第一部 1話 ダークヒーロー
ヒーローもの(シリーズ)になります。
死ぬ気で書きます。よろしければ読んでみて下さい。
俺はスマホに映ったネットニュースに目を通す。
そこには興味を引きそうな単語が太字で並べられていた。
――大災害とも関係?
――トラウマと超能力の関係について。
最近、何かと話題になる超能力とトラウマについての記事だった。どうやら深いトラウマがきっかけで能力者になる場合が圧倒的に多いらしい。
「トラウマと超能力の関係だってさ。
……どう思う、奏?」
高校の帰り道。
夕暮れの狭い路地で、俺は妹を横目に見た。
コイツがこの質問にどう答えるか。
俺は少しだけ気になった。
両肩の上で簡単にまとめた髪。
同世代と比べて低い背丈。大きな瞳と比較的整った顔立ち。
「さあ? トラウマ?
私はメンタル強いから関係なさそうだけどねぇ」
セーラー服を着た奏はそう嘯きながら、両手を広げてふらふらと歩いた。
足元の小石をずっと蹴とばしている。遊んでいるつもりのようだ。
中学二年生になったはずの妹は「あ、超能力はほしいかも」なんて笑う。
いつまでも幼い姿に俺は溜息を吐いた。
俺の想像通りの回答だった。
恐らくいつまでも変わらないのだろう。
視線をスマホに戻し、記事を読み進める。
フラッシュバックが引き起こす幻覚作用が関係があると思われる、と最後は締め括られていた。
「お兄ちゃんは?」
「俺? 俺はいらないかな」
奏の言葉に即答する。
すぐに奏は口を尖らせた。
「なんでよー。良いじゃん、超能力だよ?」
「バカ。トラウマなんてない方が良いだろ」
俺が言うと、奏は「むぅ」と唸った。
さらに一際大きく小石を蹴る。
「でもさ、トラウマが原因で超能力を手に入れるならさ。
きっと――誰かのために使われるね!」
そう言って奏は隣を歩く俺を下から覗き込んだ。
悪戯っぽく笑って見せる。
「知らねーよ、バーカ」
「へへへ……」
俺は思わず顔を背ける。
奏は楽しそうに笑っていた。
「おい、大丈夫か?」
「?」
背後からの声に振り返る。
見れば、小学校からの同級生が立っていた。
「何だ、葛城か。どうした?」
ちょうど下校時間だ。
ゆっくりと歩いているから追いつかれたのだろう。
「いや、一人で喋ってるように見えたから」
「…………」
俺は隣を盗み見る。そこには奏が見えた。
あの日のままに微笑んでいる。
――俺のトラウマだ。
心に刻まれた傷。消えてくれない、現実を伴った幻覚。
……小石だけがコロコロと転がっていた。
「独り言だよ」
「そうか。だけどお前……妹が殺されてから変だぞ?」
あの日から俺にだけ奏が見える。触ることも話すこともできる。
俺が思う通りに動く超能力ということになるのだろう。
「辛いのは分かるけど、何かあれば相談しろよ?」
「……ああ、分かった。ありがとう」
俺は葛城に微笑んだ。
隣では不思議そうに奏が首を傾げていた。
――俺はこの能力を誰かのために使わなくてはならない。
――仕方ないだろ。奏自身がそう言うんだ。
――もう一つ。奏を殺した奴を見つけ出す。
――必ずこの手で殺さなくてはならない。
――手がかりは『赤と青の小刀』だけ。
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