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異世界英雄監獄  作者: 千蒼
一章
13/42

第12話 城の主

「この城の主になるとは……どういう意味?お前はこの城の主じゃないか?」


 管理者の意図が少し分からない。


「いいえ、私はグランニタ城を管理するシステムを担当しています。グランニタ城の主ではありません」


「うーん、つまりグランニタ城の執事にあたるような存在なんだよね」


「そう思ってもいいですよ」


「じゃあ、なぜ俺がグランニタ城の主になる必要がある?お前はこの城を一人で管理できるはずで、俺が主を担当する必要はないだろう?」


 さっき管理者の躊躇からすると、彼は他の人にグランニタ城の主を務めさせたくないはずだ。しかし、それでも彼は俺にグランニタ城の主を務めさせたいと思っていた。何か苦衷があるか。


「それにはもちろん理由があります。あなたをグランニタ城の主になってもらうのは、私にはグランニタ城を管理するすべての権限がないからです」


「お前には権限がないの?」


「そう……私が持っている権限は、グランニタ城の生活施設を管理することしかできません。この城の重要な権限にアクセスすることはできません」


 管理者は短い間にこの方面の知識を説明してくれた。


 管理者はグランニタ城を管理するために設計されたシステムである。城側のすべてを管理できるが、グランニタ城の重要な権限はすべて城の主の手にあり、管理者はそれらの権限を制御することができない。


 グランニタ城にはいくつか重要な機能があるそうだが、その一つの重要な機能が他の世界からの来訪者を召喚することができるシステムだ。召喚システムは重要すぎるため、召喚システムを使用する権限は城の主だけが使用でき、管理者はこのシステムを管理できない。


「うーん……つまり、グランニタ城は囚人を監禁するだけでなく、来訪者を召喚することもできるのか。何かここは重要そうだな……。なんでこんな城はここに捨てられた?」


 この召喚システムから、グランニタ城は非常に重要な施設であることがわかる。だけど管理者によると、この城の主は千年前にここを離れたという。


 一体何が原因でこの森の中にグランニタ城を建てたのか、そして何が原因でグランニタ城を置き去りにしたのか。少しこれらのことに興味があるけど、今のポイントはそれではない。


「じゃあこの召喚システムがそんなに重要なのに、なんで俺はそれを使うことができるの?」


 そう、それが今一番大切なこと。


 この召喚システムが管理者さえ制御できないシステムである以上、システムは厳重に保護されているはずで、勝手に起動されることはあり得ない。しかし、このシステムが俺に使われて来訪者を召喚した……これはおかしい。


「なぜあなたが召喚システムを使うことができるのか、私も気になります。でも大体原因を推測することができます。簡単に言えば、あなたがこの城に認められたということです」


「この城に認められた?」


 周りを振り返った。城にも自意識があるのだろうか。


 俺が困惑している様子を見ていると、管理者の体が急速に輝き、困っているようだ。


「グランニタ城には私と同じように意志があります。私とは別のシステムで、それは話すことはできないが、自己判断する能力もあります。そしてそれはあなたをグランニタ城の主と認定したようで、ですからあなたは召喚システムを使うことができます」


「あ~なるほど……いや、それはまずいじゃないか」


 城の自意識は俺をグランニタ城の主だと判断したのか。いや、城さんよ、どう見ても赤の他人だろう?勝手に俺を主だと思っていることはよくないだろう!


「城は脳波のためにあなたをグランニタ城の主と判断したのかもしれません。とにかく、城は独自の判断基準を持つ知恵があるのです」


「うーん、この件はどうやって解決するか?」


「解決策は簡単です。この城の主を務めてくれればいい」


「はあ?」


 管理者が再びそう答えてくれたのを聞いて、俺はまた困惑した表情を浮かべた。


「なんで俺をグランニタ城の主にした?……この城はお前の主のものだろう。勝手にこの城の主にしてくれていいの?」


「大丈夫ですよ。この城の支配権は現在空席になっているので、城はあなたを主と認定します」


「そうか……」


 管理者は前任者の主に深い感情を抱いているのかと思ったが、彼はあまりそのことを気にしていないようで、喜んで城の主を務めさてくれた。


「先任の主がここを離れて久しいので、何年もこの場所に閉じ込められてきました。今回はチャンスかもしれませんが、あなたがグランニタ城の主を務めてくれれば、私はこの場所を離れることができるかもしれません」


