第十六話 対アルパイン作戦会議
蜘蛛がカフェイン摂ると、作る巣がメチャクチャになるそうです。興味深いですね。
地面に座り込み一息ついていると、支部長のアークさんに連れられて、バトスさんがやってきた。
上下黒のスーツに黒のシャツ。真っ黒だから汚れが見え難いが、蜘蛛の体液をかなり被っているようだ。
左腕に黒くて丸い小さな盾をつけ、右手は腕までスッポリ隠れる円錐形の奇妙な武器を持っている。持ち手がないランスみたいな感じだ。
手首付近に黒い宝石のような物が付いているので、あれも準魔剣か何かなのだろう。
バトスさんは俺を見ると、すぐに宿泊客だと気が付いたようだ。
「ああ、貴方でしたか。宿屋【銀狼亭】のバトスと申します。改めまして、どうぞよろしくお願い致します」
言葉遣いは相変わらず丁寧だが、宿の受付に居た時よりも全然迫力がある。凄い人なんだろうな、と思う。
と言うかあの宿、銀狼亭っていうんだな。なんで戦える人が勤めてるんだろう。
そんな事を考えながら挨拶を返す。
「お世話になります。と言うか、もうなってますね、宿で。キョウマといいます。よろしくお願いします」
二人のやり取りを聞き、アーク支部長が場を仕切りだした。
「なんだ、顔見知りか。なら話は早いですな。時間がない。ナタリア嬢、付与をお願いします。その間に二人には作戦を伝えましょう」
『わかりました。それでは武器をお預かりします』
ナタリアさんは俺の【ナーズ】とバトスさんの武器を受けとり、付与をかける為に集中し始めた。
こちらではアーク支部長が説明を始める。
「さて、作戦と言っても、そう複雑なものではない。まず力の残っている魔法士が、牽制の攻撃を行う。バトスには先行して足を潰してもらい、キョウマ君には八つの赤い眼のさらに上部に一つだけある、青い眼を潰してもらう。潰すと言うより、具体的にはくり抜いてほしい」
「それで奴を倒せるんですね?」
「いや、残念ながらそれだけでは倒せない。青い眼の下の皮膚が極端に吸収しやすいのだ」
「吸収?何をです?」
「豆茶だよ」
「は?茶?どういう事ですか?」
「蜘蛛は豆茶に弱いのだよ。特にアルパイン・スパイドはね。濃いヤツをかければ、すぐに酔っ払う。普通にかけてもあまり意味が無いが、青眼に護られた部分に浴びせると、まともに動く事が出来なくなるのだ」
「は、はぁ。そうなんですね」
「そうなのだ。既に豆茶を射つ弓師は手配済みなのでね。眼をくり抜いたら離脱してくれて構わない」
「ん?弓師がいるなら直接狙えば良いんじゃないですか?」
「弓にそこまでの攻撃力は無いのだよ。ナタリア嬢の話では、君の攻撃力は付与付きならバトスを超えると言っていたぞ」
その言葉に、それまで黙って聞いていたバトスさんも口を開いた。
「ほぉ。それは凄い。私もそれなりに腕に覚えがありますが、ナタリア様がそういうのであれば、そうなのでしょう」
そう言ってこちらに向けられたバトスの表情は、何処か楽しそうであった。
「は、はぁ」
そうなのか。まあ準魔剣、凄い切れ味だしな。ナタリアさんの方をチラリと見ると、疲れの中で力を振り絞っている様子で付与を行っていた。
「経験上、ナタリア嬢が言った事で間違っていた、などという事は皆無だ。君も自信を持って挑んで欲しい」
ああ、つまりこれは激励だな。俺の自信の無さが透けて見えたのだろう。しっかりしなくては。
俺は2人の目をしっかりと見ながら、覚悟を決めた。
「解りました。力を尽くします」
「良い返事だ。では予想される事態の細かな段取りに進もう」
説明された内容は、かなり俺に気を使った内容だった。不安は殆どなくなったが、少し申し訳ない気がした。
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