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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
二章
33/42

第32話 レブス

「今日はこれでいい」


 俺が取り出した武器や鎧を溶かして、いろいろな剣を作ってみた後、ハマットは言った。


「夜遅くまで鍛冶の仕事が続くから、今日は先に帰ってくれよ」


「えっ……でもこれで完璧だと思うよ」


 俺はハマットが作った剣に視線を向ける。彼が作ったいくつかの剣は完成度が高く、今持ってきても問題ないだと感じ。


「まだ完璧とは言えないね。これらせいぜい試作品としか言いようがない」


「試作品か」


 俺の目には、これはもう素晴らしい剣だ。でもハマットはこれを試作品としか思っていない。


「最高の剣を作るなら、当然試行錯誤しなければならない。あなたも最高の剣が欲しいでしょう?」


「これは確かに……」


 人に剣を作ってもらうからには、最高の武器が欲しいのは当然だが、このように人を苦労させるのもよくない……。


「安心して、そうするのが普通だ。俺のために心配する必要はない」


 俺の心配を見抜いているように、ハマットは肩をすくめた。


「うん……剣を作るのに1週間くらいかかる。この後でできたら知らせに来る。お金のほうは少し安くなるよ」


「ああ、わかった」


「それじゃ、全力でやるぞ!」


 ハマットはやる気満々で、すぐに店の後ろに向かった。


 確かに心配はなさそうだね。


 こんなに真剣に剣を作ってくれるだけでなく、値下げもしてくれるなんて、ハマットほんとはいい人だね。


 彼の考えもわからなくはない。誰にでも完璧を求めたいものがあるから。でも正直言ってそんなに真剣にならなくてもいいんだよ。


「ではそろそろ帰る時間だ。帰ろうか」


「シィン様。私は少しこちらにいたいのです」


 俺たちが帰ろうとした時、マーリンが武器屋にいたいと言った。


「魔力加工の件で、まだ話があります。ですからシィン様は先にお帰りください」


 マーリンによると、剣のデザインや加工についてハマットと議論したいそうなので、ここにしばらくいなければならない。


「シィン様には完璧な剣を作ってあげないとね!用事を済ませたらすぐに帰ります!」


「マーリンも完璧を求める人だね」


 大通りに出て、俺はそばを歩いていたシメリアとおしゃべりをした。


「シィンが主様だから、こんなに完璧を求めているのでしょう」


「俺が主様だから……」


 そういえば俺はマーリンを召喚した人だね。ヒュルトロスも、これらの英雄の目には俺が彼らの主様だと思っていたからこそ、彼らは俺のためにこんなにたくさんのことをしてくれたのだ。


 これで本当にいいのか、俺のためにこんなにたくさんのことをしてもらって……。


 主君が忠誠を尽くすのはいいことだが、そんなことをさせる資格はないと思う。


 なんだかよくないね。


「けど、彼女がシィンの身支度を手伝おうとしていたのかもしれません」


「え?」


「かわいいものが好き、かわいい人におしゃれをしてあげたい、とマーリンに言われたことがあります。彼女がシィンにも同じ考えがあるのかもしれません」


 かわいい人のおしゃれをしてあげたいです!


「マーリンがそう言ったか……」


 かわいい人におしゃれをしてあげたいか。マーリンのこれまでの態度から考えると、これは筋が通っているようだ。


「彼女を止めるべきか」


 マーリンは英雄の一人である以上、装備などを彼女に任せて処理するのはあまり心配しなくてもいいはずだ……。


 まあ……マーリンの発揮に任せようか!


