表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グルノールの転生少女 ~ないない尽くしの異世界転生~  作者: ありの みえ
第4章 街での新しい暮らし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/523

閑話:レオナルド視点 慙愧祭とその顛末 2

 二日に一度通ってくるはずの家庭教師は、追想祭の四日後にようやく姿を現した。

 まったく雇用契約どおりではないが、アルフからの報告書どおりではある。

 あの家庭教師を自称する女は、本当に仕事をしていなかったのだ。


 バルトの案内で居間へと通されたカーヤは、俺の顔を見るなり表情を変えた。

 戸惑い、罰の悪そうな顔をし、最後に媚びた笑みを浮かべる。


 ……全部顔に出ているのにな。なんでコレに気が付かなかったんだ?


 答えは簡単だ。

 少しでも早くティナを任せられる教師を、と家庭教師を探し、その看板を信じた。

 教師にもそれぞれの人となりがあり、生徒と馬が合わない場合もある。

 そんな当たり前のことを、俺は見落としていたのだ。


 ……まあ、カーヤの場合は教師の人となり以前の問題だったがな。


 内心の苛立ちを押し隠し、カーヤを椅子へとエスコートする。

 この手の人間は、窮地に陥れば簡単に逃げ出すことがある。

 それをさせないためにも、まずは椅子に座らせることが肝心だ。

 椅子に座らせさえすれば、ただ立ち上がるだけでも動作が増える。

 カーヤが突然逃げ出そうとしたところで、取り押さえるのは簡単だ。


「レオナルド様、今日は砦ではございませんの? こうして館でお会いするのはいつ以来でしょう」


「先日は無理を言って貴女にティナを任せてしまったので、一度ゆっくり話しをしたいと……貴女を待っていたのですよ」


「まあ」


 ポッと頬を赤らめて、カーヤの瞳に熱が篭る。

 怒りを抑えているからこそ言葉が丁寧になっているのだが、カーヤには通じていないようだ。


「……そういえば、二日前にも貴女を待っていたのですが、いらっしゃいませんでしたね。どこかお体の具合でも?」


「え、ええ。少し体調を崩してしまいまして、こちらへは来られませんでしたの。レオナルド様がお待ちしてくださっていたと知っていれば、無理をしてでも駆けつけましたのに……」


「そうですか。事前に何の連絡もなかったようなので、何かあったのではと心配しておりました」


 打てば響くとはこのことか。

 授業の予定があった二日前もカーヤを待っていたが、彼女は館を訪れなかった。

 カーヤがおかしいということはすでに実感していたので、すぐに人を使って調べさせたのだが、カーヤは前日の夜から酒を飲んでおり、あろうことかその日は男の部屋に泊まっている。

 ティナの授業時間であった時間帯には、男の部屋から怪しげな営みの声が聞こえた、との報告も来ていた。


 ……家庭教師どころか、成人としてもどうかと思う行動だな。


 契約どおりに出勤をせず、昼まで淫蕩にる家庭教師など、聞いたことがない。

 この家庭教師を自称するカーヤという女については色々思うことがあるが、一つひとつ片付けていくしかないだろう。

 それほどに問題だらけの人間だった。


「追想祭の夜について話しをしたいのだが、……妹が一人で館へ帰ってきたという報告があった。そのことについて、貴女から説明を聞きたい」


「ティナちゃんが勝手にどこかへ行ってしまったんですわ」


 微かに眉を顰め、カーヤは『困りました』という顔を作る。

 大げさに表情を作っているが、わずかに本心からの困惑も混ざっていた。

 ティナの証言と一致しないことを思えば、困惑の理由は『うまく誤魔化さねば』といったところだろうか。


「祭祀の間は私もしっかりティナちゃんと手を繋いでいたのですが、祭祀の終了で広場がゴタゴタといたしましたでしょう? ほんの一瞬手を放してしまって……人ごみにティナちゃんの姿を見失ってしまったのです。大切なティナちゃんから目を離すことになってしまい、申し訳ございません」


