第28話 ヴィット城へ
「つまり、あいつは本当に代官か」
村長邸宅に来て村長がそう答えたのを聞いて、俺は感嘆した。
表面的には、これは俺たちの勝利だが、実際には俺たちは政府の役人を追い出した。こんなことは一笑に付してはいけないな。
さっきあいつの俺に向けられた恨みの目から見れば、この件きっとこれで終わらないだろう。
だから俺はまた村長の邸宅に戻ってこのことについて議論した。
「はい、そのような姿に見えますが、あの大人、シオラペ様は確かに代官です」
俺の考えも分かってるようで、村長は少し困ったように笑った。
「名前はシオラペか……そんなことがよくあるか、税金を取ることについて。みんなが彼に不満を抱えていると思うね」
「いえ、この前の税金を徴収した時は何の問題も発生していません。ただ、代官様の話し方が、少し問題があっただけ……」
「それは分かる」
そんな嫌な言い方本当に人を怒らせやすい。
「シオラペ様は城主様の権限を行使できるので、少し自負しています。彼はいつも礼節のことで村人と口論していますな。実は近年の代官はみんなそうで、私たちの村の人を少し見下しています……前の代官も似たような人な」
「つまり、さっきのは積もり積もった怨念の大爆発?」
「ええ、たぶんそうです。シオラペ様が赴任したのは2年以上前のこと。前任代官の任期を含めると、この状況はもう10年になりますね」
「そうか。村人が怒るのも無理はないね。つまり徴税については、シオラペやつはよくそんなことをするのか」
「いや……一度だけのことです。ですからみんなは怒っていますね」
「いきなり税金を前もって徴収したからね。村は焼失したのに、あいつは民情に配慮していないだけでなく、俺たちが人をだますと言っている」
危うくそれで命を落とすところだったのに、あんなやつに皮肉られて、幸いにも村民の品行が良いから、そうでなければあいつはその場で殴られるに決まっていなかった。
「そうね、所詮信じられないことですから。でも代官さまを追い出してしまって、これでは困りますね」
「やっぱりトラブルが……」
俺は村長と同時にため息をついた。
「シオラペ様は少し度量がちょっと小さいですから、きっとまたトラブルを起こしに来ますよ」
「やっぱりあいつはそんなことをするのか」
スムーズにトラブルを解決するスキルが欲しいなぁ。
なんといってもここは帝国の縄張りであり、どうしても嫌でも相手のゲームのルールに従ってプレイしなければならない。
「ええ、おそらくシオラペ様は彼の権力を使って、村に嫌がらせをするでしょう」
「嫌がらせ……物理的なことか?」
「いや、経済的なことです」
わあ、やっぱりそうなんだか。人を雇ってトラブルを起こすかと思った。もし相手がそうすればいい。俺は戦うのが得意だから。
でも相手はチンピラじゃないから、そんな手を使う必要はない。相手は役人で、もちろん役人のものが使える手段がある。
「具体的には、相手の嫌がらせとはどんなものか」
「だいたい、向こうは村を行き来する車の列をやめて、村の生活必需品……つまり食糧の供給を断ち切るでしょう」
「は?!これはひどいでしょう?」
相手はそんなにやり過ぎないと思った。まさか食糧を禁輸するとは。どうやらシオラペのやつは俺が思った以上にひどいやつだったようだ。
「シオラペ様によれば、これは教育と呼ばれています」
「教育……そう聞いて、あいつがこんなことをするのは初めてじゃないでしょう?」
「うん、おととしのうちにシオラペ様もこんなことをなされる」
「つまり、前回彼も早めに税金を取って、そしてまた食糧を禁輸する?」
「そう」
村長はうなずいた。
「前回食糧供給停止は全部で6カ月ほど実施されます。当時は備蓄が十分にあったので、大きな困難はありませんでしたが、今は村が焼失している状況なので、今回は乗り切るのは少し難しいよう……」
