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臆病勇者の冒険譚  作者: まやこよ
召喚編
11/18

第十話 武器選び

装備の適性確認。適性は大事!

店の奥の工房の端にあった幾つかの武器を俺達に渡し、自分も何本か抱えた親方は、裏庭の様な場所へ案内してくれた。



大きな机の上に運んできた武器を並べる。どれも装飾など無く、単純な形の武器だ。先程言っていた、基本武器というやつだろう。


「さて、順番に試してみるか。とりあえず素人で力があるってんなら、中槍からかな。ほれ」


渡された槍は俺の背丈より少し長い。両手で持ち、適当に構えてみる。


「なんだよその構えは…本当に素人なんだな…」

「あ〜、すみません…」

「まあいいさ。適当に振り回してみると良い」


何だか凄く恥ずかしいが、とにかく振り回してみる。思った程重くないというか、苦にならない。途中から片手にしてみる。が、調子に乗って振り回していたらすっぽ抜けてしまった。槍は勢い良く飛んで、木の壁に突き刺さる。というか、半分ほど貫通してしまった。


「オイオイオイ!外側に誰も居ねえだろうなっ」


トーラス親方が慌てて壁の向こうを見に行く。どうやら大丈夫だった様だ。


しかし、人が居たら死んでたんじゃ無いか?想像したらサーっと体温が下がる気がした。武器のお試し中、事故で人殺し。恐ろしい。本当に洒落にならない。


「す、すみません!!」


「おお。気を付けてくれよ?いや、ナタちゃんが力が強えって言ってたけどよ。見かけによらずとんでもない腕力だな。構えは滅茶苦茶だが、普通素人が片手であんなに振り回せねぇし、あそこまで深く刺さらねぇぞ」


「は、はぁ…」

「まあ他も試してみるか。…もう飛ばすなよ?」

「は、はいっ!」


「そうだなぁ。短槍は使いこなせるならお薦めなんだが、その腕力だと戦斧とかか?」

「はぁ…」

渡されたのは両刃の斧。長さも薪割りで使うのと同じくらいはありそうだ。多分、前の世界でも薪割りをした事はないと思うけど。

またすっぽ抜ける訳にはいかないので、両手でしっかり持って振り回してみる。うーん、重いとは思わないけど、動かし難いな。


「あー、薪割りもやった事ないって感じだな。よし、次だ。どうするかな。ナイフは上級者向けだし、弓も初心者にはなぁ。むしろ棍とかかね」


親方さんは悩み始めてしまった。


「あの〜」

「ん?何か使ってみたい武器があるのか?」

「その、剣を振ってみたいんですが」

「構わねえけど、剣は割としっかり訓練受けてないと使えんぞ?」

「そうなんですね…でも、何だか気になるんです」

「ほう?じゃあ振ってみるか。片手剣と両刃剣、どっちにする?」

「両手剣でお願いします」

「即答、か。どれ、振ってみな」


両手剣を持ち、構える。何というか、しっくりくる。良く知っている姿勢というか、落ち着く感じだ。


「ほう?」

『これは…』


振り上げ、振り下ろす。面、胴、籠手突き。足が勝手に動く。ん?面、胴って何だ?…思い出せない。

上段から、一気に前へ。振り下ろす。

これだ。この武器が正解だと身体が教えてくれる。


「これにします」

「お、おお。他は試さなくていいのか?」

「大丈夫です。これしかないって気がします」

「そうか。しかし驚いたな。随分と堂に入った動きだったぞ」

「ありがとうございます。記憶は無いんですが、身体が覚えていたというか」

「ああ?記憶がねぇって、ナタちゃんそりゃ…」

親方さんはナタリアさんの方を向くが、ナタリアさんは首を横に振るだけだ。


「やれやれ。しかし、ありゃあどっかで見た動きだったんだがなぁ」

『見た動き、ですか?』

「ああ。昔祭りかなんかで…だめだ、思い出せねぇ。まあいいか、じゃあ両手剣で見繕うか。中で見せよう。トレス、クレアに茶を入れてくれって伝えてくれ。あと、ナタちゃん来てるってのもな」

