第3話 森の魔物
前方のイバラを取り除いてから、やっと外の景色を見ることができた。
前にはもう雑然としたイバラはなく、代わりに人よりも高い枯れたススキがある。
いや、ここは異世界だな。これらの植物はススキのように見えるけど、見た目が似ているだけの植物かもしれない。油断はできないね。
「終わりが見えない……この中には誰もいないはずだろう。っていうかここは異世界だから、この中に幽霊がいるかもしれないね」
ススキの向こうの景色を見ようとつま爪立ちしてみたが、草の果ては見えなかった。
「……すまね」
枯れたすすきにすまと言ってから、俺は剣を振り回して斬撃を使った。
ススキは斬撃によって断ち切られ、目の前に平坦な道が現れた。
「そうすれば歩きやすくなるね」
ちなみに、俺は模倣のスキルを使っていない。このようにするのは俺が自分でこれらの剣技を練習したいからで、それによって本当にこれらの剣技を理解して、スキルに頼らずに剣技を使うことができるようにしたいからだ。
ずっと人の真似をして戦うことは不可能だから。もし戦闘中に意外にスキルを使えなかったら、戦闘ができないために人に倒されるかもしれない……そんなことはできるだけ避けたい。
「っていうか本当に似てるよな」
遠くにある灰色の城を振り返る。
灰色の城は元の世界のグランニタ監獄とそっくりだ。
この城は崖のふちにあって、俺が歩いている方向以外は、その城の他のいくつかの方向は切り立った崖だった。
城の設計者はわざわざ城をここに設計したのだろう。これなら1箇所守れば防げる敵の攻撃。なかなか精巧に設計された城だ。
森に入ってから本来の枯れたススキがなくなり、代わりに背の低い野草がたくさん生えていた。
この森には1000年以上誰も来ていないようなから、この森で歩くのは少し難しい。
でも幸いにも管理者がくれた剣があって、煩わしい障害物に遭遇すれば、俺も簡単に障害物を一刀両断することができる!
……道理から言えばどんなものでもこの長剣で真っ二つに切られる。この森の中を急速に進むことができるはずだ。でも……
「ここはどこだ……」
この森には目立った道標はない。どこに行っても森の景色はあまり違わない。俺はそのまま30分かけてこの森の中を歩いていたが、最終的には前に歩いた場所に戻ったようだった。
「まさか道に迷った……」
管理者の情報が期限切れになって久しいから、管理者にどこで森を出ることができるか聞いていない。
以前の世界では道に迷うような人間ではないから、この世界でも迷子にならないと思っていた。どうやら自分を過大評価していたようだ。
グランニタ城に帰りたいと少し後悔していたが、後ろの城の姿はとっくに消えていて、今引き返してもたぶん帰れないだろう。
「これが迷子って感じか……まあいい……今更後悔しても仕方がない」
後悔しても道に迷った事実は変わらない。ここで後悔するよりも、早く何とかして外に出ましょう!
そう思いながら、俺はそっと前方の木の幹に飛び乗った。最初は少し慌てたけど、すぐに大木に立っていた。
「よし。できる!」
本来の世界の体であれば、ここまで高く跳ぶことは絶対にあり得ない。でも今のこの体がとても軽いから、危険にさらされても他の木に飛び乗って避難することができる。
そうすれば、たとえ恐ろしい怪物に遭遇したとしても、相手との戦いを避けることができるはずだ。でも今俺は木に飛び乗ったのは敵を避けるためではなく、木から自分がいる方角を認識しようとしたからだ。
再び上にジャンプし、やがて大木のてっぺんに到着した。この大木はこの近くで一番大きな木のようだ。だから近くの景色を簡単に見ることができる。
城が見えなくなったが、このあたりには目立った町もなさそう……
この森の範囲はとても広い。どの方向から見ても森の果ては見えない。
「うーん、目的もなく行動したら、森の外に出るのに時間がかかるだろう」
こういう時は勝手に進んではいけない。まっすぐ進むはずだ。
ずっと一方向に進んでいれば、きっと森を離れる方法があるだろうーー
「あ、あの青いのは川か」
右手に青い道のようなものが見えた。
それは川だろう。しばらく水を飲んでいなかったから、ちょうどその川で水分補給ができるね。
「うん、あっちへ行こう」
川の方向に移動することにした後、俺は下にジャンプして、正確に隣の少し低い木の幹にジャンプした。
次に他の木の幹に向かって飛び越えた。俺の体は柔らかいから、このような動作をするのは全く問題ない。
どんな種族に転生したのかはまだ分からないけど、この種族はきっとこういう行動に長けていると確信してる。
梢間を移動しても速度が遅くならない。この移動方法は俺にとって平地を走るように楽だ。
俺は以前映画で見た森に住む先住民の真似をして、森を素早く移動していた。
梢間でジャンプと同時に、時々日光が体に降り注ぐのを見ることができる。
このように移動すれば、きっと日が沈む前に森を離れることができるだろ!
