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最強の剣を使いこなせないのは俺のせいだろうか?  作者: 猫柱


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4.階層


扉の先は階段だった。


てっきりボスが登場するものだと身構えていた一同の肩の荷が落ちる。


「期待はずれですねぇ。」

「まだ、気は抜けないぞ。」

階段にボスがいないとは限らないと訴え、武器を構えたまま慎重に昇った。


結局のところ、ボスは現れなかった。

そして恐らく二階であろう通路に付いたとき、景色は今までとは違うものだった。


「石を積み上げたような壁ですね」

不思議そうに眺めるNo.5

「引き返すか」

と提案するNo.1

「せめてモンスターを見てからにしましょうよぅ」

文句を言うNo.7


多数決では「引き返す」に部があったため撤退する事とした。



持ち返った情報を整理し報告する。

ー ゴブリン種の討伐に成功

ー 1階部に階段部屋以外の扉はない

ー 2階は石造りの壁であり、様相が異なる


報告を受けた軍人の五十六さんは満足したように頷き、こちらを労った。


最後に、次回の探索日程を合わせて初日は解散となった。


次の探索までの期間はあっという間に感じた。

前回と同じメンバーが集合する。

他班の探索状況も2階までであり複数のモンスターが出現する可能性を考慮するよう注意喚起があった。


1階は前回と変動がなかったため、順調に2階へ進むことが出来た。


「ゴブリンか、」

「複数居ますね」

「ワクワクしますねっ」

3匹のゴブリンを一人で相手するとは言えず、No.7と共闘することになった。


図体の大きい自分が先頭を歩き、剣を振るう。

「わわっ」

反射した剣がNo.7の前を霞め通る!

