表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/53

エンドロールは流れない 〜前編〜


「……それで、どうするんですか? これから」


 ミアが守護者と再び対峙し、スカウトされた翌日。深夜の酒場でのこと。バーテンは、いつものようにカウンターに頬杖をつくミアに問いかける。

 深夜の酒場には当然他の客がいることもなく、いつものように申し訳程度の明かりがあたりを照らしていた。


「別に、あたしがどうしたって良いでしょ」

「そうはいきません。あなたはこの酒場の稼ぎ頭なのですから。私はあなたがここに居座るように動く必要があります」


 確かに、バーテンが暗殺者組合の招待状を隠していたり、守護者の招待状をミアに渡さなかったりと裏で動いていたのは、ミアを組合に残留させるためと考えるのが理由として自然だった。


「……だったら、どうして今更になって暗殺者組合への招待状を渡してきたのよ」

「さあ、なぜでしょう」


 しかし、それならばミアに暗殺者組合への招待状を渡す必要はないだろう。最後まで隠しておき、ミアへの襲撃があったとしても事前に防いでおけば良かったのだ。バーテンにはそれだけの器量がある。そのことはミアが一番よく理解していた。

 そこまで考えて、ある結論が口をつく。


「……もしかして、あたしが()()()選べるように、なんてことはないわよね」

「それが裏目に出てしまうほどに、あなたが成長していたのですがね。光陰矢の如し。()()()()金言です」


 裏にいても自分の利益だけを考えているものばかりではない。メアの言葉を思い出し、ミアは深々とため息をつく。様々な手紙を渡さなかったのも、ミアが先のことを考え始めてしまったときに暗殺者組合の招待状を渡したのも、バーテンの気遣いだったというわけだ。


「まったく、そんなに捻ったらわからないわよ」

「それで良いんですよ。この一週間、いろいろなことがあったという意味です」


 バーテンの言葉で、カイを殺す依頼を請負ってから一週間しか経っていなかったことに思い至る。そして、何度目かもわからないため息をひとつ。それは、平素とは違って満足げなものを感じさせる。この瞬間に限っては、ミアの表情に憂いの二文字はなかったのだった。


「あんたにはかなわないわね。いつもいつも」

「いつか追い越してくれないと困ります。それより、ついさっき新入りが入りまして。ぜひあなたに会わせたいのですが……」


 ふと、ミアに合わせて軽口を叩いていたバーテンはそう言って厨房のほうに視線を送る。そして、促すように頷く。


「新入りい? いつも勝手に組合に入ってはいつの間にかいなくなってるじゃない。急に会わせたいなんて……」


 いつものように悪態をつこうとしたミアだったが、バーテンに促されて奥の厨房から姿を現した人物に目を見開き、驚愕をあらわにする。

 そしてガタリと椅子を倒して立ち上がり、もう二度と出会うこともないと思っていた相手の名前を大声で叫んだのだった。


「リ……リーシャ⁉︎」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