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第49話 俺から離れないで

第49話 俺から離れないで


 猫って、あの猫?


「学校の中庭で家に来る? って女の子口説いてたの……」

「猫です」


 お兄さんに羽交い締めされながら、文都がスマホの画面を俺に見せる。首輪のない猫が、そこに映っていた。


「迷い猫に話しかけていただけです」


 迷い猫。


「ハーレム作って、お気に入りの子の写真見せて、楽しく話してた……」

「猫です」


 文都が俺に見せるスマホの画面に、別の猫が映し出される。


「猫カフェのネコちゃんについて話していただけです」


 猫カフェ。


「疑うならご確認下さい!」


 渡されたスマホの画面をスクロールする。


 俺、俺、猫。俺、猫、俺。


「甲斐くんが保存してる写真、ほぼ先輩か猫しかないもんね」


 理人の指摘通り、俺の写っている写真と猫の写真で、そのほとんどが構成されている。


 え。

 じゃあ俺、猫に嫉妬してたの!?


「俺は先輩の事が好きなのに、先輩以外の人を口説く訳ないじゃないですか!」


 恥ずかしさで、顔が熱湯をかぶったみたいに熱い。


「もしかして連絡取れなくなったのは、それが原因ですか?」

「ウッ……」


 居た堪れない!


「それでご機嫌を悪くして、一人で天国に行こうと? そんな誤解で俺を置いて行かないでください」

「え?」


 俺が、お前を置いてモルディブに行こうととしてたって?

 いや、行かないだろ。いくらなんでも。


「心配しました。すごく……。胸が張り裂けそうでした」

「文都……」


 そんなにモルディブに憧れがあったのか。

 早く言ってくれればいいのに。それなら、俺が連れて行ってや……。


「それに、その可愛すぎる格好、地上に留まらず、天国の人まで虜にしてどうするつもりなんですか? 俺は、俺の先輩を邪な目で見てくる奴をどうしたらいいんですか? 俺の為に着てくれたのはすごく嬉しいですけど、そういうのは、俺だけに見せてください」

「……」


 へ!?


「背中が全く隠れてなくて、先輩の透き通るような白い肌が晒されてるし……。俺の上着で何とか守ったけど、焦りました。ああ、でも、それだけじゃ先輩の可愛さを全く隠せない! この場に先輩を狙っているオオカミが三匹もいるのに!」

「甲斐く〜ん? 先輩はみんなの共有財産だよ?」

「文都、俺らからしたらお前がオオカミだからな?」

「亜蘭くんの背中が丸見えに……エロい……」


 音春? 鼻血出てるぞ?


「でもご近所さんとも仲良さそうだし」

「ご近所さん?」


 それに中学の時、女の子とっかえひっかえしてたって……。


 お兄さんの拘束から逃れた文都が、俺の手を取る。

 大切なものを扱うみたいに、両手で包まれた右手が、祈るように額に寄せられた。


「俺は、先輩の理想の恋人になりたい。それさえ叶えば、他には何もいりません。情け無いくらい、どうしようもなく先輩の事が好きなんです。俺のことで、不安にさせたくない。そんなことで、先輩を失いたくないんです」


 まるで、俺と二度と会えなくなる事を心配しているみたいに、文都は言った。


「お願い、俺から離れないで」

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