こうして、俺はこのように急速に移動して、すぐにさっき見た川のそばに着いた。
「水だ~」
俺は長剣をそばに置いて川に手を伸ばし、冷たい川の水を手のひらで持ち上げて飲んだ。
長い間水を飲んでいなかったせいか、水の口に入った水を飲むのは意外に甘い。
あ、よく考えてみると水源が汚染されているかどうか確認したことがないが、ここの水は問題ないだろう……
川の方を見ると、川の水は太陽の光に輝いていて、川底の石が見えるほどきれいになっている。
「こんな水なら大丈夫だろう」
でも本当に川の水に問題があれば、俺も何の対処法もないね。そんなことは考えないことにした。
「これで水不足で死ぬ心配はなくなるね~」
喉の渇きを癒すために、また何度も水を飲んだ。冷たい水が体の中に入ってくるのを感じながら、川全体を見上げた。
この川はこの禁忌の森と同じように果てが見えないほど長い。もしこの世界が元の世界と同じなら、この川に沿って歩いて村を見つけることができるはずだ。
川沿いを歩けば、道に迷うことも避けられるはずだ。
そこで俺は川に沿って進むつもりだ。
「誰だ!?」
行動を起こそうとした時、後ろの草むらから騒ぎの声が聞こえてきた。
俺は剣を上げて、遠くの草むらを警戒して見ている。後に真っ暗な姿が草むらから出てきた。草むらから出てきたやつは人間ではなく、巨大なトカゲだ。
ワニか!?
相手の体型が大型犬並みの大きさを見てワニかと思った。しかし、こいつの特徴をよく見た後、こいつがトカゲであることを確認した。
草むらから出てきた黒いトカゲの頭には角が生えていて、体の真っ黒なうろこが日に照らされて光っていた。
これが異世界の生き物なのか……こんなに大きいとは思わなかった。
「!」
トカゲはこちらをふりかえって、紫色の舌を出した。
トカゲの言葉はわからないが、立ち去れと言っているのだと思う。
「戦いたくないのか……いいよ、俺も戦いたくない……」
このトカゲに毒液があるかどうかは知らないが、舌が紫色なのを見て、俺は思い切って戦いを放棄した。
俺は黙って立ち上がって、目はずっとトカゲを見つめていた。
もし目をそらしたら、きっと突進してくるだろう。そんな予感がする。
だから俺は目をそらさず、隣の森に向かった。
これで戦闘を回避できる!しかし、
前足が森に足を踏み入れたところで、真っ暗なトカゲがすぐに突進してきた。
「どうしてだよ!」
なぜかあいつの目に、得意そうな気持ちを察したような気がした。このトカゲは、俺が彼より劣っていると思って、このまま俺を倒したいだろう。
それなら、俺も遠慮しないよ。
剣を持ってトカゲを見つめた。トカゲは一足先に飛び上がって大きな口を開けた。
この景色は本当に怖いんだが、俺は恐れを感じず、注意力を集中して、一心不乱に剣を振り上げた。
「ーー」
蜥蜴の大きな口が目の前に来たとき、掲げた剣が蜥蜴の腹にも刺さった。その黒い鎧は剣の前で抵抗せず、簡単に剣に突き刺された。
剣はこのままに切り込んだ。剣はまず右側から蜥蜴の腹部に入り、続いて左側から出てきて、蜥蜴を腰から真っ二つに切る。
俺は前に向かって一歩踏み出して、トカゲの大きな口を避けた。
真っ二つになったトカゲはそのまま後方の地面に落ちた。トカゲは自分が真っ二つに切られたことに気づかず、起きようともがいていたが、すぐに動きを止めた。
剣についた紫色の血を地面に振りかけ、後ろを向いて真っ二つになったトカゲを見た。
「わあ……」
真っ二つになったトカゲの腹部から大量の紫色の血液が流れ出て地面を紫色に変える。誰が見てもこの景色は胃がむかむかするだろうが、さらに胃がむかむかするのは、腹部の中から流れ出てきたーー
「うーっ」
食べなくてよかった、そうでなければ吐いていた。
