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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
一章
25/42

第24話 罠

 夜が来る。


 パーティーを終えて、みんながそれぞれ家に帰った後、俺は2階のベランダに来た。


「この世界の夜空は澄んでいるね、夏の大三角があるかな……」


「シィン様、まだ寝ていませんか」


 振り返るとパジャマ姿のマーリンが後ろに来ていた。


「どこからのパジャマ……そうね、考え事をしている」


「この村のことですか」


「うん……ゴブリンがいつ来るか心配だ」


 ゴブリンが村を攻撃するのも時間の問題だ。しかしそれより重要なのは、相手がいつ攻撃してくるかということだ。明日か?今日?それとも次の瞬間?


「相手がどうするかわからないから、対応が遅れるとまずい」


 相手がみんなが寝ている隙に村を攻撃し、村を陥落させてしまう……という可能性はなきにしもあらず。


「村のご心配なら、ご心配はいらないと思いますよ。結界が守っていますから、この村を奇襲される心配はありませんよ」


「結界?」


「そう。村に入った時から気づいていました。気づきにくいですが、この村は強い結界に守られています」


 マーリンは夜空を見上げた。


「この結界は大昔に作られたものですが、まだ効用を発揮しています。この結界は魔物を排除します」


「大昔に作られた結界か……道理でこの村はこの森の中に長く屹立していたのだ」


 前から気になっていたのだが、この村は強力な兵士に守られてもいないのに、こんなに長く続いている。結界が守っているからか。


「そういえば、村の真ん中にも神社があるんだね。その結界は神社を建てた人が作ったのかもしれないね」


「村の中央に神社があると?」


 そう言うと、マーリンは好奇の目でこちらを見た。


「そうだよ、マーリンはまだ見たことがないだろう。この村の真ん中に神社があって、この村はそれを囲んで建てられたそうだよ」


「ええ、なるほど。道理で村の真ん中に巨大な魔力が存在するのを感じました」


「巨大な魔力?」


「はい」


 マーリンによれば、この村の中央には巨大な魔力の源がある。その魔力源は他の魔力とは異なり、非常に安定している。


「あそこに神社があるということは、何か特別な器物が奉納されているのかもしれませんね」


 ある特別な器物が奉納されている……つまり、長い間村の人々がここを離れなかったのも、それを守るためだったのか……。


「ええ、そうかもしれないと思います」


「そうか。村長からそんな話は聞いていない」


「それがこの村で一番大切なものだからですね。外に説明しないということは、奪われるのを心配しているのでしょう」


「奪われる……」


 もし大切なものがあれば、俺も安全な場所に置いて適切に保護する。だが、この村はさらに過激だ。結界で魔物が侵入しないように村を守る……のだろうか?


 魔物?


