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グルノールの転生少女 ~ないない尽くしの異世界転生~  作者: ありの みえ
第3章 砦の街グルノール

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ジャン=ジャックの処遇

 二度目の熱が引いたあと、疱瘡ほうそうただれた肌は緩やかに回復をしはじめる。

 悪化したあとに回復を見せたのはジャン=ジャックだけだったが、そのジャン=ジャックを観察することは、セドヴァラ教会にとって多いに得るものがあったようだ。

 やがてジャスパーを通じてセドヴァラ教会からの通達が来た。


 皮膚の異常がある者や、その瘡蓋かさぶた等にはまだ感染力が残っているため、回復したと思っても油断をするな。

 自然に治癒するまで触れるな、触れさせるな、瘡蓋を落とすな。

 引き続き飛沫感染を警戒し、人と話す際にはマスクを使用すること。

 掃除や洗濯は過剰なぐらい意識しろ、とのことだった。


 ……むしり防止のつもりだったけど、患部を包帯で隠したのも感染を抑えることに繋がってたんだね。


 現在の隔離区画では、新たに発症する者は減っていた。

 時折増える患者は、街の外で感染を拾ってしまい、気づかずにグルノールの街へと来てしまった商人等の旅人が主だ。


 ……商人さんにはお気の毒だけど、また感染を広げられても困るしね。


 ようやく落ち着いてきた伝染病だが、残した爪跡は大きい。

 アルフから聞いた話だが、丸ごと全滅した村はメイユ村を入れて五つ。

 全滅は免れたが働き手のほとんどを失った村は数え切れず、風呂文化の定着していた町や村でも被害は出ている。

 感染した人間はほぼ助からない病だ。

 初期に薬を与えられた黒騎士と、薬の数が揃えられるようになってから感染した者以外は、ジャン=ジャックを残して全て亡くなった。


 ……ジャン=ジャックみたいに、薬を与えられた騎士もいたんだけどね。


 体力の差か、気力の問題か。

 初期状態を過ぎてから薬を与えられた黒騎士で、生き延びたのはジャン=ジャックだけだった。







 商品として持ち込まれた愛玩動物ペットを追っていたマンデーズ騎士団が、盗賊団の壊滅を確認したという報せを持ってグルノール砦を訪れたのは、昼を少しすぎた頃だった。

 たまには一緒に昼食を、とレオナルドに誘われて執務室にいたところだったので、偶然ことの顛末を聞くことができた。


「……奪った商品をアジトに持ち帰り、販路を相談しているうちに感染して全滅か」


「売り払うよりも食料にできないかと、食べた形跡もありました。商人の残した帳簿の仕入れ数と一致しませんので、周辺に住む猟師に見つけしだい殺すようにと知らせてあります」


「そうか。遠いところご苦労だったな。少し最近のマンデーズ砦の様子を聞かせてくれ」


「はっ! ……でも、その前に」


 話の邪魔をしないように、聞き耳だけ立てておとなしく昼食にと用意されたサンドイッチを齧っていたのだが、チラリと報告をおこなっていた黒騎士の視線が私へと向けられた。


 ……あれ? 席外した方がいい話?


 視線を受けてレオナルドと黒騎士の顔とを見比べる。

 出て行けと言われるのなら出て行くのだが、黒騎士の視線の先である私の顔を見たレオナルドは軽く肩を竦めるだけだった。


「ティナ」


「はい?」


 やっぱり出て行った方がいい? とレオナルドを見上げるのだが、レオナルドは苦笑を浮かべる。

 どうやら部屋から出て行く必要はないらしい。


「こいつはマンデーズ騎士団で副団長をしているタルモというおじさんだ。顔は見たとおりだか、悪い奴じゃない。おまえも世話になることがあるかもしれないから、よく顔を覚えておけ」