 管理者によると、俺のようにちょうどここに来たのは城の主になる人が非常に少ないことに合っているという。管理者も何千年もここにいたくないから、彼はこの機会を逃すまいと思って、俺に城の主になってもらおうとしたのだ。


「気にしないなら、グランニタ城の主を務めてほしい……。そうすれば私とこの城はこの場所から解放されます」


 目の前の光球が前に移動し、管理者の話から緊張した気持ちが伝わってきる。


 グランニタ城のすべての機能がどのようなものか分からない。だがこの召喚システムを見るだけで、この城には強い力があることがわかる。


 グランニタ城の主を務めるのが悪人なら、この城の力を使って危険なことをするかもしれない。おおよそ管理者もそのことを心配したことがあるだろう。


 あ……なんかめんどくさいあ……。


 もし力を必要とする人なら、何も考えずにそれを承諾するだろう。でもそんな力はいらないし、人と戦うこともないから、俺は断りたいんだ。


 でも俺はためらった。


 断るのは簡単だが、このことは管理者にとって大事だ。


 一人でここにいて数千年は人を狂わせるのに十分だろう。管理者にとっては、せっかくここを離れるチャンスを得たのかもしれない。重要な機会だから、知り合って間もない人をグランニタ城の主にする冒険をしているのだろう……。


 知らない知らない人ならば俺は多分相手を拒絶するが、管理者は俺に恩があるから、しかもこのことは俺にしかできないようだ……。


「わかった、俺がグランニタ城の主になろう!」


「手伝ってくれてありがとう」


 管理者からお礼を言われた。次に彼が体を動かすと、彼の後方に教壇らしきものが現れた。


 教壇の上には洗練された本が置いてある。


「これがグランニタ城を管理する重要な装置です。本を持ち上げるだけでこの城の主になれます」


「え、そうなの?」


 本を手にするだけでこの城の主になれるのはちょっと勝手すぎないか。


 俺は教壇に向かって歩いて、その洗練された本を手に取った。


【あなたはグランニタ城の主になりました。】


 この本を手に取った瞬間、一つの声が頭の中に響いた。その音は管理者の音とあまり差がないように聞こえる。


「お、音がした!」


「それは城の主になったことを城が認めた声でしょう」


「おお……」


 手にした本に目を向ける。この本の外観は黄色で、表紙は紙ではなく、ある生物の皮膚で作られているようだ。


「この材質……トカゲか?」


 本の上のうろこのような紋様を見ながら、この本を開けた。


「ん?空白?」


 この本を素早くめくったが、中のページは何も書かれていなかった。


「その本は主にあなたの記録を中心にしていて、前の城主の記録はありません。ヒュルトロスの名前を読んでみて」


「うん。ヒュルトロス!」


「はい!」


 後ろにいたヒュルトロスはすぐに応えてくれた。


 呼んでるんじゃないよ!


 ヒュルトロスの名前を呼んだとき、本のページが素早くめくられて、すぐにあるページに止まった。


 めくられたページには空白ではなく、いくつかの文字が書かれていた。このページの左上にはヒュルトロスの人物画像がある。以下にいくつかの情報とある部屋の平面図を書いた。


 この本は召喚された人物の情報を記録しているようだ。今このページに書かれているのを見て、ヒュルトロスの情報だ。


 ヒュルトロス 男性 番号278


 所属する世界:アルスター世界


 ……


 これらのほとんどは理解できる。でもその番号はどういう意味?


