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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
二章
42/42

第41話 地下水路

「シィン様!大変です!レインたちが捕まったんです!」


「捕まったんだ?」


「はい、家族を監獄から救い出そうとして、逆に捕まってしまったようです!」


 家族を監獄から救い出そうとして、逆に捕まってしまった?


 ドアの外からクトナの慌てた声が聞こえて、俺は少し驚いた。


 紫電流を創設してから六日、俺とシメリアの訓練によって皆は急速に成長し、親衛隊員を倒すほどの実力を身に付けた。


 紫電流の習得者はすでに百名を超え、一人一人が数十名の親衛隊員を倒すほどの実力を持っていた。


 だからこそ安心して、シメリアやマーリンと一緒にハメットのところまで剣を取りに来たのだ……捕まるなんて、まさかこんなことが起こるとは。


「彼らはいつ捕まった?」


「昨日です。すみません、さっきこのことを知りました……」


 レインたちを止めるのが間に合わなかった自分を責めているのか、クトナの声は沈んでいた。


「まあ、それはお前のせいじゃないけど」


 家族が監獄にいるのが好きな人はいないし、人を救う能力がある以上、早く家族を救いたいと思うのは自然なことだ。今回レインを止めたとしても、遅かれ早かれこれは起きていただろう。


 でもみんな親衛隊にも勝てるほどの実力を持っているし、簡単には捕まらないはず、なぜ捕まったのか?


 彼らよりも強い人がいるのか、それとも罠に掛かったのか……と、そう考えながらドアを開けると、すぐそばから声が聞こえた。


「さすがシィン様、何を着ても似合います!」


 俺の格好を見てマーリンは満足げに頷く。


「そうなのか」


 そう言って、俺は今着ている服を見下ろした。紫と黒を基調とした衣装……これは服屋の店員さんとマーリンが選んでくれたオーダーメイドの服。


 剣が出来上がるのを待っている間に、マーリンが服の様子を見たいというから、部屋を借りて着替えてきた。


 服が似合うと言ってくれたが、服のセンスとか、実はよくわからないし、やはりちょっと心配だった。


 念のため、皆の意見を聞いてみようか。


「シメリアはどう思う?」


「よく似合います」


「よく似合?……じゃあ、クトナはどう思う?」


「きれいだと思います……」


 シメリアも似合うとしか言わないからクトナの意見を聞こうとしたが、振り向くとクトナはすぐに目をそらした。


 その反応……もしかして、本当にヤバい?