 顔を覚えておけ、と言われたのでサンドイッチを齧っていた手をとめ、椅子から降りる。

 タルモと紹介された男の前へと移動し、「こんにちは」と簡単に挨拶したあと、ジッと男を見つめた。

 大柄な体格で、騎士というよりは狂戦士といった方が似合う筋肉を纏っている。

 赤毛に瞳の色は黒く、顔は見たとおりとレオナルドに言われるように強面こわもて系の厳ついオッサンだ。

 歳はちょっと判らない。

 もしかしたら四十に届くかどうか、と言ったところだろうか。


 顔を覚えようとジッと見つめていると、見られている側のタルモはデレッと相好を崩した。


「俺はタルモ。タルモおじさんって呼んでくれていい。ティナちゃんが噂の団長の妹だろ? 聞いてたとおり可愛いなぁ」


 ……何がどう、どこまで噂になってるんだろう。


 隔離区画で手伝いをしている時も、時折こうして『団長の妹は可愛いらしい』と噂の真相を確認しにくる黒騎士がいた。

 今生の顔は確かに可愛らしいので、噂は真実だった、とむせび泣く黒騎士を何人か見ている。


 ……だいたい、ここってグルノール騎士団だよね? タルモさん、マンデーズ騎士団って言ってなかった?


 他所よその騎士団まで噂が広がっているのか、はるばる別の騎士団が守る地まで噂を確認に来るほどマンデーズ騎士団が暇なのか。


 ……うん? 今なにかチラッと思いだしかけたんだけど……?


 グルノール騎士団以外で私が知っている騎士団といえば、ユルゲンの所属するレストハム騎士団だろうか。

 ユルゲンの立場もたしか副団長だったはずだ。

 普通、他所の騎士団への使いになど、副団長を出すことはないと思うのだが……レストハム騎士団とマンデーズ騎士団の団長は何を考えているのだろうか。


 ……んん? ユルゲンさん、レオナルドさんのこと団長って呼んでたよね? タルモさんも。


 何か変だ、とさすがに気が付いた。


「タルモさん、質問してもいいれすか?」


 そう聞いてみたのだが、タルモは笑顔を浮かべたまま無言だった。


「タルモさん?」


 返事が無い。

 出来るだけ愛らしく見えるように意識して小首を傾げながら見上げてみるが、タルモはやはり笑顔のまま無言だった。


「ティナ、タルモおじさんだ。タルモおじさんと呼んでやれ」


 ……え? そこですか?