「その番号は、ヒュルトロスが召喚された部屋の番号と一致しています。グランニタ城は部屋が多いので、召喚された人物の部屋を番号で記録する必要があります」


「なるほど、グランニタ城の召喚の部屋はいくつあるということか」


 前世の頃、グランニタ城に似た監獄は二千もの房がある。この世のグランニタ城と前世の監獄が似ているのだから、部屋の数に大差はないだろう。


「召喚できる部屋は全部で2千室あります」


「本当に二千室もあるか!」


 つまり、ヒュルトロスのような人まだ千九百九十九人を召喚することができるか。これはあまりにも大げさではないだろうか。


「ということは、ヒュルトロスの部屋は278番か……召喚した最初の人だったのに、どうして部屋番号が1番じゃない?」


「その辺はよく分かりません。召喚に関する知識は城主だけが知っています」


「そうなの?でも俺も知らないよ?」


「知らなければ実際に見てみましょう」


 管理者がそう言うと同時に、部屋の外で振動音が聞こえてきた。外を見回して、何もなかった廊下に、ある部屋が現れた。部屋のドアの上の番号は278と書いてある。


「そうね、お前には『空間操作』のスキルがあるね」


 管理者には『空間操作』というスキルがあり、城の部屋の位置を自在に操ることができる。


「これが俺の部屋か、うーん、いいね!……そう言いたいけど、これはあまりにもみすぼらしいだろう」


 ヒュルトロスは部屋の前に出てドアを開けた。俺は彼のそばに行って部屋の内部を見ていた。


 この部屋はもともと牢屋だったから、部屋の内部にはベッドとトイレが1つしかなかった。


「これはもういい方だよ。俺の部屋はお前ほど広くはないよ」


 前世の牢屋の大きさはこの部屋の半分にすぎなかった。この城の部屋も狭い。


「待遇に文句は言わないけど、この部屋の大きさは俺が住んでいた最悪の部屋よりも最低だよ」


 ヒュルトロスは部屋の中に出て、頭を上げて部屋の内部を見回した。大柄な彼がこの部屋で活動するのは少し難しいようだ。


 あ、この世界で身長が少し低いから、このことに気づかなかったね。


「これでは確かに人が住めないね」


 俺たちは今日ここに一泊しなければならないかもしれない。だから宿泊面の困難を何とかしなければならない。俺なら元の部屋で寝ることができるが、ヒュルトロスは、ここでしばらく我慢するしかないだね。


 でも管理者には『空間操作』のスキルがあり、彼のベッドを管理者の部屋に一時移動することができるかもしれない?


「これは確かに少し狭いですが、この部屋は調整できます」


 考えていると、管理者も部屋に入ってきた。


「え?調整できるのか?」


 もしかして『空間操作』でもこの部屋の大きさを変えることができるか?


「『空間操作』というスキルを利用するのではなく、城自身の力を利用して部屋を変えるのです。先ほどヒュルトロスと書かれていたページまでめくってみてください」


「お!」


 俺は管理者の指示に従って、さっき見たページをめくった。


「人物情報の下に平面図があるでしょう。この平面図を書き換えれば、この部屋の大きさを変えることができます」


 管理者によると、これは城主が持っている権限だという。この平面図を書き換えるだけで、部屋の大きさや配置を変えることができる。


「なるほど。でも自分で描かなきゃいけないんだ。ちょっと面倒だな」


 今も文房具がないので、平面図を書き換えることはできない。


「面倒なら、想像で部屋のデザインを変えることもできます。想像を通して部屋の大きさを変えることもできます」


「おお!聞こえはいいだね。やっぱり異世界にはこういう便利な機能が必要なんだね!ヒュルトロス、お前の部屋はどのくらいの大きさにするか?」


「うん、俺の部屋のような広さが欲しい……高さは教会のように高くして、それから対称的な窓と関係のあるものを……」


 ヒュルトロスは彼が望んでいる部屋がどのようなものかを率直に説明した。


 しかし、彼が言った部屋の大きさはあまりにもぼやけていて、計量単位の中には俺も聞いたことがないものもあるから、彼が望んでいた部屋を再現するのはちょっと難しい。


「大将、ここをもう少し上げて!」


「大雑把に言ってるね」


 部屋の大きさを何度も変えた後、俺も少しイライラした。


 異世界に単位が統一されていないのは本当に面倒だ。


「最適な大きさに調整できなければ、ヒュルトロスに部屋の権限を移すこともできますよ。城の設立者は、呼び出した来訪者の風習の違いを考慮しています。ですから来訪者の部屋の権限を来訪者に移し、部屋の模様替えをさせる設定があります」


