「第1の能力(チカラ)」
夜中に目が覚めた。
時計を見ると1時5分だ。
私は、週に3日ほど
セルフのガソリンスタンドで深夜のアルバイトをしている。
そのせいで勤務の無い日も夜中に目が覚めることがある。
いつもは、すぐにまた寝入るのだが
今日はふと思い出した。
大好きな彼女と会う日だ。
しかし彼女は私にとっては遠い存在だ。
彼女は某お店の紅一点で
近所でも評判の可愛い子だ。
子供からお年寄りまでみんなに人気がある。
とにかく誰に対しても親切で優しい。
これで評判にならない方がおかしい。
独身のサラリーマンとかイケメンのお兄さんは
遠慮なく彼女にアタックしている。
でも不思議と彼女がデートしたとかは
聞いたことが無い。
彼女は他の女の子と同じように理想が高いのだろうか。
普通の人は、そう考えると思う。
しかし、私は彼女の秘密を知っている。
秘密というか能力だ。
SF小説やマンガにある超能力が彼女にはある。
彼女の話だと複数の能力があるらしいが
私には教えてくれない。
でも1つだけ分かる。
テレパシーの能力だ。
何で分かるかって。
それは、私にもある能力だから。
それが分かったのは
今年の8月9日12時00分に店の前を
私が通った時に
一目見て『かわいい』と心から思ったのだ。
すると『ありがとう』と返事が返って来た。
その声は頭の中に聞こえてきた。
さらに
『あなたも私と同じなの?』と問いかけてきた。
驚いた。私にはテレパシーのような
感覚がいつもあったのだけれど
まさか他人とテレパシーで会話できるとは
考えた事もなかったから。
昔、横山光輝の漫画に2人のカップルが
お互いにテレパシーで話せるストーリーが
あったのを思い出した。
ひょっとして私と彼女は運命の人?
と、空想好きの私は、考えてしまったけど。
ありえない。
彼女は美人でかわいい。
それに比べて私は背が低くてブサイクなl
おじさんだから。
それでもその能力のおかげで
その1週間後に2人で会っていろいろ
話した。
その後も何回か会った。
私はこんなだけど、
帰り際に一度だけキスをしてくれた。
思わず「美味しい」と思った。
思っただけなのに彼女に聞こえてる。
彼女は笑顔だ。かわいい。
好きになってしまう。
でも、からかわれているのか?
そんな女の子ではないのに。
・・・
9月12日
彼女と会った。
いつもと違って元気がない。
話しを聞いてみると
お店のオーナーが変わって
オーナーの親族が店に来ることになったらしい。
それで彼女はお店を辞めることになるらしい。
彼女は5年くらいがんばってきたらしいのに
お店のオーナーは冷たい人だ。
10月からお店が変わるとのこと。
私は、彼女には結局メールしなかったのだけど
自分なりに彼女に合いそうな店を勝手に探したりした。
しばらくして
「新しいお店決めたの」と報告してきた。
そっか。良いお店だといいね。
また、顔を見に行くよ。と伝えた。
・・・
彼女のお店を辞める日と
新しいお店の最初の日に顔を見に行った。
いつものように明るい笑顔だったけど
どこか不安そうに見えた。
これはテレパシーがなくとも普通に感じ取れる。
がんばってね。
彼女より自分の方が心配で眠れそうもない。
(実際は、その日も熟睡しました。ゴメン。)
・・・
心配とは裏腹にかわいい彼女は
新しいお店でもあっという間に
人気の女の子になってしまいました。
そして今日を迎えた。
彼女に2つ目の能力を教えてもらえるはずだ。