「はーい」


トレス少年は建物の奥へと引っ込み、俺たちは店の中に戻る。


椅子に掛けて待っていると、トーラス親方が3本の剣を持って来て、机に並べてくれた。


「今店にある両手剣で、キョウマに合いそうなのだとこの3本だな。新しく打ってもいいが、そんな時間はないんだろう?」


『そうですね。明後日には王都へ発ちますので』


「だろうな。さて、順番にいくか。まずこいつだが」

親方さんが鞘から抜いのは、細身で青白い刀身の剣だ。


「青鋼に少量だかミスリルを使ってる。切れ味と魔除けに優れるって感じだな。脆くはないが、あまり乱暴に使う感じじゃあない。まあさっきのキョウマの動きなら、多分大丈夫だろう」

「綺麗な色ですね」

「おお、そうだろう。3本の中では1番上品な剣だな。で、次がこいつだ」


2本目は先程よりかなり分厚い刃、あまり光らない白っぽい金属だ。

「素材は白鋼にワイバーンの牙だな。切れ味も良いが、とにかく頑丈だ。酸とか毒にも負けねえし、連戦で多少刃が駄目になっても叩っ斬る感じで使える。長期戦や旅にはお薦めだな」


酸とか毒。ワームのとかか。確かに、武器が駄目になったら困る。


「最後にこいつ。普通は薦めないが、ナタちゃんと行動するなら、使えるかも知れないからな」


最後の剣は紅い刀身。厚みは先程の2本の中間くらいか。鍔に小さな宝石が埋め込まれている。魔石の様だ。


「魔鉱石と魔石を使って、付与魔法仕様になってる。準魔剣ってやつだな。魔法士がいなけりゃ他の2本に劣るが、魔法士が付与魔法を持っていた場合、段違いの性能になる」


何だそれ。凄そうだな。魔法剣的なやつか?カッコいい…


「うーん、どれも良さそうだけど。ナタリアさんはどれが良いと思う?」


『そうね。専用の付与魔法は持っていないけど、魔石無しの付与なら出来るわ。トーラス親方の作品なら魔法無しでも充分だし、お薦めかしらね。この剣、付与の持続はどれくらいですか?』


ナタリアさんが尋ねると、親方さんはニヤリと悪戯っぽい顔を浮かべた。


「ナタちゃんなら半ラウ(約30分)はいけるぜ」

『それは随分と高性能な…あ』

「気付いたかい?この魔石、ナタちゃん作だよ。前に何個か作ってくれたろう?」

『すっかり忘れていましたよ。まだ残ってたんですね。しかし、自分で作った物が自分に戻ってくるというのは妙な気分ですね』

「はっはっはっ!まあそういう訳だから、準魔剣にするなら安くしておくぞ」

『どうする?キョウマ』

「そうだね。折角だし、この剣にするよ」

「おお、そうか。じゃあクレアに言って…」

親方がそう言いかけたところで、奥から品の良い中年女性が出てきて、お茶を持ってきてくれた。


「いらっしゃい。ナタちゃんお久しぶりねぇ」

『ご無沙汰しております、クレアさん。キョウマ、こちらはトーラス親方の奥様で、クレアさんよ』

「奥様だなんて、ナタちゃんくらいしか言わないわよ。よろしくね」

「キョウマと言います。よろしくお願いします」

「ナタちゃんが男の子連れてくるなんてねぇ。やっと春が来たのかしら」

「そっ、そういうのでは」『そういうのではないんですけどね。ちょっと事情があって、しばらく行動を共にしているんですよ』


…なんか被せ気味に否定された。まあそりゃそうなんだけどね。


準魔剣の魔石の暗号を教えてもらったけど、全然覚えられそうになかった。まあ付与を行うのはナタリアさんだし、俺が覚えていなくても問題無いそうだ。早速付与を掛けてもらう。


そこからはクレアさんとナタリアさんの雑談が始まってしまい、お茶を飲み終えた俺と親方さんは、裏で準魔剣の試し斬りをする事になった。

武器選び、もうちょっとだけ続きます。


読んでくださってありがとうございます。

誰かに読んでいただけるって、幸せですね。


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