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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
二章
30/42

第29話 A級魔物

 結局、30分以上かけて服のサイズを測って、続いてどんな素材で服を作りたいかと聞かれる……いったいどんな服を作りたいんだよ。


 マーリンに振り回された後、俺はようやくサイズという地獄から抜け出した。


 振り返ると、彼女たちの嬉しそうな表情から見ると、話が終わるまでにはまだ時間がかかりそうだ。


「服をオーダーするのに時間がかかりそうね。マーリン、あたりをぶらぶらしてるよ」


「うん。気をつけてくださいよ」


 ひとまず大都市に着いたから、少しでも見聞を広めるべきだ。


 俺とシメリアは通りに出て、周りの環境を見回した。


 やはり大都市だね、ライン村と違って、ヴィット城は五六階建ての高い家があちこちにあり、しかも全部あるレンガで建てられている。


 ここは森の中にあるが、これらの建材はどこから探してきたの……。


 ライン村と同じように、ヴィット城も川のそばに建てられており、これらの建材は水路を経由して運ばれてきたのかもしれない。


 でもここには家を建てるのに十分な人力があるか?


 人数はただ3万人ほどで、この人数がこの規模の都市を作る方法があるとは思えない。


 まぁ、常識で考えることもできないが、ここは異世界だね。


 魔法で物を運ぶことができるかも?それなら簡単に高い建物が作れるね、例えばピラミッドなど。


「それに、ここには冒険者がたくさん行き来しているから、こんなことができるのも普通のこと……そう言いたいんだけど、ここには冒険者がいないんだな」


 正確には、冒険者らしき人は見当たらない。


 ちょっと見てみた。ここの人はみんな普通の格好をしていて、戦いに慣れているように見える人はいない


 うん、ちょっと強そうな通行人に『情報探査』を使ってみたが、相手には強力なスキルは存在しない……。実力感覚はライン村の村人と大差ない。


 ライン村は小さな村だから、実力が劣っていても無理はないが、ここは大都会だよ。どうしてそうなんだ?


 少しがっかりした。村長から冒険者の多い町だと聞いていたのに。


 どうやら状況はその代官が言った通りで、冒険者は最近来なくなったようだ。


「うーん……都市守備を担当する兵士の実力はどうなのかわからない。同じ状況だったらまずいね」


 ゴブリン軍がヴィット城を攻撃したのは陽動だったが、もしその時ヒュルトロスが彼らを止めなかったら、本当に大きな死傷者が出ていたかもしれない。


 それに森の中には魔人がいるから、機会があれば市を管理している人に話してみるか。


「はあ……。まったく人の事で気を揉むのが好きなんだな俺。謝りに来たのに」


 自分の管轄する町でもないし、相手は食糧の輸送が途絶えてしまうかもしれないし、やはり他人のことは置いておこう。


「それはさておき、シメリア、遊びに行きたい店はあるの?」


 個人的にはあまりぶらぶらしたいところがないから、後で銀髪の仲間の意見を聞いてみる。でも相手は首を横に振るだけ。


「何も見たいところはありません」


 シメリアはこの町のことに興味がないようだ。


 実は俺も同じ考えを持っている。


「だね……」


 彼女の視線に沿って見ると、ここで一番多い店は旅館(旅人や冒険者に貸し出すのだろう)で、残りの店はバーやカジノで、面白い店は何もない。


「この世界は娯楽が発達していない。でも賭博なんてものは発達するね……」


 シメリアはこの娯楽が好きではないことは明らかです。俺もあまり好きではない。


「やっぱり人間はこういう娯楽が好きなんだな」


 一周して面白いところは見えなかったから、俺とシメリアは道端のベンチに座って、行き交う通行人が通り過ぎるのを見ながら、マーリンが来るのを待っていた。


 ちなみに人間の話になると、こうして座ってよく見ると、俺はこの町が人間だけのように見えることに気づいた。


 行き交う人々には他の種族はなく、すべて人間である。


「帝国は多種族の国って言ってたじゃないか。なんで全部人間だけ?」


 ライン村は神官の子孫の村なので、他の種族を見ていないのは普通のようだ。でもヴィット城にもないのか?


