層部にも及んでいるみたいだが。


「ひとまず現場は見ました。まだ野次馬がいますね。

 で? 何か情報は?」


「で? じゃないでしょ!?

 祭教授の紹介だからやってるけど、こんなことバレたら……」


「お願いしますよ」

「……はぁ、分かったわよ。後で情報を送る」


 彼女は俺の事情も知っていて、その点も含めて協力してくれている。

 俺が頼み込むと、渋々といった様子で折れてくれた。


 お礼を言って、通話を切る。

 踏切の横を通り過ぎると、奏が戻って来た。


「んー、見た限り怪しい人はいなかったよ?」

「……まぁ、そうか。この場合、戻ってくるメリットもなさそうだ」


 さて、どうするか……と考える。

 見た限り、よく見かけるような住宅地だ。


 部活の帰り道だったと聞いている。容疑者は学生らしい。

 その点は俺のイメージとは少し違っていた。


 スマホが小さく鳴った。

 見れば、メッセージが届いている。


 あかりさんからだ。容疑者――朝霞の目撃情報があったらしい。

 役に立ちそうなのは全部で三件。


 一つ目は朝霞の自宅付近。

 二つ目は駅前の大通り。

 三つ目は『桐山』近くのショッピングモール。


 さて、どこに向かうか……。

 俺は歩きながら考える。奏がちょろちょろと移動していて鬱陶しい。


 自宅の近くは警察も張っているはずだ。

 そちらに行く時間はない。後回しだ。


 なら、駅前の大通りに行ってみようか。市外に逃げられると厄介だ。

 それに、一度は電車で逃げようと駅の様子を見に来るかもしれない。


 その後で『桐山』方面だ。山は検問が薄くてもおかしくない。

 北部に抜けられる可能性があった。




「……遅かったか」


 俺は『桐山』の頂上で舌打ちする。そこには食事の形跡があった。

 捨てられた袋を見る限り、パンの賞味期限は今日だったらしい。


 検問の場所を知っていたのか?

 いや、あるいは……北部に向かっている?


 この先にあるのは海と未開発の地域。

 海から逃げるのは無理だろう。警察が張っている。


 住民に匿ってもらうのも難しいはず……。


「――! 狙いは祭教授か?」


 奏を殺した時、アイツは間違いなく能力を使っていた。

 祭教授を殺すつもりか、あるいは誘拐か……。


「くそッ! あのまま残っていれば……!」


 定期健診を中断したことを心の底から悔やんだ。

 俺は悪態を吐くと「奏!」と叫ぶ。


「? どうしたの?」

 祠を眺めていた奏が振り返る。


「祭教授の研究室へ先行しろ。

 朝霞春を見つけたら、殺さずに捕まえろ」


「うん、分かった」


 奏は素直に頷いて、白桐大学へと走り出した。

 高速で山を駆け下りながら、何度も振り返って俺に手を振る。

 

 その緊張感のなさに呆れて脱力してしまう。

 そして――その人間離れした速さを悲しく思った。


読んで頂きありがとうございます!

ブックマーク、評価など頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング


ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