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作者: 宵見

友人―――木野山がなんと恋をしたらしい。

彼の女嫌いは有名で、片恋相手はおろか好意を持たれる事すら少なくなっていった程だ。

そんな彼が恋をしたというのだから驚嘆した。

僕は木野山の一番の友であるので彼のソレを応援しない筈がない。

自然と僕は木野山と話していた。

「なぁ木野山、君が恋を知ったっていうのは本当か?」

木野山は僕を小ばかにするように顔を歪める。

「いや…君にしては文学的表現だがそれは正しくないな。そうじゃないのさ僕はようやく僕の愛にたるモノを見つけたと言っていい。つまり恋を知ったというより恋に陥ったというところか」

豪くペラペラと喋る彼に僕はまたも驚かされていた。普段の彼は寡黙な男でこういう歯の浮くような軟派な言い回しはあまりしないものだが。

「……愛ね、どうやら君が恋に落ちたというのは嘘でなかったらしい」

僕はこの話を聞いた時にわかには信じられなかったが、なに、こうまで言われてしまっては信じないわけにはいかない。

「いやそれでだな…恥ずかしい話なんだが」

真摯な瞳で木野山は言う。

「どうした? 僕の力になれる事だったなんでも言ってくれ」

木野山はハハと笑う。

「参ったな、御見通しか。……そうなんだ、恋愛の先達である君に相談したいことがあってだな」

「ほう…なんだい、言ってみろ」

先ほどまでの堂々たる態度はどこえやら、彼は恥ずかしそうな顔をしている。

「…大の男が恥ずかしいと思うのだが、どう女性と話して良いのか分からんのだ」

…彼は自分が女好きされない性格だと分かったうえでどう話すかを僕に相談したらしい。

「ふ、そんな事か。なに妻帯者として君に出来うる限りのレクチャーをしようではないか!」

「……有難いね…持つべきものは友だな」


「こうして君に指導をしてきたわけだが、結局君の好きなのは誰なんだ?」

僕は散々木野山に対して指導をした後になって気がついたが僕は彼の意中の人を知らなかった。

木野山は意外そうな顔をして言った。

「そう言われれば君には言ってなかったな…相談した以上本当はいの一番に言っておくのが礼儀だった。すまないな」

彼は済まなそうにして言う。

「いや構わんよ。それで、誰なんだ」

「……ミドリムシ、だ」

「……おいおい!? 何を言ってるんだ。女日照りのあまり気を可笑しくしたのか」

コイツ頭おかしいんじゃないのか!?

「愛に文句をつけるというのか!? 甚だ可笑しいね」

彼は僕を口汚く罵倒して、頬を思いっきり張った。


バッ

――どうやら僕は夢を見ていたらしい。

全く気分の悪い夢だった。

「どうしたの貴方? ずいぶん魘されていたようだけど」

隣で寝ていた妻が心配そうに言う。

「大丈夫さちょっとした悪夢だよ。親友が僕の奥さんに惚れるって言うね…」


筒井康隆氏みたいだなと書いてて思いました。

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