「他の異種族が見えないの異世界な」


 この世界に来て、唯一見た他の種族がゴブリンであることは、あまりにも惨めだろう。


「他の種族を見たいですか?」


 がっかりした俺のつぶやきが聞こえたのか、シメリアは視線をこちらに向けて言った。


「亜人種族と人間の外見は基本的に四肢が似ていますが、特定の部位だけが異なっています。また、エルフタイプの種族の由来も人間とは異なっていますが、最終的に発展した外見はそれほど違いはないのです」


「なんというか。収斂進化?」


 まさか異世界で進化論を聞けるとは……いえ。重点はそれではない。


「シメリアの記憶は戻ったのか?」


「いえ、基本的な知識が残っているだけです」


 確かに、シメリアも戦い方を忘れておらず、前世で似たような症状を聞いたことがある。


「この世界の種族が住んでいる場所も似ているはずです。もしシィンが望むなら、私はシィンを彼らに連れて行くことができます」


 シメリアは真剣に俺を見て、俺がうなずいて承諾すれば、彼女はすぐに行動に移すようだ。


「いや、そこまでしなくてもいいよ!今は他にやることがあるんだから、遅かれ早かれ見る機会があるんだから、そんなに急ぐ必要はないよ!」


 相手が俺のつぶやきを真に受けるのを見て、俺は急いで頭を振った。


「わかりました」


 シメリアはうなずいて、行き交う通行人を振り向いた。


 ふ、シメリアがこんなに本気になるとは思わなかったな。


 でも。シメリアがガイドをしてくれて、そして世界一周を案内してくれるか。悪くない気がする。


 近づく人を警戒している銀髪の少女の横顔に視線をやった。相手の横顔は美しく端整。こんな美少女との旅行なんて悪くない。


 でもこれも今のことを処理するまで待たなきゃ。後で機会があればこうしてみるといいか……。


 思いながら、俺はシメリアと一緒に行き交う人々を見詰めた。


 ところで、マーリンの魔法は本当に役に立つね。誰も俺たちに気づかなかった。


 この町には冒険者のような人物は存在しないから、俺たちのような奇抜な格好をしている人は目立ちし、ましてやシメリアは美しい美少女。ボロボロの服を着た俺が隣に座っていても、彼女に誰かが声をかけてくるはずだ。


 でも目の前を行き交う人はさっと通り過ぎて、ちっとも俺たちに目を向けない。


 それはもちろん相手がわざと俺たちを無視しているからではなく、マーリンが俺たちに目立たなくなる魔法をかけてくれたからだ。


 またこの町に来る前に、マーリンはわざわざ俺たちに目立たなくなる魔法をかけてくれた。そうすれば、魔力の波動を隠すことができ、マーリンが持っている結晶の魔力も隠すことができる。


 この魔法は魔力の波動を隠すことができるほか、目立たなくすることもできると言われている。


 だから今俺たちはヴィット城の中で少しも目立たない。


 目立たないから、気軽に情報を聞くこともできるね。何か面白いゴシップが聞こえてくるかもね。


「おや、最近また物価が上がってきたね」


「ええ、冒険者は最近来ていません。商品が売れなくて商売ができないので、商人もあまり来なくなりました」


「あの城主のせいだ!世間知らず奴!」


「そうだね。あっちこっちで暴れて、外の危険な魔物を放っておくなんて……」


「へえ、噂は本当か。本当に恐ろしい魔物が町の外をさまよって、森に入った冒険者を食べてるのか」


「さあね。ここは魔物の森だから、そんな魔物がいても不思議ではない。魔物なんて怖くない、指名手配犯こそ怖い!」



 わあ……重いニュースがたくさん聞いた。


 掲示板の向こうの通行人の話を聞いてみたところ、こんなゴシップが聞こえてくるとは思わなかった。


 あの城主は人気がないように聞こえる。多くの人が彼に文句を言っているらしい。


 でも俺が気になるのは魔物のこと。冒険者を喰う魔物がいる?


