第十一話 試し斬り
魔剣も浪漫!
付与を掛けてもらったので、鞘に納めたままでも刀身部分ががぼんやりと赤く光っている様に見える。ナタリアさん曰く、満杯には込めていないので、1マーニ半(15分程)で効果が切れるそうだ。
親方さんは物置から試し斬り用の丸太を出して、地面の窪みに立ててくれた。
剣を鞘から抜き、正面に構える。振り上げ、真っ直ぐに振り下ろす。丸太は布でも切り裂く様な程度の抵抗しか無く、あっさりと両断された。
え、何この切れ味。…凄くない?丸太だよ?普通、斧とか鉈とかでコンコンやって割るよね?むしろ切れ過ぎて怖いんですけど。下手に振ると、自分が怪我するヤツじゃん、これ。
俺が唖然としていると、親方が嬉しそうに笑った。
「驚いたか。まあそうだろうよ。準魔剣の簡易付与ったって、そんなにはお目に掛かれないからな。そもそもナタちゃんの腕なら、下手な魔剣より強くなっちまうしな」
「驚きました。これ、付与無しだとどの位違うんですか?」
「付与が無ければ切れ味の良い単なる剣だな。キョウマの腕でも、丸太を一刀両断って訳にはいかないとおもうぜ。まあ付与が切れたら試してみるんだな」
「そうします。ナタリアさんって、けっこう凄い人なんですね」
「何だ、知らないのか。アルネス王国の若き天才魔導師、ナタリア・アルトリーゼって言ったら有名だぜ?」
そうなのか。協会で教鞭って言ってたから、学校の先生にしては若いし優秀なんだな〜、くらいにしか思っていなかった。
「まあ、一緒に行動していれば直ぐに解るさ。さて、もう少し試し斬りするか?」
「そうですね。ではお言葉に甘えて」
それから暫く素振りをしたり試し斬りをしたり。親方に木片を投げてもらって、それを切ったり。付与が切れたので改めて試してみたが、丸太は両断どころか3割程のところで刃が止まってしまった。いや、それでも充分凄いと思うけどね。
そろそろ終わりにするか、と思い始めた頃に、親方が拳で手を叩いて大きな声を出した。
「ああ!思い出したぞ!あれだ、王都の生誕祭で見た男だ!」
「?何の話ですか?」
「いや、キョウマの動きはどっかで見た事あると思ってたんだが、王都でな、祭りの見せ物の中で独立国ジルパの剣士がいてなぁ。いや〜、スッキリした」
「はぁ」
「男の、しかも剣士でスカートなんて履いてやがるからよ、変な野郎だと思ってたんだがな。剣技が見事でな。こう、放り投げた紙を一瞬でバラバラに…まあ細かい話はいいか。キョウマは記憶がねえって言ってたが、案外ジルパの出身なのかもな」
俺は転生者だからジルパとやらの出身じゃあない筈だけど。まあいつか行ってみるのもいいかも知れないな。しかし、男の剣士がスカートか。ちょっと想像つかないな…
「そうですか。機会があれば行ってみる事にしますよ」
「おお、そうしてみろ。剣技の参考にもなるかも知れないしな」
試し斬りを終えて店に戻る前に、工房で親方から簡易の手入れや研ぎ方を教わった。移動中は自分で手入れをするしか無いので、武器を扱う者には必須の事だそうだ。街に着いたらその都度、鍛冶屋なり武器屋なりに持っていってしっかりメンテナンスして貰うのが大切だと教わった。
最後に砥石やらお手入れ道具のセットやらを小さな皮袋にまとめてくれた。お代はちゃんと剣の料金に含まれているそうだ。
そうそう、剣の銘は〔ナーズ〕だそうだ。準魔剣ナーズ。気に入らなければ変えても良いそうだが、特に拘りもなく、悪くないと思ったのでそのまま使わせてもらう事にした。
店に戻るとナタリアさん達の話も落ち着き、支払いも終わっていた。
「巧く使いこなせよ!」
「リア姐さんまたね!」
「2人とも気を付けてね」
3人に見送られて店を後にする。
「ナタリアさん、ありがとう。あの、お金はいつかちゃんと返すから」
『気にしなくていいわ。この前のワームの件もあるし、どちらにしろ、あなたには色々仕事をしてもらう事になるでしょうから。国から支度金も出るでしょうし』
「仕事…」
『まあ、何をどうするにせよ、王都で説明を受けてからよ。陽も落ちてきたし、そろそろ宿に戻りましょう』
少しづつ何かに囲い込まれている様な気もするが、まあいいか。今日は色々あって疲れたな。
夕暮れの中、宿への帰路に着く。剣は重い筈だが、背負うだけで不思議と安心する様な気がした。
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