「マーリン、この結界の性質を判断できるか?この結界はどんな結界?魔物の侵入を拒否するしかないのか?」


「結界の性質を判断することができます。この結界は魔力に対する外部の感知を遮断し、魔物の侵入を拒否するだけです」


「そうか……」


 魔物の進入を拒む結界だけが……


「マーリン、ゴブリンが村を攻めたのは、あの神社に供えられていた道具のためだと思うか?」


「あの器具のために?結界が魔力の感知を遮断し、ゴブリンがその魔力源を感知するとは思えません……」


「じゃあいつらを操っていた黒幕はどう?」


 ゴブリン軍を操っている強力な存在がいて、相手はこの村にそれがあることを知っているかもしれない。


「この村ができたのは三、四百年ほどのようだが、もし相手が長生きした魔人か何かで、ゴブリンにそれを奪うように命令したら?」


「……うん、その可能性はないわけではありません。でも相手が長生きした魔人なら、なぜそれを自分で奪いに来なかったのですか?」


「それ……わからない」


 相手はなぜ自分で村を攻めないのか……原因が思いつかない。


「……まあ、ただの当てずっぽうだ。でもこの村に大切なものがあることに変わりはない。気をつけたほうがいい」


「わかりました」


「じゃ早く寝よう。相手がいつ来るかわからないから」


「では、おやすみなさい」


 そう言ってマーリンはベランダを出た。


「ゴブリン軍か……」


 結界で守られているからといって、村が安全というわけではない。ゴブリンが今日村に向かっているからには、結界への対策があるはずだ……。


 そんな思いを抱きながら、いよいよ明日が来た。けど、もっとも心配されていたゴブリン軍は来なかった。


 しかも明日来なかっただけじゃない。その後の数日間、ゴブリンが村の近くに出没するのを見たことがない。


「なぜ相手は現れない」


「まさかこの村を攻めるのをあきらめた」


 村の入り口に立って、ヒュルトロスは俺のそばに立って村の外を眺めていた。


「彼らの追い詰める個性から見れば、あきらめないと思うけど……」


 追い詰める姿は今も鮮明だ。一人でも追いかけてしまうのに、こんなに多くの人の村が相手に放棄されることはあまりないはずだ。


「相手の数は多。軍の整備をしているのかもしれない」


 もしかしたら相手は軍の編成を組み直していて、整備されてから攻撃に出動するのかもしれない。


「でもそうだとしても、こちらが先に気づくことはあるよ」


 言いながら、隣に視線を向けた。少し離れたマーリンが地上に魔法陣を刻んで振り返る。


「シィン様、すべて設置済みです」


「ああ、ご苦労」


 近づいて少し様子を見る。地面に刻まれた円形の魔法陣は平凡に見えるが、村を守る助けになるのは確かだ。


「前に言った巨人……具体的にはどれくらいの大きさか?」


「この魔法陣によって創り出された土の巨人は、だいたい2.5メートルくらいの高さになる。ゴブリンが近づくと、すぐに土の巨人が村を守るために現れます」


 ゴブリンが来ていないこの数日間、俺たちは何もしなかったわけではない。この土の巨人魔法陣こそ俺たちの考えた対策である。


 マーリンによると、この魔法陣は魔物の接近を察知すると、周囲の土で高さ2メートルの土の巨人を作り出す。


 その強さや性質には差があるが、おおむね土の巨人の実力はそれらゴブリンの上にある。


 これらの魔法陣は、村の近くに六つほど設けられており、強さで言えば、千のゴブリンが同時に村を攻撃しても恐れるに足りない。


「これで村の防衛の心配はない。ところで使い魔の状況はどうだ?」


「はい、今のところ、ゴブリンの姿は見ていません」


 使い魔とは、マーリンが生み出した情報捜査用の使い魔。外見は薄緑色の鳥である。


 ゴブリンの出没が見られなくなると、マーリンは数十匹の使い魔を森に送り、ゴブリン軍の行方を探る。


「この近くにもないし、城のところにもないし、ゴブリンたちはどこへ行った?」


 偵察の結果、ゴブリンは近くにいないばかりか、これまでに出会った場所をいちいち偵察したが、相手の行方は見つからなかった。


「まるで消えたかのようだ」


「確かに相手の姿は見えなかった……あっ!シィン様、見つけました!」


 どこに行ったんだろうと思っていると、マーリンが大声を上げた。


「本当か!?どこへ行った」


「さあ……別の村に向かっているようですが……」


「別の村……」


 マーリンの使い魔が捜索した方向に進むと、その道中に数多くの足跡を見つけた。


 目標の足跡を見て、俺も認めざるを得ない、相手は森の中の別の村に進んでいる。


 この森には二つの村があって、一つはライン村、もう一つは村長によればヴィット村……そしてそれは実際にはもう村ではない。


 古い地図の小さな村と違い、ヴィット村は人間の領域に近いため、人口五万人の大都市に発展した。


「ゴブリン軍がライン村を攻撃しなかったのは、軍を整備していたからではなく、もう一つの都市を攻撃しようとしていたからだ……」


「敵が多数の軍勢をひきいていることから、食糧の消耗も大きいにちがいない、消耗戦は得策ではないから、まず他の都市を陥してしまおうと考えたのであろう」


 木の幹に立ったヒュルトロスが、自分の意見を述べた。


「いや……人数少の村を攻めるのではなく、数万の都市を攻めるのは、どう考えても得策ではないだろう」


「そうとは限らないよシィン様。ヴィット村……城というべきか、城には私たちはいませんよ。相手の城にも強者がいることは期待できるが、今の状況では相手にはいないと思います」