 掲示板の向こうの通行人が去ってから、俺は掲示板の前に歩いた。


「う……指名手配犯、魔物……」


 掲示板の手配書の多くは普通のごろつきや魔物の情報で、魔物には画像が添付されているものもあるが、その中にはちょっと気になる情報が2つある。


 指名手配犯:危険な亡霊術師


 危険度推定:B級


 魔物:未知の魔物


 危険者度推定:A級以上


 危険そうな魔法使いがいるほか、A級以上の魔物が存在する。


 俺は森の中でA級魔物に会ったことがない。A級の魔人は聞いたことがあるが、魔物の実力はどうなのか分からない。冒険者をたくさん食べた


 あいつが冒険者をたくさん食べたそうだから、危ないはずだろう。


 添付された魔物のイラストを見ると、紙の上には四足になった魔物が描かれていて、トラに似ているように見える……それだけではない。目撃情報が多いようで、イラストがたくさん添付されている。


 それぞれの絵の魔物は姿が違うのはどういうこと。A級の魔物は1匹だけじゃないか。


「本当にたくさんいたら大変だね」


 なんかこの件はちょっとおかしいだが、それで被害が続く人がいるのはよくない。


 それに、それらの魔物はライン村に走る可能性があるね。


 それを考慮して、俺は人にこのことを聞くつもりだ。あった。あそこの衛兵に聞いてみようか。


「あのう、この絵の魔物はどうして違うんですか」


「お!お嬢さんたちね!」


 指名手配書を持って兵士を探してみると、兵士がちょうど前に城門で出会った兵士だったとは思わなかった。


「また会えるとは。さっきは手伝ってくれてありがとう」


「ハハ。なんでもない。じゃ何か問題でも?」


「手配書に載っているこの魔物について聞きたいんです。この魔物はたくさんあるか?」


 指名手配書を兵士に渡すと、相手は眉をひそめた。


「おぉ……A級魔物のことか、あいつはお前らが挑むべき相手じゃないぞ」


 相手は俺が強くないと思っているようだが、まあ、前にそんなキャラ設定をしていたからだな。


「えっ、気になっただけ」


「そうか、うーん……これは秘密でもなんでもない。ここ数カ月、こいつは町の周辺に出没し続けて、こいつを見たことがある人はみなびっくりしてるね」


「びっくりしてる?」


「ええ、捕まえに行った兵士があいつを見て気絶したのは、びっくりのあまり、相手の外見を間違えて覚えてしまったからだろう」


 兵士は言いながら他の紙を取り出した。


「ほら、俺のところにはまだたくさんあるよ。みんな絵が違っていて、羽が生えているものもあるよ」


 渡された絵はさらに誇張されていて、魔物の外見は背の高いもの、低いもの、四足立ちの姿もあれば、二族が歩く姿もある。


「これらの絵は一般市民に見せたことがない。あまりにも恐ろしいから、俺たちだけに伝わるね」


 でも噂はまだ広まったね。兵士が肩をすくめる。


「だから誰もその魔物の正体を見たことがない……?」


「まあ、一応そうだけど、おそらくあのA級魔物には何か幻術に関するスキルが存在するのだろう。あの魔物は本当にずるいね、人を襲うたびに価値のあるものしか盗んでいないから、彼には知恵があるかもと思うよ」


 冒険者を襲う魔物が物を盗むんだな……相手はとても狡猾なようだね。


 価値のあるものだけを盗んだだけって、知恵もある……うん?


 待って、相手は人を食べることができて、それではこれらの画像はどのように現れた?


