表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イモータルキラー 〜殺し屋の少女と不死者の男。そして表を向かない白金貨〜  作者: ドドドDON!
殺し屋の少女と不死者の男。そして表を向かない白金貨
10/53

微睡みの中で2


「ミアちゃん、今日もお使いかい? えらいね〜」


 翌日、ミアは一人で市場に買い物へ赴いていた。

 ミアは笑顔で語りかける店主の言葉に、それが眩むほどの笑顔を返してバスケットを差し出す。というより突き出す。突き出して、言う。


「うん! 小麦粉を一袋と、リンゴを三個!」

「はいよ〜。えっと……銅貨二枚だね」


 ミアは毎日この露天で買い物をしている、いわゆるお得意様というものだ。少し笑顔を見せれば、店主は喜んでまけてくれるだろう。


「ありがとう、おばちゃん!」


 しかし儲けすぎると、目立ちすぎると殺し屋に狙われる世界。どんな要因で他人から恨まれるかわかったものではない。できる範囲で、商品と共に恨みを買わないようにすることこそが最終的に一番の儲けにつながるのだ。

 『命があれば儲けもの』である。


「今日の夕飯はリンゴパイかい? いいわねぇ。……そうだ。このスパイス、りんごの甘さを引き立てる上に、商売の幸運を呼ぶそうよ? ぜひ使って頂戴な」


 店主はミアの耳元で囁き、小さな包みをミアに握らせる。そして「お父さんによろしくね」といって手を振り、

「うん! ありがとう!」と、ミアが笑顔を返すことで、満足げにうなずいた。

 ミアの手に握られた小包がちゃり、と音を立て、その音と共にミアの小さな背中は店主の前から消えていった。



「ただいまー! ……あれ?」


 ミアが笑顔で帰り着いた家には、いつものように暖かな空気が流れていることはなかった。


「……お父さん? ……お母さん?」と言う声に返事が返ってくることはない。響いた声は本来帰ってくるはずのおかえりを待たず、質素な家の木板の壁に吸い込まれていくように消えていった。


 ——寝てるのかなあ……。


 小さな体を奥底から冷やすような感覚。今まで覚えたことのないそれがなんなのかを考えることもなく、大きくなっていくその感覚に従うように、誘われるように上階の寝室へ向かい、ドアノブに手をかける。

 そして恐る恐る開け放ち、直後、ミアは両の碧い瞳を驚愕の色に、目の前に広がる(くれない)に染める。


「……お、お父さん! お母さん!」


 同時に今まで出したことがないような叫び声を上げ、突き動かされるように、引き寄せられるように駆け寄った。

 問いかける声は、先ほどとは違う意味の同じ言葉へと変わった。それはひとえに、両親の状態が変わっていたからである。


 ミアは寝室においてベッドではなく、二つあるその間に膝をつき、父親だったものの手を取る。


 同時、床についた膝が赤く染まる。それは駆け寄った勢いで擦りむいたからではなく、その下に広がる()()()()に服が触れたからだった。

 ミアの両親は、ベッドの下で抱き合いながら血を流し、倒れていたのである。


「う……、ミア……」

「お父さん! 何があったの! 死んじゃいやだよ!」


 まだ息はある。しかし、木板の床を真っ赤に染め上げるほどの出血量では、じきにそのか弱い息の根がミアの耳に届かなくなることは、幼い彼女が見ても明白だった。


 こんなときにどうするか。


 ——確か、近所に診療所があったはず。少し待っていて。


 ミアはそう思ったことを口に出そうとするも、それは呻き声をあげながらも父親が発した言葉に遮られることになった。


「……触るな、人殺しの……化物め」

「……え?」


 直後、恨み節のような声と共に世界が暗転し、もう戻らない光景と共にミアの意識が、現実へと引き戻されていく……。


ご評価、ご感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