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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
二章
36/42

第35話 剣術と弟子

「ここは?」


 黒いマントと一緒に辺鄙な路地に行くと、クトナは見上げた。周囲の家が連なり、中央には正方形の小さな広場が形成されている。


「一時的に借りていた部屋だ。そこ」


 黒いマントは左の家の三階を指差した。


「そんなに長くいるつもりはなかったから、安い部屋を借りた。ここの家賃が一番安いんだよ」


 黒いマントはそう言いながら、そばの階段を上がる。しばらく見上げて、クトナも二人の後を追って上へ。


「そうですか、でもお金はありません……」


 場所は辺鄙だが、安さの点からいうと、ここはいい選択だ。しかしクトナは、家賃を支払うお金がない。


「ああ、それは構わない。お前はここに住むことができる」


「え、いいの?」


 まさか相手が彼をここに泊めてくれるとは思わなかったので、クトナは思わず目を見開く。


「どうせ部屋も広いんだから」


 三階には五つの部屋がある。


 最後の部屋のドアの前に着くと、マントたちがドアを開けて入って行き、クトナも入って行った。


 部屋の中は彼らが言ったようにとても広い。しかしその代価として、部屋の内装は非常に粗末で、ベッド一つといくつかの粗末な家具しかない。


「確かに広いけど、でもそれでいいの?」


「同じように政府にいじめられている人だからだから大丈夫だよ。それとも、お前は俺たちを襲ってくるの?」


「そんなことするわけないでしょ……」


 相手を襲うなんて、できるわわけがない。確かに、相手の実力からすれば、クトナが彼に危害を加える心配はない。


「じゃお言葉に甘えます」


 相手がそのことを気にしていない以上、クトナも素直に喜んで受け入れた。


 これで、クトナもこの城に居続ける方法ができた。


「ところで、あなたたちはこの城にどのくらい滞在するのですか」


 相手は村を代表して謝罪すると言われていたが、今は謝罪するつもりはないようだ。


 シオラペの機嫌を損ねた上に謝るつもりもない以上、早く立ち去るべきだ。レブスはまだ気づいていないが、それで追及してきたら、遅かれ早かれ大乱闘になるだろう。


「この城に一週間ぐらいいるだろう。ほかにやることがあるから」


 黒いマントが手近にあった椅子を引っ張ってきて腰を下ろす。


「用事が済んだら立ち去るよ。お前は、この後どうするの?」


 ついでにあなたをここから連れて行くことができるよ。クトナは相手の言葉からこの意味を察知した。


 安全にここを出られるのはいいけど、


「……兄を助け出すつもりです」


 クトナは首を横に振って拒否した。


「つまり、レブスから兄を救い出すのか。お前の兄はシオラペに陥れられたか?」


「うん……あいつら、自分の問題点を指摘する人は嫌いです」


「彼らは……その中に城主も含まれているのか。傲慢だが、さっき彼は嘘をついていなかったようで、本当にこんなことはよく知らなかったよ」


「いや、彼もそれを知っているはずです。少なくとも黙認しています」


「つまり、レブスに上告しても無駄か……」


「無駄だと思います……シオラペの讒言のために監獄に入れられたわけではない人もいます。俺がここ数年観察してきた限りでは、レブスの命令で監獄に入れられた人も少なくありません」


「噂によると、これはもう何年も続いているそう。このようなことはどのくらい続いてるか」


「知っている限りでは、少なくとも十年くらいは続いています」


 ヴィット城はいつもそうではない。現在の城主が就任するまでは、ヴィット城はそうではなかった。クトナの記憶では、前任の城主はそんなことをしたことがない。


「罪をでっち上げて人を逮捕し、親衛隊を組織……。ヴィットへの冒険者を阻止することを含めて、これらのことはレブスが就任してから起こったことです。前任の城主は人民をいたわる人で、こんなことをしたことはありません」


