おじちゃんの初対面
森に入りだいぶ奥の方まで逃げてきた。少し立ちどまり隣を見ると春さんは酷く落ち込んでいる様子。
「壱さん、、、ごめんなさい。何か触ってはいけないところを触ってしまったのかしら。」
水晶にひび等は入っていなかったが突然割れたのは確かだ。しかし村に戻って原因を聞くことも出来ない。とりあえず春さんを元気づけよう。
「春さんが悪いんじゃないよ。劣化していただけさ。」
「でも私のせいでこんな所に来てしまったわ…」
初めての地でこんな展開は誰だって気に病んでしまうだろう。ここままでは居られないな。
「僕達は50年余付き添ってきた仲だ。どんな状況であろうと春さんと一緒さ。」
「壱さんは本当に優しくて素敵だわ。」
春さんの顔が少し明るくなった。また手を取り走り出す。2人とも田舎育ち故、森を歩くのは慣れていた。
村人が追ってくる様子は無いが魔物が出る世界ならいつやってくるか分からない。せめて長物があればいいのだが。
すると東京タワーくらいの大きさの樹木があった。夢中で走っていたため上を見ていなかったがだいぶ目立つ木だ。
「大きい木だわ。壱さん、木の根っこに扉があるわ。」
よく観察してみるとドアノブがついていた。だがパッと見ただけでは気づかない小さな扉。
ノックしてみることにした。
コンコン。
「誰か居ませんか? 」
コンコン。
「誰かいませんか?」
すると遠くから村人の声が聞こえ始めてきた。
春さんとその場でしゃがみこみ息を潜める。
「こっちから声がするぞ。逃がさねぇ。」
だんだん声が足音が鮮明に聞こえる。
ガチャ。
2人とも手首を捕まれ思いっきり引っ張られ空いたであろう扉の方へに引きづりこまれた。
「危なかったね。」
声のする方へ振り返る。するとそこには顔がフクロウ体が人間の魔物が居た。
驚きとっさに春さんを背にし身構える。
「なんだお前は?」
フクロウ男は言う。
「私の名前はディアーノ、この森の管理者、そして魔物だよ。」
「魔物だと…」
壱さんは家にあった角材を手に取りディアーノに向けた。
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