「つまり、万人以上の大都市の防備は、かえって小さな村ほどではないのか」


 さすが実力至上の異世界ね……


「どうなさるおつもりですか。相手の足跡から判断して、まだ間に合いそうですが、追いかけますか?」


 マーリンが横から顔を出して意見を聞く。


「まあ、ゴブリンの攻勢を町が防ぐことも期待できるが、これではかなりの死傷者が出るだろう」


 戦いの記憶がありありと残っている。


 ヴィット村の救援にも行くが、ライン村の保護も忘れてはならない。


「マーリン、あの魔法陣はいつまで続くの?」


「魔法陣はどんなに離れていても起動できますし、魔力も十分あります。創造された土の巨人が千ゴブリンの攻撃に耐えられるのは十分です」


「そうか……それじゃヴィットを助けに行こう!」


 そう言われて、俺はすぐに決断した。


 ゴブリンの速度は予想以上に速かったが、夜近く、闇の中を走っていた俺たちは、ようやくゴブリン軍の前進に追いついた。


「確認した。大将!そこにいる!」


「ああ」


 俺は木の上からゴブリンの大軍を眺めていた。


 ゴブリンは大地に一列になり、谷の中を行動していた。復数のゴブリンが掲げる松明は、夜の中を移動するゴブリン軍の姿を、夜の中をゆっくりと行動する巨大な生物のように見せた。


「進行の速さからして、一瞬たりとも休まなかったようだね……もし間違っていなかったら」


「ええ、全軍はスキルを使っている」


 実際に注意しなくても、情報探知をしなくてもわかる。光を発しているのは炎だけではなく、赤い眸はまっすぐに前を向いていて、月明かりに照らされたこんな瞳は少なくとも何千もある。


「千、いや、万以上かな」


「三万を超えているようですね」


 相手の数は想像をはるかに超えており、しかも千人の弓兵もいる……このままゴブリン軍が都市を攻めてきたら、凄まじい戦闘になるに違いない。


「間に合ってよかった。相手はこの谷をくぐるとベッテル城に到着する。じゃ、行こう……」


 俺とヒュルトロスは軍の前方にある崖の上に駆け下り、飛び降りようとした。


「待ってください!」


 しかし、ジャンプしようとしたところで、マーリンが声を出して止めた。


「シィン様!土の巨人の魔法陣が反応して、三百匹ほどのゴブリンがライン村に近づいてきたようです!」


「ゴブリンもいるのか……」


 ああ、まさか村の近くにゴブリンが残っているとは思わなかった。でもただの三百羽だけ、土の巨人なら倒すことができるだろう、と思った時、マーリンはさらに驚くべきことを言い出す。


「はい、……土の巨人はすでに戦いに入っていますが、ちょっと様子がおかしい!……土の巨人が倒されました!」


「倒された!?ゴブリンは彼らを倒すのが難しいんじゃない?」


「はい、信じられませんが、届いた反応は間違いありませんでした」


 マーリンは眉をひそめたが、使い魔が近くにいなかったから、彼女は何が土の巨人を倒したのか分からなかった。


「土の巨人を倒せる奴はいるのか……今の状況は?」


「相手は村に入って土の巨人と戦っています。結界は……破られたようです……」


 良いニュースじゃないな……土の巨人が倒されたと結界が破壊された。やはり相手には何か隠し技が存在している。


 俺は少し不安になって下の軍隊を見た。


 そちらの状況が心配ですが、こちらも見落としてはいけない。


 あちらの状況よりも、こちらの数万匹のゴブリンの問題の方が気をつけなければならない……でも本当にそうなの?


 ライン村の安否よりも、ベッテル城の安否を気にしなければならない……もし相手が私たちにそう思わせたいのなら?