「六ヶ月……あいつ、狂ってるだろ」
ここは交通の便利な現代社会じゃないよ。
「また、他の村の商人が私たちに食べ物を売ることを禁止しています……ああ……」
村長は苦悩のため息をついた。
これは政府が率先してライン村をいじめてるようなものだな。
ライト村でも米などは栽培されておらず、このように強硬に外部への交通を遮断すると人命被害が出る恐れがある。
「じゃその後どのように解決されたの」
「具体的には、シオラペ様に謝って、彼のご機嫌がよくなるのを待つということですね」
「彼のご機嫌がよくなるのを待つ……。まさかそんなことがあるとはわ。彼の上司、城主はこのことを放っておいたのか」
これはもう政府がリードしてライン村をいじめているようなものだ。城主はこのようにシオラペを放っておくのか。
「前の城主ならまだ可能性はありますが、シオラペ様は現任の城主が任命しているので、クレームをつけても始まらないでしょう」
「マジかよ、縁故採用にもほどがある……」
「そういうことです。ああ、今は村が再建される大事な時。食糧がないと困り……今ならまだ間に合います。謝りに行きましょうか」
首を横に振ってため息をつくと、村長は立ち上がろうとした。でもその前に俺は彼を呼び止めた。
「え、村長が謝りに行くの?あの嫌なやつに頭下げるなんて……」
「ははは、私が頭を下げて村を存続させることができれば、何度やってもいいです」
俺が驚いた様子を見て、村長は笑った。
「前回のようなことがあったときは、村の多くの人が逃げて村を出ていきました。そんなことは二度としてほしくありません」
「村が廃村にならないようにするためか」
「はい」
村の人数が200人未満になると、村が廃れると聞いたことがある。
村長が村を捨てたくないのは結晶を守るためだと思ってた。
でももう結晶を守る必要はない。結晶を守る必要がない状況で、なぜそんなことをするのか。
「なんで……」
「みんなに帰る場所を持ってもらいたいからね」
俺の呟きが聞こえた。孫を見ているお爺さんのように、村長は穏やかに笑った。
「帰る場所?」
「そう。この世界は変化が頻繁で、すでに多くの人が村を離れ、大都市に進出しています。いつも多くのものが消えてしまいますが、消えない場所があります。それが家です」
「懐郷の旅人が帰ってきたとき、村がなくなったら、きっと悲しくなるでしょう?」
――私は彼らのために帰る場所を残したいから。村長はそう言った。
「そうですか……」
こんな理由があるとは思わなかった。何か廃棄の規定とかあるが、それは後から付けられたもの。村長の考えは単純にみんなの帰る場所を残したいだけだ。
「うん……わかった。俺が謝ろうか?」
「ん?シィン君は行くの?そんなことしなくてもいいよ――」
「いや、これは俺が引き起こしたトラブルだし、俺が片付けたほうがいい。それに、俺が謝ったほうが誠意があるんじゃない?」
「それは……」
「お願いします。俺もみんなの帰る場所を残してあげたい」
俺は少し強硬に言った。
「いいですか」
「……わかりました」
村長はため息をついて、うなずいて同意した。
「でも、二度と相手と衝突しないように気をつけてね」
「気をつけます」
そこで事はこのように決定して、俺はヴィット城に行って自ら謝罪する。
「ところで、なぜ税金の徴収が早まるのか、そんなこともシオラペの趣味で変わるのか」
「いいえ、そんなことは初めてです。それは城主様のお命じのお仕事ですから、シオラペ様も勝手には変えられないと思います」
「確かに、彼は城主のことも尊敬しているような気がする。城主の命令だと言っていましたが、なぜそんなことをする?」
「ちょっとおかしいですね。でも城主さまにも考えがあるのではないかと思います。困ったものですね、村が燃えて間もなく税金を取りに来て……」
「これは確かにおかしい」