 一晩中姿を探したのですよ、と締めくくり、カーヤは口の端を吊り上げる。

 微笑んでいるつもりなのかもしれないが、すでに本性が報告という形で上がってきているため、なんの魅力も感じない。

 否。

 本性の報告などなくとも、カーヤの笑みに魅力など感じていなかった。

 カーヤのことは、最初からティナの家庭教師としてしか見ていなかったのだ。


 ……俺目当ての女、とアルフは言っていたが。


 俺にとっては『女』ですらない。

 求めた役割は家庭教師であり、ティナの良き師、良き相談相手になってほしかった。

 女性であることを求めたのは、ティナが女の子だからだ。

 男の教師をつけるよりは、女の教師をつけた方が良いだろう。

 単純にそう考えただけだ。


 ……それにしても。


 実に判りやすい嘘だった。

 姿を見失った子どもを探すのなら、当然通りの角に立つ騎士や兵士に声をかけるはずである。

 姿を見かけなかったか、と聞くだけにせよ、捜索を要求するにせよ、だ。

 そして、もちろん追想祭の夜にカーヤがそのような行動を行っていた、という報告は受けていない。


 預かった子どもを見失ったのだから、本当に一晩中探していたのなら、当然館にも連絡を入れていたはずである。


 ……連絡を入れるどころか、その後四日も館に来なかったけどな。


 そう指摘したかったのだが、もう少し気分良くしゃべってもらうために喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。


「……では、この四日間ティナを探し回っていてくれたのですか?」


 まさかそんなことはないと判っているが。

 聞こえの良い行動を例として挙げてみると、カーヤは即座にこれに乗ってきた。


「ええ、もちろん。お預かりしたティナちゃんを見失ってしまったのは、私の落ち度ですもの。当然ですわ」


 ……これで二日前に館へ顔を出さなかった言い訳も出来た! という顔だな。


 笑みを深める様子から、カーヤの内心が透けて見える気がした。

 カーヤの唇はペラペラと都合の良い嘘を吐き出すが、顔はそれらを隠せる作りをしていない。

 時折引きつる頬が、その証拠だ。


 ……この顔をよく見ていなかったのが、そもそもの失敗だな。


 カーヤ自身に興味がなく、家庭教師という看板を信じ、人となりの確認を怠った。

 そのせいで、ティナを傷つけることになってしまったのだ。


 念のために川べりを探したし、側溝の中まで覗いてティナを探した。

 祭りで普段以上に治安のよろしくない裏道も探したが、ティナの姿が見つからなかった。

 その日の内に館へ帰っていたのなら、危険な場所などいくら探しても見つからなかったわけですね、と『自らの危険を省みず、苦労して迷子を捜しました』と言葉だけは立派なことを言う。

