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――――M市T町三丁目の交差点で、昨日四時ごろ交通事故が発生した。M署によると被害者は市中在住の大学生――――
あーあ、ミスしたなぁと僕は暗闇の中で考えた。私は自転車に乗って交差点を渡ろうとしたら大型車に撥ねられたんだ。俺の注意不足だ、しかしチャリと大型車では相手が悪者になるだろう、悪いことをした……ところで、おれが撥ねられた時は昼の四時だったが、今は暗い。おれはもう死んだのか?
…………。
………………混乱している時に、聞き覚えのない他人の声が脳内に響いても、パニックにならなかった『僕』って偉くない?
誰かにそう言いたかったが言えるわけもない、とりあえずまぁ僕は誰かに語りかけてみた。
「おーい、誰か居るのー?居るならテレパシーじゃなくって、口でしゃべってよ」
そう聞いてみるとすぐに二人分の反応が返ってくる。
「はい……、私がいます」
「テレパシーは知らんが、俺もいる……二人は確実か」
ボリューム小さ目の女の子の声と、声変わりした男の声だ。さっきの一人称『私』ちゃんと、『俺』さん、かな……。じゃあ『おれ』君(おれっ娘かも知れないけどさ)も居るのかな?
しかし少し待っても『おれ』君からの返事はない。僕は諦めて周りの様子を見ることにした。
だんだん暗闇に目が慣れてきたのか、周りの様子がうっすら分かる。
まず、僕(たち?)が居るのは学校の教室のような室内だ。そこに僕は寝っ転がっていた。ほこりっぽい板敷きの床……小学校と言うよりこれは高校の床かな?そんな気がする。
僕の体勢は、そんな床に寝転がっている状態。僕は起き上がって座り込んでみた。
パチッ。座り込んですぐに、いきなりスイッチが入る小さな音が響き、あたりの光度が急に上がった。
つまりは照明のスイッチが入ったんだな。暗闇に慣れていた僕の目には少し眩しい。
でもすぐに目が慣れて、僕は少し離れた場所に座っている二人を見つけた。
一人の女の子と、一人の男。『私』ちゃんと『俺』さん、だろうな。
『私』ちゃんは大学生の僕より少し年下くらい、高校一年か中三か。制服みたいなブレザーとスカート、黒ソックスにローファー履き。セミロングの髪は茶色いがどうやら自前のようだ。顔立ちは中の上。僕なら「可愛い」と評するね。
男のほうは二十代前半、間違いなく僕より年上。でもまだ社会人じゃなさそうだ。大学の先輩と非常に似た雰囲気を持っている。
……僕、先輩ニガテなんだよなぁ。中・高と部活失敗したから。
まぁ、彼の外見も描写しましょうか。短髪つり目。中肉中背。でも僕より背が高そう。
大学の教養授業で習った、「筋骨質」ってカンジの体型だ。
クレッチマー曰く、この体型は別名「てんかん気質」、この体型の奴はしつこいらしいが……。
ぐだぐだ考えていると、僕は重大なことに気がついた。
…………うん、間違いない。
僕は自然な様子を装って、視点を移動させた。目標、『私』ちゃんのスカート……の若干めくれてる右足!
ちょうど本人からは見えない位置だ、バレやしまい、バレても言い辛そうに赤面すれば注意したくても出来なかった純朴青年いっちょあがり。
女顔プラス小さく線の細い体つきの僕はたいていの女の子に警戒されない。
異性だと意識されないというデメリットもあるがこういう時はすごく得。
中身が見えなくてもいい、制服着てる真面目系な子の太もも……それ自体、僕はすごく好きです。
そろ……そろ……と僕は慎重に、しかしバレないように自然に目を動かす。
目標まであと十センチ……五センチ…………二・五センチ………………一センチ……!