「前任の城主よ、いい人に聞こえるね。相手はどんな人よ、レブスを城主にするなんて」


 前任の城主は民衆に優しく接していたように聞こえるが、なぜこのような人を後継者にしたのだろうか。このような人を悪事に走らせることは、帝国の統治にも影響を与えるだろう。疑問を持って、黒いマントの視線がこちらに向いた。


「確かに、通常そんな人を継がせることはないはずです……帝国は城主にふさわしい人を城主に任命するのが普通ですが、ここの制度は他の場所とは少し違います」


 うん、どう説明すればいいかな。相手が自分の言っていることを理解してくれるかどうかは定かではない。クトナはちょっと考えてから言った。


「ここは帝国の国境、その上魔物が横行する地域の森の先――言い換えれば、ここは最前線、統治を確実にするために必要なお金は非常に高いです」


「つまり管理コストが高いということだろう。魔物は危険だからね」


 相手の言うコストの意味はわからないが、相手がクトナの言っていることを理解してるような気がして、クトナはうなずいて続けた。


「お金が非常に高いので、帝国は莫大な……コストをかけてここを統治するつもりはありませんでした」


 この森の近くの一帯に住む人間の村に対して、帝国は懐柔的な態度を取っていた。地元の指導者を受け入れ、村長に任命することで、帝国はこの土地を穏当に支配した。


「他の地方の村では、通常、村主交代は血縁関係のない交代が行われますが、ここでは違います。距離が遠く交通が不便で、国境の村は帝国に頼ることができないため、現地では地元の支配者とその家族に依存して存続することがよくあります」


「ということは、国境の村の村長は通常、地元の豪族が務めるのだろうか」


「ええ、ヴィット城もそうです。都市に発展しましたが、地元の豪族の指導に頼ることに変わりはありません」


「つまり、あの前任の城主は、レブスの親戚だったのか」


「確かに城主の親戚――正確には、それは彼の父親、ランド様です」


「つまり城主は世襲だということだね……前任の城主はいい人だったようで、レブスの父親だとは想像できないな」


「確かに想像できませんね」


 クトナは思わず苦笑した。


「で、あのランドという人はどうした?世襲なんだから、自発的な位を譲ったわけじゃないだろう」


「……病死だそうです」


「病死?」


「ええ、十年ほど前、ランド様は治らない奇病にかかっていました。いくらなんでも治りません……。それ以来、彼の息子、十歳前後のレブスが城主になっています」


「なるほど、こんなことがあるのか……」


「最初、レブスは期待されていましたし、彼の傍近にはフレリスという人もいて、ランド様に信頼されていた人が補佐しています。しかしその後、レブスは親衛隊が組織され、ヴィット城も次第にこうなりました」


 振り向いて窓の外を見ると、親衛隊は見えないが、外の通りには多くの親衛隊が勝手気ままに行動しているだろう。


「ランド様の家族三代に仕えていたヴェルデラ様でさえ、諫言のために監獄に入れられ、消息を聞くことができませんでした……今では五年もヴェルデラ様の消息を聞くことができません。おそらくヴェルデラ様も……ああ」


 かつてランド様に仕えていたヴェルデラ様は忠勇無双代表格と言える。レブスに忠義を尽くしたヴェルデラは剣の名手として名を馳せていたが、そんなウィルデラでさえレブスに監獄に入れられて生死を知らなかった。


「今ではレブスが勝手なことをしていても、皆もヴェルデラ様を思い出し、諫言する勇気がないでしょう。誰かが諫めたいと思っていても、兄のように閉じ込められてしまうでしょう」


