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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
二章
38/42

第37話 夜の会議

 夜が更けるにつれて、城主の邸宅は一層にぎやかになった。


 邸宅で開かれた会議の内容は具体的には次の通り。月に一回の会議で、ヴィット城の城主会は役人を集めて会議を開く。その目的は、人々の意見を聞き、城を治める政略方針を改善することである……大体そうだ。


「ハハハ~」


「さすがレブス様ですね」


 会議といっても、実際には晩餐会とあまり差がない。


 人々が踊ったり、お酒を飲んだりするのを眺めながら、ヴィックは黙って遠くに立っていた。


 この会議はヴィット城が村だった頃から存在していたと言われており、古来からの伝統である。


 今では世代交代に伴い、この会議も少なからず変わる。


(例えば会議が開かれた場所……)


 本来は役所で会議を開くはずだったが、レブスが就任してから、会議が開かれた場所は役所から城主の邸宅に変わった。


 ――はあ、どうせみんなに来てもらうんだから、どこで会議をしても同じじゃないか。


 なぜそんなことをするのかと聞かれたとき、レブスはこう答えた。


(場所を変えるだけなら構わないが、実際に……)


 周りを見てみると、みんな踊ったり、飲んだり食べたりしている。


 会議をすると言っていたが、ほとんどの時間はみんなレブスと遊んでいて、会議をしていなかった。


 それ以外、役人が報告した時間はとても短く、実際にはレブスで雑談をしていただけだった。もしレブスが満足すれば、この提案は可決され、実行される……。


 荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、これが現実だ。今のヴィット城は、そういう人たちが管理している。


 もし城を治める人たちのこんな姿を見たら、人々はため息をつくだろう。


(昔だったら首を横に振ってため息をついていただろう)


 しかし、今では十年間ヴィット城に勤めていたヴィックは、この光景に慣れていた。


(そろそろ俺の番……)


 前の雑談が終わったのを見て、ヴィックは我に返った。


「おい~」


 ソファーに座っていた赤い髪の男が手を振って人を呼び出すのを見て、ヴィックはすぐに前に出た。


「こんばんはなヴィック~」


 ソファーに座ってあごを上げて傲慢な笑顔で応えた男は、まさにこの城の城主レブスだった。


「こんばんは、レブス様」


「最近は元気か」


「おかげさまで、最近は元気に過ごしています」


「はは、なんでもない~」


 ……


 短い雑談を経て、会話はすぐに本題に入る。


「で、最近何かあった?」


「最近あることがあります。この資料にお目通しください」


 関連書類を渡しながら、ヴィックは亡霊術師のことをレブスに短く話した。


「ああ、だから亡霊術師の陰謀を見破って、あいつを撃退したんだな」


 亡霊術師がまだ城外にいることを考えると、今は他のトラブルを引き起こすべきではない。ヴィックは事件の経緯を大略説明し、冒険者たちに関することを隠した。


「そうか、よくやった!でもあいつはまだ森の中にいるんだろうな?」


「はい。でも相手はパトロール中の兵士を襲い続ける可能性もありますので、兵隊たちには魔法に抵抗できる装備が必要です」


「うん……」


(よし……レブス様はご機嫌――)


