おじいちゃんの初質問
壱とディアーノは集まって来た村人に囲まれてしまうが2人とも表情一つ変えず構えていた。
「囲まれましたね。イチ、どうします?」
何も答えず壱がおよそ80人は居るであろう前方へ飛び込んで行った。ディアーノは少し驚きつつも詠唱を始める。
「魔力は全ての根源にて、我は今、疾風へと換算す。」
魔力が風へと変わり魔法陣を描く。壱との手合わせで使用した。風を圧縮した空気の玉を作り村人へと放った。
「うわぁぁぁ」
「ぐへぇ」
何十人と飛ばされ気絶するが武器を持った村人がディアーノへとかかってくる。
「力の差が歴然でしょうに…」
ディアーノは呆れながらいなしていたその頃、壱は村人の首を目掛け、鞘にしまっていた刀身を抜刀し首を切り落とす。
その圧倒的すぎる剣技に壱には誰もかかろうともせず立ちすくんでいた。壱は村長であるガダルに一直線に走り出す。
導線上に居た数名の村人は刀身を確認する間もなく首が落ちて行っていく。壱はその度に抜刀と血ぶり納刀を繰り返す。
ディアーノは武器を持って居なかったため村人が持っていたクワやスコップなどで相手しつつ壱の動きを見ていた。
ついに村長ガダルの元へ着く壱は村人が先程まで見ることの出来なかった刀身をガダルの首元へ近付け止めた。
「お主に問いたいことがある。いいか?」
ガダルは死が目前にあるという恐怖で声が震える。
「なんじゃ?」
「何故ゆえ人を襲う」
「この村は魔物が近くに住んでいるから商人が来ないんじゃ…だが…転生したものが来るようになって飢えに狂った1つの家族が殺して食べてしもうた。そこからじゃ。」
「その家族を出しなさい。」
「もう1人しか居らんよ…」
「何処に居るんじゃ?」
ガダルが不気味な笑みを浮かべながら手を挙げこう言う。
「目の前にいるじゃ…ろ」
その瞬間、壱はガダルの首を落とす。言葉聞いた時には身体が反応していた。それから村人達の動きが目に見えて変わった。
広間からよく見る村は確かに畑も家畜も全てが朽ちていて村人も痩せこけいるものが多く子供や赤ちゃんは一切居なかった。
そして1人の村人は壱に向かって言葉を投げる。
「どうしてくれるんだ!!村長はみんなを導いてくれていたのに!!」
その1人の声からみんなも続けて罵詈雑言を吐きかける。村人に殺意が戻って行く頃、ディアーノが壱の前へと現れて話をする。
「この村の人達は人を殺して糧にしているがずっとこの生活も続かないと思います。ですのでこの村を滅ぼします。いいですね?」
「道徳は1人殺した時にはもう無くなっておる。それと春さんを守れるならどんな物でも刀で落としてくれるわ」
少し悲しい顔をしているが世界を変えると約束した以上、生き物を殺す覚悟は必要だ。ディアーノが壱の意志を確認できた所で詠唱を始める。
「魔力は全ての根源にて、我は今、闇の深淵から業火へと換装す。」
黒炎と焔が入り交じった炎は村人共々、塵芥に変えていった。
「壱さんそれでは帰りますか。」
「そうじゃな…」
こんな残酷な光景を見たあとでも登ってくる朝日は霞を身にまといながらも美しかった。
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