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第三十一話 生誕祭襲撃事件

 翌朝。

 十時を過ぎた頃に、私たちは目が覚めた。


「ぁ~、ぐっすり寝たわね」


「うん。清々しい朝です」


「おはよ。ふあ~」


 ササっと朝ご飯を用意して食べた後、昨日の件についての話になった。


「あのスライム死ぬときに意味深なこと言ってましたけど、なんだったんですかね?」


「帝都で何があるんだろ?」


 私は昨日のことを思い出す。


 死に際のあの態度だ。

 絶対にハッピーな出来事が起こるはずがない。


「この時期だと……皇帝の生誕祭がもうすぐ(おこな)われるわ。スライムの仲間が大きな事件を起こすなら、その時に動く可能性が高そうね」


「なるほど。それは可能性が高そうですね」


「ありえる!」


「帝都に向かう? みんなお祭りでウェ~イってなってるだろうから、少々目立っても問題ないわよ」


「祭りならおいしい食べ物がいっぱいありそう!」


「もちろん出店や屋台がいっぱいあるわよ」


 私がそう言うと、アリアが喜声な奇声を上げた。

 朝からテンション高いわね。寝る時までずっとこのテンションが続くのって、何気にすごいと思うわ。


「それじゃあ、行ってみますか。何も起こらなくても、充分楽しめそうですし」


「私たちもウェイウェイしよ」


「なら決定ね。帝都に向かいましょ」



 というわけで、私たちは二日後には帝都にやって来た。

 例のごとく外壁を乗り越えて不法侵入する。

 まずはお風呂付きの高級宿で泊まる手続きをしてから、街の散策に繰り出す。


 皇帝の生誕祭は三日後ということで、街は非常に浮足立っていた。

 どこもかしこもお祭りムードで、生誕祭の準備が着々と進められている。


「当日はどんな感じなんですか?」


「いたるところに出店が出て、皇帝がパレードで帝都の中を馬車で通る時は、一目見ようと人がいっぱい押し寄せるわ」


「すごく賑やかそう!」


「ですね」





◇◇◇◇



 帝都にやって来てから三日後。

 帝都で有名なお店巡りをしたり、マリアの働いているスイーツ屋に二人を連れていったり。

 そんな感じでのんびり過ごしていたら、あっという間に生誕祭の日がやって来た。


「私たちは屋台巡りをしつつ、異変に備えて警戒するわよ」


「おー! いっぱい食べる!」


「今日ばかりは何も考えずに食べまくってやりますよ!」


「警戒もちゃんとするのよ? まあ、私も今日は好きなだけ食べるつもりだけれど」


 私は食欲全開の二人に苦笑しながら、屋台巡りをするべく街に繰り出した。



 皇帝の誕生日を祝う祭りというだけあって、例年通り街はすごい活気に満ち溢れていた。

 いたるところに屋台が並べられ、街の住民や観光客たちが食べ歩く。

 人通りはいつもの倍以上になっていて、いたるところで客引きなんかの声が飛び交っている。


「お! あれなんてどうです?」


 クララが指さしたのは、この街の名物である帝都唐揚げという食べ物。

 あれは帝国領の広範囲にわたって生息しているデリシャスチキンという鶏の魔物を、油を使って揚げた料理よ。

 今日はお祭りだから、贅沢に油を使いまくってるみたいね。


「帝都唐揚げ三人前で!」


「はーい、喜んで!」


 その後も食べ歩きを続けていると、パレードが始まった。

 今のところ何も異変は起きていないわ。


「私たちは離れた場所から見ましょ。近くで私の顔を見られたら、もしかしたらバレるかもしれないからね」


「了解です」


「わかった」



 私たちは建物の屋根の上に移動して腰かけた。

 他の人たちはみんな大通りに詰め掛けているから、大通りから離れた高い建物の屋根の上にいる私たちの姿を見られることはない。


 帝都団子という名物料理を食べながら大通りを眺めていると、遠くのほうから馬車がやって来た。

 立派な馬の魔物に引かれた、煌びやかな装飾が施された馬車。

 その先頭に皇帝が乗っていた。


 後ろには二台の馬車が続き、片方には元婚約者だったクソ皇太子が。

 もう一つの馬車には、皇帝の娘である皇女が乗っていた。


 彼女とはほんの数回しか会ったことはないけど、あのクソ皇太子の妹とは思えないほどいい子だったわ。

 確か今年で十五。成人か。

 見違えるような美人になってるけど、昔の面影はしっかり残ってるわね。


「あれがこの国の皇帝と姉貴を振ったという大馬鹿皇太子ですか」


「表面だけの笑顔がウザいね」


「同感です」


 皇帝とクソ皇太子が、顔に笑顔の仮面を張り付けて民衆に手を振る。

 皇女は取り繕ったりしていない、純粋な笑顔だ。眩しい。

 民衆たちは皇帝たちを見て、黄色い悲鳴や歓喜の声を上げた。



「なんかクソ皇太子殿下のあのアホ面を見てると無性に殴りたくなってきたわ」


「吹き矢ありますよ」


「暗殺するのはやめなさい」


「じゃあ、正面から殴り込む?」


「正々堂々とすればいいってもんじゃないわよ」


 私は二人の頭を撫でて、荒ぶった心を落ち着かせる。


「ふへへ」


「えへへ。気持ちいい」


「よし。落ち着いたわ」


 二人の頭の上から手を下ろし、視線をパレードのほうに戻――そうとした時。


「ッ! 来やがったわね」


 私の優れた五感が、北西から帝都に侵入した魔物の気配を感じ取った。

 一般人には強大すぎるほど大きな、されど私にとっては取るに足らない気配。

 だけど、この前の変態スライムに匹敵するような禍々しさを感じる。



 直後――ドゴォォォォンッ! と。

 爆音が響き渡り、音のしたほうを見れば、巨大な火柱が昇る光景が視界に映った。

 その上空にはドラゴンっぽいのが飛んでいた。

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