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落語家の目指すモノ  作者: するめ
第一章 前座見習い
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幕間 [卒業式]

今日は中学校の卒業式。

俺も次の春からは高校生、いや落語家だ。


卒業の日と言うのは、なんだか嬉しい様な悲しい様な複雑な気持ちである。

卒業式であっても学校の教室に訪れるのは変わらない。


教室に入るといつもの顔馴染みのクラスメイト。

その中にはあの日俺に告白して来た佐藤さんもいる。


佐藤さんとは、あの後連絡先も交換したので週に3回程夜にメッセージをしている。

向こうは気を遣ってくれているのだろう、文面からそれが読み取れる。


言葉遣いも丁寧でしっかりしていて、どこかの姉さんとは大違いだ。

そんな事を考えていると前から男子が歩いて来た。


「伊織お前、高校本当に行かないのか?」


もちろんだ高校よりも落語家になる方が何倍も重要だ。


「あぁそうだけど」


なんだその人を憐れむ様な目は。

なにも事情を知らない者からすれば色々な理由が想像できるだろうからな。


「お前もしかして、金がないのか?」


ほら見ろ。

言われるとは思っていたが意外と来るものがあるな。

ここで憐れまれてお別れなど嫌だからな話すしかないであろう。


「全然そんな理由じゃないよ、俺落語家になるんだ」


目の前の男子はビックリした後に手を叩いて笑い出した。

とても不愉快だ。


「しっかり夢があるんだな、未来の有名人じゃんか」


さっきの不愉快な気持ちが飛んで行った。

逆に未来の有名人なんて言われると気分がいい。


下げて上げるなんてもしやこの男、人たらしか?

あぁ、確かに今までもそんな気もしなくはなかった。


こいつの周りにはいつも人がいたからな。

そんな事を考えているとポケットからスマホを出してこちらに差し出した。


「REIN交換しようぜ」


唐突な提案だが全然悪い気はしない。

むしろ少し嬉しいくらいだ。


「喜んで」


その後、お前少し変わってるけどいい奴だなと言われ、少し複雑になった。

そんな複雑な気持ちなど関係なく時間は過ぎて行く。


とうとう卒業式の時間がやって来た。

入場前の体育館からは親達の拍手の音と「エール」が聞こえて来た。


少し涙腺を刺激されはしたが前の列に居る面白い友達を見て涙が引っ込んだ。

なんなら少しニヤけてしまった。


そんな風に自分の座る席へと向かい座った。

それからは長い校長挨拶、その後は誰かも知らない来賓紹介、そして校歌斉唱。


やっと今日のメインの卒業証書授与が始まった。

昨今は新型ウイルス対策でなんでも短縮したがるせいか、1人ずつ受け取らずに代表生徒のみが受け取る形になっていた。


まぁしかしそれでも、もちろん名前は呼ぶ。

俺たちの名前を呼ぶ先生は涙を流しながら呼んでいる。


そんな先生に連れてと言ってはアレだが、俺の目にも涙が浮かぶ。

そして退場の時になると、それはもう止まらなくなっていた。


人前で泣くことなでないので少し恥ずかしくもあるが、そんな気持ちを頬から流れる雫が流して行く。

そこから先はあまり覚えていない。


ただ一つわかることは、俺は今日この学舎を卒業したことだけだ。

佐藤さんと同じくクラスメイトもなんらかの形で今後も出て来る予定です

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