 この話がまとまれば、ヴィックにとってこの会議は無事に終わったことになる――


「お?この件について、詳しく説明してくれませんか?」


 やばい……知性に満ちたこの声を聞いて、ヴィックは振り向いた。


 スーツを着た高身長な黒髪男性が後ろに立っている。


 男はこっちを向いて笑顔を見せる。


「こんばんは、フレリス様」


 相手が歩いてくるのを見て、ヴィックは恭しく頭を下げた。


「ああ、フレリス、前に言った危険な魔物の話をしているところだよ」


「そうですか。この件について、ヴィックさんからもう少し詳しく説明してもらえますか?」


 あごを触りながら、フレリスと呼ばれた男は興味深そうな顔をしていた。


 彼が興味を持ってくれることは、決して良いことではない……でもこの時も説明しないわけにはいかないので、ヴィックはさっきの話を繰り返した。


「なるほど、亡霊術師が撃退されたということですか」


「……はい」


「撃退されましたね……ヴィックさん、何か言い忘れたことはありませんか?……例えば、一体どうやって亡霊術師を撃退したのですか?」


 ……嫌なやつ。


 この男はあいにくこのようなことに対して非常に鋭い。


 そう、一般的には亡霊術師は普通の兵士が撃退できる相手ではない。計略を見破って撃退するなんて、普通はできない……誰かが助けてくれない限り。


「あなたが言い忘れたのかもしれませんね。経緯を丁寧に説明していただけませんか」


「……そうですね。記憶力が悪いことをお許しください。亡霊術師の陰謀を見抜くことができたのは、すべて冒険者の助けがあったからです」


 兵士が相手の策略を見破ったとか、亡霊術師は接近戦が得意ではないとか、そういう嘘をでっち上げることができるが、ヴィックはそうしなかった。


 同じく十年間城主に仕えてきた者として、目の前の男のことをヴィックはよく知っている。もし嘘がばれたら、長年一緒に仕事をしてきた仲間でも、フレリスは笑顔でヴィックを監獄に入れるだろう。


 どうせ相手は見知らぬ人にすぎない。兵士たちを助けたことはあるが、ヴィックは彼らのために行方を隠す必要はない。明哲保身(めいてつほしん)のために、ヴィックは冒険者のことをあっさりと説明した。


「冒険者……怪しいですね」


「そうよ、冒険者の城への立ち入りを禁止しているんじゃないか。冒険者がいるなんて!」


 穏やかに笑顔を見せるフレリスとは違い、レブスは露骨に嫌そうな顔をした。


 通常、許可がない限り冒険者はヴィットに入ることはできない。


「ヴィット城に来て、折り返してきたということですか?ヴィックさん、そのことについては……」


「まだ捜査中です」


「そうですか。相手が亡霊術師を追い出してくれた以上、こちらも少しは報奨を与えてあげるべきです。ヴィックさん、彼らはまだヴィット城にいると思います。何か目撃情報はありますか?」


「こちらには目撃情報は入っていません。知っているのは名前だけです」


「……マーリン、シィン、シメリアですか、なるほど」


 フレリスはヴィックから渡された資料を受け取ってうなずいた。


「とにかく兵士には魔法に対抗する装備が必要なので、その辺は――」


「レブス様!遅れてすみません!」


 ヴィックが話を続けようとした時、後方から声が聞こえてきた。振り向くと、スーツを着たシオラペがここに向かって早足で歩いてきた。


 遅刻か、道理でさっきは彼を見ていなかったわけだ。レブス様の腹心を自称するシオラペにしては、遅刻は珍しいことだ。


「お、シオラペか。何で遅刻したんだ!」


「すみません、さっきのことで……」


「さっきは人を捕まえに行ったんだよね。どうだ、無礼なやつを捕まえたか?」


「あ、これは……捕まえられませんでした……」


 この話をすると、シオラペは困った顔をした。


「は?捕まらなかった……?」


「そ、あの、すみません、途中で止められたので、その子を捕まえることができませんでした」


(人を捕まえに行ったか……)


 叱られたシオラペを隣で見ていたヴィック。


 先ほど助けに兵士を派遣すると情報が入ってきたが、人を捕まえるんだったのか。


「なんだって?なぜ相手をつかまえないか?お前にあげた親衛隊は飾りか!?」


「いや、相手の実力が強いから……」


「は?」


 レブスは難色を示した。


「彼らには勝てない……でも私は命がけでみんなを守りましたよ!」


(勝てない?)


 シオラペを見下していたが、ヴィックもシオラペが実力者であることを認めていたが、まさかこの城にシオラペに勝てる人がいるとは。


 シオラペが勝てない人がいるとは、相手はいったい誰?