 その実は、広場で始まった宴会に参加し、日付が変わるまで飲んでいた。

 日付が変わったあとは場所を変え、酒場で飲んでいた。

 朝方やっと家に帰るのとか思えば男の部屋に上がりこみ、日が再び沈む頃に部屋を出るまでの間、中で何が行われていたかもおおよその報告にある。

 カーヤの言葉がまったくのデタラメであることは、一分の隙もなくアルフが調べ上げていた。


「……失礼ながら、四日間子どもを捜していたと言うには……綺麗な格好をしていると思うのだが」


 そろそろ黙っていられなくなり、少し言葉を挟んでしまう。

 綺麗な格好、と言葉を濁しただけでも理性的であったと思いたい。

 女児の家庭教師と思えば、恐ろしく派手で下品な服装だ。

 色使いも派手なのだが、大胆に胸元が露出するようデザインされた服は、たいして膨らんでもいない胸には色気よりも滑稽さが際立つ。


 ……胸元にキスマークか。


 どうやら今日も誰かとお楽しみだったらしい。

 胸元に見つけてしまった赤い印に、どうしようもなく嫌悪感が湧く。

 このようなふしだらな女に狙われるのも御免こうむるが、知らなかったとはいえ可愛い妹を預けてしまったのが一番悔やまれた。


「レオナルド様にお会いするのに失礼があってはいけないと、取るものもとりあえず身だけは清めてまいりました」


 ……俺に会いに、ではなく、ティナの家庭教師として館へ来ているはずなんだがな。


 その辺り、この女の頭の中はどうなっているのだろうか。

 呆れ果てて様々なことがどうでもよくなり、しみじみとカーヤを見つめる。

 呆れて物が言えない、とはこういうことを言うのだな、と実感もした。


「髪飾りが、違うようだが……」


 祭りの何日か前に砦へ顔を見せたカーヤは、ティナから贈られたといって銀細工の髪飾りをしていた。

 ティナの黒髪に映えるだろう、と真剣に悩んで買ったものだったので、他人の手に渡してしまったのか、と内心で落ち込みもしたのだが、なんのことはない。

 髪飾りはティナの知らないうちに持ち出されていただけなのだ。

 俺が落ち込む必要などなかった。


「ティナがくれたと言っていた髪飾りは?」


 自慢していただろう、と指摘する。

 見せてみろ、とは言わない。

 ティナからもらったという髪飾りがカーヤの手元にないことは、すでにアルフが掴んでいた。


「……お友だちの印ですもの。部屋で大切にしまってありますわ」


 失くしては一大事ですものね、と微笑むカーヤに乾いた笑いしか出てこない。

 おまえの部屋は質屋なのか、と声を大にして指摘してみたかった。

 いや、指摘する。

 カーヤを部屋まで案内したバルトは、そのまま砦のアルフの元へと向う手筈になっていた。

 カーヤには聞き取れていないようだったが、アルフの足音が扉のすぐ近くまできている。


「ところで、ティナの部屋から髪飾りがいくつか紛失したと報告がきているが」


「ティナちゃんが私に贈ってくれた物のことでしょうか?」


「……その髪飾りが質屋から見つかった、と報告もきている」


 ここまで言って、ようやくカーヤも様子がおかしいと気が付いたようだった。

 笑みが引きつり、視線が泳ぎ始める。


「私が頂いたものを、どう扱おうと私の自由です。ティナちゃんの髪飾りなんて子どもっぽくて……私には似合わないでしょう? あの子のご機嫌を取るために喜んで受け取りはしましたが――」


「おまえが俺に見せた髪飾りは、確かに俺がティナに贈ったものだが、それ以外にあった触れてはいけない物に触れたようだな」


「え?」


 さすがに気分良く椅子に座り続けてもらう必要はなくなったので、言葉を崩す。

 家庭教師相手であればこちらも礼を尽くして向き合う必要があるが、盗人と相対して礼儀作法もなにもない。

 盗人として殴りつけ行動不能に陥らせないだけ、最低限でも女性扱いしていると言っていいぐらいだ。


「銀の髪飾りだけで満足しておけば、腹は立つがただの窃盗として軽くて罰金、どんなに重い罪に問っても三年の牢屋暮らしだったんだがな」


 俺に相談しても無駄だと考えたティナは、アルフに相談をもちかけた。

 アルフ本人にどんな事情があるのかを聞いたことはないが、黒い鎧を纏っていようとも生まれの違いはなんとなく察することができる。

 蛇と鬼しかいないと言われる貴族社会で生まれ育ったアルフは、蛇の扱いも、鬼の扱いも心得ていた。

 ティナがそれを知っていてアルフに相談したとは思えないが、人を一人排除するのにこれほど頼りになる相談相手はいない。


「ティナの部屋に、とある貴族が忘れ物をしたそうだ。ちょうど今おまえがしている髪飾りと同じ、金細工のいばらにルビーで薔薇をかたどったものと、他にいくつかの宝石やらなにやらがゴテゴテと飾られた実に趣味の悪い装飾品だ」


 ここまで説明してやれば、カーヤも悟ったようだ。

 自分が何者かの罠にかかったのだ、と。

 カーヤは慌てて髪飾りを掴み取り、床へと投げ捨てる。

 今さら証拠を手放したとしても、なんの助けにもならなかった。

 カーヤが我が物顔で髪飾りを身に纏い、また投げ捨てるところを他ならぬ俺が見ているのだ。

 グルノール砦を、街ごと預かるこの俺が。


「……俺の趣味ではないが、その貴族は自分の持ち物を本当に大切にしていたらしくてな。もし盗まれても、質屋や古物商に売りに出されればすぐに知らせが来るようにしてあったようだ」


