表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界英雄監獄  作者: 千蒼
一章
2/42

第1話 管理者1号

 なんか気分が悪い。


 とても悪い。


 寝ているのに、頭の上に光源が顔に当たっているから顔の上で眠れない。


 思わず布団で顔を覆いたくなったけど、ベッドに布団がないことに気づいた。


 あ、思い出した。ここは監獄で、布団はなかったね。


 このことを思い出して、俺は意識を取り戻した。


 俺は浅野綾人、ハメられて監獄に入ったついてない奴だ。極悪非道な犯罪者として牢屋に入れられた俺は、当然ながら何もいい待遇を受けることはできない。


 確か6時に起きろと言われたっけ……つまり今顔に当たっている光も、俺を呼び覚ますためにわざと顔に当たっているのだよね?


 もしそうだとしたら、この監獄の警備員は本当に情けない。


 感慨しながら、目を開けた。


 目を開けて、警備員がそばで懐中電灯で顔を照らしているーーそんなことは起こらなかった。牢屋の中には俺が横になっているベッドと便器しかなく、余分な照明設備はない。じゃ顔に照射された光源はどういうことか。


 光の出所を確かめようとまばたきをした。そして気づいた。牢屋の真ん中の宙に、きらめく小さな光の玉があった。


 その光の玉は野球の大きさしかないが、明るい光を放って牢屋内を照らした。


 明かり代わりの光源を見上げてみると、この光源は何も支えていないまま宙に浮いている。


 この現象がどうなっているのか分からないが、監視している牢屋の警備員はすぐにこのことに気づき、それを処理してくれるはずだろ。


 そんなことを考えながらベッドから起ち上って、牢屋の玄関に目を向けた。そしてもう一つ奇妙なことに気づいたーー。


「あれ?」


 牢屋の鉄の扉が消えた。


 外の光が差し込んでくるのを見て、俺は黙っていた。


 これは何かの悪戯だか。いいえ、悪戯も扉を取り外す必要はないだろう。


 何か問題があったのではないだろうか。例えば牢屋扉の緊急修理?


 どんな状況なのか分からないが、刑期が重くなるのを避けるために、俺はおとなしく牢屋にいることを選んだ。


 おとなしくここにいて逃げないなら、たぶん減刑できるよな?


 そう思ってベッドにおとなしく座って、監獄の関係者が来て状況を説明するのを待っていた。でも……


「誰も来ないな……」


 1時間ほど待っていたが、依然として誰もここに来ていなかった。


 待ち時間が長かったから、喉がとても乾いていることに気づいた。体も食事をしていないので少し弱っている。


 人間は定期的に水分を補給し必要ような気がしたのを覚えている。もしずっと誰も来なかったら、俺はここで死ぬだろう……。


「このままじゃダメだ……」


 このまま水不足で死なないようにするためには、たとえ刑が重くなる可能性があっても、水を探して飲む方法を考えなければならない……!