「彼らに勝てない?俺の親衛隊が勝てない人がいるなんて、相手の外見はどんなだ?何人いる?」


「相手は二人だけ。マントを着ていたので、相手の顔は見えませんでした……」


「つまりお前ら、二人に負けた?」


 レブスは舌打ちしつつ、不快な表情を浮かべた。


「俺の城で暴れている人がいるなんて、あいつらはいったいどこから来たのか?」


「そのことについては、私が心当たりがあるかもしれません」


 さっきから何も言わず、書類に目を通していたフレリスが口を開く。


「おおよそ相手は冒険者です」


「冒険者?」


「はい。おかしいと思いませんか。ヴィットに冒険者が来て、そしてマントを着た謎の人が現れて……これは偶然ではないと思います」


「うん、確かに……」


「ん?何の話?冒険者って?」


「今日はちょうど、ヴィットに冒険者が来ましたよ」


 フレリスは資料をシオラペに渡した。


「おお、冒険者……ん?シィン?」


 資料に書かれた人を見ると、シオラペは驚いた顔をしていた。


「知ってます?」


「ええ、ライン村で私に逆らっていたガキです」


「そういえば、確かにそんなことがあった」


 先日、シオラペはライン村で彼に逆らう人に会ったため、ライン村へのすべての取引を禁止することにした。


「あの時、シオラペに逆らった人が冒険者だったそうだっけ?」


「ええ……まさかこの城に来るとは。報復に来たのか」


「ふん、そんな奴が来たらやっつければいい!」


 レブスは報復されるかもしれないと聞いて、臆病な顔をするどころか、生意気に笑った。


「それは必ずしも。仕返しに来たのなら、こんなに大人しく城に入ってこなかったはずです」


「彼らが何をしに来たのか、マントたちと何の関係があるのかはまだ分かりませんが、できるだけ早く彼らを見つけたほうがいいのではないだろうか。彼らの捜索については、私たちに任せてください」


 軽く笑って、フレリスは振り返ってヴィックを見つめた。


「ヴィックさん。これでいいですか?」


 このようなことは兵士たちが責任を持って処理すべきなのに、フレリスはこのことを処理すると言っている……


「フレリスたちに任せろ!」


 レブスでさえ、フレリスが冒険者を探すことに同意した。穏やかな雰囲気だが、今の雰囲気はヴィックがいやと言うことを許さなかった。


「わかりました」


「じゃ、この件はフレリスに頼むぞ」


「安心してお任せください」


 議論が進むにつれて、議論の内容は冒険者をどう捕まえるかに変わった。


 その冒険者たちが彼らを助けて問題を解決したのに、みんなは冒険者を捕まえることにした。


 ヴィックはそっとフレリスを見た。


 やはりこの男は侮れない。


 話を誘導することで、冒険者は危険分子になった。


 レブスはまるでフレリスの手のひらで踊る傀儡のようだ。


 これはヴィックの勝手な妄想ではなく、表向きは、ヴィット城の役人はレブスの部下だが、実際にはほとんどの人がレブスの言うことだけに従う。


 表向きはレブスが城主だが、フレリスこそがこの城の真の城主……。


(……人材を抜擢するだけならそれまでだが、よりによってあの人たちはよそ者だ)


 フレリスはよそ者だからか、抜擢された人はみなよそ者だった。もちろん誰も疑問を提起していないわけではないが、そのような疑問を提起した人はすぐに様々な理由で消えてしまう。


 数日前のように、ライン村の禁輸を疑問視して監獄に入れられた人もいた。


 この城にかぎっては、絶対に、フレリスの発言に疑義を投げかけてはいけない。


 幼い頃に父親を亡くしたレブスにとって、フレリスは二番目の父親にあたる。フレリスに対する絶対的に信頼されているので、レブスもフレリスが抜擢した人たちを疑ったことがない。


 今、この十年の変遷で、市所のほとんどの人がすでにフレリスの派閥の一員になった。しかも由来が怪しいよそ者ばかり。


「どうしたの?」


 フレリスはこっちに向いた。


「他に何か質問はありませんか?」


 親切な態度を見せていたが、ヴィックは話の時間が終わったことを知っていた。


「いいえ。それでは、失礼させていただきます」


 相手に頭を下げてお辞儀をした後、ヴィックは振り向いて離れる。


「よそ者……」


(よく考えてみると、これも俺が考えるべき問題ではないね)


 会場内部の空気がうっとうしい。用事が片付いた以上、ここにいる必要はなかったのだろう。


 どうせ自分が離れることなど誰も気にしないだろう、と思いながらヴィックは玄関に向かう。


 ヴィックは兵士を管理する幹部の一人にすぎない。そんな面倒なことに手を出す必要なんてない。


 それに、ヴィックも相手が外来者だと言う資格はない……ヴィック自身も外来者だから。


 十年前、ヴィックが首都を離れた時、この場所はヴィックを受け入れた。それに比べて、ヴィックも彼らと何の違いもない。


(十年前か……ヴェルデラ様のことを思い出したね)


