第六話 捕らわれの女の子
「アリアの匂いがあの中から漂ってきてます!」
「相変わらずの変態っぷりね……」
私とクララは、森の中にあった洞窟のそばまでやって来た。
クララの言うように、洞窟の中には人の気配が五つほどあるわ。
一番奥でじっとしてるのが、おそらく捕まっているアリアでしょうね。
「リリスさん!」
「何?」
「ここは私にやらせてください!」
「大丈夫なの? 入口の見張りも含めたら八人いるけど」
「大丈夫です! アリアにひどいことした盗賊たちには、私が裁きの鉄槌を下しますよ!」
両手の拳をぐっと握って宣言したクララ。
勝算はあるみたいね。
「任せたわよ。私はもしもの時以外は動かないからね。あ、あと一人は残しといてね。ボスについて聞きたいから」
「フフフ。わかりました。私に任せてくださいよ」
クララが悪い笑みを浮かべながら、懐から再び吹き矢を取り出した。
「フフフ。デスサーペントの毒を塗った一品ですよ。アリアにひどいことしたやつは苦しんで死ぬといいです」
何この子。めっちゃ怖いんだけど……。
「あの世で後悔しなさい」
クララが吹き矢を吹く。
高ランク魔物の毒が塗られた矢は、すべて盗賊たちの首にヒットした。
「行きましょう!」
クララが倒れた見張りの盗賊たちを踏みつけながら、洞窟の中を指差す。
私は彼女と一緒に洞窟の中に足を踏み入れた。
「クララ参上です!」
見張りが倒されたことにも気づかずに談笑していた盗賊たち。
そんな彼らの前に、クララは名乗りを上げて飛び出した。
ヌンチャクと呼ばれている東のほうの国で有名な武器を携えて。
「だ、誰だテメェ!? 見張りはどうした!?」
急に現れたクララに驚いた盗賊たちだったけど、
「ヌンチャクマスターと呼ばれている私の実力を見せてやりますよ! フォー! アチャー! チェイッ! ハアアアッ!!」
クララの華麗なヌンチャク捌きによって、あっという間に倒された。
「暗殺者の立ち回りしてたのに、ここにきて急に武闘派になったわね……」
「物理で殴るのが手っ取り早いです! スカッとしますし」
「ああ、うん。まあ、確かにそれはそうね。殴ったらだいたいなんとかなるし」
私は一人の盗賊に近づく。
クララが手加減してくれたおかげで、こいつだけは意識が残っていた。
「ボスについて教えてもらえるかしら? 殴るわよ?」
「い、言えない! もしボスのことを喋ったら……」
私は強者のオーラを出して盗賊を威圧した。
盗賊のボスが恐怖でこいつらを支配しているのであれば、私がそれ以上の恐怖を与えてしまえばいい。
見た目の怖さなら自信あるわよ。
「ハァ……」
「元気出してください。そのうちきっといいことありますよ」
「子供と小動物に好かれたいわ」
「……」
「ねぇ、そこは何か言ってよ……」
結局、盗賊が自白するのに時間はかからなかった。
「……ぼ、ボスはあの閃光のハザールだ……」
「どの閃光のハザールよ? 聞いたことないわ」
「リリスさん、結構有名なAランク冒険者ですよ。次期Sランク冒険者との呼び声高い閃光のハザールです」
なるほどね。
表の顔は冒険者だけど、裏では悪いこともやってるって感じかしら。
Sランク冒険者間近のAランク冒険者ということは、推定レベルは65あたり。
それだけの実力者なら、結界系の幻術を使えたり大規模な盗賊たちを引き連れててもおかしくないわね。
「聞きたいことはもうないわ」
「い、命だけは……」
「無理です」
盗賊の命乞いもむなしく、クララの毒ナイフで首を掻き切られた。
クララは他の盗賊たちにもとどめを刺した。
「いいの? 街に連れていけば報奨金が出るのに」
「いいですよ。私もリリスさんと同じで、この国では堂々とできない立場ですし」
「え? クララ犯罪者?」
「違いますよ! 人族じゃないっちゅう意味です! さっさとアリアのもとに行きますよ!」
クララが私の腕を引っ張って進む。
すぐにアリアのもとに着いた。
「ヤッホー、クララ……」
両手足を拘束された水色の髪と瞳の女の子が、弱弱しい声で牢の向こうから話しかけてきた。
彼女の頭からは、ヒレのようなものが生えている。
種族は水龍系の龍人みたいね。
「クララって騒がしいから、助けに来てくれたのすぐわかったよ」
「すぐに助けますよ、アリア!」
……かなり衰弱してるわね。
それに手錠から嫌な気配がするわ。
おそらくこの手錠によって、アリアはなんらかの呪いを受けている。
「クララ。ここは私に任せなさい。手錠が呪い系統の魔道具だから、普通に開錠するのは無理だわ」
私は牢を素手で切断してアリアのそばに行き、手錠も素手で引きちぎった。
「「ふぁ?」」
クララとアリアが同時に変な声を上げた。
「ちょ、どういうことですか!? 呪いの魔道具だから開錠できないって! なんで普通に引きちぎってるんですか!? 普通は特定の魔法で開錠するところでしょう!」
「なんでそんなめんどくさいことするのよ? 魔道具を壊せばいいだけじゃない」
「いやいやいや! 普通はできませんよ! 何、力業で解決してるんですか!」
「最強の吸血鬼を甘く見ないことね」
呆れるクララ。
私はそんなクララを無視して、アリアの足枷のほうも引きちぎった。
こっちはただの枷だったけど、呪いの魔道具のほうと大して変わらなかったわね。
「【鑑定】。うん、問題ないわね」
アリアは呪いによってスキルが使用できない状態になっていた。
呪いの魔道具を壊したことでスキルは使えるようになっているけど、衰弱しているのには変わらない。
「ケガはないかしら?」
アリアをお姫様抱っこしてそう問いかけたら、顔を赤くしたアリアがぽつりと呟いた。
「お姉様」
「なんでお姉様なのよ?」
「なぜかお姉様って呼びたくなったの」
「わかる。リリスさんって悪いお姉様って感じですもん」
「なんでクララまで同意してるのよ? まぁ、妹にも悪役令嬢とか言われたけど」
「さっきのは悪役令嬢みたいなネガティブな意味じゃないですよ! 誉め言葉です!」
私は「悪役的カッコよさを出すにはどうすればいいのか」などと変なことを考えながら、アリアとクララを連れて洞窟の外に移動した。
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