俺は自分の作った惨状を直視することができず、足早足で戦闘現場から遠ざかった。
「まさか初めての戦いがこんなに血なまぐさいとは……」
管理者がくれた剣が鋭いのは知ってたから覚悟はしていたが、剣がトカゲを真っ二つに切ったの時やはりびっくりした。
できれば、相手を真っ二つに切るようなことはしたくない。
今回は運が良かったから、血液を避けることができた。もしその血液が体にこぼれたらきっと悪夢を見るだろう。
俺は頭を振ってこの恐怖の想像を振り切って、川に沿って歩いた。
「異世界ってすごいな……巨大なトカゲがいるなんて」
そんな巨大なトカゲは動物ではないはずだ。彼の独特な角から見ると、そのトカゲは何かの魔物であるはずだ。
管理者はこの森が魔王の領地だったと言っていたから、ここに魔物がいるのは当然だ。
管理者は俺が自分の力でこの森を出ることができると言っていたけど油断できない。この森に生きているのは動物ではなく魔物だからだ。
森を出るにはこの森にいろいろな魔物と戦う覚悟をしなければならない。
「でもこんな魔物がこの世界にあふれていると思うと、この世界の人々がどのように生きているのか気になるな……」
この世界の人間が大陸を制覇することができる以上、人間は強いはずだ。魔法を使い放題にしてもいいだろう?
この世界の人間のカッコいい戦い方を想像して、進むスピードが少し速まった。でも俺はすぐに歩調を緩めた。
まだ時間はたっぷりあるから、そんなに体力を浪費する必要はない。
「野外で無駄に体力を消耗するのはよくないね」
しかもここは普通の野外ではなく、危険な魔物の森だね。
見ていないけど、この森には魔物が多いに違いない。魔物が襲いかかってきた場合に備える体力がないとまずい。
それに、俺も少しこの時間を楽しみたい。
前世の時、こんなに野外に入り込んだことはなかった。キャンプの経験は何度かあるけど、このように一人で野外での体験は初めて。
そんな経験はめったにないから、せっかくの野外冒険のチャンスを無駄にしたくない。
「うん、いい天気だね」
このまま、俺は軽い気持ちで、川を眺めながら進んだ。
耳は森の中の騒々しい音を聞き、目は碧い川を眺めていた。
こんなに楽になったのは久しぶりだね……
前世はいつも学業のことに悩まされていて、自分のやりたいことができない。せっかく夏休みなのに、冤罪で監獄に入れられるなんて……本当に久しぶりに休みた。
このように何も考えなくてもいい時間は、本来の世界には存在しない。
いつもいろいろな役を演じなければならないから、いろいろなことを考えなければならない……でも今はもうそんなことを気にしなくてもいいだろう。
責任を捨てて異世界に出てくるのは悪いことではないかもしれない……今異世界に来たい人の気持ちが少し分かった。
川の周りは平坦な地形なので回り道をして進路を変える必要はなく、気を散らすことなく前に進むことができる。
しかしこの川はこの森の魔物の重要な水源のようだ。だから俺も何匹かの魔物に出会って目の前に現れた。
まず目の前に現れたの魔物は、大きなヒグマだった。
へえ?この世界にもヒグマはいるか。
ヒグマが川に出て、頭を下げて水を飲んでいるのが見えた。
そのヒグマの姿は前世のヒグマとあまり違わないが、頭には角が生えている。つまりあいつも魔物なのだろう。
さっきの状況を二度と起こさせたくないから、俺は早めに川のそばを離れるつもりだ。これならヒグマと戦わなくてもいいだ。
俺は身を低くしてそばの草むらに隠れる。草むらに身を隠し、ヒグマが自分に気づかないことを確認してから俺は前進し始めた。ところが、角の生えたヒグマはすぐに俺の気配に気づいた。
やばい!