 昔のことを思い出さずにはいられない。十年前は、ヴェルデラ様がいた頃だった。


 ランド様を補佐する家族三代に仕えてきたヴェルデラ様は間違いなく尊敬に値する人物であり、ヴィックは今でもヴェルデラが自分の欠点を指摘し、自分を丁寧に指導している様子を覚えている。


(でも今ではヴェルデラ様もいない)


 もしフレリスがレブスにとって父親や先生のようであれば、ヴェルデラ様は厳しいおじいさんにあたる。


 幼いレブスにとって、フレリスと比較して、常に諫言をするヴェルデラ様は嫌な存在に違いない。おそらくはそのために、ヴェルデラ様は閉じ込められているのだろう。


(ヴェルデラ様を拘禁するなんて、みんなが望んでいないのに、ヴェルデラ様はそれを平然と受け入れているだけ……)


 レブスが自分を監禁しようとしていることを聞いて、当時ヴェルデラ様は何を考えていたのだろうか。


 ヴィックは相手の当時の考えを理解せず、ただ空しく空を見上げた。


(ヴェルデラ様がいれば、ヴィットも今のような姿にはならなかっただろう)


 そんな思いが浮かんだ瞬間、ヴィックは思わず苦笑した。


「……はあ、いつからそんなにセンチメンタルになったんだよ、俺」


 首を横に振ってため息をつきながら、ヴィックは階段を下りた。


 ◇


「フレリス様、お呼びですか?」


 会議が終わった後、シオラペはベランダに向かって歩いた。


 月明かりに照らされて、フレリスはベランダから城を眺めている。


「うん、冒険者たちのこと、どう思う?」


 どう思う?フレリスの問いかけを聞いて、シオラペはじっくり考えて口を開いた。


「危険だと思います……」


「そうか……あげたもの、まだ持ってるか?」


「まだ持っています!」


 シオラペはすぐに水晶玉を取り出し、水晶玉の内部には緑の点が光っていた。


「彼らは確かにこの城に来たようです。こんなに早くヴィット城に来るとは」


「ヴィット城に来て、困ったね。もし彼らが街を荒らしたりしたら……」


「荒らしたりしたら……!?」


「覚えているでしょう。少し前に谷が見た光景」


 シオラペはうなずいた。その人たちの実力についても、彼は少し知っている。


 少し前、フレリスはシオラペに森をさまようゴブリン軍の動きを偵察するよう命じた。


 ゴブリン軍には、ライン村を攻撃する意図があるようだから、ここ数日、シオラペはゴブリン軍の動向を観察していた。


 まさか先日、シオラペだけでなく、フレリスでも森の中で大きな光が観察されたとは思わなかった。


 シオラペが事件の場所に着いたら、一掃された谷を見ただけだ。


 何があったのかはわからないが、ここ数日のゴブリン軍の動きを考えると、何か大変なことがあったのだろう。


 これでは、おそらくライン村の方にも何かあったのだろう。


 おそらくライン村はすでにゴブリン軍によって陥落していたのだろう、そのことを考慮して、シオラペはフレリスからもらった水晶玉を持ってライン村に旅立ち、村に供えられた結晶を回収しようとした。


 水晶玉内部の緑点の位置から判断すると、結晶はまだ村にある。もしそうなら、結晶を無事に回収できるはずだ。


 そう思っていたシオラペは村にやってくるが、意外な光景を目にする。


 昔は魔物の進入を阻んでいた結界が破られ、本来なら村はゴブリンに蹂躙されていたはず……しかし村人全員は無事だった。


 彼らの話によると、ゴブリンの軍隊を倒した冒険者がいるという。


 まさか、それはゴブリンの軍隊だよ、冒険者が勝てる相手ではない。


 村長の話を聞いた時、シオラペはすぐに相手が嘘をついていると思った。


 そして両者が口論になった時、冒険者が現れた。


 冒険者――あのシィンというガキからは魔力が全く感じられないから、シオラペはすぐに相手が詐欺師だと思って、彼を懲らしめようとした。


 しかし、すぐに相手のチームメイトが現れ、他の冒険者は一般の村人とは異なり、大きな魔力を身につけていたほか、シオラペが身につけていた水晶玉も冒険者に反応した。


 水晶玉は冒険者の一人、あの女魔術師に反応した。つまり、結晶はすでに彼らに取られてしまった!


