表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界英雄監獄  作者: 千蒼
一章
10/42

第9話 夜の森

「あのアホ!」


「まあ、落ち着いて」


 ライトは怒ってここにいない息子をののしった。隣のソファーに座っていた村長はライトの気持ちをなだめながらこちらに目を向けた。


「恐れ入りますが……」


 村の隅々まで探して、確かにトーレが村にいないことを確認した後、俺はすぐにみんなを村長の邸宅に連れて行って村長にこの件を説明した。


 村長たちと一緒に探してみたが、確かに彼が村にいるのは見られなかった……つまり、トーレが森の中に駆け込んだ可能性が高い。


「あいつは夜の森が危険だと知らないのか!」


 夜になると、森の中の魔物はさらに凶暴になり、力も強大になると言われており、熟練した冒険者でも、夜に魔物のいる森に簡単に入ることはない。


 そして今、トーレは夕方に危険度の高い森に入り込み、魔物に殺される可能性が高い。


「あのアホ……どうしよう……」


 ライトはここにいないトーレを罵倒しているが、彼が歩き回る姿から息子を心配していることがわかる。


 ライトたちの立場からいって、彼らは勝手に人を森の中に派遣してトーレを探すことはできない。


 夜の森は危険で、人を中に入れて人を探すのはトーレを探しに行く人を危険にさらすだけだ。だから彼らに今できることは、トーレが自分で帰ってくるのを待つことだけ……あるいは。


「俺が中に入って彼を捜しょう!」


「シィンさん?!」


「それはいけません!」


 俺がトーレを探しに行くと聞いて、ライトと村長はすぐに俺を制止した。


「夜の森は危険よ!」


「そうだけど。でも忘れないで、俺はあの森に住んで久しいんだよ」


「それは……確かにそうですが、これはシィンさんが森に冒険に行く価値はありません!」


 一瞬ためらった顔をしたけど、ライトはそれを拒否した。


 危険な目に遭ったのは自分の息子であっても、ライトはこの事に対して依然として公私区別して、この件で訪問者を危険にさらすことはない。


 うん……そういう意図があるのはいいんだ、けど……。


「価値があってもなくてもかまわない。トーレはすでに俺の友人だから、お前たちが止めてくれても、俺は探しに行くよ」


 俺はこのような答えを出した。


 俺はトーレと出会って間もないから、実は友達とも言えない。でも、もし本当に彼を一人で森に残しておけば、今日はなかなか眠れないだろう。


 だから森に行って彼を探すことにした。


「それ……」


 村長はライトと顔を見合わせた。しばらくわたしを見てから、村長はため息をついた。


「わかりました……では、シィン君に行ってもらいましょう。でももし危険にさらされたら、すぐに帰ってきてください」


「うん。安心してライト、お前の息子を連れて帰ってくるよ!」


「おお……」


 ライトは少し困った顔で応えてくれた。


「シィンさん!」


 村長の邸宅を出ると、すぐにルナたちが近づいてきた。


「どうですか」


「俺は森にトーレを探しに行く」


「えっ!」


「一人で行きますか!」


 俺がトーレを探しに出かけると聞いて、子供達は信じられない表情を浮かべる。


「外の森は危険です!」


「確かに危険だけど、俺が強いのはわかってるだろ!危険な目に遭わないよ」


 俺は腰に手を当てて子供達に心配しないように言った。


「確かに……シィンさんは強いですね」


「ええ……そうですね」


 言うと子供たちも頷いたが、ルナは心配そうに俺を見ている。


「でも気をつけてね!」


「安心して、すぐに物事を解決して帰ってくるから!」


 そう言いながら、俺は空を見上げた。


 だんだん暗くなってきて、もうすぐ夜になる。夜になると魔物は狂暴化し、さらに危険になる。でも俺は危険に遭遇することを心配する必要はないはずだ。


 管理者は、今の実力では森の魔物は俺には大丈夫だと言って、それ以外にもこの剣をくれたから、危険に遭遇しないはずだろう?


 ……どうせ戦ったら結果がわかる!


