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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
一章
23/42

第22話 依頼

 ゴブリンとの戦いはとても順調だ。


 黒い鎧と頑丈な体があってちょっと怖いけど、ゴブリンには魔法を防御する手段がないから殺しやすい。


 相手を殺すときに『魔力放出』を使って相手を殺すから、ゴブリンの鎧を攻撃するときに槍が前の長剣のように壊れる可能性がある。


 だから今回はこのようなことを避けるために、この槍には特別な加工が施されている。


 まず、槍に俺の魔力を付加して強化し、槍が壊れにくいようにした。その後槍に火炎魔法を巻き付けて、相手の鎧が槍先に触れる前に溶けるようにした。このように二重の防御を合わせて、この槍はまるで戦いの向かうところ敵なしになった。


「やあ!」


 立ちはだかるゴブリンをすばやく突き刺し、俺はゴブリンの仮陣地の中央に向かって走った。


「人間!」


「殲滅ーー」


 両側はすぐにゴブリンに阻まれた。


 陣地の中央に人が入り込むのを必死に阻止している様子から察するに、この陣地の中央には何か大物がいるのだろう。


 遠くにある陣地の中央に目をやると、幾重にも重なったゴブリンの後ろから特殊なゴブリンが俺を睨んでいた。


 相手の目つきは一般的なゴブリンとは異なり、その魂の黄ばんだ瞳には他のゴブリンにはない眩しい輝きが輝いていた。輝きが何であるかは不明だけど、その輝きが何を意味するのかはかすかに察知できる。


 あいつは知恵がある。


 彼が知的な存在であることを証明する確かな証拠はないが、彼が身につけている鎧の違いとゴブリンに幾重にも囲まれて保護されていることから、こいつはたぶんこの軍の指揮官だと確信している。


 この軍の指揮官を発見したからには、やるべきことは一つだろう――


「倒すってことだよ!」


 両側にいたゴブリンはそれぞれ俺に攻撃をかけてきた。


 剣が首に向かって攻撃し、刀が腰に向けて平切りする。襲いかかってきた二つの凶刃を見やると、俺は冷静なまま両手を伸ばし、二人のゴブリンに反撃した。


 左手から出た火の玉が左のゴブリンの顔に炸裂し、右のゴブリンは槍で刺された。


 ゴブリン2人を倒して再び進み、前方のゴブリンたちは一斉に前に進んで俺を止めようとした。


 やっぱりあいつが指揮官だ!


 上半身が燃えているゴブリンを足で蹴り飛ばし、彼らに守られているゴブリンを眺めた。


 すでに何人ものゴブリンを殺し、同時に十分に接近しているのに、ゴブリンの顔は相変わらず冷たく、まるで自分のことなどどうでもいいようだ。


 仲間が殺されても心を痛めないのか。仲間はお前のために戦っているよ!


 思わず相手にそう言ってほしいと思うが、でも俺の立場から言う資格はない。だから俺は口を開かずに、相手に向かって前進し続けた。


 時間が経つにつれて、ゴブリンも減り続けている。マーリンに倒されたゴブリンの弓兵を含めて、すでに50人以上が倒されている。


 今ではゴブリン軍は、完全な包囲網すら組めなくなっていた。破綻したゴブリンの後方にいるゴブリン指揮官を眺めていた。相手は相変わらず反応しない。


 まさかこいつはただの置物……まあ、どうせ行けばわかる!


 俺はゴブリンの間の脆弱な隙間を注意深く見つめ、そしてゴブリンがマーリンの炎で動いた瞬間に前に突進した。


 ゴブリンの指揮官との距離は一気に縮まった。


 本陣にいるゴブリンは数人しか残っていない。相手の指揮官は本陣の中央に立ち、周囲には4人のゴブリンだけが彼を守っていた。


 どんな反応を見せるか見せてーーー!


 俺は地面に向かって力いっぱい飛び上がって、空から相手に向かって槍を突き刺した。


「シィン様――!」


 その時、後ろからマーリンの慌ただしい叫び声が聞こえた。


 どうした!?


