~生かして殺す、いつか殺せるその日まで~
「正直に話すねあの日のことを」
第一章 虐殺前夜
~16年前~
「探せ、城内をくまなく!ネズミ1匹見逃すな!」
騎士隊長の声が激しくこだまする。世界でも随一の発展を遂げたサクリア王国の王が何者かに殺されたのだ。
「たっ、隊長これを見てくださいっ」
現場検証を担当していた兵士の一人が慌てた様子で差し出すそれは、赤い鱗の様なものだった。
「これは、竜の鱗か?」
騎士隊長が問うと、
「はっ、はい、犯人は竜人族かと...」
兵士が回答と補足をする。
「なら、簡単だな」
騎士隊長が高らかに笑う。
竜人族とは、古代よりこの世界に存在している種族で竜の翼や角、尻尾などが人間の体から生えている、といえば想像しやすいだろう。しかし、鱗や角が高く取引されるため竜人売買が横行、その殆どが殺されている。
そのため今は竜人族は極めて少なく、サクリアの遥か南西に位置する小さな村だけに生活している。
竜人族の特定は2~3週間もあれば、容易に可能だ。しかし、若い兵士が後先考えずこう言った。
「特定に、3週間も待っていたら、騎士団に対する不信感を抱く国民が増えるんじゃ?」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、騎士隊長がこう続ける。
「心配するな、策はある。」
「策、ですか?」
「ああ、竜人族を絶滅させる。」
その場にいた一同が驚愕し、黙り込む中ただ一人正義感の強い兵士が言葉を漏らした。
「しかし、それは、あまりにも...」
「貴様らに拒否権は無い、国王亡き今私の命令は絶対だ。」
正義感の強い兵士の言葉が無慈悲な罵倒にかき消された。そして、この罵声はこう続けた。
「明日の早朝、王国騎士精鋭部隊で竜人どもの村に出発する。」
王国騎士精鋭部隊とは、凶悪犯罪やジェノサイド等に対抗するため王国騎士内の投票によって選抜された二十名で構成された舞台である。彼らが出撃するとほぼ必ず血飛沫が上がるため、彼らのパーソナルマークである百合の花に絡めて「ブラッドリリィズ」と呼称される。
ちなみに、隊長を務めるのは皆さんご存知この罵声の主である。
そして、悲劇の幕が上がる...
これから綴る物語は、暗くて重い物語。
恋愛もなければコメディ要素も尠少だ。
それでも良ければ次のページを開いて欲しい。
必ず後悔はさせない