 そんな思いで、村の入り口まで歩いていた。


「気をつけてね!」


「おお!」


 子供に手を振った後、俺は振り向いて暗くなっていく禁忌の森の中に駆け込んだ。


 ◇


「ちくしょう!」


 夜が更けていく森の中で、ひとりの少年が低い声で叫んでいた。


 短い音が暗い森の中に溶けていく。ここが普通の森なら、そう叫んでも何でもない。だがここは人間に恐れられ、禁忌の森と呼ばれている場所であり、そう叫ぶことは森の中の多くの存在の注意を引く。


 また、少年は包み隠さず走っているから、この森に隠された魔性のものは遅かれ早かれ彼に気づいて追いかけてくるだろう。


 相手に追いつかれたら、多分破片にされるだろう。


 一般的に、このことを知っている人は恐れてやまないだろう。しかしそれを理解していても、少年はためらう様子も見せず、むしろ低い声で叫んだ。


「ゴブリン軍団は実在したのに!」


 少年の名前はトーレで、ライト村の副村長の息子だ。


 村長の副村長の息子である彼は父親を通じて多くのことを学び、村のしてはいけない事の規約について、トーレはよく知っていて、彼もよく自分がこれらのタブーに触れないように気をつけている。


 だが、村で最もしてはならないことーー夜に禁忌の森に駆け込むという規約は、今彼に破られた。


 規約。


 規約というより常識で、夜の中で禁忌の森に駆け込むのは非常に危険なことで、村の子供でさえそれをしてはいけないことを知っていて、ライト村の副村長の息子であるトーレも当然それが非常に危険なことであることを知っている。


 しかし、それでも少年は夜の森を走っていた。


 彼にはそうしなければならない理由があるからだーー。


 先日、トーレはゴブリン軍団を目撃した。


 当時、彼と大人たちは森の中に入って薬草を摘んだが、大人たちとはぐれた。したがってトーレは森の小道の跡に沿って大人の行き先を探していたが、彼は間もなく多くの足音を聞いた。


「あっちだろう……」


 足音がして大勢の人がいるのが聞こえたから、トーレは大人たちだと思って声の出たところを走って行った。しかし、彼はすぐに立ち止まった。


「ちょっと人数が多いような……?」


 彼と一緒に出てきた大人は数人だけだった。しかしトーレは数十の足音を聞いた。


 このような多くの足音を聞いて、トーレはすぐに立ち止まって隣の草むらの中に隠れて、相手が誰なのかを観察した。


「ーー」


 そして、草むらに隠れて間もなく、彼はこの数十個の足音の正体を見た。


 トーレの目の前に現れた人は緑の肌、鋭い耳、そして黄色の歯を持っていた。口の中では奇妙な言葉もつぶやいている。


「ゴブリン?」


 彼の目の前に現れた緑の人は、間違いなく大人たちが言っていたゴブリンだった。


 ここに向かって歩いてきたゴブリンは整然とした列を作り、黙って前方の小道に進んだ。


 ゴブリンが数匹しかいなかったら、トーレは逃げていたかもしれない。だけど、そこにいたゴブリンは30匹以上いた。数の差があまりにも大きいから、トーレは勝手に行動せず、冷静に草むらの中にいた。


 どうしてこんなにゴブリンがいる?


 トーレは不審な思いをして、列をなして進むゴブリンを見つめた。


 ゴブリンが群れで行動すると聞いたことはあるが、こんなにゴブリンが一緒に行動するとは思わなかったし、しかも行動がこんなに規則的だ。


 それ以外にも、トーレはゴブリンたちが鉄製の装甲を身につけ、鉄製の剣と槍を持っていることに気づいた。


 整然とした隊列と精巧な装備を身につけて、ゴブリンを見て、トーレは彼らを形容する言葉を一つもらいたいだけ。


 軍隊……!