 でももうお金がかかってしまったし、マーリンも服に防御魔法がたくさんついていると言ってたから防御面は心配ない……うん、着続けるしかない。


「まあ、服の話は置いといて、レインたちは東側の監獄にいるだろう」


「うん」


 クトナは一枚の地図を開き、傍らのテーブルに置いた。


「ヴィットにはこの監獄しかないです。観察したところ、監獄の警備は厳重ではなかったようですが……」


「捕まったな」


 衛兵を倒せるほどの力を持っているのに捕まった。どうやら監獄を守る者にはある程度の力があるようだ。


「そうです、再び俺たちをそう簡単には入れてくれないと思います。必ず罠を仕掛けてくれます」


「罠か、確かに気をつけないとな」


 フレリスと亜人が密かに協力関係にあることを考えると、亜人も中で監獄を守っているのかもしれない。


 正面突破もできるが、罠に気をつけながら亜人と戦うなんてきっと面倒なことになるし、できれば戦闘は避けたほうがいい。


「どう?……回避できるか」


「できると思います」


 そう尋ねると、シメリアは静かにうなずいた。


「静かに人を救い出すのは難しいかもしれませんね」


 マーリンも微笑んで応えた。


「ーーあの、シィン様、レインたち助けに行くつもりですか?」


 俺たちのやり取りを見ていたクトナがおずおずと口を開いた。


「そうよ、何か問題が?」


「いや……そ、そんなことをしたら、本当にレブスを敵に回しますよ!」


「親衛隊を殴り倒すのと違って、人を救おうとするのは重罪です。捕まったら死刑になる可能性もあります」


 クトナは心配そうな顔をして言った。


「シィン様、そんなことしなくていいです。俺たちのために危険を冒す必要はないです!それにおそらくレインたちはもう……」


 言いかけて、クトナは言葉を止めた。言葉を続けなかったが、俺はクトナの言いたいことを理解した。


 おそらく、レインたちは殺されてしまったのだ。


 確かに、これまでのレブスの言動からすれば、ありえないことではない。それを考えると、人を救うのは割に合わないことだ。


 確かにクトナの言うように、そもそも俺たちはこの街の人間ではないから、彼らのためにレブスを敵に回す必要はないがーー


「とはいえ、彼らを救うつもりだ」


「それは……なぜですか?」


「まだ生きている可能性があるからだろう。試しもしないであきらめるのはよくないぞ。知り合って間もないけど、彼ら一応俺の弟子なんだから、このまま見殺しなんて、俺にはできない」


 それに、レブスに逆らうつもりはなくても、相手が俺たちを敵と見ないとは限らない……クトナが知らなかったのは、フレリスはすでに殺し屋を送り込み始めていた。


「でも……」


「まあ、角度を変えて考えてみよう」


 依然として躊躇する様子のクトナに俺は言葉を続ける。


「どうせレブスはみんなを解放することはないだろう。結局監獄に行ってみんなを助けなきゃ。そうしなければならないのなら、いっそのこと今のうちに全員を救出したほうがいいんじゃないか」


「今全員を救出したほうがいいですか……」


「ええ、お前も同じ、お前の兄貴を救いたかったんだろ?予定が前倒しになっただけだと考えよう」


「……うん、分かりました」


 俺たちの決意が変わらないことを察したのだろう。しばらく沈黙があり、クトナが頭を下げて礼を言った。


「ーー協力してくれて本当にありがとうございます 」


「ありがとうなんて救出してからにしよう。で、どうやって助け出すの?」


 一度攻撃したことがあるので、監獄側は警戒しているに違いない。このような状況で強襲するのは賢い選択ではない。


「忍び込んだらどうですか?私の魔法で、相手に気づかれないようにできるはずです」


「忍び込むって、それはできるかも。でもどこから忍び込めばいい?」


 早くから監獄に潜入しようとしていたのだろう。クトナから持ってきた地図には、監獄の防御が弱い場所がそれぞれ書かれていた。


 しかし、相手が警戒を強めている今、おそらくこの地図に書かれている場所は役に立たない。


 地図を見る限り、監獄に潜入できる余地はない。


「ん、どこから潜入すればいいな……」


「おい、剣ができましたぞ!」


 困り果てていると、ハマットが剣を持ってやってきた。


「ご苦労様、え?」


 この剣は鍛え直された剣はずだが、外見的には先の剣と変わらない。いや、全く同じと言っても過言ではない?


「ハハ、見た目は前と同じが、容易に魔力を込めますよ」


 こんな剣を作るのは久しぶりな、と言ってハマットは剣を渡して来た。


 俺はハマットから長剣を受け取った。試しに剣に魔力を込めてみると、銀色の剣身が黒紫色の輝きを放つ。剣身の色が変わったことに加えて、魔力の流れが速くなったことにも気づいた。


 うーん、なんというか、剣の材質が金から銀に変わったように、電気伝導率がよくなった。


 材質は変わっていないはずのに……たぶん異世界にも異世界独自の鍛造技術があるのだろう。


「お、魔力の上昇を感じた。ありがとうな!」


「はは、ありがとうを言う必要はない。お客さんなんだから。近いうちに使ってみて、気に入らないところがあれば、俺のところに持っていって調整してもらえばいいんだ。それから――ん、なんで皆ここに集まっています?しかも困ったような顔?」