「うん……どうやらこのことをコミュニケーションで解決することはできないようだな」


「そうです。兄を何とかして救出するには、おそらく監獄に侵入しなければなりません」


「監獄に侵入……でもあの騎士たちは強いんだよ、侵入……お前の実力ではできないだろう」


「ええ、確かに」


 監獄に侵入するには、少なくとも親衛隊に対処できる騎士の実力が必要だ。しかし、クトナにはそんな力はなかった。


 力がなければ、何をしようとしても空論だから。


 だから……


「あの……ひとつお願いがあります」


 目の前の黒い服を着た恩人を見つめて、クトナは頭を下げた。


「剣術を教えていただけますか?」


 ◇


「お願いします」


 正直、相手が助けを求めることは予想していたけど、まさか剣術を習いたいと言われるとは。


「剣術か……」


 目の前で俯いたクトナを見て、俺は考え込んだ。


 もし監獄に侵入しようとしているのなら、俺も慎重に考えるかもしれない。でも、剣術か……。


 たぶん先の戦いを見届けたから、俺の弟子になりたかったのだろう。


 後ろに立っているシメリアをちらりと見る。


 しかし俺が使っている技は、スキル『武芸洞察』を使って他人の技を真似してこそ発揮できるものだ。


 シオラペたちと戦った時に俺がかけた技もそうだったが、そのような軽快な戦いは俺が前世で見た技の真髄を総合して、シメリアの技術を加えて発揮されたのだ。


 その手はすぐに発揮できるが、俺自身のものではない。戦いの中で融通してこそ、確実に技を覚えることができる。


 だから正直に言って、俺もまだ勉強中で、しかもシメリアに学ぶつもり……本当に人の師匠になる資格がない。


「お……剣術については、隣の方に教えてもらったほうがいいかもしれない」


 シメリアは俺よりもすごいんだ。シメリアに教えてもらったほうがいいかもしれない?


「ダメ……ですか?」


 クトナはショックを受けたようだ。


「そんな言ってないよ!!剣術指導なんて、俺が教えなければならないのか?」


「ただ、あなたが教えてくれたほうがいいと思ったんです……けどそれはもともと俺の無理なお願い……」


 そんなことは言うべきではないかもしれない、そうと思っているのだろう、クトナは申し訳なさそうに頭を下げた。


 見ず知らずの他人にそんなことを要望するのはそもそも勇気がいるし、もし監獄に侵入したいと言い出したら、そのまま断られることもあり得るだろうね。


 おそらくそれを予想して、剣術を学びたいという選択をするだろう。


 ……まぁ、個人的にはそういう人や、強くなりたいという思いは嫌いじゃない。


 クトナは今回幸運にも俺に救われたが、その後も危険にさらされる可能性がある。もしまたこんな状況になったら、せめて自衛の手段ぐらいは持っていたほうがいいだな。


 それに、魚を与えるより漁を教える、という言葉があるね。


「教えるのはいいけど、基本的な剣術しか教えられないよ」


「えっ!?本当ですか!ありがとうございます!」


 クトナは大感動して、すぐに走ってきてひざまずいて、おい、そこまでする必要はないだろう!?