 それを意識したトーレは息を凝らす。


 国境地帯に生まれたトーレは本物の軍隊を見たことがないが、目の前のゴブリン部隊は間違いなく軍隊と言える。しかも魔物からなる軍隊だ。


 魔物が軍隊を作る。この世界では確かにこのようなことがあったが、それはもう千年前のことだ。


 千年前、その時の魔王による魔物の軍隊は世界中のすべての国に挑戦し、この世界を統一しようとしたが、結局敗戦した。


 人間をはじめとする連合軍が魔王の城に攻め込んで魔王を殺した後、魔物の軍隊は壊滅した。魔王の指導を失った魔物大軍はこのまま殲滅され、最後には世界にも魔物からなる軍隊は見られない……そうなるはずだ。


 しかし現在、トーレの目の前には、ゴブリンからなる軍がいる。


 もしかして彼らは魔王の軍隊なのか?


 この奇妙な隊列を見て、トーレは目を大きく開けて彼らを観察した。


「殲滅……」


 ゴブリンの隊列の中から、こんなつぶやきが聞こえてきた。


 喋った……!


 トーレはゴブリンの話すのを初めて聞いた。しかもゴブリンが言ったのは人間の言葉だった。


 殲滅か?何を殲滅しようとしている?


 トーレは耳をそばだててよく聞いて、彼らが何を言っているのか聞き取ろうとした。


「……人間を殲滅……」


「殲滅……」


 彼らは人間を殲滅しようとしている……?


 よく聞けば気づくが、行列の中のゴブリンたち全員がそんなことをつぶやいている。彼らの目は空虚で、灰色の目は前方を見つめている。


「この森のすべての人間を殲滅せよ!」


 なんだよ……これ……。


「殲滅……殲滅……」


 ゴブリンたちの目標が何なのかを聞いて、トーレは思考を停止し、ゴブリンのチームが去っていくのを黙って見ていた。


 最後のゴブリンが去って、彼らがここに戻らないことを確認してから、トーレは草むらから出てきた。


「森の中の人間を殲滅するのか……」


 トーレは遠ざかるゴブリンの足跡を眺めていた。


 そのゴブリンたちは人数が多いだけでなく、精巧な武器を装備している。ゴブリンが彼らの村を攻撃してきたら、村の守りきっとゴブリンに勝てない!


「早く大人に言わないと!」


 そんなことを考えて、トーレすぐに大人たちのもとに駆けつけ、そしてこのことを彼らに話した。しかし、


「ゴブリン軍?そんなものがあるわけないだろう」


「トーレ!でたらめを言うな!」


 大人は彼の言うことを信じない。


 それも当然のことだ。ゴブリン軍があるということはあまり信用できないし、それにトーレは子供にすぎないので、大人は当然、彼の話を子供の嘘だと思っている。


「彼らが攻撃してきたら遅い!」


「そう言われても、私たちには彼らに対処する余裕はないわ」


 トーレを信頼したい人がいても、ゴブリンを積極的に捜索しようとする人はいない。彼らの村の人数は少なすぎて、ゴブリンを探すために追加の人員を割り当てることはできない。


「俺たちは村を守りさえすればいい!」


 それはいけない!


 大人がそう言うのを聞いて、トーレは本当に彼らが愚かだと思った。


 装備の整ったゴブリン軍は、頑強に抵抗すれば済む軍ではない。


 だが、いずれにしても、ゴブリン軍を目撃したことのない人がいくら説得しても警戒することはないだろう。


 したがって、村の安否を心配していたトーレは他の仲間を集めて、自ら禁忌の森に向かってゴブリンを探した。


「ゴブリンを見つけても、倒す方法はあるの?」


「ゴブリンの知能は高くない。罠に誘導すればいいだけだ」


 仲間の1人であるルナはそう質問したが、トーレは気楽に言った。


 その時、トーレはこのような戦術が役に立つと本気で思っていたが、すぐに彼が間違っていることに気づいた。


 結局、彼らはゴブリン軍を見つけることができなかっただけでなく、仲間も重傷を負った。巨大なイノシシを見たとき、トーレは初めて自分が愚かだと思った。


「あーー」


 イノシシが突進してくるのを見たとき、トーレは自分がこのまま命を落とすと思った、けどーー。


「大丈夫か」


 彼の目の前に現れたのは黒いロングコートを着た美人だった。


 その美人はシィンと自称している。体は細いが、シィンは巨大な剣を振り回し、簡単に目の前のイノシシを倒した。


 すごい……!