 あのゴブリンの冷たい目つきを思い出す。このようなことが起こるのは決して偶然じゃない。


「……また一つ、土の巨人が倒されました」


「う……」


「大将。ライン村の手伝いに行ってくれ」


「え?」


 顔を上げると、ヒュルトロスはここに向かって軽く笑って、振り向いて下のゴブリン大軍を見た。


「ここは俺に任せておけばいい」


「……いいの?」


 相手は万人のゴブリンだぞ……簡単にできる打倒の相手ではない。無言のこの質問に、ヒュルトロスは笑って首を横に振った。


「英雄なら、この難関さえ乗り越えなければならないべきだ。それに大将もわかっただろう、このゴブリンたちは目をくらます手段だ。本当に大切なのは反対側だ」


「そう見えるけど……問題ない?」


 異世界の英雄の言葉に、俺は一歩踏み出して応えた。


「ええ、問題ない」


「わかった……じゃここは頼む。ヒュルトロス、全力で戦いおう」


 言い終わらないうちに、俺は前へ走ってきた。振り向くと、ヒュルトロスが手を上げて振った。


「……マーリン、これからは全速で戻るぞ!!」


「わかりました!任せてください!」


 そばを走っていたマーリンは前に手を振って、そばですぐに旋風が回り、最後に足に巻きついた。


「わあ、なにこれ!」


「風の魔法。これでパワーアップスピードを強化することができます!」


「そうか、助かる!」


 俺は勢いよく飛び起きて、高い木の上をあっという間に飛び越えた。


 スピードを上げた俺たちは間もなく村の近くに戻ってきたが、夜の村はこれまでとは異なり、赤々と火が村の中で燃えている。


「矢で村に火をつけたか」


 よく見ると、村外でゴブリン弓手が矢に火をつけ、村の屋根に向かって矢を放っているのが見える。


 村のほとんどの家は木でできているから、簡単に火がつけられた。


「魔物は防げても、矢は防げない……マーリン、中の様子はどうだ!」


「村人はみんな土の巨人に守られて避難しました。敵は今、村の中心にいます!」


 じっと眺めると、村の中には確かに人の死傷者は見られず、むしろゴブリンの死傷者の方が多かった。これらはすべて土の巨人の戦績だろう。しかし、敵の大きな死傷者を出した代価は、村の内外に4人の土の巨人が倒れていたことだ。


 巨人の頭部が簡単に破壊されたことから判断すると、このようなダメージを与えた奴は決してゴブリンではない。


「一体何がそんなダメージを与える──」


 マーリンと村にジャンプして、村の中心に降りてみた。でもその前に──


「シィン様!」


 叫ぶと同時に、地面から一筋の光が飛んできた。


「わあ!」


 相手の攻撃をかわしたが、俺はバランスを崩して家屋に落ちた。隣の地面に着陸したマーリンはすぐに走ってきた。


「痛い……」


「シィン様!大丈夫ですか!」


「大丈夫……さっきは何だったんだよ」


「ガ!」


 遠くの声が答えた。振り向くと、通りの向こうにいたゴブリンは長い木を持ってここを指していた。


「……まさか──」


「ガ!」


 ゴブリンは木の棒を前に指を向けると、木の棒の前からすぐに巨大な火の玉が飛んできた。


 マーリンはすぐに前に立って、手を伸ばして火の玉を呼び出し、相手の火の玉を散らした。


「ガ!」


 攻撃が防御されるのを見て、ゴブリンは凶悪な顔をした。ゴブリンの周りも騒がしくなり、彼のそばには木の棒を持ったゴブリンが数十人も出てきた。ここに向かって火の玉を打ち上げる。


「本当にゴブリン魔法使いがいるのか!」


 ツッコミながら、俺は前に飛び出して火の玉を槍で切り散らした。


「まさか結界が破壊されたのはこいつらがやったことだろ。でもこのゴブリンたちも火の玉しか使えないんだよな!」


 ゴブリンには情報探知を使ったが、このゴブリンたちのスキルは火の玉だけだった。


「やっぱり他に誰かいるのか──」


「シィン様!横でー!」


「んー!?」


 まだ反応する暇もなく、すぐそばの街から巨大なものが飛び出してきた。


「うーっ」


 槍を使って相手を止めようとしても、俺は依然として相手に家屋の中に飛ばされた。


「今度は何だ……」


 そう文句を言って前方を見ると、巨大なものが正体を現してた。相手の肌は緑色、やっぱりゴブリンか……ん?


 相手は緑だけど、ちょっと背が高いそう……?


「ほあ!!!!!」


 ほえる緑の巨人はゴブリンとはうって変わって、鎧を着た彼は巨大な木の棒を手にして、家屋に勢いよく叩きつける。


「わあ!!」


 当たった家屋は一瞬にして倒壊し、タイムリーに飛び出してこなかったら、木と一緒に埋められていたかもしれない。


「なんだよこいつ!」


「シィン様、あれはオークです!」


「オーク!?」


 なぜこんなところにオークが現れるの!?ゴブリンもオークをコントロールできるのか。


 誰も答えていないが、隣から来たゴブリンが殴られていないことから見ると、相手は確かに彼らと同じ仲間だ。


「──!」


 オークが怒鳴った。巨大な棒を勢いよく振り上げて叩きつけてくる。


「マーリン!魔法使いはお前に任せろ、こいつには俺がやる!」


「わかりました!」


 俺は後ろにジャンプしてオークの攻撃を避けた。木の棒は地面に当たった瞬間、巨大な穴が開いた。


「すごいな、どうりで土の巨人が倒されるわけだ……」


 オークの身長は家屋よりも高く、具体的な身長は大体2メートル前後だ。武器のない土の巨人と比べてみると、こいつのほうが明らかに勝っている。


 だが、土の巨人を四人も倒すほど、こいつは強いのか。


 と思いながら、手にしていた槍が紫炎斬りを発してオークに命中した。こいつには何のスキルもない、このような攻撃を止めることはできない──しかし。


「ん?」


「──!」


 紫の炎に切り落とされたオークは無傷で、再び棒を前に振った。


「無効だって??」


 紫炎斬に斬られてもダメージを受けなかったのか?これまでは倒されなくても、俺の攻撃で当たったやつはダメージを受けていたはずなのに、相手は痛みを見せるどころか、鎧にも傷ひとつない。