「いや……剣術を教えてもらえる人のは珍しいですから」


 クトナによれば、この世界の人々が身につけたスキルや技はむやみに人に教えるものではなく、民間人が完全な剣術を習得することは一般的には不可能だと言った。


「以前は城主に反抗しようとした人もいましたが、彼らは剣術を習ったことがないので、簡単に親衛隊に倒されました」


「城を守ったり、魔物と戦ったりする兵士と戦うのは、訓練もしていない民間人には難しいことだな」


「彼らは兵士ではありませんよ、ただレブスを守るだけの人です。親衛隊は兵士と違って、城を守ることはありません」


 俺がそう言ったのを聞いて、クトナは親衛隊を鼻先であしらう。


「兵士と違って、あいつらはよそ者です」


「彼らはヴィットの住人じゃないのか」


「いいえ、彼らは十年前にフレリスが連れてきた人たちです。由来はよくわかりませんが、もし都市が危険にさらされたら、彼らも先に逃げてしまうのではないかと思います」


「よそ者よ」


 吐き捨てるような口調で、あいつらの評判があまりよくないことがわかる。そういえば、出会った兵士と親衛隊、その両者の他人に対する態度は確かに違う。


「うん、とにかく、ここにいる間に基礎的な自衛手段を教えるよ。文句はないだろう」


「はい!」


 クトナは喜んでうなずいた。そんな親切な態度にはちょっと困る。俺が本当の達人ではないと知ったら、きっとがっかりするだろう。


 とにかくまじめに教えようか……さもないと後できっと罪悪感……時間は1週間あるので、クトナを教えながら剣術を鍛えようか。


「うん、ここで練習しよう」


 クトナを連れて屋外の小さな広場に来た。この近くには誰もいない。練習にはちょうどいい。


 シメリアをそばに立たせて、俺はクトナに剣術を教え始めた。


「じゃあ、これあげる」


 俺は本の中から剣を取り出してクトナに渡した。


「お!また何もないところから剣を出して!」


 いったいどこから出したの?剣を持って、クトナは信じられないほどこちらを見ていた。


「これは企業秘密だ。それはさておき、どんな技術ができるか見せて」


「うん」


 うなずいて、クトナは剣を前に振り下ろした。


 お、相手は真の剣の重さに慣れていないだろうと思ったが、意外と構えがよくて、剣術の指導を受けたことがあるように見えた。


「昔、兄に剣術を教えてもらったことがあるんです」


 ということは、剣術の知識を少し知ってるか。そうすれば、教えるのは難しいことではないだろう。


「どうですか……?」


 構えて剣を振り回して技を見せた後、クトナは振り向いた。


 うん、頑張って鍛えたようだね。が、


「正直、強いとは言えないね」


 俺のような人の口から言うのはちょっとよくないが、今戦うとしたら、クトナは親衛隊の騎士一人も勝てないだろう。


「そうですか……」


「気を落とさないで。ここ数日で彼らと同じくらい強くなれるよ」


「はい!ありがとうございます!」


 では、クトナにどんな剣術を習わせたらいいのか。


 前世で見たことのある剣術はいろいろがあり、『武芸洞察』を使えばどれも細々と再現できる。けどそれはただの真似で、再現しても詳しく説明することはできないね。


 個人的には、俺は戦いの中で学ぶタイプ。戦いの中で悟ったことを人に教える…うん、全く参考にならない気がするね。


「とにかく、いろいろな剣の技を見せてやろう」


 まぁ、どうせ時間に余裕があるので、いろんな流派の剣術を披露して、クトナが何を習いたいか見てみようか。


 俺は剣を持ち上げて構えた。


「まずは俺の得意な流派を見せてあげよう」


 俺の得意な流派……実際には存在しない。俺の剣術は、模倣した他の人流派から来て、基本的には各流派の神髄を融合させたもの。


 各流派の神髄を融合させた剣術……悪く言えば奇異な剣術。本来の流派の利用者に見られたら、絶対怒るだろう。


 でもそれは俺のせいではないだろ!