「ふん!」


 次の瞬間。マーリンがなぜこんなに慌てているのか理解した。


 目の前のゴブリン指揮官の表情が変わる。戦いの中で初めて見せた笑みだった。得意と残忍さを含んだ歪んだ笑みだ。


 その笑顔が現れた瞬間、周りの陣地にたちまち変化が現れた。


 仮設の木の塀が倒され、そばに箱が置かれても炸裂した。箱の中と塀の向こうには、ほかでもないゴブリンの兵士たちが現れた。


 援兵!?


 いいえ、援兵じゃない。ゴブリンは箱の中に隠れて、駆けつけたのは援兵ではなく、最初からここに待ち伏せしていた予備部隊だった!


 しかしなぜ今になって予備軍を使ったのか、この時に予備軍を使っても劣勢を逆転させることはできない。罠かーー


 『思考加速』おかげで、短い間にこのような思考をした。


 相手が何をしてるのかは不明だが、指揮官を倒せば終わりだ!


 そんな思いで指揮官に槍を突き刺したが、次の瞬間、前方に巨大影組が現れて行く手を阻んだ。


 ここは空だよ!?


 前に立ちはだかっていたやつに顔を上げると、前に現れたのはやはりゴブリンだ。相手の体は大きく、目には異様な赤い光が輝いていた。


 こいつは――


 ゴブリンは目を赤く光らせ、俺を打ち砕くような勢いで巨大な剣を振り下ろした。


 俺はすぐに相手の攻撃に反応し、限界を超えた動作をして体をひねって相手の攻撃を避けようとした。


「うーっ」


 だがやはり避けられず、攻撃は脇腹をこすり、俺は相手に巨大な剣で地面に叩きつけられた。


「やった!」


 地上で戦闘を眺めていたゴブリン将軍は喜びの表情で叫んだ。彼は何の弛みもなく、すぐに周りのゴブリン軍に叫んだ。


「攻撃!人間を殺せ!」


 彼の呼応で、周囲にいたゴブリンがどっと押し寄せてきた。


 ゴブリンに囲まれて、ゴブリン将軍は自信に満ちた笑みを浮かべた。


 そこに取り囲まれた人間はもはや反応せず、絶対に殺されてるだろう。彼の前に立っていた赤い目ゴブリンも同じ反応で、ゴブリン将軍の前に立って何の動きもしなかった。


「人間……死んだ」


「誰が死んだ?」


 彼らの前では小山のようになっていたゴブリン軍は一瞬にして炎を上げて炸裂した。


「なーーー!?」


 ゴブリン司令官は驚いたように口を開けた。


「ふ、危ない。炎で身を守らなかったら、今ハリネズミになったね」


 周りに飛び散るゴブリンを少し見ると、彼らが手にしていた武器の前半部分が溶けているのがわかる。


 ゴブリンが俺に刃を刺そうとすると、武器は高温の炎に溶けてしまうから、彼らの攻撃はそばに着く機会さえなかった。それから俺は炎のカバーを外に広げ、周りのゴブリンを吹き飛ばした。


「人間は……まだ生きてる」


「おい!おまえ、前のゴブリンだろ!」


 槍を伸ばして赤目のゴブリンを指す。


 間違いない。昼間に会ったのは初めて、だがこいつは確かに昨夜見たの、あの俺を川に落ちたゴブリンだ。


「意外な再会だなおまえ!」


「人間、殲滅――!」


 赤目ゴブリンは気がつくと、喜びの笑みを浮かべた。すぐに手にした大きな剣を持って襲いかかってきた。


「何笑ってるの!まぁ……この攻撃は腕があれば受け止めてみよう!」


 赤目ゴブリンの攻撃に対して、俺は相手に突くことを選ぶのではなく、まず腰側に槍を置いて、続いて前に振った。


 赤く輝く銀色の槍は横に振り、槍にかかった炎は振られるように前に飛び出し、前に形成された半円形の紫色の炎。


「人間――」


 赤目ゴブリンは炎を無視して突撃し、炎が彼にダメージを与えないと思っているようだ。


 まぁ、狂暴化ブリンは確かに炎には耐性があるね。でもそれは違うな。


 赤目ゴブリンの腹に半円形の紫色の炎が当たり、赤目ゴブリンは口から血を吐いた。しかしそれはまだ終わらず、半円形の紫色の炎が深く入り込み、赤い目のゴブリンの体を真ん中から断ち切る。


 この技は炎の魔法と魔力を組み合わせた新しい必殺技。放たれた炎が赤紫色の炎であることから、俺はこれを『紫炎斬』と命名した。


 紫色の炎に当たった赤目のゴブリンは苦しげな声を上げ、上半身を後ろに飛ばして遠くの地面に倒れる。


「ああ……」


 赤目のゴブリンは意識はあるが、しばらくしたら死んでしまうだろう。何しろ彼は炎耐性があるだけで、体を再生するスキルはない。


 そう思いながら、振り返ってゴブリン指揮官の反応を見てみたいが、ゴブリン指揮官の姿は見えなかった。


 どういうこと?あいつはどこに行った!?