俺はあごを触って黙々と考えた。
「急にお金を受け取る時間が変わって、あの城主は何を考えているんだ……」
相手は何か重大な考えを持っているかもしれないが、なんとなく相手も気まぐれでやってるのかもね。
まあ、あまり気にする必要もなさそう。あの城主はシオラペを取り立てた人だからね。
◇
「そういうわけで、俺たちはヴィット城に謝りに行くんだ」
「おぉ!大将、任せろ!」
家に帰ってから、俺たちが謝罪に行くと聞いて、ヒュルトロスは自信満々に手を挙げた。
「俺はちゃんと相手に謝罪するよ!」
「あ、ヒュルトロス、お前は行かなくてもいい」
「えっ!?なんで!?俺が責任を持って謝るべきだろう?」
ヒュルトロスは怪訝そうに自分を指した。
確かに、手を出したのはヒュルトロスで間違いない。本来なら彼は謝罪するべきだ。でも俺は彼に謝罪させるつもりはない。なぜなら……
「問題を起こさないと約束できるか」
「え……これ、ハハハ、できるよ……!」
そう聞くと、後者は目をそらしてハハハと笑っていた。
「うん、やっぱりダメ」
なにしろ、それは地形を変える技を勝手に出すヒュルトロスだからね。手を出した人に直接謝罪させるのはいいが、なんだかヒュルトロスとシオラペを会わせたら、もっと問題になりそう……
ヴィット城でヒュルトロスがさらにトラブルを起こしたらもっと大変だから、彼を行かせるつもりはない。
「俺も一応、お前の上司。俺が謝りに行ったほうが誠意があるだろう。それに村はまだ再建中ですから、村を守ってくれる人が必要だ」
でも相手の機嫌に配慮して、俺はこう答えた。
ゴブリン軍はもはや村を脅かしてはいないが、完全に安全とは言えないし、魔物もいるから、俺はヒュルトロスには村を守ってもらうつもりだ。
俺の話を聞いて、ヒュルトロスもうなずいて同意するしかなかった。
「ふむ……そうか……待って、みんな行くのか?」
「そうですよ」
マーリンは横から顔を出して笑顔を見せた。
「シィン様を一人にしちゃいけないんですから」
「マーリンは相対的に目立たないからね。それに彼女はまだ何か処理することがあると言っていたよ。そしてシメリアは俺を守ると言っていた」
シメリアも前へ。
村に行く人は俺とマーリンのほかにもシメリアがいて、このまま合計3人になる。
「すま。このあとライン村が無事であれば、マーリンに使い魔を使役させてあんたを呼んでやるよ」
「うん……そうか。つまり大将にも守ってくれる人がいるんだよね。わかった!」
ヒュルトロスは両腕を回してうなずいた。
「じゃあ大将は気をつけてね!」
「お。そこに行けば長くはかからないはずだ。できるだけ早く帰ってくる」
そこで、すべてを整えた後、俺たちはヴィット城への旅に出た。
俺たちのスピードから見ると、高速で移動すれば、ライン村からヴィット城までは1日もかからずに行けるはずだ。しかし今回は特に急ぐ必要はないので、森の中の魔物の行動に気を配ることができる。
森の中にはゴブリン軍の残兵もいるのではないかと心配して、わざわざ森の魔物の様子を観察した。でも魔物は全然寄ってこないね。
マーリンとシメリアがいるせいか、魔物は全く寄ってきない。
マーリンの使い魔に観察させてみたところ、森の中にはゴブリン軍は見えず、角の生えた魔物を見るだけ……うん、異常はなさそうだ。
ライン村もマーリンに結界保護をさせているし、そしてヒュルトロスがいるから心配もいらないだろう。
とにかく気にせず行動できてよかった。
おかげで、俺たちは2日かけてヴィット城に到着した。
ヴィット城。
ライン村と似ていて、同じ禁忌の森に位置する人間の町だ。
かつては同じ森の中にあった小さな村だったが、ヴィット村のその後の発展はライン村とは全く異なる。スロウィルとの位置がより近く、帝国と森林の間の交通の中枢に位置していることから、ライン村よりも早く建設されたこのヴィット村は万人の人口を抱える町になった。