「あの魔物は人を食べるんじゃないの?」


「え、人を食べるの?そんなことはない」


 俺がそう言ったのを聞いて、兵士は首を横に振った。


 そこで俺は冒険者が森に入ると魔物に食べられているゴシップを彼に話す。


「ああ、そんなことを言っているのか。それはもう1年以上のことではない。森の中に入ってきた冒険者はひとり残らず姿を消えて、みんなはあいつに食われたのではないかと疑った」


 兵士は腕を組んで言った。


「それからは冒険者も来なくなって、みんなも森に入る勇気がなくなったんだ。あいつは、誰も森に入っていないことに気づいたから、町の近くをうろついていたのだろう。でもその後あいつは人を食べずに盗みに走ったからね」


 だからあいつはずるいんだよ……兵士は笑って言った。


「なるほど……でもなぜ彼は盗みをするの?」


 最初は人を食べて、そしてお金を盗むだけになる。あいつの前後の行動が合わない気がするんだね。


「さあね。魔物の考えなんてわかるわけないだろう」


 それは必ずしもそうではない。


 俺はゴブリンの指揮官に会ったことがあるから。


 もしあいつに直接会うことができれば、あいつがなぜそんなことをするのか理解できるかもしれない。


「こいつのせいで、パトロールの人員を増やさせられてるんだな。みんなは彼を早く捕まえたいようだ」


 兵士は肩をすくめて、もう何度もこの件に対処しているようだ。


「でもどうせ喰われることもないんだから。俺たちはほとんどまじめこのことを真剣に処理していない」


「これで本当に大丈夫か……」


「魔物のことは冒険者に任せればいい。俺たちの仕事はそんなことは担当していないよ。あ、あのA級魔物はあなたたちが対処できる相手ではない。これからは気をつけて出かけたほうがいいよ」


「わかった……」


 相手は俺が彼を探しに行くと思うようだ。


 俺は確かにあいつを探しに行きたいと思う。その魔物は無害に見えるが、どうやらA級魔物で、俺もあいつの正体を見に行きたいと思う。


 まぁ、でもこいつはそんなに簡単には出会わないだろう?……そう思うけど。


「おい!大変だ、城外のパトロールに出ていた小隊が消息を絶った!?」


 一人の兵士が慌てて走ってきた。


「何だと!?」


「城南で引継ぎに行った小隊が、相手が連絡を失ってることに気づいた……。この状況から判断すると、あのA級魔物の仕業だったはずだ!」


「小隊を襲うほど大胆だったなんて。パトロールのルートは城壁のそばだぞ……。ああ、仕方がない。早く駆けつけて支援しよう」


 兵士は頭をかき、仲間と南の城壁に向かって走っていった。走りながら彼は振り向いた。


「ごめんね、話はここまで。俺たちは支援に行くの――えっ!?」


 兵士が振り向くと、俺たちが彼の後ろについているのを見て、彼は驚いた顔をした。


「何でついてくるんだよ!危険だと言っただろう!」


「みんなで行ったほうが勝算があると思うからね!」


「でもそれはA級魔物だよ。大勢で来ても無駄だよ――!」


「それはそうとは限らないね。あの魔物は違うかもと思う」


「違う――?」


「A級魔物に関する前の噂は、どこの誰から聞いた?」


「う……これは城主から伝わった噂だ」


「つまり、人を食べるA級魔物の噂は城主から出てきたということだ。その噂は1年前から流れていたが、盗みを目撃する魔物の噂はここ数カ月のことだろう。。2つの魔物は別の存在だと思う」


「俺たちがいま捕まえようとしている魔物は、あの人食い魔物ではない、とでも言いたいのか……確かにそうかもしれないが――そう言われても、その魔物は幻術を使う魔物ですよ。同様に危険だよ!」


「そうだね。そんなに危険ではない以上、あいつがどんな顔をしているか見てみたい」


 何と言っても相手は魔物で、兵士たちは勝てないかもしれない。


 しかもこのまま放っておけば、あいつあとでライン村に行ってしまうかもしれない。だから今相手を倒しておくつもりだ。


「でも……」


「それにあいつはお金を盗むだけでしょう?今俺たちにはちょうどお金がないよ」


「そ……ああ、その時俺のせいにするなよ!」


「お――!」


 兵士は黙ってスピードを上げて、俺たちを振り切ってみたが、俺たちもついてスピードを上げた。


 俺たちが終始彼らの後ろについていたことに気づき、兵士たちは驚いたが、最後にため息をついて俺たちをついて行かせた。

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