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暗殺者組合


 バーテンの計らいによる昼間の賑わいも完全に治まった深夜の酒場。その片隅のカウンターに、不機嫌そうな声が響く。


「それで、まだ()()が潰れてないってことはうまくやったんでしょ? どんな魔法を使ったのよ」


 話の内容は当然、裏の仕事や立ち回り。そして、裏の中での勢力に関する情報収集に集約される。深夜になれば当然、表舞台の幕は降り、裏の世界が幕を開ける。表と裏は決して相容れることはないのだった。


「なに、貴族連中の前に姿を現してお願いすればすぐですよ」


 そう言って戯けたように肩をすくめるバーテンをミアは意殺すように睨み付ける。そして、この男には何を言っても無駄だとばかりにため息をつき、それでも言わなければ気が済まないとばかりに漏らす。


「それ、脅しっていうのよ? それも悪質な。鎌を担いで頭を下げるようなものね」


 聞き覚えのある会話。以前と同じ立ち位置。表面上ではいつもの日常を保ちつつも、二人の関係性は微妙なところにある。

 直接的な対立こそなかったものの、バーテンの雇った暗殺者がミアを襲い、ミアが殺した。お互いがお互いに不利益を及ぼしたのだった。


「ええ、死神ですから。ただでは頭をさげませんよ」

「同感ね」


 そんな二人を繋いでいるのは、やはりというべきか、利害関係だった。というより、一時的な協力関係だろうか。

 ミアにとっては定期的に仕事をするためにそれを斡旋する酒場の存在は必要不可欠だろう。

 そして、バーテンにとっても現場で仕事をする者がいなければ、それを斡旋したところで張り出した紙が虫に喰われるのを待つだけだった。


 そう、人と人との関係性は利害関係によって複雑に絡み合う代わりに、それ以上に大きな発展を生むのも事実だった。


「そんなことより、『月夜の怪物』宛に手紙が届いていますよ?」


 『月夜の怪物』という部分が強調された言葉に、ミアはいつものように顔をしかめる。どうやら、人間としての『ミア』はお呼びではないらしい。


「……あたし宛の手紙とかどうせろくな用じゃないことはわかってるけど、珍しいわね」


 彼女は殺し屋である。であれば、周囲から殺し屋として認識されるのも無理はない。

 ただ、その事実に対して思い切り嫌な顔をするくらいは許されるだろう。


 ミアはバーテンから厳重そうな封がされた手紙をひったくり、破るように、実際は破ることなく手慣れた手つきで開く。

 そして、折り畳んである中身を開いて確認し……


「月夜の怪物へ……暗殺者組合より⁉️」


深夜の酒場に似合わず、驚いたような声をあげたのだった。


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