「城といっても、前世よりは少し人数が少ないんだね」
俺は木の上に立ってヴィット城全体を眺めた。
城といえば、西洋風の尖塔のあるお城を思い浮かべるだろう。しかし、ヴィット城はそれとは異なり、ヴィット城は京都のように、石造りの塀に囲まれており、高いところから見ると、都市全体が長方形の塀の中に位置している。
「城からこんな形に発展したらしいんですって。まさかこの森にこんな町ができるとは」
「この町には冒険者がたくさん来るそうですからね」
俺は木から飛び降りて、マーリンはそばで続けて言った。
「みんなで作った町ですね」
「ええ」
村長から聞いたところによると、この森には珍しい魔物がたくさんあり、冒険者の中には名前を慕って訪れる人もいるという。そのために町ができたのかもしれない。
「でも最近は冒険者も来ていないそう……」
あの代官も冒険者は来ないと自信満々だった。何かあったのだろうか。
「ではシィン様、私たちの身分については……」
「うん、冒険家の身分か」
これは確かに方法を考えなければならない。今は冒険者がこの町に来ないので、俺たちの身分も不自然になっているかもしれない。
でもその辺は心配ないな。
「任せろ、俺はもう方法を考えた」
「うん、つまり、3人は冒険者だよね?」
「そうです」
ヴィット城の城の入り口に来て、守備を担当する兵士が、不審に思ってこちらを見ていた。
「マーリンさんは隊長……そしてこちらのシメリアさんとシィンさんはあなたの隊員。間違いないでしょう」
「はい」
「それでは冒険者の証明書を見せてください」
「見せなきゃいけないの?」
「はい、これは城主さまの命令」
「すみません、証明書をなくしてしまいました」
「なくしました?全員証明書なくしました?」
兵士は疑念を抱いて俺たちを見て回った。
「はい」
「……あなたたち、全員ラインから来たよね。でもあなた方を見たことがない」
全員が証明書をなくしたのはやはり怪しい。兵士は疑問げにマーリンを見ていた。しかし、マーリンは少しも慌てることなく、むしろ眉をひそめて応えた。
「あら、そうですか。私たちは前にこの門から出てきましたよ。あなたがちょうどここにいなかったのかもしれませんね。私たちが出かけた記録は残っているはずですから、調べてもいいですよ」
「う……」
兵士は嫌な顔をしているが、資料を調べるのは面倒なことのようだ。
「おや……じゃ、どうしてみんなで身分証明書をなくした?」
「あ、それがね、森の中で恐ろしい魔物にあったので、急いで荷物をなくして、せっかくここに戻ってきたんですね。ほら、この子の服はボロボロだよ」
マーリンの言葉に合わせて、俺は前に進んだ。
「ああ」
俺の黒い服がぼろぼろになっているのを見て、兵士は目をそらした。
「お、服がぼろぼろになったね。ひどい戦いをしたようだよね。まあ、女の子が冒険するのは大変だろ。もうあなたを困らせない。入ってもいいだ。
こうして、兵士は俺たちを町に行かせた。
「はあ……さすがマーリン、ヒュルトロスならとっくに見抜かれていただろう」
兵士の見えないところまで歩いてきて、俺はほっとした。
「この世界に冒険者のギルド があると聞いて、証明書のようなものがあるかどうか考えたことがある、まさか本当にあるとは思わなかったな」
「いや、見抜かれなかったのもシィン様が先にセリフを考えてくれたおかげですよ」
「それはほとんど本当だから……」
森の中で状況に遭遇したために引き返す冒険者のふりをして……冒険者の身分はともかく、俺たちは確かに魔物と激しく戦った。
「女の子扱いされてるみたいだけど、まあ、とにかく無事にクリアできた。早くシオラペあいつに謝りに行こう!」
相手を見つけて謝り、すぐに帰る。そうしたいけど、そんなに簡単ではなさそう……。
「ん?シオラペ様をお探しですか?シオラペ様は人に会わないんですよ。彼はいつも城主の別荘にいます」