「そんな設定があるなら先に言うべきだろう!」


 俺は管理者の指示に従って、部屋の権限を変えて、すぐに278番部屋の権限をヒュルトロスに移した。


「ヒュルトロス、これで部屋の大きさを変えることができるだろう!」


「おう、確かに大将から権限をもらった。じゃ、やってみよう!」


 部屋の権限を受けた後、ヒュルトロスは目を閉じ、部屋の様子を変え始めた。


 部屋の様子は次の瞬間に一変し、狭かった空間は一瞬にして広がり、部屋の天井は見えない高いところに移動し、壁は見えない遠くまで広がっていた。


「おい!何してるんだよ!」


「しまった、うっかり失敗した!」


「うっかり失敗して……」


 あたりを見回す。部屋はとても広くなっていて、まるで見渡す限りの大地に一瞬で来たかのようだ。


 ていうかこの部屋の大きさはすでに城全体よりも大きいということだろうか、外はどうなって?城が爆発したのではないだろうか。


 顔を上げてそばにいる管理者を見ていた。相手はすぐに口を開いて説明する。


「城の内部の部屋には『空間収縮』のスキルが加持されているので、いくら調整しても、外から見ても部屋は普通の部屋にしか見えません」


 城が爆発することはないようだ。


「つまり部屋の内部は無限大に拡張できるということだね」


 部屋の内部を無限大に拡張できれば、一生部屋で過ごせるかもしれないね。


「部屋は確かに無限大に発展することができますが、それに応じて部屋の大きさを維持するために城の巨大な魔力を費やす必要があるので、それはお勧めしません」


 管理者は俺の考えを見抜いているようで、簡単に補足説明をした。まぁ、無料のランチなんてないな。


「じゃあ早く元に戻ろう、おい、ヒュルトロス!」


「わかった!」


 ヒュルトロスは深く息を吸って、前に腕を伸ばした。


 なんでそんなことをするのか?俺が部屋を書き換える時そうしなかったよ?


「へー!」


 彼がそう叫ぶにつれて、部屋の大きさが変わった。


 広い部屋は元に戻り、いや、ヒュルトロスはいくつかの変更をして、部屋は彼が欲しい大きさに変わった。


「ええ、ちょうどいい」


「じゃヒュルトロスの部屋の問題は解決……彼の部屋がそうすることができるなら、俺の部屋もそうすることができるよね?」


「そうすることができるのです」


 管理者がスキルを発動し、ヒュルトロスの部屋のそばに俺の部屋が現れた。


「それじゃ部屋を変えよう!え?」


 部屋を開けてみると、前に見たのとは違う部屋になっていた。


 部屋は以前よりも広くなり、赤いじゅうたんが増えただけでなく、派手な装飾が加えられ、それ以外立派な木製デスクと書架があった。


「なんで部屋がこうなったの?」


「あなたが城主になったから、城はあなたの部屋が城主の部屋だと思って改造してくれたのでしょう」


「そうか。面倒が省けるなぁ」


 そう言いながら部屋に入って部屋の様子を見た。この部屋は見たことのあるアルバムの中の城主の部屋のように見える。でもベッドはなく、これでどこで寝るか。


「へえ、ほかの部屋があるか」


 左側のドアが一つ増えたことに気づいた。


 城は寝室も用意されているようだ。ドアの裏にはゆったりとした寝室だけでなく、トイレもある。


 すべてを整えてくれて本当にありがとう~お城さん!


「そうすれば俺たちは今日寝る場所がある」


「ええ、大将」


 ヒュルトロスはそばで満足そうにうなずいて、この部屋に満足しているようだ。


 どうして彼はそれを簡単にこのすべてを受け入れることができるのか?ヒュルトロスのあの達観した姿に困惑した。


 俺とは違い、彼は理不尽に異世界に召喚されたのだよ。


 彼の実家にいる家族も彼のことを心配しているはずだし、ヒュルトロスも彼の家族のことを心配しているはずだ。もし俺が異世界に召喚されたら、きっとパニックになるだろう。でも目の前で喜んでいるヒュルトロスは、そんなことは気にしていないようだ。


 この世界に召喚された既成事実は変えられないが。でも、彼が無理をして楽しそうにしていたら、俺もつらいわ。だからまず彼の意見を聞いてみたほうがいい。


「あの、ヒュルトロス、お前は俺に召喚されたことをそんなに簡単に受け入れるか?」


「うん?」


 ヒュルトロスは振り返った。


「見知らぬ異世界に呼び出されたよ。ここには知り合いがいないし、お前の元の世界にいる家族はお前のことを心配しているだろう。もし文句があるなら何を言ってもいいって、俺は聞くよ」


