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第22話 亜蘭くんの彼氏

 家に連行したヤンキー吸血鬼が、リビングのソファに足を広げて座っている。


 平静装ってるけど、カチコチに固まっているのバレバレ……。緊張してるのか? 何で?


「大丈夫か? 鼻血……」

「……うす」


 さっきから、全く俺と目合わせないな。

 血は止まったみたいだけど、吸血鬼の割に治り遅いし……。

 最弱か? 最弱の吸血鬼か? 可哀想に……。弱い奴にはやさしくしてやらないとな。


「飲む?」


 リラックス効果のある、カモミールティーが入ったカップを差し出す。

 ほっと息を吐きたくなるような、穏やかな香りが広がった。


 こいつには、聞きたい事いっぱいあるし。


「あ、亜蘭くんが……俺に……」


 だから何で、俺の名前を知っている?


「あざっすっっ!! いただきまっす!!」


 ヤンキー吸血鬼が、カモミールティーを豪快にあおる。


 声でか。


「ウッ……」


 口を押さえて、苦い顔をするヤンキー吸血鬼。


「口に合わなかった?」

「くっ……草みたいな味がして、めちゃめちゃウマイっす……」


 気に入らないならそう言えよ。

 そこで吐くなよ?


 ヤンキー吸血鬼の隣に座り、両手でカモミールティーの入ったカップを包み込む。


 さて、何から聞こう。

 やっぱり写真の事?

 俺と文都しか持ってない写真を、こいつが持ってるのは、どう考えてもおかし……。


「ち、近っ……」

「え?」


 俺の隣で、ヤンキー吸血鬼が、激しく全身を震わせている。


「あ、亜蘭くんがっ、俺の隣にっ……! め、めちゃくちゃいい匂いする……!」

「……」


 問い詰めたら、答えてる間に舌噛んで死にそうだな……。


「落ち着けって。何をそんなに緊張して……ハッ……」


 俺が、怖いんだな?

 俺が、強そうで怖いんだな?

 

「おい」

「ひゃい!」


 噛んだ……。


「お前、俺の事どう思ってる?」

「え……?」


 指を組んで、ソワソワしながら返事を待つ。


 吸血鬼は、畏れ敬われるのが好き。


「いいのか? 亜蘭くんの一ファンの俺が、直接亜蘭くんに思いを伝えるなんて……。そんな事、あっていいのか!?」

「お前、さっきから思ってる事、全部口から出てるからな?」


 俺のファン?


「あ、亜蘭くんは……」

「うんうん」


 ヤンキー吸血鬼が、膝の上で拳をギュッと握り、難しい顔で話し出す。


「明鏡止水のごとく澄んだ心で、不撓不屈の精神を持ち、純情可憐で天下無双の……」

「……」


 よく分からないけど、強そう。

 たまらん。


「辛い境遇なのは知ってたから、それでも普通にしている姿を見て、根性やべーなと思って……」


 頬を薄っすらと赤く染めた、ヤンキー吸血鬼の声が、段々と小さくなっていく。


「亜蘭くんは……俺の憧れ」


 吐き出された吐息のような呟きに、一瞬、告白を受けたような気持ちになった。


 普通か……。

 俺は、普通に見せてただけだけど。

 家族も気付かなかった俺の秘密に、文都だけが気付いてくれた。

 そのおかげで、ずっと一人で抱えていた荷物を下ろせたような気がしてる。

 だから、今はもっと普通にできてる。


「俺は、そんな立派じゃないよ。普通の恋愛もできないし」

「え?」

「恋人から、自重するように言われちゃって……」


 文都の為に、俺は普通の恋愛をしたい。

 してあげたい。


「あいつがそう言ったんすか? マジ身の程知らずっすね。前世から出直した方が良くないっすか?」

「お前、殺すぞ?」


 あいつ? 知ったような口でよくも俺の文都に。お前が前世から出直せ。


 ヤンキー吸血鬼の首に、腕をかけて締める。


「そういや、お前! 俺と文都のプライベート写真を何で持ってる!? どこで手に入れたんだ! 言え!」

「あ、亜蘭くんの体温!? く、苦し……い、いや! むしろご褒美!!」


 ヤバい奴を連れて帰ってしまった。


「おい。言わないと、このまま息の根を止めるぞ?」

「あ、亜蘭くんの彼氏から貰ったんです!」

「……」


 俺の……彼氏!?


 急激に顔が熱くなり、音春から腕を離す。


 彼氏って言った!? 今!


「亜蘭くんの彼氏とは、ちょっと……訳あって、何度か顔合わせてて……。俺が亜蘭くんのファンだって言ったらくれました」

「へ、へぇー……」


 文都は俺の彼氏、文都は俺の彼氏、文都は……。


「亜蘭くんの彼氏、亜蘭くんの事、大好きっすよね」

「……」


 だっ!?


「く、詳しく」

「会う度、自慢してくるんで」

「……」


 会う度、自慢。


「亜蘭くんの良さを話したら、永遠に語ってられるって言ってましたけど」

「……」


 し、死ぬ。

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