 シィンの力を見て、トーレも他の人と同じようにシィンを慕っている。


 シィンの助けで、彼らは魔物が横行する森から脱出した。


「このバカ!」


 そしてトーレは村に帰ってすぐに父親に怒られた。


「村の手伝いをしたかっただけだ!ゴブリン軍団は……」


「バカ!まだゴブリン軍団なんて言ってるんだ!」


 ゴブリン軍団のことは、依然として大人たちに嘘だと思われている。


「嘘はついてない!」


 トーレは自分の父親が自分を信じてくれないことに腹を立て、シィンの住所に駆け込んだ。


 シィンなら信じてくれるだろう!


 そう思ってシィンに信じてほしいと願ったが、シィンはそう言った。


「ゴブリン軍はいないだろう」


 禁忌の森に詳しいかもしれないシィンもそう言っていたが、トーレは裏切られたと感じた。


 これはまるで俺が嘘をついていると言っているようなものだ!


「信じてくれないからには、見つけて見せてやる!」


 怒ったトーレはそのまま村を飛び出し、タブーの森に直行し、ゴブリン軍の跡を見つけようとした。しかし、空はすぐに暗くなった。


 経緯を思い出しながら、トーレも冷静になった。


「何をしているんだよ……俺」


 夜になると魔物の凶暴性が強くなる。夜に森の中に駆け込むのはまるで自殺行為だ。


「どうしようかな」


 トーレはあたりを見回した。彼はこれがどこなのか全く知らない。


 夜の森はまるで異なる世界のようだ。夜になるとトーレは村に帰る方法がわからなくなった。


 今さら後悔しても始まらない。夜には誰も自分を探しに来ないだろう……。


「とりあえず川のそばまで行ってみよう。川沿いを歩けば、村に戻ることができるはずだが……」


 トーレはそう思って、川の音を聞きながら川のそばに移動した。


「そこには……!」


 川の音を聞くと、トーレはすぐにそこへ進んだ。しかし、彼はすぐに立ち止まった。


「わあ!危ない!」


 確かに川に近いが、高さの落差は少し大きい……。


 トーレは崖のそばに立って、崖の高さを判断した。暗闇の中で少し判断すると、崖は川岸からの高さが20メートルあるかもしれない。


「何とかしないと……」


 トーレは地面に伏せて、崖から降りてみた。しかしその時、彼の後方から物騒な声が聞こえてきた。


「誰だ!?」


「グー……」


 警戒して振り向いた。トーレの後ろで、緑の足の裏が影から一歩踏み出した。


「うそでしょ……」


 暗いところから出てきたのは、トーレはここ数日のうちに見つけたいと思っていたが、今は見たくない生き物ーーゴブリンだった。


「ガ!」


 ゴブリンは黄色い歯を見せ、濁った目に笑みを浮かべた。彼は手にしていた刀を持ち上げて、トーレに向かって歩いてきた。


 しまった……。


 トーレ厳戒はゴブリンを見て、相手の動きを判断してみた。


 機会があれば、彼は相手の攻撃のほころびから逃げることができるはずだが……しかし彼のこの考えは、すぐに打ち砕かれた。


 そのゴブリンの後方には、より多くのゴブリンが出てきて、逃げ道をぐるりと取り囲んでいた。


「ちくしょう……」


 相手の人数は非常に多く、逃げられなくなった。


「ふふ」


 ゴブリンは短く笑って、刀を振り上げた。


「う!」


 トーレは目を閉じて、相手の攻撃が来るのを待っていた。


「……大丈夫か」


「えっ」


 目を開けた。前には、黒い影がゴブリンの攻撃を食い止めた。


「シィン!」


 その姿は他でもなく、シィンだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