 ハマットは長い間このような剣を鍛えていないようで、上機嫌で多くの話をしてから廊下に他の人が立っていることに気づいた。


「あ、さっきどこから監獄に忍び込むか話し合っていた、でも忍び込む場所がないのでちょっと困るな」


「監獄に忍び込む?おいおい、こんな危険なことを俺に話して大丈夫ですか?」


「大丈夫だ。あなたが城主たちに通報することはないと思うから」


「俺が通報することはないと思うからか」


 これまでの交流のなかで、ハマットはレブスたちのことがあまり好きではないようだと気づいた。だから通報される心配はないだろうと思った。


 それに通報するつもりなら、とっくにそうしているはずだ。外は指名手配状が多いので、指名手配状から俺たちの身元を割り出すのは容易いことだ。


「はは、確かに、奴らのことがあまり好きではありません……


 そう言うと、ハマットは目を見開き、苦笑いを浮かべた。


「あなたたちが監獄に侵入したのは仲間を救出しようとしたからだろう。じゃあ、ついでに手伝ってあげよう」


「え、いいのか、それじゃーー」


「ーーどうせもう庇ってやったんだから、それ以上は助けてやってもいいよ」


 ハマットは笑いながら、テーブルにやって来て地図を覗き込んだ。


「む、確かに警備は厳重……だが、侵入できるところはあるんだ」


「侵入できるところはあるんですか?どこにでも見張りはいますし、そんなところがあれば見落とされないでしょう」


 クトナは迷ったような顔をした。


 牢獄には城主に反対する罪人が閉じ込められているので、レブスたちは人を潜入させる場所を見落とさないはずだ。


「あの城主様は、侵入可能な場所はすべて確認しているが、見逃してしまう場所がもう一つあった」


「その場所はどこですか?」


 クトナが尋ねると、ハマットは神妙な顔で地面を指差した。


「地下だよ」


 ◇


 ハマットによると、ヴィットの街には建設当初、地下水路があったそうだ。


 ここはかつて、魔王軍と戦う最前線だったから、この防衛線を固めるために、帝国はヴィットに地下水路を作るのに苦労した。しかし魔王が倒され、この街を作った人たちが相次いで亡くなって後、地下水路のことは忘れられてしまうが、


「もう遠い昔のことだ。みんな忘れてたけど、俺はよく覚えてるよ」


 ハマットは笑いながらそう言った。


 そんなことがあったか……てか、城主も知らないことを知っているなんて、このドワーフいったい何歳だよ?