「シオラペ様をお探しなら先にお申し込みください」
「申請の審査が通ったら、あなたは彼に会いに行くことができる……どのくらい、おおよそ1週間くらい待つでしょうか」
得られた結果はこうだった。
「道理で村長が1週間分の旅費を用意してくれるわけだ……」
たぶん彼はとっくにこんなことが起こると思っていただろう。
「あいつも別荘から出てくるだろう……その時は止めて謝ろうか……でもこれは逆効果になるかも……」
「どうやら滞在は長くなりそうですね。ではシィン様、他の予定事項を処理しましょう」
俺たちが今日泊まる場所を用意した後、マーリンは俺の背中を押して進んだ。
「お」
そういえばマーリンはまだやることがあると言っていた。
主に謝りに来るけど、ちょうど暇な時間があるから、ついでに他の予定事項を済ませよう。
そこで小道に沿って、マーリンはガイドのように手際よく俺達を案内して服屋の前に案内してくれた。
処理する予定の事項は、新しい服を買うことだ。
「さあ、早く入りましょう。シィン様に、こんな格好をさせちゃいけませんよ」
考えてみれば当たり前のこと。俺は前に戦闘中に殴られて飛び回った。服は特に防御されていなかったから、もうぼろぼろになった。
ライン村は村が焼けてしまったから、着替えられる余分な服もなかったから、俺はボロボロの服を着て行動するしかない。
マーリンは俺がこのような服を着ていることに不満だったから、俺たちについて町に来たいと言ったわけだ。
「服なんてどうでもいいだろう……」
「いけません。シィン様はそれをおろそかにしてはいけませんよ」
それほど気にはしていなかったが、マーリンはこの件を早急に処理しなければならないと思っているようだ。彼女はさっと店内に入っていくと、すぐに店員のところへ行った。
「ははは……」
マーリンが店員と話してるのを見て、俺は苦笑しながら店内を見回した。
「服を買い……これ、良さそう……」
俺はそばに服を手に取って見比べてみた。
正直に言って、俺はどんな服が似合うかよくわからない。
前もルナたちの意見を聞いて服を着ていただけだった。俺のセンスで服を探して着ると、この世界では奇妙で特殊に見えるかもしれない。
あまり目立つとよくないね。
「……シメリアの意見を聞いてみようか。シメリア、これはどう思うか?」
シメリアに意見を聞いてみた。シメリアは黙って俺を見てうなずいた。
「似合いです……」
なんか俺が何を着ても彼女はそう言うように感じ……。
「まぁ……マーリンはどう思うか?」
「うん、シィン様にはお似合いです。でも服は買いませんよ」
「え?服は買わない?」
「そうです。シィン様、ちょっと来てください。サイズを測りたいのですが」
「サイズを測りたい?もしかして……?」
「そうです、もう店員に話しておきました!私たちは服をオーダーします!」
マーリンは言いながら、俺を店員のそばまで引っ張って行った。
「オーダー! ?」
「はい、シィン様が可愛いのに、いいの服を着ないのはもったいないことです!!」
そう言ったマーリンの目は炎のように燃えている。
「待って待って……服をオーダーするなんて、あんたはお金がないだろう?」
マーリンにはこの世のお金がないはず……こんなにラフに服をオーダーして本当にお金が払えるか?
「それは安心してください。お金はちゃんと用意してありますから……お金なんて簡単に手に入りますから」
「お前、まさか……」
「ここへ来る前に、使い魔を利用していくつかの仕事をしただけです。ただ荷物を運ぶだけの仕事。違法なことではありません。さあ、手を挙げて」
「……俺の服のために使い魔を働かせるなんて。わかったよ」
何をしても、この大魔法使いを止めることはできないような気がした。
そのことに気づいて、俺はあきらめて手を挙げた。