 相手が陣地内に消えていくのを見て、俺はすぐに外を見て、戦場の端で相手の姿を見た。


 彼はいつそこに行った?しかもあいつは外に走っている……逃げようとしたのか!?


 まるで俺の考えに合わせているかのように、ゴブリン指揮官は頭も戻らずに前方に突撃し、振り向くつもりはなかった。そしてゴブリン指揮官は逃げているだけではなく、逃げながら叫んでいる。


「攻撃!」


 おい!お前は指揮官だろ!部下を置いて逃げるなんて!


「逃げる時に部下に攻撃を命じるなんて、ばかな……」


 ゴブリン指揮官は逃げるスピードは速いが、追いつけない距離ではない。今追いかけさえすれば、たぶん彼を追うことができるだろう。


「はあ……おまえ、根性なさすぎだろ……」


 ゴブリンたちの心の中にも、そういう上司がいることに困っていたのだろうと思う。


 そう思いながら振り向いてみると、後方の様子が少しおかしいことに気づいた。


「人間ーーー!」「殲滅ーーー!」


 後にいたゴブリンたちは一人一人テンションが上がってきたが、どうしたこの状況!?


 よく見てみると、そこにいたすべてのゴブリンの目が赤く光っていて、さっきの赤目ゴブリンと同じ状態だった。


「あいつはここのゴブリンをみんな狂暴化させたのか!?」


 そう声を出すと、そこにいたすべてのゴブリンが一斉に振り向くと、現場はたちまち不気味な雰囲気を漂わせた。


 これ……ちょっと怖いね。


「えっ、あのーー」


「人間!!!」「殲滅!!!」


 話を終えるのを待たずに、狂暴化したゴブリンたちが怒鳴りながら飛びかかってきた。


「わあ!!!」


 重い足かせが解かれるように、狂暴化したゴブリンが次々と超高速で襲いかかってくる。『思考加速』を使ってる俺でも無理に対応するしかない。


「シィン様!」


 マーリンは遠くから炎を放ってゴブリンを攻撃し、ゴブリンの一部の注意を彼女に向ける。


「マーリン!そこを頼む!ここのゴブリンは俺に任せて!」


「わかりました」


「炎よ!」


 狂暴化したゴブリンを炎の魔法で攻撃したが、ゴブリンたちは耐性があるため魔法の効果は微々たるものだった。


 魔法の効果が薄いから、俺はすぐに半円状の紫色の炎を放ってゴブリンを一人倒した。


「ひとつだけ倒す!?」


 少し周りを見回す。ここで暴れ回るゴブリンは少なくとも200人以上!


「冗談でしょ……」


「人間!!!」


「くそっ!!」


 襲いかかってくる狂暴化したゴブリンを見て、俺は鬱陶しく反撃した。


 ◇


「疲れた……」


 1時間後、俺は石の上に座ってため息をついた。


 狂暴化ゴブリンと戦ってから1時間後、俺たちはやっとすべての狂暴化ゴブリンを倒した。


「シィン様、大丈夫ですか?」


 そばに立っていたマーリンが心配そうな目でこちらを見た。


「少し疲れてる以外は大丈夫だよ……」


「はっは、大将はご苦労だったな」


 左手に立っていたヒュルトロスが腰に手を当てて笑っている。


 相手の人数は数百人以上なので、俺たちはゴブリンの戦いで何度も危険にさらされそうになったが、幸いなことにヒュルトロスがタイムリーに駆けつけたから、やっと相手に制圧される窮地を免れた。


