からだが冷えても僕は月を見て、君を詠む、
どちらかというと、前作の「僕」のような人を見つめ、受け止めようとしている側の優しさを浮かべて。
自分がつらいときがあって、励ましてくれた人。そんな人でも自分と同じような痛みを抱えて、生きていたら。
春が、もう始まりかけているというのに。
何も感じられなくなるような黄色い光の下で、僕はジレンマを君に吐きだした。
夜の闇が僕だけを、じっと見つめている。
もう、すべてが妬みとか、孤独とか、サヨナラでしか、なくなってしまう気がして、
恐くてたまらなかった。
あの夜、君も僕のようにそんな憤りを感じていたの?
僕は息がきれるほど、何度も何度も汚い言葉を桜の木に叩きつける。
それは今までにないほどの切なさと、虚しさだけを僕に投げ返してくるだけだった。
君はというと、冬の頃と変わらない冷たい風を握りしめて、そんな僕を見つめていた。
いつもと違う様子で、発作のような状態になっている僕を見つめていた。
まるでそれは、少し軽蔑したように、少し憐れむように、
愛しているとでも言うように。
こんなにも桜が咲いて、君が僕の側にいて、新しい毎日が始まって。
現実からは遠すぎるような理想ばかりを夢見ていたあの頃を思いだす。
君はいつも、冷たい風だけを両手いっぱいに抱えこんでいた。
渇いた笑いを浮かべながら、ストーブの前で両手をこすり合わせて、
渇いていく友達を遠目に見ていた君は、何を考えていたの?
孤独が好きな人なんているわけがないのに、
どうして君はそんなに平気そうな顔をしていられた?
きっと今も、誰か、他の僕以外の誰かを求めているんだろうね。
声も出せずに、まばたきもできずに、ただ苦痛に顔を歪めながら、空を仰いでいる。
だけどね、だけど、
聞こえないはずの無音の声は僕に聞こえていたし、
閉じられることのない瞳は、雲の流れるアオい空をしっかりと、とらえていた。
冬にそれほどの景色を観られたのだから、春にはそれ以上のものが、きっと君の目に映るよ。
どんなに冬の夜の風が肌を刺しても、春の夜の風が僕らの頬を撫でていくのだとしても、
月がみえる晩の風は違うはずだから。
冷たい僕らの体を、冷たい空気と冷たい光が繋いでくれるよ。
永遠にひとつになれない僕らの体を、月の光だけが照らして、冷やしてく。
なかなか一つになれない僕らを繋ぐように。
*前作を読んでくれたみなさまへ*
ありがとうございます。
コメントはほんとうに嬉しくて(笑
これからへの気持ちが強くなりました。弱くなりかけていたのに、これもみなさまのおかげです。
この先もよろしくお願いいたします。