 そう自分を説得して恐る恐るドアに向かった。


「よし!大丈夫だ!」


 一歩踏み出して、俺は1日未満住んでいた牢屋から出て行った。


 本来ならば、俺のような危険な犯罪者が勝手に行動するのは危険で、、すぐにでも誰かがやってくるはずだ。しかし牢屋を出ても、誰も俺を捕まえに来なかった。


 いや、捕まえに来てくれない問題じゃない……誰もいない……。


 周囲の状況を見渡す。この監獄は静かで、人の気配は少しもない。


「おいおい……どうして一人もいないんだ……」


 どこに行っても、囚人や獄卒は見られなかった。


 そして、どの牢屋にも俺の牢屋と同じようにドアがなく、牢屋の中にも同じように何もないことに気づいた。


 修理するにしてもここにあるすべてのものを持ち去ることは不可能だろう。囚人を含む全員が強制的に退避させられたような気がする。


「まさか俺が寝ている間に、みんなはここから退避したのか?……」


 外で何か天災のようなことがあった可能性があり、みんながここから撤退した。そして彼らはここから撤退する時、俺という人の存在を忘れた……。


「なんて不運なんだ……」


 溜息をこらえた。今文句を言っても始まらない。ここは危険かもしれないから、早くここを離れるべきだ。


 でもみんなと一緒にここを出ていこうと思っても、それがなかなかできない。


 この監獄は本当に複雑だからだ。


 この監獄は複雑な城のように、どこも似たような道。監獄の平面図通りにここを出ようとしてもだめだ。そんなものまで取り壊されているのだからだ……。


「お、ここは?」


 出口を探しているうちに、特別な部屋にたどり着く。


 なぜここが特別な部屋だと言うのか、ここを自分の目で見ればわかる。


 この部屋は装飾された豪華で、ここにはきれいな絵とかっこいい鎧だけでなく、赤い絨毯が敷かれている。貴族の居所にいるような気分にさせられる。


 でもそれは俺がこの部屋が特別だと言った本当の理由ではない。この部屋が特別だと言うのは、部屋の真ん中の宙に、巨大な光球が浮かんでいるからだ。


 その光球はまるで牢屋内の光球拡大版のようだ。もし部屋の中の光球が野球だとしたら、その光球は巨大なバスケットボールだろう。


 このような宙に浮いた発光光球は実に不思議な現象だ。


 昔ながらの映画であるならば、おそらくこの球はここの人を消した犯人だろう。


 光球を観察していると、光球が急に回転した。


「ん……?」


 光球には顔がないのに、光の玉が回ってきたとき、明らかに相手がこちらを見つめているのが感じられた。


「やばいなこいつ……入ったらきっと攻撃される」


 俺は振り向いて、前の階段に向かって走って行った。


 ここから行けば、すぐに1階に着くはずだ。これでここから出られる!


 そう計算して階段を下りたが、


「まさか……」


 階段の先に現れる景色は、光る球体の部屋への道。


 同じタイプの部屋かもしれないが、中身はそっくりだ。この部屋は確かにさっき見た部屋なんだ。


 すぐに上の階に向かって走ったが、上の階に着くと、上の階の道も同じ景色になっていた。


「……」


 これはこの部屋に必ず行くという意味なのだろうか……。


 俺はため息をついて、あきらめてその部屋に向かった。


 赤いじゅうたんを踏んで部屋に入った。部屋に入ると攻撃されると思っていたが、そんなことはなかった。光球はおとなしく元の位置にいて動かない。


「でもこれは壮観だな……」


 光球は小さな太陽のように宙に浮いて光を放つが、少しも熱を感じない。


「ここに誰か来るとは」


 俺が光球に近づいた瞬間、光球が音を立てた。


「喋、喋った!」


「話ができるのはおかしいですか?」


 その音は合成された機械的な音に似ていて、テレビで見たことのあるAIロボットを思い出した。


「ここに来て何か質問はありますか?」


 うん……この光球はコンピューターのAIのような感じがする。まさかこの光球は実はこの監獄のコンピューターのAIで、ここは監獄の管制室?


「あなたはこの監獄のAIか」


「AI?」


 俺の質問を聞いて、光球の語調は疑惑を持った。


「AIが何なのかわかりません。私はこのグランニタ城の管理者、通称管理者1号です」


 システム設定の関係なのか、管理者1号というこの光球は、この監獄を城と見なしているようだ。でも相手が管理者である以上、俺をここから出させる方法があるはずだ。


「あの……すみません、どうやってこの監獄を出ますか?」


 あ、しまった。


 俺はこの監獄の囚人。もし相手に意味を誤解されては困る。相手が警察に通報するかも!


 戸惑っている間に、管理者1号は穏やかに答えた。


「この監獄を出ますか?このグランニタ城を出たいの?」


「ああ……はい、みんなが去っていったから、ついていきたいんだ!」


 ただ彼らと一緒に出たいだけだ!監獄から逃げないよ!俺は管理者1号にこう言って、相手が理解してくれることを望んでいる。しかし、


「みんな?彼らと一緒に出たい?誰との?」


 管理者1号は俺の言ってることが理解できないようだ。


 詳細な説明しなければ、相手が正確な答えをくれないかもしれないと推測しているから、詳細を説明してみた。


「ここには前に誰かがいたんじゃないか。彼ら昨日出て行ったんだから、追いつこうと思ったんだ」


「昨日出て行った?昨日ここを出た人はいないよ?」


「あれ?」


 相手がこんな返事をしてくれるとは思わなかった。


 まさか俺は長い間寝ていたのだろうか。いや、たしか四時間は眠ってたけど……それともこのAIは俺をだましているかな。


「じゃあ聞いてみよう、この前誰かがここを出て行ったのはいつのことだ!」


 そう尋ねると、相手はみんながいつ去ったのか答えてくれるはず!


 いい質問をしたと思った。しかし相手は少し考えて恐怖の答えをくれた。


「この前、ここを出て行った人がいたのは、100年以上の昔のことです」


「えっ――」


 俺は驚いて目を大きくした。


 100年前のこと、それは俺が100年以上寝ていたことを意味するか?いや!そんなに長くは生きられない。やはりこのAIはおかしい!


「ふふ、やっぱり嘘をついているんだね。俺は昨日この監獄に入ったばかりなのに、みんなはどうして100年以上前に離れたのだろうか。それとも俺が100年以上寝ていたと言うのか」


「昨日ここに入ったばかり?ここは昨日まで誰も入ってこない」


 管理者1号が再び声を出す。


「『空間知覚』も『探索』のスキルも、誰かが入ってきた形跡は見つかりません。あなたはここに入ることはできないはずですよ」


「そ、そんなわけない!俺は昨日入り口から入ったばかりなのに!」


 相手は何かスキルみたいなものを言ってるようだが、そんなことを気にする余裕はない。もしこいつの言うことが本当なら、俺は今幽霊の監獄にいるか?