「お前たち疲れないの……?」


「疲れません」


「全然疲れないよ!」


 マーリンとヒュルトロスを交互に見た。彼ら2人は俺と違って、顔に余裕があり、戦場を経験したばかりの姿は全くなかった。


「マーリンは今日呼んだんだからいいけど、なぜヒュルトロスはまだあんなに元気なんだ?」


 ヒュルトロスは朝、俺と一緒に戦った後もトーレを村に送り返し、トーレを村に送り返した後も手伝いに来た……こんなふうに走っても疲れるだろう。


 ヒュルトロスの顔を見上げてよく見ると、相手は満面の笑みを浮かべていて、本当に強がりをしていないようだ。


「戦場を走り回るのは普通のことだからね!」


 ヒュルトロスは微笑みながらこう応えた。


 それは異常だろう。どんな状況で戦場を走り回る必要があるのか。


 ヒュルトロスの考えを全く理解できない。彼は本来の世界でどのように戦ってきた……


「まあ……どうせ疲れなければいいが、これから相手の兵士を埋葬するんだよ」


 振り向いて丘のように積み上げられたゴブリン兵たちを見た。ざっと人数を計算してみたが、相手の人数は四百人ほどいるようだ。


 こうして大人数のゴブリン軍は、さっきこの森の中で全滅させられた。今の森の中は平穏だが、血にまみれた地上の様子は、先の戦いが惨憺たるものだったことを物語ってる。


「きれいにしないとダメだね。ヒュルトロスを頼む」


「ああ、わかった!」


 ヒュルトロスは速やかにすべてのゴブリンを積み上げた。彼がそれを終えると、俺はマーリンと一緒にゴブリンたちの前に出た。


「すま……」


 そう言いながらマーリンと共に手を伸ばし、ゴブリンたちに炎の魔法をかけた。 


 彼らを埋葬するための余裕のある場所がないし、俺も場所を探して埋葬する時間がないから、速やかに埋葬する方法を選んだーー火葬。


「よし、それでいい」


 ゴブリンたちの墓を建て、水の魔法で血痕を掃除した後、戦場の掃除はようやく一段落した。


 遠くの村を見ていると、遠くの村は無事だった。


 ここで彼らの指揮官を牽制したから、村は攻撃されなかったようで、ヒュルトロスも村が攻撃してこなかったから、すぐに助けに来ることができたのだ。


「彼らの攻撃を止めた……か」


「今度はゴブリン軍を撃退したが、大将の機嫌がよくないようだな」


 ヒュルトロスはそばを歩いていて、俺の表情から気持ちがよくないことに気づいたようだ。


「そうだね。あのゴブリン指揮官を逃がしたからね」


 俺の気持ちがよくないのは、ゴブリン指揮官を捕まえなかったからだ。


 相手は全軍のゴブリンを一斉に攻撃させたから、彼を捕まえる時間はなく、その後探しても彼の姿はなかった。


 相手の目つきを思い出す。相手は冷ややかな顔をしているだけでなく、いつでも同族の命を犠牲にできる冷静さを持っていた。


 早く彼を見つけないと、何が起こるか分からないな。


「まあそうは言っても、相手の軍隊はすべて俺によって殲滅されたわ。相手に何か知恵があっても発揮できないだろう?」


 ヒュルトロスは気持ち良い表情でこう応えた。


「いえ、相手は考える力を持つ魔物です。このまま放っておくのはいいことではないと思います」


 マーリンも同様に不安を抱いていた。


「相手の軍隊は俺たちによって殲滅されたが、ゴブリン軍がすべて殲滅されたわけではないだろう。見えないところに軍がいるかもしれない」


「そんなに大げさなのか……」


「とにかく気をつけたほうがいい。他にゴブリン指揮官がいるかもしれない」


「わかった~」


 このように雑談しながら、すぐにライン村の入り口に到着した。


「おお!」


 村の入り口で、前に会った青年ジャックは遠くから手を振っていた。


 ヒュルトロスとマーリンを連れてジャックの前に出た。ジャックは後についてきたヒュルトロスを見て、突然何かを理解したかのようにうなずいた。


「この兄貴やっぱりはあなたたちの仲間ですね。さっき、トーレを連れて帰ってきたのを見たとき、シィンたちの仲間ではないかと推測していました」


「え、どうしてそう思う?」


 相手が俺とヒュルトロスの関係を簡単に推測できるとは思わない。


「この兄貴がトーレを連れて帰ってきたからでしょう。トーレが外に出た時はシィンが人を探しに行った……だから俺は彼がシィンたちの仲間だと思っています」