 こそっとレオナルドにタルモの要求していることを囁かれる。

 呼び方ぐらい何でもいいと思うのだが、タルモにとってはそうではないらしい。

 あまり長い名前になると、噛むから避けたいのだが。


「タルモおじしゃん、質問してもいいれすか?」


 ほら、やっぱり噛んだ、と内心で思うのだが、タルモの目じりは判りやすく下がった。

 むしろ、これ以上ないほどに下がっている。


「何でも聞いてくれていいよ」


 デレデレ状態であると判るタルモの手をひっぱり、壁に飾られた地図の前へと連れてくる。


「マンデーズ騎士らんは、どのあたりをまもっれいりゅ騎士らんれすか?」


「大体この当たりだな」


 王都の北、グルノールの東隣あたりをタルモの太い指が丸く囲む。

 その丸の中央に砦と思われる印があった。


「今回の賊のアジトがあったのがこのあたりだ」


 砦の印の南西を指でとんとんと叩く。

 木の絵が描かれているところを見ると、おそらくは森林地帯なのだろう。


「グルノール騎士らんのお隣しゃんれすか? だからお手伝いしてくれたんれすか?」


「隣と言えば確かに隣だが、ワーズ病の拡大阻止はうちの団長の仕事でもあったからな。グルノール騎士団とマンデーズ騎士団が協力し合うのは当然だ」


「マンデーズ騎士らんの団長しゃんと、レオにゃルドさんは、仲がいいんれすか?」


 偏見であることは承知だが、組織のトップと言うものはお互いに牽制しあって足を引っ張り合うイメージがある。

 そんな場合でもないのに、お互いに手柄等を独占しようとして、だ。

 しかし、この国の騎士は……少なくとも、マンデーズ騎士団の団長は、そういった人物ではないらしい。

 物事を合理的に考えられる人物なのか、弁えるべきを弁え、緊急時に必要な融通は即時に利かせられる人物のようだ。


「仲がいいも何も、マンデーズ騎士団の団長はレオナルド殿だぞ」


「……レオにゃルドさんは、グルノーりゅ騎士らんの団長しゃんですよ?」


「レオナルド殿はマンデーズ騎士団の団長殿でもあるんだ」


 すぐには意味が飲み込めず、思わず眉を寄せる。

 言葉の意味は判るのだが、うまく理解することはできなかった。


「……レオにゃルドさんは、両方の騎士らんの団長しゃんなんれすか?」


「正確には、ここグルノールと俺の率いるマンデーズの他に、レストハムとルグミラマの四つの騎士団の団長だ」


 イヴィジア王国の北西にある砦ほとんどの主がレオナルドである、とタルモは教えてくれた。


 ……ちょっと、本気で意味がわからないよ。それって、色々大丈夫なの?


 まず、どうしてそんな事態になったのかが気になったが、黒騎士は実力主義だと聞いたことがあるので、その延長でそうなってしまったのだろう。

 気にはなるが、あとで誰かに聞けばいいや、と思える程度の疑問だ。

 それよりも、黒騎士は平民出身だと聞いた。

 その平民一人に、騎士団四つの統率権が集中することは、いかがなものだろうか。


 ……これ、絶対王様とかの権力者に疎まれてるパターンだよ。


 自分が主に頂くレオナルドの自慢話になるからか、タルモの語りは饒舌だった。

 イヴィジア王国の黒騎士は十二の砦に分かれて配置しており、その三分の一という兵力がレオナルドの指揮下にあるのだとか。


 きっかけは、レオナルドが王都で勤めていた白銀の騎士団を抜け、黒騎士になることを決めたことだったらしい。

 噂の白銀の騎士の実力はどの程度のものか、とまずグルノール砦で力比べが行われることとなった。

 当時のレオナルドには色々事情があったらしいのだが、特に年長者や先からグルノールにいる黒騎士に遠慮をするような真似はせず、そのまま当時の団長を退けて砦の主になっている。

 そこまでは良かったのだが、王都から左遷されてきた白銀の騎士になど負けるとは何事か、と周辺の砦の主がこぞって勝負を挑み、負けてその座をレオナルドに譲ることとなってしまったらしい。


 ……白銀の騎士団は、五年に一度入団者が出るかどうかのすごく強い人しか入れないとこって、バルトさんが言ってたような……?


 そんな騎士団出身のレオナルドに、勝てる黒騎士などいなかったようだ。

 我も我もと他の騎士団から団長クラスが勝負を挑んで来るようになり、兵力がレオナルド一人に集まることを危惧したレオナルド自身が、すでに預かっていた四つの騎士団以上には指揮権を持てないよう王都に陳情を出すことで、このお祭り騒ぎは収まったらしい。

 その際に騎士団四つという兵力が一人に集中するのは不味い、と進言もしたのだが、他三つの騎士団を手放すことは王の命により却下された。


 ……なんで王様は却下したんだろうね? どう考えても一人の騎士が四つも騎士団の指揮権持ってるって、危ないと思うんだけど。


 レオナルドを身近で見ていると、そんな心配はないと判るのだが。

 親しくも無い人間から見れば、この国の三分の一の兵力をもったレオナルドなど、いつ反逆してきてもおかしくない危険人物だとしか思えないだろう。

 それを国王自身が認めている、というのも不思議な話だ。

 疑問ばかりが次々と浮かびあがり、だんだん頭が混乱してきた。


 タルモの話はどんどんレオナルド自慢と化していき、いたたまれなくなったらしいレオナルドが止めるまで続いた。

 何故レオナルドがタルモやユルゲンから団長と呼ばれるのかを知りたかっただけなのだが、押してはいけないスイッチを押してしまったようだ。

 昼食を摂りにいったまま帰ってこない私を探しにきたアルフに、これ幸いとばかりにくっついて執務室から脱出すると、去り際にタルモが飴の詰まった缶をくれた。


 ……黒騎士の中で、私に挨拶する時は飴の持参必須、とか変な噂になってるんじゃないよね?


