第十話 武器選び
装備の適性確認。適性は大事!
店の奥の工房の端にあった幾つかの武器を俺達に渡し、自分も何本か抱えた親方は、裏庭の様な場所へ案内してくれた。
大きな机の上に運んできた武器を並べる。どれも装飾など無く、単純な形の武器だ。先程言っていた、基本武器というやつだろう。
「さて、順番に試してみるか。とりあえず素人で力があるってんなら、中槍からかな。ほれ」
渡された槍は俺の背丈より少し長い。両手で持ち、適当に構えてみる。
「なんだよその構えは…本当に素人なんだな…」
「あ〜、すみません…」
「まあいいさ。適当に振り回してみると良い」
何だか凄く恥ずかしいが、とにかく振り回してみる。思った程重くないというか、苦にならない。途中から片手にしてみる。が、調子に乗って振り回していたらすっぽ抜けてしまった。槍は勢い良く飛んで、木の壁に突き刺さる。というか、半分ほど貫通してしまった。
「オイオイオイ!外側に誰も居ねえだろうなっ」
トーラス親方が慌てて壁の向こうを見に行く。どうやら大丈夫だった様だ。
しかし、人が居たら死んでたんじゃ無いか?想像したらサーっと体温が下がる気がした。武器のお試し中、事故で人殺し。恐ろしい。本当に洒落にならない。
「す、すみません!!」
「おお。気を付けてくれよ?いや、ナタちゃんが力が強えって言ってたけどよ。見かけによらずとんでもない腕力だな。構えは滅茶苦茶だが、普通素人が片手であんなに振り回せねぇし、あそこまで深く刺さらねぇぞ」
「は、はぁ…」
「まあ他も試してみるか。…もう飛ばすなよ?」
「は、はいっ!」
「そうだなぁ。短槍は使いこなせるならお薦めなんだが、その腕力だと戦斧とかか?」
「はぁ…」
渡されたのは両刃の斧。長さも薪割りで使うのと同じくらいはありそうだ。多分、前の世界でも薪割りをした事はないと思うけど。
またすっぽ抜ける訳にはいかないので、両手でしっかり持って振り回してみる。うーん、重いとは思わないけど、動かし難いな。
「あー、薪割りもやった事ないって感じだな。よし、次だ。どうするかな。ナイフは上級者向けだし、弓も初心者にはなぁ。むしろ棍とかかね」
親方さんは悩み始めてしまった。
「あの〜」
「ん?何か使ってみたい武器があるのか?」
「その、剣を振ってみたいんですが」
「構わねえけど、剣は割としっかり訓練受けてないと使えんぞ?」
「そうなんですね…でも、何だか気になるんです」
「ほう?じゃあ振ってみるか。片手剣と両刃剣、どっちにする?」
「両手剣でお願いします」
「即答、か。どれ、振ってみな」
両手剣を持ち、構える。何というか、しっくりくる。良く知っている姿勢というか、落ち着く感じだ。
「ほう?」
『これは…』
振り上げ、振り下ろす。面、胴、籠手突き。足が勝手に動く。ん?面、胴って何だ?…思い出せない。
上段から、一気に前へ。振り下ろす。
これだ。この武器が正解だと身体が教えてくれる。
「これにします」
「お、おお。他は試さなくていいのか?」
「大丈夫です。これしかないって気がします」
「そうか。しかし驚いたな。随分と堂に入った動きだったぞ」
「ありがとうございます。記憶は無いんですが、身体が覚えていたというか」
「ああ?記憶がねぇって、ナタちゃんそりゃ…」
親方さんはナタリアさんの方を向くが、ナタリアさんは首を横に振るだけだ。
「やれやれ。しかし、ありゃあどっかで見た動きだったんだがなぁ」
『見た動き、ですか?』
「ああ。昔祭りかなんかで…だめだ、思い出せねぇ。まあいいか、じゃあ両手剣で見繕うか。中で見せよう。トレス、クレアに茶を入れてくれって伝えてくれ。あと、ナタちゃん来てるってのもな」
「はーい」