「そうだったんか……確かに俺たちは仲間なんだ」


「やっぱり!」


 ジャックは嬉しそうにうなずいたが、すぐに苦笑した。


「さっきこの兄貴がさっき空から入り口に降りた時に起こした地震みんなを怖がらせましたね」


「地震?」


 振り向いてヒュルトロスに目を向けると、相手はすぐに振り向いて目をそらした。


「ははは~急いでるからね~」


「まったく……みんなを驚かせてごめん」


「いや、わざとやったわけではないし、それに兄貴はさっきあんなに村を飛び出すのがかっこいいですね。ゴブリンと戦う手助けをしに行ったんでしょう?」


「あ、知ってるか」


「うん、トーレがさっき話してくれました。ゴブリンの軍が村を攻撃するのを止めなさいと言っていましたよ」


「信じてるのか?」


 前に村のみんながゴブリン軍のことを信じていなかったことを覚えている。


「最初に信じていませんが、兄貴が現れたのを見て、このことを考え直さなければならないと思いました.....」


 ジャックは苦笑して首を横に振った。


「ゴブリン軍と戦って危ないのではないかと最初は心配していましたが、でもみんな無事だったみたい、本当によかった……あ、もう一人います……」


 ジャックはそう言いながら、好奇心の目で後ろのマーリンを見ていた。


「あの魔法使いも仲間か?」


「うん」


「強そうですね……ところでこのお二人は一体何者なんですか?ここを訪ねてきた冒険者ですか……?」


「そうよ!俺たちは森の中で出会った。彼らはヒュルトロスとマーリン。ここを訪れる冒険者だ。二人はゴブリンを倒すのを手伝ってくれた」


 俺は事前に考えておいた設定を出し、ヒュルトロスとマーリンをジャックに紹介した。


「よろしくお願いします」


「よろしくね!」


「あ、そうですか……わかりました。ジャックと申します。村を守ってくれてありがとう」


 ジャックは自己紹介をして頭を下げてお礼を言った。自己紹介を終えた後、ジャックは顔を上げて口を開いた。


「では一緒に来てください。村長さんは聞きたいことがたくさんあります」


 ジャックは俺の設定を疑うこともなく、簡単に俺たちを村に入れてくれた。


「大将、そんなキャラ設定も村長に説明しなきゃか?」


「当たり前だ」


「これではばれないのか。俺たちみたいな人が、いきなりここに来ることはないと思うからな」


 ヒュルトロスは彼の疑問を口にした。


 確かに、まず俺が昨日この村に着いて、今日に続いてヒュルトロスとマーリンのような2人の強者が来て、村長から見れば不自然なことに違いないだろう、冒険者という言い訳ではごまかすのは難しいが――


「もうどう対応するか考えたから、安心して任せて!」


 数分後、俺は村長邸のソファーの真ん中に座り、ヒュルトロスとマーリンはそれぞれ両側に座っていた。真向かいの村長はにこやかな顔をしていたが、彼が持ち上げた眉から少しの疑惑を垣間見ることができる。


「ということは、この二人も、用事で訪ねてきた冒険者ということですか」


「そうです」


 やっぱ村長はこの拙い言い訳に疑問を抱く。でもこの時は隙を見せてはいけないから、俺は冷静に答えた。


「魔物で有名な森の中の珍しい村だから、たまにはそういう冒険者が来てもおかしくないだろう」


「……なるほど。でもこの時期に人里を行き来する馬車はいないんですね。こんな時期にわざわざお二人が来るとは……」


 えっ!?そうなの?


 この時期にこの村を往復する馬車がないとは思わなかった。


「え、二人とも強いんだな。だから徒歩でここに来るのも普通だろ!」


「ええ、確かにさっきは大きな音が聞こえていましたね……」


 村長はさっきもヒュルトロスが村に飛び込むのを聞いたようだ。


「そんな冒険者は一体ここに何をしに来たのだろう?」


「はは……当然冒険に来たんだよ!」


 今もこの設定を最後まで続けるしかないだ……。


「冒険……わかりました」


 村長はまず目を閉じ、それから後ろのライトを振り返った。


「ライト君、どう思う?」


「冒険者が冒険に来るのは普通のことだから、不思議ではないと思います」


 ライトは俺の言い訳を嗤うのではなく、真剣にうなずいた。


「うん、仕方ない。冒険者って確かにそういう存在だよね」


 ライトがそう言うのを聞いて、村長は笑って頷いた。


 うん?彼らはこの言い訳を認めたのか?