 彼を呼び出すのは本意じゃないが、彼を召喚したという事実に変わりはない。だからもしヒュルトロスが文句を言うなら、俺もできるだけ耳を傾けるようにする。


「おぉ?」


 そう言ったのを聞いて、ヒュルトロスすぐに俺に文句を言ってーーそんなことは起こらなかった。ヒュルトロスは頭をかきながら答えた。


「なんで俺は大将に文句言うんだ?」


「怒らないの?お前は一生お前の世界には戻れないかもしれないよ!」


 この世界には召喚された者を元の世界に戻す方法はない。つまり、召喚された者は一生この世界に残さなければならない可能性がある。


「ああ、それはわかってるよ。大将が心配してくれて嬉しいんだけど、大将に文句はないよ……。大将は俺が強制的に召喚されたと思うが、自分の意志でこの世界に来たんだよ!」


「そう……か?」


 俺はヒュルトロスが召喚された経緯を知らない。俺が目を大きく開けたのを見て、ヒュルトロスは俺に微笑んだ。


「大将知らないかも。でも俺は元の世界の召喚される時に声を聞いたことがあるよ。その声は大将のことを教えてくれて、大将のそばへ行って大将を助けるかどうか、俺に選べという。もしその声に答えなかったら、たぶんこの世界には来なかっただろう。それでも、自分の意志でこの世界に来た」


「どうしてそんなことする……?」


 ヒュルトロスの身分は彼の世界の大英雄で、彼は本来の世界で幸せな生活を送ることができるはずで、なぜ応答を選んだのか。


 普通の人なら多分その声を拒否するだろう。だけど、目の前の大英雄の考えは違っていた。彼はこう答えた。


「大将が助けを求めてきたからだよ。大将は俺を呼んで、力が必要だと言った。俺のような人が俺の助けを必要とする人を拒絶することができるものか」


 大英雄は槍を肩に担いで、一派は気楽に言った。


 彼に助けを求めただけで、彼はこの世界に来ることを選んだのか……。


 一生に関わるかもしれない大事件なのに、ヒュルトロスはまるでそのことを少しも気にしていないかのように、人を助けるため彼の持っているすべてを捨てて、ここに来ることを選んだ。


 このような考えは……全く理解できない。


 そんな考えは異常すぎる。


 すべてをおおらかに放棄することができたヒュルトロスは、彼を非情と評価すべきか、残酷と評価すべきか分からない。


 そのような行動の動機は理解できないけど、一つだけ理解できることがある。


 それは、このようなためらわない行動で、ためらわずに人を助けることができるからこそ、ヒュルトロスは大英雄と呼ばれるのだ。


「あ。ここに来た理由は、ほかにもひとつある」


「え?何か?」


「大将を見たときによくわかったよ。目の前にいるこの人を主君にするのは悪いことじゃない。大将の周りにはきっと面白いことがたくさん起こる!」


 そう言って、ヒュルトロスは笑顔を見せた。


 ある意味で、この人は本当にすごいだね……。


 俺は、ヒュルトロスは強制のに呼ばれたのだから、彼とつきあうのは苦痛だろうと思っていたが、そんなことを心配する必要はないようだね。


 しかし、彼の言った召喚の過程も気になるところだ。召喚はランダムに人を捕まえてこの世界に来るのかと思ったが、相手が返事をしなければ、召喚は失敗する可能性があるようだ。


 これは気をつけければならないね……でも逆に言えば呼びかけに応えてくれる人はすべて俺の部下を自発的に務めてくれる人だから、相手が俺に文句を言う心配はないのではないでしょうか……。


 とにかく召喚することには気をつけましょう!


