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「おい、そんな堂々とした覗きがあるか」

 理想アングルになったその瞬間、頭上で声がしたかと思うと、シャツの襟首を後ろからつかみあげられた。……僕はネコか。

 見上げると僕の背後に居たのは『俺』さん。あわてて目を『私』ちゃんに戻すと、彼女は顔を赤くしてスカートを直している。そんなぁ! まだ何も見てないのに!!

「…………もしかして、コレはこの人の心の声なんじゃないんですか?」

 心の中で嘆いていると、『私』ちゃんが口を開いた。「この人」って僕のこと? え、今僕の心の声ダダ漏れなの!?

 そう思って慌てる僕を見て、『俺』さんも頷く。

「………………だろうな。」

 えーっ!? 僕は思わず口を開いた。

「え? じゃあ皆さん妖怪サトリ? テレパス? 僕は一般人ですよ十八年生きているけど幽霊が見えたりとかそういうフシギ体験は無い霊感ゼロ人間ですよ!?」

「俺も霊感とかないぞ」

「私も、ありませんよ……?」

 ……。

「と、とりあえずまぁ自己紹介しましょう自己紹介! 僕から始めますよいいよねOKだよね大丈夫だよね!!」

 沈黙が怖くなって僕はまくし立てた。その勢いに乗り僕は立ち上がり二人に体を向ける。

「僕はコウタっていいます九月一日生まれの大学一年! 文芸部!! 趣味はネットサーフィンと動画視聴、将来の夢はゲーム実況者か歌い手またはボカロP、少なくともMMD動画くらいは作ってみたい系男子です!!」

 …………。

 ……………………。リアクションちょうだい。無視しないで。

 そう念じると『俺』さんが、めんどくさそうに手を上げた。もちろん指す。

「………………お前の苗字は?」

 はい? みょうじ……?

「そう、苗字だ、姓だ。…………もしかして、外国人なのかお前?」

 いや、違うけど。………………僕の、苗字。思い出せない。

 言われるまで気付かなかった。僕は記憶喪失なのだろうか。他にも何か忘れているのだろうか? しかしその事に、自分一人では気付けない。

 そう考えるとにわかに空恐ろしくなった。冷房(クーラー)なんてないはずだけど、なんだか急に肌寒い。

「......じゃ、じゃああなたはちゃんと、自分の苗字まで思い出せるんですか?」

 言葉を買うように、勢いよく言い返す。心理的な寒さを跳ね返すように。

「当たり前だろう、 俺は洞ヶ峠 ヨシアキと言う。コウタ同様、大学生だ。趣味は特になし。将来の夢……とりあえず教師かな。教育学部にいるから」

 サラっと答えられ、僕はズルリと滑り落ちた気がした。寒さに加えて腹痛までしてくる。

 ......大丈夫、これは心因的な、昔っから僕が何回も感じてきたもの。

 しかし何回も感じているから平気になるとか、そういうものじゃあないのも知ってる……いたいよ、さむいよ……だれかぁ……でも誰だよ、『だれか』って……!

「大丈夫か?」

 誰かが僕の肩を掴んで揺らしてくれた。少し乱暴だがその強さでハッとする。

 うん、そうだ、寂しがってもしょうがない。こういう気持ちは無視が一番! 気づかせてくれてありがとう、ところで君は誰?そう思って見上げると、それは―――――――

 ……。

 うん。

 まぁ。

 ……ホラガトウゲさんでした。

「……俺で悪かったな」

 別に悪いとか思っていませんよー、なに言ってるんですか、あーもう…………忘れるな僕、この思考はどうやら二人にダダ漏れらしいんだからね……

「そう思っている時点で俺で不満なことは分かるがな」

 …………。

 ああああもー!!

 イライラを前面に押し出して心の中でそう叫ぶと二人は驚いたような顔を向ける。そんな二人に僕はビシィ! と指を突きつけて宣言した。

「これからは、二人に伝えたいことは全部口で言います!! だから心の声は全部スルーしてよね!! 止め方わかんないんだもん!!!」

「は、はぁ……」

「……努力しよう」

 二人の好意的(、なの!)な了承を受けて、僕は今度は女の子に向き直る。

「次は、君! 僕やホラガトウゲさんが自己紹介したでしょ、自己紹介して!」

 ......それにしても、ホラガトウゲさん。……長い苗字だな。

 僕がそう思うとホラガトウゲが口を開く。

「そうか? そう言われるのは初めてだが……呼びにくければヨシアキと呼んでくれても…………あ、もしかして」

「もしかしなくても心の声だよ! 心の声はスルーしてって言ったじゃん!! 初対面の人にそんな失礼なこと言う奴に見えるのかこの優等生顔のこの僕が!!!」

「悪かったなぁ、しゃべった声より心の声のがはるかにはっきり聞こえんだよ! あとなんだ『優等生顔』って、本性は違うって自己申告かよ猫かぶりきれてねえぞ!!」

 吼えるホラガトウゲを尻目に、僕は『私』ちゃんに向き直る。ここはどこかとか気になることはいろいろあるけど彼女もまた分からないだろう。自己紹介をしてくれるかな、『私』ちゃん。そう促すと彼女は困ったような顔をして、少し口ごもってから言った。

「あの……すみません、」

 名前が思い出せないんです。

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