「ふふ、冒険者はいつも人を助けるのが好き……」


 村長は笑って俺を眺めていたが、ライトも村長の言い分にうなずいた。


「この時冒険者が現れて私たちを助けてくれたのは少しも不思議ではありませんね」


 なるほど、村長たちはこの言い訳のところどころに奇妙な点があることを知っていても、それ以上は訊こうとせず、俺を信頼しているから、ヒュルトロスたちの身元を問わないつもりなのだ。


「ええ。それはさておき。私はここで、あなた方が村を守ってくれたことにお礼を言わなければなりません」


「息子を取り戻してくれてありがとう」


 村長はうつむいて、ライトもヒュルトロスにお礼を言った。


「お安い御用です」


「ははは!いくら言ってもゴブリンに村を攻めさせるわけにはいかないな!」


 ヒュルトロスとマーリンは相手からお礼を受けた。そしてお礼を言った後、村長は顔を上げて真剣な表情を見せた。


「ではもう一つ処理することがあります。シィン、ゴブリン軍のことは……」


「ええ、すぐに戻ってきたのは、このことを説明するため」


 最初は村長の表情がまだリラックスしていたが、俺の説明を聞けば聞くほど眉間にしわが寄ってきた。相手がB級以上の実力と狂暴化したスキルを持っていると聞いて、村長の顔色はさらに悪くなった。


「……そういうこと。森の中にはゴブリンの軍隊がたくさんいるかも。まだ彼らを指揮している人を倒していないから、彼らはいつでもこの村を攻撃する可能性がある」


「B級のゴブリンが数百、数千人もいるのか……。村にはそんな相手に対抗する力はありません」


 村長は困ったように首を横に振った。


 村長の言うとおり、あのゴブリンたちは俺たちも倒しにくいし、村の警備員を敵の攻撃に抵抗させるのは不可能だ。もし軍隊が村を襲ったら、おそらく彼らは全滅するだろう。


「……一刻も早く村の人を撤退させなければなりませんね」


 このような危機に直面して、村長が最初に考えたのは村の人々だった。さすがにこの村の人数は少なすぎて、これ以上の損失はあり得ない。


「いや、そんなことしなくていいよ!」


「シィン君?」


「村から撤退する準備は必要ない。俺たちはこの村を守るから!」


「この村を守るのか」


 村長は怪訝な視線で俺を見つめ、続いて左右にいるヒュルトロスとマーリンを見やった。ライトも怪訝そうな顔をし、そして口を開いた。


「私たちを守っても何の得にもありませんよ?……それに、今は適切な報酬も出せません……」


 村長たちの考えは、ゴブリン軍を天災とみなし、村人を避難させることで脅威を避けようとしたのだろう。


 村を無条件に守るという事実はちょっと納得できないが、ましてや敵はB級のゴブリン。


 しかし彼らは今、村を守るための人手が一時的に見つからず、助けてくれる人がいても報酬を支払うことができないので、村を放棄するという決定を下した。


 村長たちは俺たちがこの村を守るのを手伝わないと思っているのだろう。しかしーー


「大丈夫、報酬がなくても大丈夫!」


 ヒュルトロスは笑ってこう答えた。


「でも相手は数の知れないゴブリン……」


「そんな相手を恐れません」


 ライトの言葉に、マーリンはてきぱきと応えた。


「シィン君、本当に手伝うつもりなの?」


 村長は鋭い目でこちらを見て、考えを垣間見ようとしたようだ。おそらく彼らの目には、俺たちが無償で手伝うことはおかしいだろう。


「そうだ、村を守るために無償で手伝うつもりだ。しかも報酬は一切受け取らない!それに村長だって言ってたじゃないか……」


「言ってた?」


 村長が困惑した表情をしているのを見て、俺は笑って答えた。


「冒険者は人助けに熱心な存在だよ!」


「ー―」


 村長は俺に目を見開いた。村長はまず数秒呆然としていたが、それによって大笑いした。


「ははは!!!――わかりました!では、ここで正式に依頼しましょう!シィン、この村を守ってください!」

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