 金目の物が好きならば絶対手を出すだろう、とアルフが用意した囮は虚栄心の塊といった装飾品だった。

 ゴテゴテと大きな宝石があしらわれており、虚栄心は満たせるが、趣味の悪さが露呈するという代物だ。

 子どものティナが持っているはずのない値段の装飾品だったが、欲はあっても考える頭がないらしいカーヤはその不自然さに気が付けなかった。

 まんまと装飾品をティナの部屋から持ち出し、質屋へと運んだ。

 そしてアルフの手によりティナの部屋へと装飾品が置かれる前から、街にある全ての質屋と古物商には連絡と目録が渡っていた。

 目録にある品物が持ち込まれた場合は連絡を寄こすように、と。

 黒騎士相手であっても客を売るような真似をする商人は少ないが、貴族が相手となれば話は変わってくる。

 貴族に睨まれては、商売どころではなくなるのだ。


「誤解です! 誰かが私を……そうです! ティナちゃんが私を陥れようとしているのですっ! あの子は最初から私を嫌っていました! あのろくに話さない気味の悪い子がっ!」


 これがカーヤの本音だろう。

 最初から態度がおかしかったとティナが言っていたように、カーヤははじめからティナがろくにしゃべれないと決めてかかり、侮っていたのだ。

 どんな扱いをしても、ティナには大人へ言いつけることができない、と。

 つくづく教師を名乗る資格のない人間である。


「ティナは無駄なことはあまりしゃべらない子だが、おまえのように嘘をペラペラと並べ立てる女に気味が悪いなどと言われる覚えはない」


 ところで、預けた財布はどうした? といまだ返却されない財布の行方を問う。

 ティナのために預けた財布だ。

 当然ティナと一緒に返却されるべきものであった。


「はっ! 女に丸ごと預けた財布を返せだなんて、セコイ男が――」


 猫を被るのはやめたのか、カーヤがささやかな胸を反らして開き直る。

 投げ捨てるように吐かれた言葉だったが、なんの感慨も湧かなかった。


「別に返せとは言っていない。まあ、気に入ってはいたから、戻ってくれば嬉しいが……」


 ティナに何か美味いものを、と預けた財布が役目を果たしたのは、最初の酒場でジュースを一杯支払っただけだ。

 その時間は一応ではあるがカーヤも子守をしていたはずなので、その店での支払いを俺の財布でするのは構わない。

 ただ、さすがにティナを放置しての宴会参加や、その後の酒場での豪遊資金まで提供する気はない。


「財布の中身については、おまえの裁量権をくだんの貴族に売ったから、返済なんて考える必要はないぞ」


「……え?」


「聞こえなかったのか? おまえが質屋に持っていった装飾品の持ち主である貴族に、おまえを裁く権利を売った。良かったな。これでおまえは罰金を払うことも、この街で三年牢に入ることもない」