「これはいったい?!」


「ほーーー!」


 後ろにジャンプして相手の木の棒をよけ、槍で相手の保護されていない頭部に突き刺した。しかしヘルメットに保護されていない頭部には無傷のままだった。


 体を前に倒したオークは態勢を立て直すことなく一歩前に出て、そのまま突き進んできた。


 まずい――


 街を遮っていた巨体がぶつかってきて、俺を家の中に突き飛ばす。しかし、それでも相手は止まらず、目の前の敵を五軒目の家に突っ込んでようやく止まった。


「ほーーーーー!!!」


 これで相手を倒すことができると確信し、オークは満足げに怒鳴った。


「うるさい!」


 家屋の残骸の煙の中から現れた銀の槍はオークの頭を強打し、相手を吹き飛ばす。


「まったく、もう少しで気絶しそうになったね──」


 すばやく相手に突進して、銀の槍先の光は相手の胸に向かって前に出す。


「ほーーー!!!!!」


 光を見て後退したオークが避けようとすると、相手もその手を恐れているようだが、もう遅い。


 銀白の輝きは確かにオークに当たっており、紫炎斬りを防ぐことができても、「銀河激流」を防ぐことはできないはずだ。


「ほ!!」


 本来なら相手は瞬間的に倒されるはずだが、相手はむやみに怒鳴っているだけで、倒されそうには見えない。


 いや、相手は傷つけられていない──。


 光が散った後、鎧が元のままであることを見ると、攻撃が功を奏していないことがすぐにわかる。


「ほーーー」


 オークがむやみに振った木の棒が横に飛んできて、俺は槍を持ち上げて相手の攻撃を遮り、後方の地面に押し飛ばされた。


「ヒュルトロスの力を借りても倒せないのか……一体どういうこと……」


 こんな奴がいたら、いつでも村を打ち壊すことができるはずなのに、なぜ軍隊を他の場所に派遣するのか……。


 その時、周りの炎が上に爆発し、振り向くと、燃え上がった神社を見て、俺たちが村の真ん中に来ていることに気づいた。


 燃え盛る神社のそばを、あるゴブリンがゆっくり歩いてきた。


「あいつだ――」


 何も言う必要はない。相手が他のゴブリンとは違う冷たい顔をしているのは簡単にわかるが、こいつがゴブリンの指揮官。


 相手の指揮官がそこにいる。やはりベッテル城へ向かうゴブリン大軍は声東撃西(せいとうげきせい)か!?


「人間……お前たちは一歩遅れて来た」


「どういう意味!?」


 ゴブリン指揮官は答えなかったが、2回の大きなほえる声しか聞こえなかった。


 顔を上げると、2人のオークが村の反対側、マーリンの方に向かって飛び込んだ。


「マーリン……」


 振り返ってゴブリン指揮官に向かって、俺は一歩前に進むと、オークはすぐに前を塞いだ。


「もう間に合わない。一時はお前たちが優位に立っていたが、この戦いは俺たちの勝利だ。お前たちも何をしても無駄だ」


「それはどういう意味だ──」


「ほ!!!!!!」


 答えてくれたのはオークだ。オケが巨大な木の棒を振り回すから、俺はすかさず槍を構えたが、今度は相手の力が一枚上で、俺を一軒家に叩き込んだ。


「う……まさか一日に何度も飛ばされるとは」


 しばらく離れていた意識がようやく戻り、俺は頭を振って顔を上げた。


 近づいたオークは屋根をめくり、手にした木の棒を持ち上げた。槍を掲げて抵抗しようとしたが、槍身にはとっくに銀色の光がなかった。


「ヒュルトロスの力は解けたのか……?」


 相手の攻撃は力を解除できるほど大きいか?然らば――


 巨大な炎の槍はオークの体に当たって、オークは手を振って火炎の槍を散らして、そして一声吼えて、体に満ちた力も退き始めた。


「マーリンの力も無効か」


 いったいどういうこと……一歩遅れて来た、どういう意味?まさか彼らは村から……その神社から何かを手に入れたのか――


 答えはまだ出ないまま、前方から巨大な棒が振り下ろされた。


 そして、一陣の風が現れた。

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