「すまないっ」

謝罪しつつ剣を振るが、複数いるゴブリンによって剣が乱反射をおこし、様々な軌道を描き続けた。


はぁはぁはぁ

肩で息するNo.1の前にはひき肉になったゴブリンの姿があった。


「もう少しでこちらもひき肉になるところでしたよぉ」

「すまない」

「反射する剣をコントロール出来ないと仲間が怪我しますね、フレンドリーファイアです」

と言うNo.5の意見にごもっともだと思った。


静かに目を閉じる。

こんなとき、会社では改善活動を行って問題解決に取り組んだ。

思い付いた案はいつくもあるが、今すぐに取り組めるモノをひとつ提案した。



「行くぞっ」

三匹のゴブリンに向かって先頭を走る。

間合いに入ったゴブリンに武器を振らず手前で停止し踏ん張りの体勢をとる。

「キギッ」

ゴブリンが棍棒をふるがそれを反発剣でガードする。

「ギャッ」

剣にぶつかる前に棍棒が跳ね返り、ゴブリンが転倒する。

こちらは剣を降っていないので、衝撃はあるが耐えることが出来た。


それを見て背後からナイフを持った少年が飛び出し、ゴブリンに止めを差した。


No.7を狙うゴブリンの前にNo.1が立ち塞がり、ガードする。

弾かれ、隙を見せたゴブリンをNo.7が止めを差す。


アタッカーからシールダーに方針転換したNo.1との連携は良いように思えた。

「素晴らしいですね! 」

No.5が称賛する。

「あぁ」

と答えるNo.1は複雑な思いを抑えてシールダーを続ける事にした。


それからの探索は順調だった。

1階と違って迷路のような構造をしていたが、補助専用となったNo.5が地図を作成することで迷うこともなく探索が出来た。


扉を前にして意見を出し合う。

前回ボスがいなかったこともあり、満場一致で開けることになった。


ギギギ


軋む扉の音か虚しく響く。

暗く、奥まで見通せないが空間があることは確かなようだ。

明らかに前回と違う景色に、慎重に奥へと進む一行。


ギギギ


バタン


閉まる扉を見つめることしか出来なかった。


暗くなった部屋に灯りが灯る。

壁に連なる蝋燭に火が点いたのだ。


奥へ奥へと蝋燭の光が灯っていく。


暫くすると、蝋燭に照らされた生物が身体を起こす。

「グルル」

「ハウンドッ(猟犬)」

犬より4、5倍は優に超える体躯に恐怖を感じ身体が硬直する。

好戦的なNo.7でさえ目を見開いて動かない。


「シャアァ! 」

迫り来る猟犬に剣を構えるが、踏ん張り虚しくその衝撃に身体が宙を舞った。


ドンッ

とまるでボールのように身体がバウンドして壁に衝突する。

「うあぁぁ! 」

飛ばされたNo.1を見て飛び出すNo.7だったが、毛皮を容易に切り裂くことが出来ず、ナイフ突き刺そうと試みるがうまくいかないようだ。

距離を置くか、続けるか悩むNo.7


そんな隙を見逃すモンスターでは無いのだろう、身体を大きくふり尻尾でNo.7を弾き飛ばした。

飛んだ意識が戻り目を開けると、吹き飛ぶNo.7の姿見が視界に入った。


残るNo.5の戦力は未知数だが、武器も構えず放心状態だった。


アドレナリンだろうか?砕けそうだった身体が動き出す。

口を開け、No.5に食らいつこうとするモンスター! 


「うおぉぉおぉ」

剣を携えてなんとか間に入ることが出来た。

噛みつくモンスターに剣を翳す。


ジジジジジッ

閉まる口が剣によって抵抗される。


モンスターの咬合力(こうごうりょく)が強いのか、噛みきられることはないが離れることもなかった。

一瞬が永遠に感じる時間の中、モンスターの尻尾からほんの一滴、血が滴り落ちる。


持久戦かー 


なるべくこの拮抗を長引かせようとしたが、そんなこちらを嘲笑うかのようにモンスターが首をふり、剣と共に地面を滑った。


モンスターの方も無事では無かったようだ。

外れた顎がぶらんと不自然に開き、赤く鋭い目はこちらを敵視していた。


迫り来るモンスターを受け流すよう斜めに剣を合わせる。

暴れ馬のようなそれを、何とか吹き飛ばずに受け流すことができた。


噛まれる心配がないことだけが心強く感じたが

とどめを差す自信はなく、受け流すことに集中した。


嫌な授業はいつまでも続くと言うが、時間の感覚は既に無かった。


何度目だろうか?受け流した剣の反発力を抑えきれず、剣が吹き飛び身を守る術がなくなってしまった。

「万事休すか。」


今までの人生を走馬灯のように思い出す。

. 

ー 

ーー 

ーーー 

死んだ、と確信したハズだった。

重くなった瞼を無理矢理開き、モンスターを見る。


先ほどまで赤く光っていた目はこちらを見たまま光を失っていた。


徐々に消えゆく大きな体躯から何かが落ちるところを見て、意識が途絶えた。




ー 目が覚めたら白い天井だった。

意識が戻ったことに気がついたのか、看護師が慌て出す。


しばらくして話せるようになると部屋に五十六さんが入ってきて状況を説明をしてくれた。

曰く、No.5はヒーラーであり、傷の浅いNo.7を治療しNo.1を背負わせて帰還した。


No.1の意識が一週間ほど無かった間に別班が侵入したが、モンスターは存在しなかった。


何故、意識不明者を出すような危険な場に別班を送ったのか疑問に感じていると、それを察したのか五十六さんが説明を続けた。

「気持ちは理解出来ます。しかし、あなた方が持ち帰った物はその危険を考慮して余りあるものでした。」


最後にモンスターの身体から何かが落ちたことを思い出した。


「私たちはそれを魔石と読んでいます。」

「ここだけの話ですが、魔石を使用した対モンスター武器ができる予定です。」


とてつもないことですよと五十六さんは言った。




退院の日、ひとり寂しく病院を後にすると出入口に見知った顔が見えた。

「久しぶりだな。」

「先日はありがとうございました!」


生意気そうな面影は一切なく真面目に頭を下げられた。


「いや、頭を上げてくれ。お前の【毒】がなければ倒せなかったよ。」


尚も頭を下げ続けるNo.7に「元気でな」と声を掛け帰路についた。



「うーむ」

通帳を見て唸り声をあげる。

No.7に別れの言葉を言ったのには意味がある。

五十六さんからチーム解散の報告を受けていたためだ。

それにあたって成果に見合った報酬が振り込まれることになった。


会社を辞めた時点で数年暮らせる貯金はあったのだが、今回の件で通帳の桁がひとつ増えてしまった。


引退するのも手か?


ダンジョン探索を振り替える。

実力のない自分にはシールダーがお似合いだった。

だが、心は強い自分でありたかった。

最後の戦いも毒がなければ死んでいた。


ダンジョン探索中と違って今は充分な時間がある。


相棒の剣を持って、近くの山に修行へ向かうことにした。

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