 そのかわり、貴族にどんな扱いを受けるかも判らない。

 俺からしてみれば貴族とはいってもアルフのすることなので、それほど酷いことにはならないと思うが。

 アルフという人間を知らず、ただ貴族とだけ伝えられれば、平民にとって貴族に預けられるという言葉は恐怖しか湧かないだろう。

 それも、自分がすでに喧嘩を売っている相手だ。


「アンタ、なんてコトを……っ」


 カーヤは一瞬だけ青ざめたと思ったら、すぐに元の顔色に戻る。

 あさっての方向を見て唇をペロリと舐めたので、色仕掛けでたぶらかせば良いとでも、おめでたい思考に至ったのだろう。


 ……アルフは下手な女より顔がいいからな。カーヤ程度じゃ、何をしても無駄だろ。


 それでなくとも、アルフは生まれのせいで美女は見飽きている。

 カーヤ自身、胸が大きいだとか、尻がデカイだとかいった男の食指をそそる肉体的魅力に欠けていた。

 ついでに言うのなら、顔は普通で化粧も濃い。


「……さあ、迎えが来たぞ」


 扉の外に待機した者へとカーヤを引き渡すため、扉を開けるよう合図を送る。

 カーヤはそれと同時に涙を零しはじめ、哀れさを装って扉を振り返った。

 早速媚を売ろうと営業を開始したようだったが、扉から入ってきたのがアルフを含め黒騎士だけだと悟るとあからさまに口元を歪める。

 貴族相手なら哀れな女を装って泣いてみせるが、騎士相手には一粒の涙すら無駄だ。

 そんな顔をしていた。







「……何かあったんれすか?」


 騎士に連行されるカーヤを見送ったあと、玄関の扉を閉めると廊下の角からティナが顔を覗かせていた。

 今日はカーヤが来たとしても俺と話があるから、と三階にいるように言っておいたはずなのだが、いつの間にか一階に下りてきたらしい。

 手招くと、少し考える素振りをしてからティナが近くへとやって来た。


「ティナはカーヤをどうしたい?」


 そういえば聞いていなかったなと思いだし、ティナを抱き上げながら聞いてみる。

 おとなしく抱き上げられるままにしていたティナは、今度は考える素振りもなく答えた。


「わたしの先生じゃなくなれば、それでいいれす」


「……それだけでいいのか?」


「はいれす」


 夜の街に放り出されるなどという酷い目にわされたが、ティナの望む罰は解雇程度で良かったらしい。

 窃盗という明らかな罪があるため、解雇だけでは済ませられないが、一応アルフにティナの要望は伝えた方がいいだろう。


「わたしかりゃも質問、いいれすか?」


「ん? なんだ?」


「キゾクの髪かざりって、なんれすか?」


 そんな物が自分の部屋にあっただなんて、初めて知った、とティナが眉を顰める。

 質屋に持ち込むことが罪になるのなら、知らずに触っていても罪に問われていたかもしれない、と怯えだしたのがわかった。


「貴族の髪飾りについては、ティナは心配しなくていいぞ。元々アルフに相談したのはティナだろ?」


 ティナはカーヤへの不満を相談したあと、髪飾りの紛失についてもアルフに相談した。

 館に新しく家庭教師が来るようになって即の紛失事件に、犯人など考えるまでもない。

 紛失ではなく窃盗であるのなら、また盗みたくなるような餌を置けばよい、とアルフが故意に装飾過多な髪飾りをティナの小物入れに忍ばせたのだ。


「……それをカーヤがまんまと持ち出し、質屋に持ち込んだらしい」


「てくせが悪いね……」


 一連の流れを説明してやると、ティナは呆れて溜息をはく。

 それから不思議そうに何度も首を傾げ始めた。


「ティナは髪飾りが無くなってるって気が付かなかったのか?」


「オレリアさんのくれらリボンと、かわいいにょは自分れ保管しれいましゅ」


 ティナの言う『自分で保管』とは、『屋根裏部屋に有る』という意味だ。

 カーヤも、まさか館の主の妹が屋根裏部屋を自室として使っているとは思わなかったのだろう。

 ティナの持つ髪飾りの中で、一番高価なリボンが無事だったのは、その思い込みのお陰だ。


「オレリアさんのくれたリボンが盗まれてらら、さすがに許しましぇん」


 レオナルドさんも同罪として、絶対泣かします、と言いながらティナは俺の頬を抓る。

 俺の頬はティナのような柔らかさも丸みもないので、抓るには向かないのだろう。

 何度か小さな指が頬を摘もうと動くのだが、諦めたのか剃り残しの髭を引っ張られた。

 地味に痛い。


「こんろ家庭教師を選ぶ時あ、もう少し慎ちょうに人お選んれくらさい」


「気をつける。って言うか、次はティナと相談してから、だな。ティナと仲良くやっていけないような教師じゃ、雇う意味がない」


「そうしてくらさい」


 満足気に頷くティナが可愛くて、手が塞がっているので頬を寄せる。

 小さな頭に頬ずりをしたかったのだが、こちらは両手の開いているティナに全力でお断りされてしまった。

レオナルドがないない言っているカーヤの乳サイズはついったーの診断で決まりました(マジで)


カーヤ・メスナーさんの髪の色は赤、髪質は癖毛、髪型は長髪、目の色は緑、胸囲は普通、背は平均です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