 趣味だけでやっているのだから、好きなようにやらせても構わない。どうせその時になって完成品に何か問題があっても直せばいい。


 そう思ったとき、前方から男の叫ぶ声が聞こえた――


「おい、どけどけ!城主様の馬車はこのあとここを通るぞ!」


 前方を見ると、銀色の鎧を着た男が交差点で大声で叫んでいた。


「そうよ、早くどけ!城主様が通るんだよ!」


 男の周りにも銀色の鎧を着た人が呼びかけていた。


「彼らはヴィット城の兵士か」


 彼らが着ている鎧は、以前出会った兵士とは異なり、鎧はピカピカに磨かれている。


「ああ、騎士団だ……」


「早くどいて、あれは城主の親衛隊だよ」


 彼らが現れたのを見て、道を歩いていた歩行者が次々と退避した。すぐに歩行者は道の両側に分かれて立った。


「城主の親衛隊?」


「ふん、いいぞ」


 歩行者がおとなしく退避しているのを見て、親衛隊の一人が傲慢に顔を上げて、手を伸ばす。


「おまえら、準備しろ!」


「は……!」


 彼がそう叫ぶにつれて、親衛隊たちは道の両側に歩いていった。


 旗を持った人は旗を掲げ、かごを持った人がかごの中の花びらをつかむ、道路に投げ始めた。


「なんていうか、すごい勢いね……」


 相手の無駄遣いは想像以上だ。


 この勢いは前世の海外の王室パレード生中継でしか見たことがない。もし一般の人にこのような人騒がせな活動をさせたら、きっと罵倒されるだろう。


 しかし、この世界の城主は領主に相当するようで、それをするのは問題ない。


「領主様がおいでになりました!」


 前方にいた騎士は大声で叫んで、馬に乗って前進した。騎士の後ろで馬車が前に移動した。


「おお!」


「領主様!」


 馬車が進むにつれて、周りの人々は驚嘆の声を上げた。


「おお!」


「それは領主様――レブス様だな!」


 馬車が進むにつれて、周りの人々は驚嘆の声を上げた。


 その先頭で、華やかな馬車に黒髪の青年の姿が見えた。


 周りの人が熱烈に出迎えてくれるのを見て、赤い瞳瞳が周りを見ると、青年は笑って手を振った。


 その笑顔は自信を持った傲慢な笑顔だった。


「レブス様がこちらに手を振ってる!」


「わあ!」


 青年の視線が移るにつれ、赤い瞳で見られた群衆は騒然となる。


 どうやらあの人がレブスのそうだね。


 前に様々な噂を聞いたことがあったから、変なやつかと思いきや、意外と普通。


 相手は普通に振る舞ってるように見えるが……やはり少し異常がある。


 民衆への視線には傲慢さが滲み出る。


 周りの人々を眺めていたレブスの振る舞いはとても傲慢だった。周りを見回して、レブスは彼への賛美を当たり前のことだと思っているようだ。


 横柄な態度だが、もともとこの世界の貴族は平民をそのように扱ってきたのかもしれない。


 この赘沢な振る舞いも、権力を誇示するためのものなのかもしれない。


 こんなことは、世の中ではごく当たり前のことかもしれない。もしかしたら、民衆もそんなことは認めているのかもね。が……


 そう言いたいところだが、美声に混じった愚痴が聞こえてきた。


「なんだ城主よ、税金を上げることばかり……」


「嫌なやつ、早く死ねよ」


「声を小さくして、騎士団に聞かれたら、監獄に連行されるよ」


 どうやら……誰もがレブスのしたことに満足しているわけではないようだ。


「監獄に連行される……」


 また、多くの民衆の顔から恨みの表情を見ることもできる。その恨みに満ちた視線はレブスを見つめていた。


 俺の経験から見ると、そんな視線は本当に殺意に満ちた視線だった。本深い恨みがなければ、あんな殺意はあり得ない。


 あいつにはそんな視線すら感じられないのか。


 振り向くと、レブスはそんな視線を感じないように、生意気に笑っていた。


「ははは!」


 親衛隊が守っているから、そんなことは気にしていないのか。


「親衛隊といえば、あいつ……シオラペもいたね」


 チームを率いる騎士たちの後方には、金髪の姿が垣間見えた。


「みんなが感心していますね、さすがレブス様ね!」


 シオラペはレブスに諂笑を浮かべて言った。


「それは当然だ!俺に感心しない人は存在しないんだ!ハハハ!」


「ハハハ~」


 シオラペはレブスと一緒に笑った。


「よく似てるね」


 なにしろ、シオラペはレブスが抜擢した人だからね、性格が似てくるのも普通のことだ。


 ところで、シオラペに会ったからには、今のうちに彼と話をしに行こう……か?