 とにかくおかげで、潜入作戦の方針はすぐに決まった。


 潜入作戦の実行者、待ち伏せの可能性を考慮し、俺と一緒に同行するのはクトナと護衛を担当したシメリアだけ。


 そして、相手がレイトたちを捕まえられる以上、他の人にも危険が及ぶかもしれない。そのため俺たちが監獄に潜入した間、マーリンが借家の防衛を担当する。


 準備ができた後、俺たちはハマットに案内され、民家の裏手にある廃井戸から地下水路に入った。


「井戸の下に地下水路があるとは……」


 呟きながら、魔法で作られた光球が俺の手から漂い、地下水路を照らす。


「意外と広いんだな」


 地下水路とは言っても、見た目は普通の洞窟と大差ない。何百年も管理されていない地下水路だから、水路の床や壁は、ところどころ水による浸食の痕がある。


「じゃあ、クトナ、案内を頼むぞ」


「はい、こっちへ行けば、すぐに監獄の真下にたどり着けるはずです。そのときには、そこに上がる階段があるはず……」


 クトナは地図を手に、前を向いて歩き出した。


 ヴィットの地下水路は迷うほど複雑ではなく、まっすぐに行けばすぐに監獄の下に到着するだろう、とハマットは言っている。


「うーん、何か腐った匂いがする……」


 歩いていくと、前から腐臭が漂ってきた。進むにつれて腐敗臭が強くなっていく。


「肉が腐るような臭いがするような気がしますが……」


「腐肉か?生き物が住んでいるのか……」


 久しく管理されていない地下水路には、生き物が集まりやすいと聞く。下水道にワニがいるって、という話は前世でも聞いたことがあるな。


「地下水路に棲んでいる生き物かも、気をつけてよ」


  ワニなんていないと思うけど、他の生き物がいないとは言い切れない、気をつけたほうがいい。


  念のため、光球を先行させ、先を照らしながら慎重に歩みを進めるが、しばらく進んだところで、光球はものにぶつかって止まった。


「壁?」


 よく見ると、地下水路の先に壁が立ちはだかっている。


「ここに壁があるんですか?地図には書いてないですし……」


 クトナは不思議そうに壁のそばまで行ってみた。


「もしかして、崩壊したのか?」


 長年、誰も整備していないから、地下水路が崩壊する可能性もないわけではない。


「そうなったら困るな。すぐ前に監獄があるのに、よりによってここで遮られている……」


 俺もそのあとに続いて、前方の壁に触れた。


「ん?この感触は?」


 壁は濡れているだけでなく、やわらかくて、まるで生き物のようにーー


 ガシャン。後ろで何かが割れる音がした。振り向くと、クトナが何かを踏み潰したようだ。


「すみません、何か踏んで……」


 クトナが後ずさると、踏まれたものがむき出しになった。踏まれたものは白い球体(あれ)のように見えた。


「……磁器のようですね」


 クトナは笑いながら白い球体を持ち上げた。


「え、それは磁器じゃないと思うが……」


 たぶん暗闇でよく見えなかったから、クトナにはあれが何かわからなかっただろう。だが目は良いから、俺はすぐにあれが何かを理解した。


 あれは人間の――


「ドーー!」


 突然、地響きがした。


「わ、地震ーー!?」


「いや、これはーー!」


 さっそく目の前の壁に『情報探知』を使ってみた。すぐ目の前に情報が現れた。


 強酸ナメクジ


 称号:人間腐食者


 スキル


 強酸噴射


 ……なんかまずいものを探知した。


「……あの、一つ聞きたいけど、もしこの壁がナメクジだったらどうしたらいい?」


「壁がナメクジですか?」


 クトナは目を見開き、そして苦笑した。


「そんな大きなナメクジがいたら、逃げるしかないでしょうーー」


「ドーー!」


 また地響きがあったが、さっきと違って、壁がはっきりと動いているのがわかる。


「壁が……動いています?」


「――ッ」


 音を立てると同時に、壁から赤い一対の触角が伸びてきた。薄暗い中にもかかわらず、その触角がじっとりとこちらを見つめているような気がする。


「シィン様、あれはーー」


「ええ、見ての通り、魔物だ」


「ま、魔物……?」


 クトナはぽかんと口を開けたまま、目の前の動く壁を見て固まっていた。


「――――――ッ!」


 しばらく沈黙した後、壁ーーナメクジの触角がこちらを見て緑色の液体を噴き出した。


「クトナ!」


「うわっ!?」


 俺はクトナを後ろに引っ張って、すぐにバリアを張ったが、


「腐蝕している?」


 ジュワッと音を立ててバリアから白煙が上がっている。ナメクジの液体はバリアも溶かしてしまうらしい。


 先ほどの情報を見る限り、この緑色の液体は強酸だろう。


「どうりで地下水路が腐るわけだね……こいつがいたからな」


 ふっと息を吐き、俺は目の前のナメクジを見つめた。


 スキルを持った魔物を見るのは初めてだ。スキルのある魔物のランクはB級以上のはずだ、ひょっとしてこいつはA級魔物なのでは?