 それに気づいたシオラペは、一度は相手に圧力をかけて結晶を奪おうとしたが、成功できなかった。


 しかもシオラペは槍を持った男から大きな威圧を感じた。


 この威圧――まさか、この男が峡谷をあんな風に変えたのか!?


 村長は嘘をついていないかもしれない。ゴブリン軍は本当に彼らに殲滅された。


 もしそうなら、ここで冒険者と敵対するのは得策ではない。


 そう思ってシオラペは考えを変え、速やかにヴィット城に戻ってフレリスにこのことを説明し、ライン村に対して食糧禁輸措置を取った。


「圧力をかけて村人に結晶を出させることができると思っていました。まさかここに冒険者が来るとは、フレリス様、どうすればいいんですか」


 シオラペは心配そうな顔をした。


 冒険者が本当にゴブリンを殲滅するほどの実力を持っていれば、城に滞在させるのは得策ではない。


「なんといっても相手は街に不法侵入した人間だから、とりあえず彼らを探し出してみよう」


 緊張したシオラペとは違い、穏やかな表情のフレリスはポケットから小さな水晶玉を取り出し、その中で緑が光っていた。


「彼らが城に入ってきたとき、冒険者たちの位置を追ってみたけど、相手の正確な所在は特定できないね」


「おそらくあの魔法使いの仕業でしょう。どうしても相手の位置を特定することはできない。相手は非常に慎重で、追跡できない魔法をかけている」


「じゃどうしたら捕まえられるんですか……あ!人質!彼らは今ヴィット城内にいて、ライン村の村人を人質に取ることができます!」


「いいえ、それは無理。使い魔からの返事によると、現在ライン村には槍を持った男が守っている」


 フレリスは笑いながら首を振り、シオラペの提案を却下した。


「槍を持った男が……どうすればいいの」


「相手の位置を特定することはできない。では、他の分野から追跡すればいい」


 フレリスは軽く手を上げると、黒いマントを着た人がすぐに後方から現れた。


「わあ!?」


「こちらは私のところにしばらく置いておいてくれた方。他の人と違って追跡が得意だね」


「つまり、この方に冒険者を追跡させるということですか」


「そう。追跡――探りを入れると言うべきだろう。冒険者から結晶を得ることができればそれに越したことはない。でももし冒険者が噂通りの破壊力を持っていたら、戦わなければならなかったかも」


 そこまで言うと、フレリスは黒いマントを着た人に振り向いた。


「戦えないなら、無理しないで。もう一人盟友を失いたくない」


「……」


 黒いマントを着た人は黙ってうなずいた。


「では、もうひとつ対処することがある。シオラペ、あなたを止めたマントの身長体型について、覚えているか」


「はい、覚えています。一人は背が高く、もう一人は低い……」


「うん、先に述べた冒険者の身長と一致しているね」


「確かに冒険者の身長と一致しています。フレリス様は彼らが冒険者だと疑っていますか?」


「そう。城に入ってきた冒険者は三人。そしてあなたを阻んでいるマントの人は、ちょうど二人の冒険者の身長が合っている」


「でも……」


 身長は同じだが、前にシオラペが見た小柄な人には魔力がなく、歩き方も門外漢のようで、とても剣術の達人とは思えない。


 路地でシオラペと戦っていたあの人はまるで剣聖、一流の達人だった。二人は全く違って見える。


「魔力はないね。とりあえず指名手配しよう。相手が親衛隊の人を倒せるなんて、危険すぎる。シオラペ、指名手配の件はあなたに任せてもいい?」


「はい!私は必ず目標を達成します!」


 ……


「冒険者よ、よりによってこんな時にここに来る……計画に影響が出るかどうかわからない。でも計画に影響が出ても、私は解決に乗り出すことができる」


 シオラペがベランダを出ると、黒いマントがうなずいても消えた後、フレリスは夜空を見上げた。


「いずれにしても、すべての障害を取り除く必要がある」


 水晶玉を掲げて、フレリスは呟く。


「もうすぐ叶うよ、長い宿願よ――」


 高く掲げられた水晶玉の中で、緑の光が輝いていた。

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