 車の列を止める……そうすれば、すぐにシオラペと話すことができる。でもこれで、糧食のことはあっさり断られるかもしれないが……。


「やめたほうがいい……」


 彼らを怒らせると、かえって多くの問題を引き起こすことになる。


 まぁ、チャンスはいくらでもあるし、後にチャンスがないわけではない。それに、車の列を止めるなんて、実際にそんなことをする人はいないだろう。


「止めてくれ!」


 その時、一人の男が人ごみの中から飛び出してきた。


「えっ!」


 相手は16、7歳くらいに見える。少年だ。


「レブス!」


 少年が道の中央に立ちはだかり、前進する騎士が馬に止まるよう指示したからだ。


「おまえ!レブス様のチームを止めるなんて!」


 少年の出現を見て、シオラペはすぐに前に出た。


「早く出て行け!」


「レブス、おまえは、監禁していた人を釈放しろ!!」


「黙れ、捕まえろ!」


 シオラペはすぐに騎士団に少年を捕まえるよう指示した。


「くそ!」


 少年は騎士の逮捕を避けながら大声で叫んだ。


「早く兄さんを釈放しろ!!!」


「……」


 少年の腕前は意外に器用だった。前方の騎士たちが道を走っているのを見て少年を捕まえることができず、レブスの顔の笑みが消えた。


「お前が誰なのかは知らぬ。お前が言ってるみんなが誰なのかも知らぬ。けど、進む道を遮って、しかも俺に不遜なことを言うなんて。これは死罪だ」


 レブスは少年を指差した。


「彼を捕まえろ。監獄に入れて!」


「はい!」


 周りの騎士は命令に従って前に向かった。


「くそっ!レブス!!」


 少年は自分を捕まえる人が増えているのを見て、周りの路地に向かって走っていった。


 街を出る前に、少年は手にした石を挙げてレブスに投げようとしたが、角度が間違っていたため、石は最終的に馬車の前に落ちただけだった。


「ああ、あいつはひどい……」


「名前、クトナというんだね。あいつの兄はレブスに牢屋に入れられたんだな」


「兄弟そろって無実の罪で投獄されるんだね」


 周りの人たちはそんなことに慣れているようで、驚くことはなく、少年が逃げていくのを見ているだけだった。


 冤罪って……


 ここに来てまたこの言葉を聞くとは思わなかった。


 冤罪……それは俺が前世の時に監獄に入れられた理由。この言葉はもう聞かないだろうと思っていた。


「逃がすな!」


「追え!」


「レブス様、先に行ってください。彼を追ってきますから」


「ふん、任せるよ」


 シオラペは頭を下げ、騎士たちと一緒に素早く去った。


 レブスはふん、っと鼻を鳴らす。チームはそれに伴って前進し始め、すぐにここを離れた。


「うん……」


 さて、どうすればいいか。


 シオラペが入ってきた路地を見てみた。


 確信はないけど、その少年はすぐに捕まるだろうと思う。


「どうしますか?」


 シメリアはそばで尋ねた。


「……どうするか」


 ああいう場面に立ち会って、もちろん、助けに行くべきではない。


 そんな場面にいて、助けに行くとトラブルに巻き込まれることは間違いない。


 あの少年を助けていたら、おそらく、いや、間違いなくシオラペと対立するだろう。対立すれば、村の安否を危うくする可能性がある。相手は直ちに食糧の供給を停止するかもしれない。


 そんなことをしたら、知り合いに迷惑をかけてしまう……さらに相手は見ず知らずの人にすぎず、似たような境遇ではあるが、彼を助ける義務がない……。


 相手はこの近くで最も有力な人だから、これ以上彼らの機嫌を損ねることはすべきではない……。


「うん……そうすべきだ」


 ため息をついて、俺は前に進んだ。


「では、どこまでされますのかな」


 俺が前に行くのを見て、路地に向かって歩いて行く……シメリアは笑顔を見せた。


「ああ……、逃がしてやればいい」


「わかりました」


 おそらくシメリアは、最初からそうなることはわかっていただろう。


 だから彼女は、助けないかを聞いてるのではなく、どうするかを聞いてるのだ。


 最初から俺が助けに行くと思っていたのか。まさかこんなに信頼されるとはね。


「ああ、じゃあ行こう!」


「うん!」

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