おじいちゃんの初ご飯
「僕が村に行き辞めるよう伝えてきます。」
ディアーノのは驚いた表情、焦った声色で。
「 あなたがそんな危険なことを犯す必要はあるのですか?」
壱さんは信念があった人助けこそ善行だとしかし村に行く理由はこれではなかった。
「春さんを落ち込ませたのが腹正しくてしょうがないんじゃ。」
感情が高ぶり年寄り口調になってしまった。
だがディアーノは気にせず語りかけてくる。
「人間の行動原理はいつも謎ですね。
私にも協力させてください。」
苦笑いを浮かべ手を差し出す。握手を交わした。
「私以外にもこの森には逃げてきた魔物が居ます。協力を仰いでみましょう。」
その時ディアーノが壱さんを一瞥し
「先程の構え、イチは何か特殊な訓練でもしていたのですか?」
「転生する前に剣術を極めていたんです。」
「これは頼もしい。ですが剣術なら私も自信がありますよ。」
「ディアーノ、明日肩慣らしがてら手合わせ願いた
い。」
「構いませんよ。でも今日はもう休みましょう。」
「ありがとう。」
そういい壱は春さんが寝ている2階に上がって眠りについた。
朝日が昇る。鳥のさえずりが朧気に聞こえ目を覚ます。隣を見ると春さんが居なくなっていた。
急いでハシゴを降りると春さんは朝ごはんの準備をしていた。
「あら、おはよう壱さん。」
「おはよう春さん。昨日はゆっくり休めたかい?」
「もうバッチリよ。朝ごはんもう少しでできるから待ってて。」
「ディアーノは?」
「まだ眠いから寝るって食材は自由に使っていいって許可をもらったわ。」
昨日とは違うほのぼのとした朝に涙が出そうになった。だが堪え少し朝の空気を吸いに外に出る。
「なんて清々しい空気だ。自然も綺麗だ。ことが片付いたら春さんとここに住むのもいいかもしれない。」
部屋に戻ると朝ごはんが完成していた。
フランスパンにバター、シーザーサラダとコンソメスープ、目玉焼きが並んでいた。
転生前から料理が美味かった春さんは異世界に行っても美味しいものを作る自慢の嫁さんだ。
「いただきます。」
「どうぞ召し上がれ。」
ご飯を済ませ茶を飲みながら昨日の世界の話を春さんにもした。今回は春さんの顔には好奇心を感じ取られなかった。村でのこともある無理もないだろう。
「春さん、僕あの村に話をつけようと思うんだ。」
「えっ?」
驚きを隠せ無い春さん。だが表情はすぐに笑顔になり
「壱さんは昔から許せないことがあると行動を起こしてしっかり責任を取ってくる人だもの」
「今回だって上手くやってくれるって信じてるわ」
春さんはいつも僕の理解者で居てくれる。彼女のために頑張ろう。
「ありがとう春さん。ディアーノとも話はしてある。」
「頑張ってね壱さん。応援してるわ。」
昼をすぎた頃ディアーノが起きてくる。
「すみません。夜行性なもんで
ってあれイチは?」
「おはようございます。壱さんは外で鍛錬をしてますわ。」
ディアーノが外に出ると角材を素振りする壱の姿があった。ディアーノに気づき壱が挨拶をする。
「おはよう、随分と遅いな。」
「おはようございます。これでも早起きですよ。」
「そうか。薪の角材を借りていたぞ。」
「構いませんよ。よろしければ剣を作りましょうか?」
「これから先も必要でしょう。知り合いがいます。今からどうです?」
「是非ともお願いしたい。」
自分の武器があればいつでも春さんを守られると思い嬉しさを感じた。
ディアーノの案内の元、僕は一緒に大木の中腹まで登った。
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