トレス少年は建物の奥へと引っ込み、俺たちは店の中に戻る。
椅子に掛けて待っていると、トーラス親方が3本の剣を持って来て、机に並べてくれた。
「今店にある両手剣で、キョウマに合いそうなのだとこの3本だな。新しく打ってもいいが、そんな時間はないんだろう?」
『そうですね。明後日には王都へ発ちますので』
「だろうな。さて、順番にいくか。まずこいつだが」
親方さんが鞘から抜いのは、細身で青白い刀身の剣だ。
「青鋼に少量だかミスリルを使ってる。切れ味と魔除けに優れるって感じだな。脆くはないが、あまり乱暴に使う感じじゃあない。まあさっきのキョウマの動きなら、多分大丈夫だろう」
「綺麗な色ですね」
「おお、そうだろう。3本の中では1番上品な剣だな。で、次がこいつだ」
2本目は先程よりかなり分厚い刃、あまり光らない白っぽい金属だ。
「素材は白鋼にワイバーンの牙だな。切れ味も良いが、とにかく頑丈だ。酸とか毒にも負けねえし、連戦で多少刃が駄目になっても叩っ斬る感じで使える。長期戦や旅にはお薦めだな」
酸とか毒。ワームのとかか。確かに、武器が駄目になったら困る。
「最後にこいつ。普通は薦めないが、ナタちゃんと行動するなら、使えるかも知れないからな」
最後の剣は紅い刀身。厚みは先程の2本の中間くらいか。鍔に小さな宝石が埋め込まれている。魔石の様だ。
「魔鉱石と魔石を使って、付与魔法仕様になってる。準魔剣ってやつだな。魔法士がいなけりゃ他の2本に劣るが、魔法士が付与魔法を持っていた場合、段違いの性能になる」
何だそれ。凄そうだな。魔法剣的なやつか?カッコいい…
「うーん、どれも良さそうだけど。ナタリアさんはどれが良いと思う?」
『そうね。専用の付与魔法は持っていないけど、魔石無しの付与なら出来るわ。トーラス親方の作品なら魔法無しでも充分だし、お薦めかしらね。この剣、付与の持続はどれくらいですか?』
ナタリアさんが尋ねると、親方さんはニヤリと悪戯っぽい顔を浮かべた。
「ナタちゃんなら半ラウ(約30分)はいけるぜ」
『それは随分と高性能な…あ』
「気付いたかい?この魔石、ナタちゃん作だよ。前に何個か作ってくれたろう?」
『すっかり忘れていましたよ。まだ残ってたんですね。しかし、自分で作った物が自分に戻ってくるというのは妙な気分ですね』
「はっはっはっ!まあそういう訳だから、準魔剣にするなら安くしておくぞ」
『どうする?キョウマ』
「そうだね。折角だし、この剣にするよ」
「おお、そうか。じゃあクレアに言って…」
親方がそう言いかけたところで、奥から品の良い中年女性が出てきて、お茶を持ってきてくれた。
「いらっしゃい。ナタちゃんお久しぶりねぇ」
『ご無沙汰しております、クレアさん。キョウマ、こちらはトーラス親方の奥様で、クレアさんよ』
「奥様だなんて、ナタちゃんくらいしか言わないわよ。よろしくね」
「キョウマと言います。よろしくお願いします」
「ナタちゃんが男の子連れてくるなんてねぇ。やっと春が来たのかしら」
「そっ、そういうのでは」『そういうのではないんですけどね。ちょっと事情があって、しばらく行動を共にしているんですよ』
…なんか被せ気味に否定された。まあそりゃそうなんだけどね。
準魔剣の魔石の暗号を教えてもらったけど、全然覚えられそうになかった。まあ付与を行うのはナタリアさんだし、俺が覚えていなくても問題無いそうだ。早速付与を掛けてもらう。
そこからはクレアさんとナタリアさんの雑談が始まってしまい、お茶を飲み終えた俺と親方さんは、裏で準魔剣の試し斬りをする事になった。
武器選び、もうちょっとだけ続きます。
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