「まったく、強酸を吐く生き物がいるなんて、こんなやつが住んでるとは思わなかった」


 いつもならこんな相手とは戦うなんて、絶対考えてないだろう。 戦うにしても、万全の準備が必要だ。


 でも今は文句を言っている余裕もない この先に監獄があるし、今逃げたらレインたちを救えないかもしれないから倒すしかないんだ。


「シメリア、右から攻撃する!」


 腰の剣を抜き、俺はシメリアに叫んだ。


 体が大きいとはいえ、ナメクジはこの洞窟の中では小回りが利かないから。一人がナメクジの気を引ければ、もう一人が他側に回って倒すことができるはずだ。


「うん!」


 隣でシメリアがうなずき、ナメクジが体液を噴射するのを止めた瞬間に右側へ走った。駆け寄ると同時に、銀色の剣が素早くナメクジの体にいくつもの傷をつけた。


 俺も剣に魔力を込めて、ナメクジに突き立てる。


「――――――ッ!」


 ナメクジは怒りの声を上げ、ねばねばした体から黒い血が流れ出した。


「できる!腐食しない!」


 剣は腐食するかと思うが、ナメクジは身体の粘液は腐食性を持っていないようだ。


「このまま倒せるかも――えっ!?」


 また唸り声をあげる。赤い触角が光り、ナメクジの胸の中央に大きな口を開けた。そしてその口に、緑色の光が光が浮かぶ。


「―――――ッ!!!」


 それは、どう見ても大技を出す兆候――


「逃げろ!」


 なんといっても相手はスキルを持った魔物から、その攻撃を防ごうとするのは得策ではないと思い、俺はクトナを引っ張って横の通路に逃げた。シメリアも反対側の通路に走る。


「――――――――ッ!!!」


 通路に逃げ込んだ瞬間、ナメクジの開いた大きな口から強酸が噴き出した。


 緑色の液体は高圧水鉄砲のように前に突き進み、触れるものすべてを腐食していく。


「こわ……さっきバリアで防御していたら、今頃はもう骨も残っていなかっただろう」


「――――――ッ!!」


 水路が激しく揺れだした。強酸を噴射しているにもかかわらず、ナメクジはその場に止まらず、ナメクジとは思えない速さでこちらに向かってきた。


「どうやら俺を先に倒すつもりのようだな、ちょうどいい。シメリア、こいつを後ろから攻撃する!」


 俺はクトナを引っ張りながら叫んだ。後退すると同時に、いくつものバリアを後方に構築した。


「――!!!」


 返事は聞こえないが、シメリアは後ろからナメクジに襲いかかってくると思う。


 ジュワッ。最後の方で強酸に当たったバリアはすぐに溶けてしまったが、距離を隔てているため、強酸はバリアをすべて溶かすことができず、走りながら新しいバリアを構築する余裕があった。


 こうしてナメクジの攻撃を避け、俺たちは水路の中を数分走った。


「ッ……」


 シメリアは成功したようだ。さっきまで活発だったナメクジが動きを止め、強酸を噴射するのをやめた。


「倒せました」


 その予想通り、シメリアはナメクジの後ろから出てきた。


「ああ、お疲れ様、怪我はないか」


「ありません」


「ふう、びっくりしました……」


 後ろからクトナがやってきて、息を切らしながら巨大なナメクジを見ている。


「なぜ地下水路に魔物がいる……どこから入ってきたんですか?」


「普通にこんなところにわざわざ魔物が入ってくるのか?」


「いや普通はそんなことないと思いますけど……食べ物など、魔物を引き付けるものがない限り…」


「でもここには食べ物はないだろう」


「確かに、なぜ魔物を…」


 クトナはナメクジを見ながら考え込んでいた。


「うーん、魔物の生態はよくわからないが、食べ物を食べないと、どんな生き物も元気をなくしてしまうだろうが、こいつは活発だな……」


 簡単に倒されたが、見せた実力からして、こいつは確かにはA級魔物と呼ばれるだけの力を持っている。


 火の無い所に煙は立たないといったところか。噂の魔物とはナメクジのことかもしれない。ではこんなところで、A級魔物である巨大なナメクジを満腹にさせるものはあるのだろうか――


 そんなことは、ナメクジの称号と、さっき見た白い球体を考えれば、なぜナメクジがこんなところで生きていられるのか、だいたいわかる。


「そういえば、さっきは監獄の入り口にいましたが……まさか、食べ物は……」


 クトナもさっき白い球体の連想から何かを思いついたのだろう。


「……早く監獄の方へ行こう」


「うん……」


 クトナは蒼白な顔で頷き、俺たちを連れて監獄に向かって続けた。

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