「なら昨日の映像を見せてあげましょう」


 管理者1号は黙って降りてきた。続いて管理者1号が軽く回転した。


 相手は視線を右に動かしたようだ。光球が見守ると、何もない空に透明な画面が現れた。


「あれ?映画?でもこれリアルすぎないかな……」


 この画面はどこから出てきたのか。視線を動かして画面を放出する源を見つけようとしたが、いくら探しても見つからなかった。


 まあ、まず画面で何が再生されているか見てみよう……。


 生中継さながらの映像を眺める。画面に監獄の入り口の景色が現れたが、そこは確かに俺が入ってきた入り口だった。でも……。


 ちょっとおかしい。


 画面には鎧を着た行列が現れ、彼らは手にした剣を取って入り口に立ちはだかっていたイバラを切り落とし、慎重に玄関に入った。その後この画面には彼らの姿は見えなくなった。


 そして数分後、彼らの姿が再び現れたが、今回は玄関に向かって高速で走った。彼らが走り出した後、騒がしかった入り口は再び静まり返った。


 次に時間が加速し始め、入り口での物事が変化し始めた。


 切断されていたイバラは急速に成長し始め、徐々に空間全体を占めていった。そのほか、外にいる野草もだんだん長くなり、監獄の入り口を塞いでいる。


 その後時間が定格されたかのように、動画が終わるまで、俺も画面の中に誰かが再びこの監獄に来たのを見ていない。


 動画の再生が終わり、画面を見て閉じた光球が少し回転し、顔かもしれない部分が回ってくる。


「これがこの100年以上の状況です」


「……」


 ここに来たことがなければ、画面に映っている景色が本物だと思うかもしれない。でももしこれが本当の画面だったら、俺はここでは不合理なことになる。


「それなら、俺の状況はどう説明すればいいの?もしここに入れなかったら、どうして俺はここにいるの?」


「そうですね、あなたがどのように入ってきたのか気になって、だから『空間操作』のスキル能を使ってあなたをこの部屋の中に導きました」


「『空間操作』?スキル?さっきから何言ってるの?」


 まさかこの光球またゲームをすることができるか?


「スキルも知らないの?あなたのような子供がどうやって入ってきたのか不思議ですね」


 俺が疑問の表情をしているのを見て、管理者1号は再び口を開いた。今回の口調には俺への好奇心が満ちていた。


「スキルとはどういう意味か知っている!あなたがスキルのように言っているのが実在するというニュアンスがおかしいと思うだけ……ちなみに、俺は子供じゃない」


「お?外見からはわかりませんね」


「わかりません?この囚人服を着ているけど、俺は見た目ほど若くないよ」


「囚人服?一体何を言っているのですか?」


「わからないか?」


 このAIはこの監獄の管理者なのに、俺の囚人服を着ていることさえ認識できないのか。


 俺は文句を言いながら、頭を下げて体の囚人服を見た。


「あれ?」


 よく見てみると、俺は囚人服を着ていない、黒いロングコートを着ている。


「いつ着替えた?」


 服が変わったのを見て、俺は慌てて服を模索していた。


「あなたはずっとこの服を着ていますよ」


 光球は好意的に答えて答えるが、返事をする余裕はなかった。このロングコート以外、コートの下には何も着ていないことに気づいたからだ。


 う……なんでこのコートしか着てない……いや、その前になぜこのことに気づかなかったのか!


 もう少しで服を1枚しか着ていないので混乱状態に陥るところだった。幸い俺は子供ではなかったからパニックにはならなかったね。


 ところで、あいつの言っている子供ってどういう意味?


 ……嫌な予感がする。


 手を上げて、手が縮小していたことに気づいた。腕は若い男性が持つべき腕のように強くなく、痩せた子供の腕のように痩せている。


 そのことを意識すると同時にも身長が低くなったような気づいた。


 道理でさっきは変だと思っていた……俺が小さくなったのか!?


 若くなったかもしれないが、こんなにやせたことがないことを覚えている。この体は俺というより、他の人というほうがぴったり。


 俺は慌てて顔を触って、顔がどんな様子なのか確認しようとした。


「鏡は必要ですか」


 管理者1号は声を出した。そばに一瞬鏡が現れた。


 鏡がどのように現れたのかを確認する時間がなくて、俺はすぐに鏡の前に行って俺の姿を確認する。


 でも俺は鏡の前に出ると、もう少しで倒れそうになった。鏡の中の姿は、本来の姿ではないからだ。


「なんだこりゃ!!!!!!」


 鏡の中の俺は、かわいい黒髪の子供だからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