 あまりにも知り合うたびに黒騎士が飴缶を持ってくるので、少し心配になった。







 近頃のジャン=ジャックは元気いっぱいだ。

 ようやくベッドから降りることを許され、痒みもすっかり引いたらしい。

 今はセドヴァラ教会の指示に従って、疱瘡の跡や瘡蓋を落とさないよう、患部であった場所全てに包帯をしてすごしている。

 一番悪化し、一時期は他者ひとの目に触れないよう地下室へ移動させられたジャン=ジャックだ。

 その患部も面積は感染者随一を誇り、その結果として全身包帯だらけのミイラ男と化していた。

 そしてそのミイラ男はというと。


「ほ~ら、フランケン男だぞぉ~。がおー」


 などと、謎の発言を繰り返しながら隔離区画内にいる子どもを追い掛け回している。

 そう、隔離区画内の子ども、を。

 つまり、私のことをミイラ男スタイルで「フランケン男だぞ」と追い回しているのだ。


 ……意味が解らないよ。


 行動の意味が解らなさ過ぎて、これでは本当に『マルセル二号』である。


「……あ、レオにゃルドさん!」


 しつこいミイラ男から逃げ回っていると、角を曲がった廊下の端にレオナルドの黒髪を見つける。

 今は仕事モードで前髪を上げているのだが、ミイラ男から逃れられるのなら多少怖い顔であっても使わない手はない。


「レオにゃルドさーん」


 名を呼ばれて振り返ったレオナルドが私を視界に納めたことを確認すると、両手を広げて走りよる。

 あとは何も言う必要はなかった。

 幼女が両手を広げて向かってくるのだから、名を呼ばれた大人は腕を広げて抱き上げるべきだろう。


「どうした、ティナ……いや、いい。もう解った」


 狙い通り私を抱き上げたレオナルドが理由を聞くより先に、フランケンを自称するミイラ男が角を曲がって姿を現したのだ。


「うげっ!? 団長……っ」


「俺の妹をいじめるぐらいには元気なようだな」


「いや、別にいじめてたわけでは……な? 遊んでやってただけだよな?」


 包帯のせいでジャン=ジャックの表情はわかりにくいのだが、私に同意を求めて情けなく眉を下げている気はする。

 ジャン=ジャックからの『遊んでいてもらったと言え』という雰囲気くうきは判るのだが、今の今まで追い掛け回されて迷惑をこうむっていた私が空気を読んでやる必要はない。


「シーツお洗おうとおもっれ洗い場にいったりゃ、シーツの山かりゃジャン=チャックが出てきて、追い回されりゃの」


 おまけとして「すごく怖かった」と小さく囁いてレオナルドの首へと顔を埋めてみた。

 効果は抜群でした。


 ……直立不動でハキハキと敬語を話すジャン=ジャックなんて、初めて見たよ。


 レオナルドに睨まれてすごすごと病室に戻るジャン=ジャックを見送りながら、フランケン男とは何か、とレオナルドに聞いてみた。

 私の前世の知識にある『フランケン』と、この世界の『フランケン』は違うものなのか気になったのだ。


 レオナルドによると、メンヒシュミ教会の資金源である異世界の物語の一つらしい。

 ミイラ男と混ざっているようだが、フランケンはフランケンだった。

 異世界の物語を広めたらしい本好きの転生者は、結構適当な仕事をしている。

 アルフに聞いたのだが、源氏物語は光源氏らしき男キャラが一応出てくるのだが、主人公は六条御息所ろくじょうみやすどころで、ヒロインは葵の上というガールズラブ物になっているようだ。