 この世界には魔法があるからね。剣の技術はもちろん変化するよ。


 それにこの世界には魔物が存在するので、『紫炎斬』という技を身につけても俺のせいにはできないだろう。


 てか、少し前にはシメリアも魔法を精確に断ち切る剣の技を使ってたな。まさに疾風迅雷ねその剣技。


 その時シメリアには魔力が付加されておらず、魔力が付加されていれば、より精確に魔法を断ち切ることができるか――


「これでいけるかも……」


 考えながら、俺は前に剣を振った。


「――すごい!」


「うん?」


 クトナは後方から来て、しかも俺から遠くない。


 剣を振る時間は数秒しかないのに、いつそこに退いたのだろうか。


 いいえ、数秒遅れて気づいた。移動したのはクトナではなく、俺だった。


 よく見ると、俺とクトナの間の広場に、紫色を帯びた直線の魔力が残っている。


 どうやら魔力の加持によって、俺は剣を振る時に急速に前進したようだ。


「あ……うっかり魔力が加わってしまった。でも魔力は前とは違うように見えるね」


 速度の関係を考えているからかもしれない。もし以前の魔力が炎だったら、今なら紫色の電流みたいね。


「疾い紫色の電光か、じゃあ『紫電斬』と命名しようか」


 意外に新しい技が開発されたのはいいことだ。けど、これはクトナには役に立たないね。


 まだ威力を試したことはないが、俺から見ればこの手の技は必殺技に当たる。


 クトナは親衛隊も倒せない、今のところ簡単な剣の技を学ばせたほうがいい。


「え、さっきはちょっとした事故だったのに、本気にするなよ……」


「すごい!」


 クトナは目を輝かせて走ってきた。


「これを学びたいです!」


 ……あ、その目つきは見たことがある。それはかっこいいおもちゃを見た男の子の表情。


「いや……これは難しい剣術よ」


「あの剣技はすごいですね。魔力をコントロールするとは……先ほどの戦いではこの手を使って相手を倒しませんでしたが、やはりそれは達人の余裕だからでしょうか?」


 いや……余裕なんて全然ないよ。さっきの戦いで魔力を使わなかったのは、人を殺すのが心配だったから。


 俺の力はとても大きく、魔物も素手で殺すことができるかもしれない。相手に手加減しなければ、相手は必ず死ぬ……


「やっぱり簡単な剣の技を学ぼう……」


 そんな時他の流派を学んだ方がいいだろう……と言いたいところだが、クトナは、


「やっぱり師匠は達人!カッコいいー!」


 俺を師匠と呼ぶなんて!?しかも…


「……カッコいい?」


「そう!とてもカッコいいです!」


「そうか……」


 間違いなく、相手がそう言ったのはおだてているので、そんな時は理性的に断るべきだが……


「師匠のようにカッコよくなりたいな!」


 ……でもこのおだては悪くないね。


「お願いします!俺はこの剣術を学びたいです!」


 うん、よく考えてみると、わざわざ勉強させてもこの手の技を身につけられるとは限らない。


 どうせ教える時間はこの数日しかないのだから、相手が学びたい以上、ついでに教えてもだめではない。


「いいけど!」


「本当ですか!ありがとう師匠!」


「ふんふん、師匠の名はシィン。わしの流派の剣術を学ぶなら、しっかり学ばなくちゃね」


「わかりました!シィン師匠!」


 同意を得て、弟子クトナは嬉しそうな笑みを浮かべた。そしてすぐに質問をした。


「では師匠、流派の名前は何ですか?」


「ああ……名前……名前!?」


「はい!師匠はかっこいい、流派名もきっとカッコイイでしょう!」


「と、当然よ!」


 流派の名前――全然考えてなかった!そもそも先生になるつもりはないし、流派の名前なんて、もちろん考えないよ!


 かっこいい流派名……あった!


「流派の名前は紫電(しでん)流!」


「紫電流?」


「そう!紫電流――!」


 剣を振る魔力は紫色の電光のようなもの。なので、流派は紫電流と呼ばれている!


 どう?


「そうですか。カッコいい名前ですね」


 流派の名前を聞いて、クトナは何か考えてうなずいた。


 納得できるか……ふ、もう少しでカッコいい師匠の身分を失うところだったね。


「とりあえず訓練を始めよう」


 弟子を教えるからには、師匠として身をもって範を示すべきだ。そう思って、俺は身に着けていたマントを脱いだ。


「わかりました……え!?」


「どうした?驚いた顔して?」


 マントを脱いで正体を見せると、クトナは目を丸くした。


「いや、師匠のお姿は……若い……」


「あ。これか」


 俺でさえこのことを忘れるところだった。


「こう見えても、お前よりは年上だよ」


 クトナの年齢は一五、六歳ぐらいだろう?見た目は小柄だが、俺の実年齢は彼よりも年上だ。


「もしかして師匠はエルフか。エルフの寿命は長いそうですな……」


「エルフじゃないよ。てか今外見は重要じゃないだろう。お前は今、何とかして強くなって、兄を救い出すべきだろう?」


「あ、はい!ご鞭撻をお願いします!」


 クトナはすぐに真剣な目で見てきた。


「ではまず、手を伸ばして構えて……」


 こうして、俺はクトナに『紫電流』という名前の、まだ知られていない剣術を教え始めた。

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