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不動前のバス停
「不動前」というバス停はその名の通り、バスを降りると小さな祠の中に木彫りの不動明王が鎮座している。隣には祠より大きな金属製の焼却炉があって、煙突の部分は形状に沿ってろくろ首が汚いペンキ画で描かれている。僕は知らないが、このあたりはかつて芸術系漫画家といわれた作者の、何かの作品の聖地であるらしく、道の脇に目をやると気味の悪い、しかも出来の悪い石像、潰れた文房具屋のガラスドアには端がボロボロに砕けた漫画の広告ポスターなどが貼られている。往時はもっとひと気があったのか、それともその頃からこうだったのかは知らないが、とにかく今はただの寂れた町だ。