 ……文字が読めるようになったら是非に読んでみます。


 代々グルノール砦の主は毎年メンヒシュミ教会やセドヴァラ教会等の施設へと多額の寄付を行なっていたようで、その見返りとしてメンヒシュミ教会で売り出される本が必ず一冊は贈られてくるのだとか。

 レオナルド自身は物語になど興味はないようだったが、城主の館にそれなりの数の本があるのはこんな理由からだった。


「さて、ジャン=ジャック。先ほど王都からの使者が来た」


 ほとんど回復したと言ってよい状態だが、未だに使っている地下の一室へと戻ったジャン=ジャックにレオナルドが改めて口を開く。

 街道沿いに感染が広がったのは商人の仕業であったが、グルノールの街へと感染を持ち込んだのはジャン=ジャックだ。

 故意ではなかったが、伝染病で滅んだ村から感染源と気づかず小動物を持ち帰るという、少し考えれば避けられたはずの過失だった。

 ジャン=ジャックも自覚があるので、これについては特に口を挟む様子はない。


「減俸と降格と謹慎と労役と三年間のヴィループ砦送りと財産の差し押さえ……あとはなんだったか?」


 思いだしながら付け加えられる処分が多い。

 とにかく思いつく限りの処罰を与える、という見解のようだ。


「いっそ殺しら方が早くないれすか?」


 いつまでも追加される処罰の内容に、ついそんな口を挟んでしまった。

 のびのび過ぎる私の感想に、レオナルドは苦笑を浮かべる。


「ジャン=ジャックは腕を見込まれているから、それはない。むしろ、それをしないために思いつく限りの罰を用意したんだろう」


「ジャン=チャックあ強いんれすか?」


「グルノール砦では、三番目に強いな」


 もちろん一番強いのは俺だ、とレオナルドが胸を張るので、すごいですねとおだてておいた。

 レオナルドの場合は砦で一番どころではないので、今さらだ。


「……あれ? じゃあ、砦れ二番目に強いりょは誰なんれすか?」


「二番目はアルフだ。だから副官をやっている」


 なるほど、実力主義という黒騎士である。

 個々の強さに応じて砦内の役職が決まるらしい。


「アルフさん、王子しゃま見らいな顔してりゅのに、強いんれすね」


「グルノールでなら二番目だが、レストハムや他の砦に行けば一番強いと思うぞ」


「一番だと、団長しゃんになれりゅぐらいれすか?」


「四つの砦全部で二番目だから、グルノールで俺の副官をしている」


 驚きの強さである。

 レオナルドについては前からなんとなく聞いていたのだが、アルフについては初めて聞く。

 他の黒騎士と比べて筋肉が目立って付いているわけではないアルフが、周辺の砦を纏めて二番目の実力者だとは思ってもいなかった。


「あの、団長。財産の差し押さえは少し待ってほしいんスが……」


 買い戻したいものがある、とジャン=ジャックが珍しくも神妙な顔つきで口を開く。


「買い戻したいもの?」


「物については聞かないでください。それと、買い物ん時にティナっこを貸してくれると――」


「却下だ。ティナには俺もまだ街の案内をしていないんだぞ」


 ティナとの初デートは保護者である自分の権利だ、とジャン=ジャックの申し出を蹴るレオナルドに、私は内心でツッコミを入れる。


 ……もう二ヶ月ぐらい放置されてるんだけどね、私。


 保護者が聞いて呆れるという万感の思いを込めてレオナルドを見上げると、レオナルドも自覚があったのか、そっと目を逸らした。


 この日、レオナルドは私が街へ来てから実に二度目の帰宅を果たした。

ちなみに他3つの騎士団では副団長が団長のお仕事をしているので、あまり問題なく機能している模様。

副団長を名乗っている人たちは元団長さん。

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