俺はすぐに立ち止まって、ヒグマが探しに来ないことを祈った。
しかし、このような行動はかえってヒグマを怒らせたようだ。ヒグマは立ち上がって大声で叫んだ後、すぐにこちらに向かって突進してきた。
「どうしてだよ!」
素早く後方に逃げようとしたが、ヒグマはすぐに俺の後方に到着した。もし後ろに逃げたら、ヒグマの熊掌に打たれるかもしれない。
「しょうがない!」
俺は立ち上がり、ヒグマに剣を振った。
ヒグマは体が大きいから相手を斬るのは簡単だ。だが先ほどの景色を二度と見せたくないから、俺はヒグマの腹に向かって剣を振っていない。
ヒグマが怒鳴って熊の手を振って、俺は剣を上げて熊の手に切って、熊の手を切ってヒグマを追い払うことができることを望んでいる。
考える時間があっという間に過ぎて、剣はヒグマの腹部に切らず、熊の掌に切った。
成功した、これでこいつを追い払うことができるだろうーーえ!?
俺は驚いて叫んだのは剣は熊の手を切断しただけでなく、ヒグマの首にも切り始めたからだ。すぐに動きを止めようとしたが、もう止められなかった。
「……」
剣は簡単にヒグマの頭を切り落とし、頭を失ったヒグマは地面に倒れ、切り裂かれた傷口はすぐに血を噴き出した。
「……」
俺は黙って後ろに退いて、靴が血に染まらないようにした。
「なんとかしないと……」
……
この剣はあまりにも鋭利で、うっかりすると相手を殺すから、別の方法で戦うつもりだ。
切ることができないなら、叩いたのを使いましょう!
これが俺が考えた対策だ。
そうすれば多くの血を流すことも魔物を殺すこともないね。
この対策に満足していると同時に、前方に魔物が現れた。
真正面に立つ魔物は、馬のような巨大なヒョウだ。
それはチーターに似ているが、相手が普通のチーターではなく、危険な魔物であることは間違いない。
っていうかチーターも危険だったっけ……?
「まぁ!お前を試験の対象にしょう!」
俺は逃げずに剣を上げてチーターをにらんだ。
チーターも俺の考えを知っているようで、前を行ったり来たりしている。チーターは慎重に覗き込んだ後、素早くここに向かって飛び上がった。
チーターがジャンプしてくるのを見て、俺はすぐに剣を振り上げてチーターの頭に叩きつけた。
これで相手を殺さずにすんだねーー!
チーターは剣で強く叩かれ、そのまま地面に倒れて動かなくなった。
「気を失ったのか……?」
俺はチーターの頭から剣を離して、チーターの様子を確認しようとした。
「わあー!」
チーターの様子を見ると、俺はすぐに目をそらして、チーターの頭を見ることができない。視線を逸らしたのはチーターが怖かったからではなく、チーターの頭を押しつぶされたからだ。
俺はチーターの頭を見に行かず、くるりと向きを変えて現場から逃げた。
「う……どうやら斬撃が使えない以外は、力を調整しなきゃようだ!」