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ライミリアンとギルディアス  作者: ことづき
第1話*華の街
4/6

3-2








《ライミリアンへ》









「……は…?」


見間違いかと思ったが、確かに一文目に書かれているのは自分の名前。

心臓が変に煩くて、紙を広げる指のもどかしさに歯噛みしながら、次の言葉に目を落とす。



《ギルディアスが発明家になったとき、街長になっているのはライミリアンだ。

君ほどに相応しくて、優れた人材はいないからね。

何より、ギルディアスを支えてくれるのは一人しかいない。ギルディアスもまた、君を支えてくれるようになっているといいんだけど》



目の前にいると錯覚しそうなほど。

笑い声すら聞こえるようで、ライミリアンは堪え切れない感情に思わず口元を押さえた。



《君は最初から、ギルディアスの欠点に気付いていた。

彼には感情が足りない、というより表現出来ないのに、それを苦しいと気付けない。

でもそれはいつか、彼自身も知らないままに歪みを起こしてしまう。どうか、彼が正しく自分を感じられるように導いてほしい。





…飴と鞭で》




「・・・」


1:9の割合を察しているかのような、謎の空白。


それはさておき、ライミリアンは偉大な発明家ゼヴェルトの願いに目を細める。

それがこんなにも"ささやか"なものだと、いったい誰が知っているだろう。



《そしてライミリアンは、本当に限度を知らずに頑張りすぎるから、無茶は禁物。ギルディアスと同じ、君も僕の最愛の息子だから》



文末は、こう締め括られていた。



《どうか、二人の未来に、夢に、幸せが積もりますように》







「ライアも水いるー?」


コップを手に、ギルディアスが帰ってくる。


「あぁ」


「なんか書いてた?」




少し考えたあと、ライミリアンは気の抜けた柔らかい笑みを零した。


「相変わらず、口車に乗せるのが上手い人だ」


…これくらい、独り占めをしてもバチは当たらないだろう。心の中でそっと。




机の上の鍵を手に取ると、ギルディアスに投げて渡す。


「まだ当分、実行に移さない。会議堂が人少なくなる時期を狙う」


その表情は、街長のそれに戻っていた。


「ギール、この間の盗聴ロボ「いや伝書ロボです」を改良しろ。書庫に入る時も出る時も人目につかないよう、扉の前に仕掛ける」


その言葉に目を丸くして、ギルディアスはニカッと笑った。


「悪用じゃん」


「馬鹿者。必要悪という言葉がある」










二人で受け取ったバトンは、


戻ることのできない片道切符。




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