「それじゃ大将、よろしく!」


 ヒュルトロスはそう言って、俺に手を差し伸べてあいさつした。


 正直言って、このような人が嫌いじゃない。


「あ、忘れるところだった」


 手を伸ばすと同時に気づいた、まだヒュルトロスに自己紹介をしたことがないな。


「自己紹介を忘れた。俺はシィン。よろしく」


 俺は手を伸ばしてヒュルトロスの手を握った。


「よろしくね。大将!」


「シィン?」


 管理者が横から疑問を発した。てかまだ彼に名前を変えたことをまだ話していないんだね。


「これは俺のこの世界の名前だよ。なにしろ俺もうこの世に転生してしまったのだから、あっさり名前を変えた」


「なるほど。では私もシィンと呼びましょう」


「あれ?大将は転生者なの?」


 ヒュルトロスは俺が転生者だとは知らなかったようだ。あとでヒュルトロスに説明しようか。


「あとで説明しよう。じゃあ管理者、俺は城主になった。お前が言っている城の移動方法はどのように移動するのか?」


 このトカゲの皮で作られた本の中には城を動かす知識がないから、操作に関する知識は管理者に1番聞いてみなければならない。


「その方面の知識はよくわかりません。これまで城主だけが他の場所に城を移すことができたからです。ですから、城を移動する方法を特定するには書庫の知識を検索する必要があります」


「資料を探すんだな……大体どれくらいの時間がかかるか」


「数日くらいかかるかもしれませんが、できるだけ早く操作方法を見つけます」


「無理しなくてもいいよ」


「少しも無理をしない。ここを離れる機会がある以上、全力を尽くすべきです」


「そ、そうですか」


 どういうわけか……管理者の口調から強い恨みを感じた。


 ここにいて管理者に多くの鬱憤を蓄積させただろう……。


「とにかく無理しないでよ」


「うーん、つまり知識を探すのに時間がかかるってことか……何かお手伝いすることはあるか?」


「気を遣う必要はありません。城の捜査権限を私に開放すれば、全力で捜査することができます。しかも時間ももう遅い。あなたたちは体力が抜群でも、一晩中寝ていないわけにはいきません」


 管理者のそばに透明な時計が現れた。


 この世界の時間は前の世界とあまり違わないようだ。時間は同じ24時間です。透明な時計は12時を指していて、時間ちょうど真夜中だった。


 時計が12時を指しているのは今日が終わったことを示している……つまりこの世界に転生してから一日が過ぎたということか。


 今日はこんなにたくさんのことがあったのに、転生した種族のせいかもが、意外にも眠気がない……。


 俺はヒュルトロスの横顔を見て、彼もあまり寝たくないようだ。


「疲れがなくても休むんですよ。さもなければ戦闘中に問題を起こすと危険です」


 管理者は俺たちにこう忠告した。


「うん……仕方がない。ヒュルトロス、早く休もう」


「わかった!」


 ヒュルトロスは部屋を出ていった。


「じゃあ、トーレは暫く管制室にいさせてあげよう」


 トーレは依然として管理者が用意したベッドに横たわっている。彼の呼吸は穏やかで、何の問題もなさそうだ。


「彼の状況に注目します」


「ああ、ありがとう。じゃあどうやって捜査の権限を与えるんだ」


「そうすればいい……」


 俺は管理者の指導の下、城の情報を捜査する権限を管理者に開放した。


「それでいいんです」


 管理者のそばに漂う画面がたくさん出てきた。これが城に関する資料だろう。


 その画面をこっそり見てみた。上の内容は少し複雑で、少し読めない。


 俺は臨時に城主に就任しただけだから、城の情報がすぐにわかるわけがないね……捜査の情報は専門の人に処理してもらいましょう。


「では、早く休みなさい」


 管理者のそばにある画面は素早く流れる。管理者には顔がないが、情報の海に没頭しているような気がする。


 ここには俺が手伝う余地はないようだね。


「ふうん。じゃあ、休みに行くよ」


 俺は管理者に手を振って、振り向いて管制室を出ようとした。


「あ、そうだ」


 俺は歩みを止め、管理者を振り返った。


「まだ何か用事がありますか?」


「言い忘れるところだったね。管理者、よろしく!」


「よろ……しく?」


 管理者の隣の画面は流れを止める。


「そうね、前は言ってなかったけど、今は仲間でしょ。よろしくね!」


「おお……うん」


「じゃあ邪魔しない!おやすみ!」


「……」


 俺が管制室を出た後も、管理者は捜査を続けていた。しかし、捜査を再開してから数秒もたたないうちに、管理者は再び捜査を中止した。


 管理者の目が前に向けられ、彼は黙って相手がさっき立っていた玄関を見ていた。しばらくすると、巨大な光球の内部から静かに音がした。


「おやすみ、シィン。そして……よろしく」

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